スペインのバルセロナ~フランスのリヨン、AVE一等車の鉄道移動【車内・予約方法】

ヨーロッパ鉄道

フランス南部の美食の街リヨンと、スペインのカタルーニャ州の都バルセロナ。
それぞれ首都とは違った魅力を持つこの二都市は、スペインの高速列車AVEアベで結ばれています。
時速300㎞のカフェテリア付き列車から、地中海沿いの港町やローヌ渓谷の車窓が楽しむことができます。

2022年10月、バルセロナからリヨンまでAVE一等車に乗車しました。
その後、この列車が廃止されたので記事にするのを一度は断念しましたが、2023年7月にめでたくAVEが復活したので記事化しました。

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フランスからスペインへ、所要時間は5時間

フランス国鉄VSスペイン国鉄

以前のフランス・スペイン間の高速列車は、フランス国鉄とスペイン国鉄(Renfe)が共同で運行していました。
パリ・バルセロナ間はフランスのTGV(フランスの新幹線)車両、リヨン・バルセロナ間にはスペインのAVE(スペインの新幹線)車両が担いながら、両者は協力し合う間柄でした。

しかし、オープンアスクセス(自国の国鉄以外の事業者も参入できるようにすること)の進展により、フランスの格安TGVのOuigoがスペイン国内に参入してAVEの市場を揺るがすなど、国鉄同士の利害対立がヨーロッパでは目立つようになります。
そんな中、フランス・スペインの共同運行も破局に至ります。
結果、パリ・バルセロナ間のTGVはフランス国鉄の単独運行に、協力相手を失ったリヨン・バルセロナ間のAVEは廃止されてしまいました。

スペイン市場に乗り込んできたフランスのOuigo

スペインからすれば、ルイ14世やナポレオンよろしく、このようなフランスの自分だけに都合の良いやり方は容認できるものでありません。
果たして、必要な手続きを済ませたRenfeは、リヨン・バルセロナ間及びマドリード・マルセイユ間でAVEの運行再開を単独で実現させたのでした。

初代AVE車両のS100型、最高速度は時速300㎞

フランス直通のAVEにはS100系と呼ばれる初代のAVE車両が使われています。
1990年代前半にデビューしたので、やや古い部類に入ります。
実はこのS100系はTGVをベースとした車両です。
なお、AVEはAlta Velocidad Española(「スペイン高速」の意味)の略語で、かつスペイン語のaveには「鳥」の意味もあります。

S100系
AVEのエンブレムには鳥が描かれている

最高速度は時速300㎞。
といってもこのスピードで走るのはフランスの一部区間だけです。
リヨンからバルセロナまでの所要時間は約5時間です。
2023年夏のダイヤでは、バルセロナを朝発ってリヨンに昼過ぎに着、逆向きではリヨンを昼過ぎに出発してバルセロナには夕方に着きます。
パリからバルセロナまでの7時間は長過ぎるという方も、このくらいなら許容できるのではないでしょうか?

8月まで週4日運転、9月からは毎日運転

2023年7月・8月の運行計画では、リヨン・バルセロナ間のAVEは月・金・土・日曜日の週4日運転です。
おそらくバルセロナ→リヨン→バルセロナと1日で折り返す運用が採られているため、リヨン発もバルセロナ発も同じ曜日に運転されます。
2023年9月以降は毎日運転されるようです。

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AVEの車内と座席

AVEの編成は二等車・一等車・カフェテリア(軽食堂車)から成ります。

二等車(スタンダード)の車内

リヨン・バルセロナ間AVEの二等車の車内
二等車の車内

ウッドフロアに黄色の座席という特徴的な雰囲気の二等車。
JRでいう普通車です。
コンセントとWi-Fiを利用することができます。
黄色と焦げ茶色の配色が、何となく秋田新幹線「こまち」を思わせます。

一等車(コンフォート)の車内

リヨン・バルセロナ間AVEの一等車の車内
一等車の車内

グリーン車に値する一等車は通路を挟んで1&2列座席配置です。
座席は黒い革張りで高級感があります。
独立した座席は特に一人利用には重宝します。

リヨン・バルセロナ間AVEの一等車の座席
一等車の座席

カフェテリア(軽食堂車)の車内

リヨン・バルセロナ間AVEの軽食堂車の車内

AVEには軽食堂車のカフェテリアがあります。
車両中央部にひょうたん島のようなテーブルがある、立ち席タイプです。
アルコール飲料の他、サンドイッチなどの軽食やホットミールも注文できます。

