ポルトガルのリスボンからポルトへ、高速電車アルファペンデュラールの旅【車内・予約方法】

ヨーロッパ鉄道

大西洋に面したヨーロッパ最西端の国、ポルトガル。
この国に来た多くの観光客が訪れるであろう首都リスボンと第二の都市ポルトは、高速電車「アルファペンデュラール」(以下AP)を使えば3時間で移動することができます。

2023年11月、リスボンからポルトまでAPの一等車に乗車しました。

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リスボンからポルトまで所要時間は3時間

ヨーロッパが統合に向けて大きく前進していた1999年。
ユーラシア大陸の西の果てポルトガルにも、ついにスマートな高速列車が登場しました。
それがイタリアの「ペンドリーノ」をもとにした振り子式電車、「アルファペンデュラール」です。

車体傾斜車両らしい断面

隣国フランスやスペインの新幹線のような本格的な高速鉄道ではありませんが、カーブでも高速で通過できる車両によってスピードアップが実現しました。
首都リスボンから国内北部の第二の都市ポルトまでの距離は約300㎞所要時間は約3時間です。

同区間には看板列車APの他に、機関車が客車を牽く旧式タイプのIC( Intercidades)も運転されています。
また現在のAPはリニューアルが施され、塗装が銀色になっています。

登場時の塗装のAP
2011年
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アルファペンデュラーの車内

二等車(Turistica)の車内と座席

ポルトガルのアルファペンデュラールの二等車の車内
二等車の車内

ポルトガルの電車だと思って乗ると意外(?)なことに、車内はかなりビジネスライクな雰囲気です。
リニューアルされてまだ日が浅いため、スタイリッシュで綺麗な印象でした。
座席配置は通常通り、通路を挟んで2列ずつ席が並んでいます。
全席にスマホの充電ができるコンセントが付いています。

一等・二等にかかわらず、座席の向きを変えることはできません。
全列が車両中央部に向かいあっている「集団見合い式」と呼ばれる車内構造になっています。

ポルトガルのアルファペンデュラールの二等車の座席
二等車の座席

一等車(Conforto)の車内と座席

ポルトガルのアルファペンデュラールの一等車の車内
一等車の車内

一等車は横3列の革張りの座席です。
どうやらリスボンのオリエンテ駅(始発ではないもう一つの駅)に一等車利用客専用のラウンジがあるようです。

ポルトガルのアルファペンデュラールの一等車の座席
一等車の座席

3号車にカフェテリアがある

3号車にはカフェテリアがあり、飲み物やサンドイッチなどの軽食を買うことができます。
支払いにはクレジットカードも利用できます。
全般的に値段は日本より安く、こんな有難い気分になるのも西ヨーロッパでは今やポルトガルくらいです。

ポルトガルのアルファペンデュラールのカフェテリアのメニューと価格
メニューと価格

ここで注目すべきメニューはポートワイン。
ブランデーを混ぜて造る(日本の「赤玉ポートワイン」ではないっ!)ポルトの名産ワインです。
アルコール度数は高いが甘くて飲みやすいので渋みが苦手な女性にもおすすめできる、などと書くとコイツはケシカラン奴だと思われそうですが、それはともかく、せっかくなので試してみてはどうでしょう。

おすすめは二等車

ここで一等車と二等車どちらにしようか迷う方もいるでしょう。
結論、私は二等車でも良いと思います。

たしかに一等車の方が座席が広くて空いていますが、飲み物や食事などの付加サービスは無く、二等車も内装などはさほど変わりません。
また、APは全席指定なので混雑時にデッキや通路に人がいることはありません。

おそらく一人旅派の読者は今頃「とはいえ、一等車には1人掛け座席の特権がある」と思っていることでしょう。
しかし次の章でも述べる通り、予約すべき海側の座席は2人掛けです。
海外旅行先で他人を恐れるより、列車旅を楽しみましょう。

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予約方法と費用

APの予約はポルトガル国鉄(CP)の公式サイトから行うことができます。
以下、そのやり方を説明します。

まず最初に日付と発着駅を入力して列車検索です。
都市名ではなく駅名なのでどの駅が便利か確かめておきましょう。

左端にAPと書かれているのが看板列車のアルファペンデュラール、ICが二番手のインテルシダーデス(英語で言うインターシティ)です。
時刻と正規運賃、そしてその右には割引運賃(Promo Ticket)が記載されています。
APの方が速い分ICより少しだけ料金が高いです。

列車を選択したら、乗客の人数と一等か二等かを選び進みます。
さて、この先予約を進めるには会員登録をする必要があります。
登録が完了したらログインして予約を再開しましょう。

オプションの場面では割引料金にするのを忘れないようにしましょう。
ここは忘れやすいので要注意です。
赤丸で囲った部分を”Promo Ticket”に変えなければ、一番上の写真で見た正規運賃となってしまいます。

一等車のシートマップ

シートマップから好きな席を選ぶことができます。
デフォルトでは適当な席があてられているので、その席を一度クリックして選択を外し、新たな席を指定します。
進行方向も分かるので海側の席を狙うことが可能です。
改めて、一等車の場合2人掛けの席が進行方向左側(リスボン発の場合)、つまり海側になります。

