プラハ・クラクフ間のユーロシティ「クラコヴィア号」一等車で鉄道移動【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

日本人にも観光地として人気のある中欧の古都、プラハとクラクフ。
この二都市間は鉄道で快適かつ低価格に移動することができます。

本記事では古都巡りの移動にぴったりな、ユーロシティ「クラコヴィア号(Cracovia)」を紹介します。
機関車が客車を牽く編成で食堂車も連結されている、懐かしい鉄道旅行を満喫することができる列車です。

2023年5月下旬に「クラコヴィア号」の一等車に乗車しました。
なお、私が実際に乗ったのはチェコのポーランド寄りにあるオストラヴァからです。

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プラハ・クラクフ間の所要時間は約7時間

ユーロシティ「クラコヴィア号」

プラハとクラクフを直通で結ぶユーロシティ「クラコヴィア号」は、チェコ国鉄の車両が使用されています。
ユーロシティ(Euro City)とはヨーロッパの国際特急列車の意味です。
機関車が客車を牽く昔ながらの方式で、その客車も見た目は普通の客車です。
決してスマートな編成には見えませんが、チェコの特急列車用の客車は清潔で快適なので安心してください。
ちなみに、「クラコヴィア」はクラクフのラテン名です。

プラハ・クラクフ間の所要時間は約7時間です。
プラハを10時ごろに出発してクラクフには夕方17時ごろに着、逆向きはクラクフを午前中の11時前に出てプラハには夕方18時前に着きます。
所要時間は長いですが時間帯としては良好です。

編成は二等車・一等車、そして食堂車から成ります。
一等車と食堂車はまとめて1両になっています。
規模が小さいためか食堂車は「ビストロ」と名乗っていますが、メニューは他のチェコ国鉄の食堂車と同じで、食事する席も少数ながらあります。

「ガリツィア号」の編成は二等車のみ

「クラコヴィア号」以外にも「ガリツィア号」(ポーランド南部からウクライナ西部にかけての地域名)というユーロシティがプラハ・クラクフ間を走っています。
この列車もチェコ国鉄の車両ですが、二等車のみの編成です。

実は「ガリツィア号」はプラハ・ワルシャワ間で運転される本家「シレジア号」の分家的存在で、チェコとポーランド国境近くのボフミーン駅で切り離されてクラクフに向かいます。
「シレジア号」には一等車も食堂車もあるので、「ガリツィア号」でクラクフに行く人も途中までは食堂車を利用できます。

「シレジア号」の食堂車
ワルシャワ中央駅にて

直通列車にこだわらず途中乗り換えを許容すれば、それ以外にも選択肢はあります。
ただ難易度が上がり、かつ遅延リスクもあるのであまり望ましくありません。
また国鉄系の列車の他に、民間鉄道会社のレオエクスプレスが週3日プラハ・クラクフ間を運行しています。

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「クラコヴィア号」の車内

二等車の車内と座席

二等車にはオープンサロンタイプとコンパートメントタイプの二種類があります。

プラハ・クラクフ間ユーロシティの
オープンサロンタイプの二等車の車内
オープンサロンタイプの二等車の車内

オープンサロンタイプの二等車は、チェコ国鉄の特急車両でよく見る青い4人用ボックスシートが並びます。
コンセントが付いていて、Wi-Fiもチェコ国内のみ利用可能です。

プラハ・クラクフ間ユーロシティの
オープンサロンタイプの二等車の座席
オープンサロンタイプの二等車の座席

コンパートメントタイプの二等車は一部屋当たり座席は6つです。
座席そのものはオープンサロンタイプと同じです。
空いていればこちらの方がゆったりできます。

プラハ・クラクフ間ユーロシティのコンパートメントタイプの二等車の車内
コンパートメントタイプの二等車の車内

一等車の車内と座席(おすすめ)

プラハ・クラクフ間ユーロシティの一等車の車内
一等車の車内

一等車は一番端の車両の半分を占め、通路を隔てて2&1列の座席配置です。
何となく古めの内装のような感じもしますが、逆に落ち着いた雰囲気です。
二等車とのアコモ格差が大きいので、私は一等車の利用をおすすめします。