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乗車記:バルセロナからリヨンへAVEのS100系で行く

以下の乗車記はフランス国鉄とスペイン国鉄の共同運行時代(2022年)のものです。
車両やおおまかなダイヤは今も同じですが、細かいサービス内容は変わっている可能性があります。

スペインの高速列車の乗り方:30分前に駅に着くのが理想

朝8時前のバルセロナ。
サマータイム最終盤のスペインの日の出は遅く、この時間でもまだ薄暗いです。

スペインで高速列車に乗る時は、荷物検査があります。
検査自体はすぐ終わりますし液体持ち込みも可能ですが、時間帯によっては混雑することがあるので、なるべく30分前を目安に、最低でも20分前に駅に到着した方が無難です。

コンコースに入場したら、ホームに降りる階段の前でチケットの検札が行われます。
ここでも並びます。
二次元バーコードをスキャンしてもらってようやく車両と対面できます。
地下のバルセロナ・サンツ駅(Barcelona-sants)に初代AVEが停車していました。

TGVが金髪で気取ったパリの婦人なら、AVEは黒髪丸顔に白いTシャツ姿の娘といったところでしょうか。

ピレネー山脈を越える

ほぼ定刻に発車。
地上に出てまぶしい朝日を浴びます。
一等車は7割程度の座席が埋まっていました。

2022年当時、スペインの公共交通機関ではマスク着用が強要されていました。
ただこの日の車掌はあまり厳しくなく、近くの席の男性などはアイマスクとして使って寝ていてもお咎めなしでした。

朝食と「コロナ対策対策」を兼ねて、カフェテリアに行きます。
スペインの生ハムサンドイッチは、日本の鮭おにぎりと同じくらい定番中の定番です。
固い歯応えのあるパンが生ハムの脂と塩分によって舌の上に馴染んでゆく喜びは、スペイン旅行をされた方ならきっと思い出に残っているはずです。

Figueres-Vilafant駅フィゲレス・ヴィラファントがスペイン側の最後の駅です。
ここでスペイン・フランス両国の警察が乗ってきました。
「どうせ有色人種の私のパスポートでもチェックするのだろう」と思って待つも、特に何も言われませんでした。

国境のピレネー山脈に正面から挑むことはせず、海岸近くで山越えを演じます。
上り勾配を走っていることが明らかに感じられ、下りに転じてからは長いトンネルが続きます。

フランスに入ってperpignan駅ペルピニャンに到着。
ここで車掌が交代します。

南仏地中海の景色

曇り空の中、列車は地中海沿岸を走ります。
砂洲の上に線路が敷かれており、左手にもラグーン(潟湖)が広がります。
つまり、両手に海が見えるわけです。

南仏の地中海沿いの街を過ぎていきます。
まだフランスというよりはイタリアに近い風景です。
途中でNarbonneナルボンヌMontpellierモンペリエといった観光都市にも停車しましたが、乗客数はバルセロナ以来あまり変わりません。

気分転換にカフェテリアで赤ワインを購入。
アルコール度数が14.5%もあるボルドーワインです。
AVE車内で販売されているのは普通リオハ(スペイン産)ですが、ボルドーワインの存在が当時フランス国鉄が協力していた名残だったのでしょうか。
ボルドーワインで存在感をアピールするとは、ウィーン会議のフランス外相、タレーランと同じことを考えています。

乗客のみならず乗務員も皆マスクを外しています。
大きな目を輝かせていた女性スタッフは、スペイン領内にいた時よりずっと表情豊かに接客しています。

ローヌ渓谷を時速300㎞で北上

ニーム中央駅(Nimes centre)を過ぎると、AVEはようやく本領発揮して最高速度の時速300㎞を出します。
ローヌ渓谷近くを北上し、右手遠方にはアルプスの山も顔を出します。
時々古城が見えるのは、昔からここが交通路だったことの証でしょう。
なおローヌ地方はボルドー・ブルゴーニュに続くフランスのワイン産地の一つです。

リヨンに近づくにつれ丘陵地の畑が目立ちます。
ここまで来るといかにもフランスらしい車窓になります。

13時20分過ぎ、時刻通りにリヨン・パールデュー駅(Lyon Part Dieu)に着きました。
ローヌ川とソーヌ川が合流する街並みの綺麗なリヨンは、古くから交易地として栄えました。
今でもパリはもちろん、バルセロナやイタリアのミラノへ向かう列車が運行されています。
実際に、パリ・バルセロナ・ミラノを結ぶ三角形を描くと、ちょうど重心がリヨンになります。