各座席の向きも分かるようになっていて、四角形の緑の線がある側が背もたれです。
つまり、選択中の36番席は進行方向向き、26番席は反対向きです。

その後は日本国内の通りに電話番号を入力だけします。
最後に支払いが完了すると、登録したメールアドレスにチケットが添付されたメールが届きます。
スマホに保存するか印刷して終了です。
お疲れ様でした。

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乗車記:APの一等車に乗る

始発はリスボン・サンタアポローニア駅

11月上旬のリスボンはまだ秋の気配すらせず、朝の気温は20度前後でした。
海というかテージョ川の河口と崖に挟まれた所にリスボン・サンタアポローニア駅(Santa Apolonia)の赤い駅舎が収まっています。
崖の斜面からはカラフルな家が松の木のように生えています。

駅に向かうメトロが空いていたのには驚きました。
朝8時台の首都のターミナル駅行き電車が座席の半分しか埋まっていないとは、東京では信じられません。
念のため確認したところ、この日は祝日でもないようです。

9時発のAP乗り場は駅正面から入って少し奥の方へ歩いたホームから発着でした。
既に入線済みのAPが、車体傾斜の動作テストをしながらストレッチしていました。
駅の売店で購入したツナが入ったパン(日本のシーチキンおにぎりみたいなポジション)を用意して一等車に乗りこみます。

「ヒューンヒューン」という懐かしいモーター音を響かせて定時に出発。
すぐに開放的な屋根を持つオリエンテ駅(Oriente)に到着します。
ここで乗って来る客が沢山いて、一等車も7割以上の席が埋まりました。
英語がよく聞こえたので外国人旅行客の利用が多いのでしょう。
並走する通勤電車はやはり不思議なほど空いています。

スペインとフランスと日本が混じった風景?

リスボンの市街地や右手のテージョ川も見えなくなり、列車は最高速度の時速220㎞で走行します。
線路の整備状態はあまり良くないのか、結構揺れます。

ポルトガルの風景はスペインと似ているようで、やはり違います。
「南欧」という括りで一緒にはされるものの、大西洋に面した国土のため緑が多いです。
田舎の家は質素な白が多く、土は赤。
葡萄畑は収穫後でみすぼらしいですが、こうした色の対比が青空のもとで鮮やかに映ります。
廃屋をちらほら見かけるところに、(先進国の中では)貧しさを感じます。

途中では線路工事の影響で徐行する区間があり、10分程度遅れている模様。
ポルトガル第三の都市コインブラ(Coimbra)は、思ったほど大きくありませんでした。
二等車でそれなりに乗り降りがあったようです。

車窓には時々水田が見えます。
収穫後の田んぼにいる鶴のしぐさまで日本の田園風景そっくりです。
ポルトガルはコメの消費量がヨーロッパで一番多く、魚をよく使うあっさりした料理も日本と非常によく似ています。

タコの炊き込みご飯にタコの天ぷら。
天ぷらはポルトガル由来の料理。
これを半分の大きさにして弁当箱に入れたら、山陽本線のどこぞの駅弁になりそう。

ようやく左手に海が見える

アヴェイロ駅(Aveiro)を過ぎると湖を経て、ついに大西洋が真正面に姿を現します。
遥か水平線から押し寄せる白波は高く、遊歩道を歩く人が飲み込まれないか心配になります。
15世紀後半、この荒い海を横断できるようになったことが、ポルトガルの栄光とグローバル化(最近になってアメリカが推し進めたことではない)の始まりでした。

ポルトの市内まで来た辺りが最大の見せ場です。
ドゥエロ川の対岸に見えるのがポルトの旧市街。
大聖堂や教会が目立ちます。

そして間もなく橋を渡ります。
ポルトもリスボンと同様に河口に開けた都市なのですが、リスボンのテージョ川はほとんど海だったのに対して、こちらは深く切り立った谷で、河口というよりずっと上流にある山奥の里のような雰囲気さえあります。
前の席でずっと大きないびきをかいて寝ていた男性も、この時ばかりは”Oh Amazing!”と驚いていました。

ポルト・カンパニャン駅に到着

5分くらい遅れて終着のポルト・カンパニャン駅(Port Campanha)に到着。
旧市街中心部へはメトロ(というかトラム?)でアクセスします。

あるいは国鉄の近郊電車で街中のサンベント駅(São Bento)に行くのもおすすめです。
ここは駅舎内部の壁画が見事なので、それ自体が観光地としても知られています。
またカンパニャン駅からサンベント駅までは、先ほど橋から見下ろした崖に沿って走ります。
国内第二の都市の通勤電車で秘境ローカル線気分が味わえます。

サンベント駅
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日本人にとって親近感のあるポルトガル

リスボンの街並み

日本人が欧米世界を知るきっかけとなったポルトガルは、今の我々にとっても大変親近感を覚える国です。
リスボンの地形などは、ブドウ畑とミカン畑を入れ替えれば長崎とほぼ同じではないかと思えてきます。
民族歌謡のファドが流れるレストランでバカリャウ(干し鱈)を卵でとじた料理が出された時は、青森の居酒屋で演歌を聞きながら干し鱈を生卵に絡めて食べたことが思い出されます。

ちなみに、ポルトガル語で「ありがとう」はobrigadoオブリガードと言います。
次第にこれが「アリガトー」に聞こえるようになってくれば、貴方も立派なポルトガル好きを名乗ることができるでしょう。

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