ボックスタイプの席が多いですが、一部では一人用の座席もあります。
一等車ではペットボトルの水が無料で配られます。

プラハ・クラクフ間ユーロシティの一等車の座席
一等車の座席

一等車の乗客には食堂車のスタッフが飲み物や食事を自席まで運んでくれます。
もちろん食堂車に出かけてもかまいません。

食堂車(ビストロ)の車内

プラハ・クラクフ間ユーロシティの食堂車の車内
食堂車の車内

半室一等車の残り半分が食堂車になっています。
4人用テーブル席2つとカウンター席から成るレイアウトです。
ワインやビールの種類が幾つもあり、食事も機内食スタイルではなく皿やカップで出してくれます。
特に我々がいつも飲む透明タイプのビールの元祖、「ピルスナーウルケル」の生ビールが飲めるのは嬉しい限りです。

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乗車記:オストラヴァからクラクフへ

鉄道の要衝、ボフミーン駅で50分停車

チェコ東部のポーランド国境近くのオストラバ。
普通チェコは「西部ボヘミアと東部モラビアに二分される」と言われますが、わずかな例外がオストラバを中心としたシレジア地方です。
オストラヴァ中央駅(Ostrava hlavni)は全体としては2つのホーム群からなるV字型になっており、その周りには多数の貨車や機関車が待機しています。

オストラヴァ中央駅。
写真範囲外の右手にも右下を向いたホームがある。

平日昼過ぎのオストラヴァ中央駅は、その規模の割にはひっそりとしていました。
大量の貨車と少ない人。
このヒトとモノのバランスが風情を醸し出します。
「クラコヴィア号」は定刻13:50に出発しました。
見た感じでは二等車は混雑、一等車は空いています。

ちなみにオストラヴァはチェコ第三の都市ですが、工業都市なので市内中心部は観光地として特筆すべき魅力はありません。
オストラヴァの見所はトラムで15分程の町はずれにある巨大な工場跡に尽きます。
圧倒される規模の朽ちかけたこの施設は、もはや芸術へと昇華されています。
石炭・産業遺産・廃墟…、これらの言葉に郷愁を感じる方は、プラハ・クラクフ間の移動のついでに是非オストラヴァに立ち寄りましょう。

さて、オストラヴァを出てまもなく国境駅のボフミーン駅(Bohumin)に着きました。
ここは鉄道交通の要衝で、「クラコヴィア号」は50分も停車します。
ブダペストから来た編成を併合する一方、ワルシャワ行きの車両を切り離すという、興味深い仕分け作業をこの駅で行います。
スロバキア・ハンガリー・ポーランドの客車や機関車が行き交う駅で、トレインウォッチングを楽しみます。(荷物はワイヤー等でロックした方が無難)

トレインウォッチングを終えて食堂車に行くと、スタッフが「電気がないから今は食堂車を利用できない」と言います。
どういう意味か分かりましたか?
ボフミーン駅で機関車の交代途中だったので、客車に電気が供給されないのです。

ポーランドへ入国、Wi-Fi利用不可だがクレジットカードは使える

出発時刻近くになると、交代したばかりの威厳のある女性車掌が乗客一人ひとりに行き先を聞いて、正しい号車に乗っているかを確認しています。
結局10分遅れで発車。
進行方向が変わり、一等車&食堂車が先頭になりました。

すぐに国境の川を渡り、ポーランドに入国。
最初に停車する駅はハウプキ(Chalupki)駅です。
ほぼローマ字読みのチェコ語とは違って、同じ西スラブ系言語でもポーランド語は慣れないアルファベット文字も多く、読むのがかなり難しいです。

電源回復した食堂車は、私と同じように待ちかねていた人ですぐに席が埋まりました。
グラーシュスープ(ハンガリー風ビーフシチューで、チェコでもよく食べられる)と白ワインを注文。
スパイシーなグラーシュと、酸味とコクの強い白ワインのペアリングは良好でした。
なお、ポーランドに入ってWi-Fiは使えなくなりましたが、食堂車でクレジットカードは使えました。

炭鉱地帯、シレジアの風景

シレジア地方はチェコからポーランド南部にかけての地域で、かつてはオーストリアのマリア・テレジアとプロイセンのフリードリヒ二世がその領有をめぐって何度も争った土地です。
19世紀以降は炭鉱・鉄鋼業で栄え、ドイツ有数の産業地帯でした。
駅を通過する度に工場を背景に貨車が並び、汚れた機関車が荒々しく息を弾ませています。