リヨンは美食の都市としても知られています。
スパイシーでワイルドなローヌワインと共に郷土料理をいただきましょう。

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予約方法と費用

AVEの予約はスペイン国鉄(Renfe)のサイトから行うことができます。
スペイン国鉄単独の運行となったため、フランス国鉄のサイトからは予約できません。
先に申し上げておくと、予約システムは紛らわしいです。
クラス(二等車or一等車)とは別に、料金タイプという概念が存在することを押さえましょう。

BasicoとEligeの違いを理解しよう

まずRenfeの英語ページにアクセスしたら、発着地(都市名または駅名)・日付・片道または往復・人数を選びます。
以降、紫色のボタンを押下しながら進めていきます。

列車候補(といっても1日1本しかないが)が現れました。
ここからが分かりづらい所なので注意しながら進めましょう。
まず、BasicoEligeはそれぞれ二等車・一等車ではありません。
これらはクラスではなく、チケットの自由度に関わる料金タイプ名前です。
BasicoとEligeの違いをまとめると以下のようになります。

  • Basico→2等車のみ。変更・返金不可。
  • Elige→2等車または1等車。変更・返金には手数料要。座席指定などのオプションもBasicoより安くなる。
  • Premium(バルセロナ・リヨン間のAVEには設定なし?)→1等車のみ。変更無料、返金も僅かな手数料で可能。ラウンジの利用可・座席指定・食事サービスなども込み。
Basicoの説明

それでは一等車を予約する場合はどうするか?
まずは二等車または一等車のEligeを選択します。

Eligeの説明

この時、デフォルトでは上の写真の青丸で囲った【Elige 99€】が活性化しています。
ただの【Elige】だと料金タイプがEligeの二等車になってしまいます。
一等車を予約するには、その左隣の【Elige Confort 109€】を選択します。
この【Elige Confort】こそが、料金タイプがEligeの一等車(=confort)です。

これでようやく一等車を希望することができました。
以下は乗客情報です。
Document typeはパスポート、その横にパスポート番号を入力します。
Preflxは電話番号の国番号で、日本は₊81です。

座席表から好きな座席を選べる

下にスクロールすると、オプション選択画面があります。
AVEは全席指定制なので着席は保証されています。
上の写真のSeating preferenceにチェックを入れると、5€(Basicoは8€)追加でシートマップから好きな座席を選ぶことができます。
窓側・通路側を希望するだけなら追加料金は不要です。

さらに下にスクロールして支払い方法を選択します。

決済画面に移行する前にシートマップが現れます。
列車の進行方向や向かい合わせの有無が分かります。

クレジットカードが使えない時の対処法

最後にクレジットカード情報を入力します。
Renfeのサイトは「海外のクレジットカードがエラーになりやすい」という話をよく聞きます。
特に審査の緩いクレジットカードほどはじかれやすいと言われています。

海外サイトを短時間のうちに連続利用するとエラーになることもあるそうです。
私のケースでは、エラーになった直後にカード会社から確認の電話がかかって来て、その電話の後にはすぐに使えるようになりました。
なお、クレジットカードで決済できなければPayPalを使うことができますし、手数料を払って代理店サイトを利用することもできます。

決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
またRenfeのアプリをスマホに入れておくと便利です。
お疲れ様でした。

費用があまり変わらない一等車がおすすめ

本章の補足として費用について触れておきます。
Basico・Elige・Elige confortの費用は基本的にそれほど大きく変わりません。
安い時のBasicoの目安は50€程度です。
大抵の場合はBasicoとElige confortの差額は10~20€(≒1,500~3,000円)程度なので、5時間乗車することを考えれば後者、つまり一等車をおすすめします。

ただ、日によってはBasico PROMOというBasicoと同じ条件のセール商品が29€から提示されているので、その時は二等車か一等車は悩みどころです。

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フランスに飛び立つAVE

オープンアクセスが進むヨーロッパの中でも、とりわけフランス・イタリア・スペインの「ラテン三人衆」の競争は激しさを増す一方です。
これまで周辺国の「資本侵略」を受ける側だったAVEも、いよいよ単独運行で外国に進出を果たしました。

Renfeは今後フランス国内市場への参入を予定しています。
TGVの技術をベースに生まれたAVEが、「飼い犬に手を嚙まれる」の諺にあるように、今やTGVの対抗勢力になろうとしています。


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