【大激戦区!どれがおすすめ?】スペインのマドリード~バルセロナの高速列車を比較

ヨーロッパ鉄道

海外旅行先として人気のスペイン。
その二大観光地が首都マドリードとカタルーニャ州のバルセロナです。
この二都市は高速鉄道で結ばれており、最短2時間半と大変便利に移動できます。

さて、マドリード・バルセロナ間には、AVEアベOuigoウィゴ―AVLOアブロiryoイリヨと4種類もの高速列車が運転されている大激戦区です。
そんな状況で、料金以外の差異が分からないという人もいるでしょう。
そこで、(マドリード・バルセロナ間を無駄に2往復して)4種類全ての列車に乗車した私がそれぞれを比較検討し、おすすめの列車も紹介します。

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押さえておきたい前提知識

①格安キャリア2種類とフルサービスキャリアが2種類ある

まず、4種類のブランドは格安キャリアとフルサービスキャリアに分けられることを押さえましょう。
格安がOuigoAVLO、フルサービスがAVEiryoです。

格安キャリアというのは飛行機のLCC(ローコストキャリア)の鉄道版をイメージしてください。
一番大きな違いは持ち込みできる荷物のサイズに制限があり、規定を上回る場合は追加料金が必要なことです。
その分料金はかなり安いです。

一方のフルサービスキャリアは、格安でない普通の新幹線だと思ってください。
予約クラスによっては座席指定に別料金が必要になることもあれば、上級クラスでは食事も料金に含まれていることもあります。

②所要時間は2時間半~3時間、駅・Wi-Fi・コンセント付きも共通

植物園のようなマドリード・アートチャー駅

4つの列車はスピードには差は無く、マドリード・バルセロナ間ノンストップ便は2時間半、途中停車するタイプでも3時間程度です。
同区間の距離は620㎞なので、新幹線よりも速いです。
また、格安キャリアであっても乗り入れる駅はフルサービスキャリアと同じで、マドリード・アートチャー駅とバルセロナ・サンツ駅です。
どの列車を選んでもWi-Fi利用可能で、充電用のコンセントも各座席に付いています。

列車の定時性は極めて良好で、遅れるどころか5分程度速く目的地に到着することの方が多いです。
5分の遅れは誤差範囲とみなされるヨーロッパの鉄道において、スペインの高速鉄道は異例の存在です。

③料金は変動し、早めに予約すると安くなる。

列車のチケットは需給に合わせて変動します。
同じ日でも時間帯によって安い時と高い時があり、同じ列車でも早めに予約するほど安い料金が提示されます。
これは格安・フルサービスともに同じです。
予約できるようになる時期は日本よりかなり早く、数カ月前から可能です。

列車検索の方法は、個々のサイトだとその会社の列車しかヒットしないので、まずはTrainlineのような会社横断的な代理店サイトで調べましょう。
そのまま代理店サイトで予約してもかまいませんが、その場合は手数料が必要になります。

Trainlineで検索した画面
4種類の列車を比較できる

それでは、登場した順にそれぞれの列車について軽く説明していきます。
予約方法や詳細、その他注意点については、各列車の個別記事をご覧ください。

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【親方日の丸】スペイン国鉄の看板列車、AVE

まずはスペイン国鉄が運行する新幹線AVEです。
日本風に表現すれば「親方日の丸」といったところでしょうか。
Alta Velocidad Española(「スペイン高速」の意味)の略字で、かつaveはスペイン語で「鳥」を意味します。

マドリード・バルセロナ間のAVEは、その快適性で知られるドイツ新幹線ICE3をベースにした車両が使われています。
2等車のStandardと1等車のComfortから成り、軽食や飲み物が買える立ち席タイプのバー車両もあります。
特に1等車は重役室のように豪華で、かつ明るい雰囲気です。

同じ一等車でも上位クラスのPremiumは食事が付いて駅のラウンジが使えます。
車両の等級とは別に予約クラスが存在するので、やや分かりづらいシステムです。

バーの車内

全体的な料金は4つのブランドの中で最も高いです。
なお、ユーレイルパスを使って旅行される方は、AVEが唯一の選択肢となります。
その場合、座席予約の追加料金を払って乗ります。
AVE以外の列車にはパスは無効です。