ポーランドにおけるシレジアの中心都市の、カトヴィツェ駅(Katowice)で乗客が一気に増えました。
今まで空いていた一等車も席がかなり埋まります。

相変わらず工業地帯で、曇り空も相まってパッとしない風景です。
「平原の国」を意味するポーランドに来たのに、まるで昭和中期の室蘭本線や筑豊本線に乗っている気分になります。
期待を裏切られるたびに旅行は面白いと思います。

ポーランドの京都、クラクフに到着

クラクフに近づくとようやく視界が広がり、昭和日本の炭鉱地帯の情景からヨーロッパ的な風景へと変わります。

約10分の遅れでクラクフ中央駅(Krakow Glowny)に到着です。
列車はこの先プシェミシル(Przemysl)まで行きます。
ポーランド国鉄の電気機関車(形式名は知らん)には、民族衣装を着た女の子のイラストが描かれています。
この絵を見ると、ショパンのマズルカの独特なリズムとアクセントが頭から離れません。

最後尾にはハンガリー国鉄の客車がいました。
統一された編成美とは無縁の、国際色豊かな古き良きヨーロッパのユーロシティの旅でした。

クラクフ中央駅から旧市街は徒歩圏内です。
スターリンの建てた文化科学宮殿が駅前にそびえる首都ワルシャワに対して、クラクフはポーランドの京都に喩えられます。
オーソドックスな中欧古都の街並みという点では、クラクフはプラハと共通しています。

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予約方法と費用

「クラコヴィア号」の予約はチェコ国鉄の公式サイトで行うことができます。
少し厄介なところがあるので、その辺も含めて写真付きで解説していきます。

割引チケットのFirst Minuteがおすすめ

まずトップページにアクセスして、発着地(駅名でも都市名でも可)・日付を入力します。
人数の変更は赤丸で囲った鉛筆マークから行います。
この鉛筆マークは、チェコ国鉄のサイトにおいて重要な役割なので見過ごさないように。
この段階で等級(二等車or一等車)を選択する必要はありません。
これ以降、緑色のボタンを押下して進んでいきましょう。

列車選択画面です。
直通列車以外に乗り継ぎありの旅程も現れます。
乗り換え時間がタイトだったり、特急列車ではない普通のローカル列車が含まれることもあるので要注意です。

また画面右上で等級を選択します。
Businessはユーロシティにはありません。
それでは、今回はプラハ10:15発のEC「クラコヴィア」の一等車を予約しましょう。

2種類のチケットが提示されました。
上は乗る列車が限定されるFirst Minuteという割引チケットです。
下の通常価格のチケットでは、区間が同じなら乗る列車は自由です。
First Minuteの値段は日にちや列車によって変化します。

上の写真のケースだと、2等車よりも120CZK(チェココルナ:1CZK≒6.5円)高いだけのお値打ち価格です。
500㎞以上の距離を一等車で移動して823CZK≒35€≒5,300円しかかかりません。
今回は2週間ほど後の日付で照会していますが、これはかなり安い方です。

座席表から好きな席が選べる

チケットを選択すると確認画面のようなページに移行します。
サラッと流してしまいがちですが、ここからシートマップより座席指定ができるので飛ばさないように気を付けてください。
Reservationの項目から鉛筆マークを押下します。

号車番号や座席番号を聞かれても分からないので、赤丸で囲ったSelect seat-をクリックします。

シートマップが現れました。
空いている白の席から好きな座席を選択します。
一人利用なら11番か42番席がおすすめです。
なお、この工程を飛ばしても、今回は座席指定が付いているので自動的に席が割り振られます。

最後に名前とメールアドレスを入力して、クレジットカードで支払いです。
私の場合、海外サイトではじかれやすかった審査の緩いカードもここでは使えました。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

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ヨーロッパ鉄道の伝統

かつて花形列車だったユーロシティも、高速化の進展により西欧ではその数を減らしています。
ヨーロッパが拡大の夢の価値をまだ疑わなかった時代のユーロシティの伝統は、今や中欧に受け継がれています。

機関車がコンパートメントタイプも含んだ客車を牽く多国籍な編成は、まさに陸続きのヨーロッパならではです。
また、区間ごとに列車名が統一される傾向にある昨今、プラハ・クラクフ間には地域名にちなんだ様々な列車が走っており、旅行を楽しみながら地理や歴史の勉強にもなります。
こうした古き良きヨーロッパ鉄道の魅力は、モダンでシックなライバル、レオエクスプレスにはない魅力です。

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