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【薄利多売の権化】オール二階建て格安新幹線、Ouigo

続いて、フランス国鉄の子会社が送り込んだ格安新幹線、Ouigoです。
Ouigoの特徴は何と言ってもその安さにあります。
数週間前の予約で20€前後のチケットが買うのはさほど難しくありません。
格安キャリアなので、大きな荷物を持ち込む場合は追加料金が必要なので気を付けてください。

使用されている車両は、かつて日本でも活躍した「Max」を思わせるオール二階建て車両です。
この巨大な新幹線が2編成併結(機関車を含めると20両になる)して、時速300㎞超でスペインの大地を走ります。

Ouigoは格安ながら、軽食堂車のバー車両があります。
また、1等車と同じ設備の「XLシート」を、7€の座席指定料金だけで利用することができます。
さらに、荷物追加も含まれた「Ouigo Plus」は、基本料金から9€の追加だけでで済むので大変お買い得です。
このように、基本料金の安さに加え、オプション部分の追加料金が良心的なのもOuigoの魅力です。

バー車両

座席を大量供給してコストを下げながら、プラスαの設備も充実させるなど、大型車両のメリットを最大限に生かしている列車です。

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【個性が光る国産車両】安くて快適な格安版AVE、AVLO

スペイン国鉄も隣国フランスからの「資本侵略」に黙っていません。
Ouigo登場の翌月、AVEの格安版、AVLOで対抗します。
日本の通信業界で例えると、AVEがドコモなら、AVLOがahamoということになります(両者のロゴが似ているのは気のせい?)。

スペイン国鉄伝統の車高が低い「タルゴ型」と呼ばれる車両です。
アヒルのような顔に派手な色使いの独特な外観は、ガウディ建築の並ぶバルセロナを観光した後でさえ奇異に感じられます。

AVLOも格安キャリアで荷物の制限あり、料金はOuigoと同じくらい水準といえるでしょう。
しかし、Ouigoと違い車内設備は2等車のみ、バー車両もなく自動販売機があるのみです。
これだけだと「Ouigoの下位互換?」と思われるかもしれませんが、全くそんなことはありません。

AVLOの特徴は安さだけでなく、車内インテリアの良さにもあります。
あのエキセントリックな顔からは想像もつかない、高級感のある内装です。
座席もサイズはそこそこながら、革張りでシックな雰囲気になっています。
また車両長も通常より短いので、個人的に客室も落ち着くサイズだと思います。

格安キャリアとはいえ、「安っぽさ」が感じられません。

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【センス抜群の気さくなイケメン】割安でグルメな電車、iryo

最後に紹介するのは、イタリア資本の電車「フレッチャロッサ(イタリア語で「赤い矢」の意味)」、iryo
フランス・スペイン参入に続いてさらなる飛躍を目指す、今のヨーロッパ高速鉄道界で最も勢いのあるプレーヤーです。
iryoは格安キャリアに近い料金を提示するフルサービスキャリアで、OuigoやAVLOのような荷物の制限はありません。

等級・予約クラスが細分化されており、非常に紛らわしいですが、2等車相当のクラス(2&2列座席配置)と1等車相当クラス(2&1列座席配置)があります。
それに加え、軽食堂車のビストロが連結されています。

ビストロの車内

iryoの特徴は食事に力を入れている点です。
ビストロでは多様なメニューを揃えています。
そして、最上級クラスで提供される食事は、列車内とは思えないくらい洗練されています。

最上級クラスinfinitaの料金に含まれる自席での食事
写真は「スペイン風朝食」

一等車相当クラスでは、マドリード・バルセロナ両駅に近接する関連ホテルのラウンジを利用できます。
同じフルサービスキャリアでも、AVEと違った後発の「非正規軍」ならではのユニークなサービスが随所にみられます。

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おすすめの列車はiryo

快適性料金プラスα要素
AVE
iryo
Ouigo
AVLO×

以上見てきたように、それぞれ多種多様な個性があります。
だからといって、迷っている貴方に対して私は「人それぞれだよね」といった正論で済ますことはしません。
それは他者を尊重している風を装った、無関心・無責任な言葉です。

結論、私の最大公約数的なおすすめはiryoです。
以下その理由を列挙します。

iryoを推す理由①:車両が新しい

iryoに使われる「フレッチャロッサ1000」という赤い電車は、本国イタリアで2015年に営業運転を開始した新しい車両です。
さすがはイタリアと思わせるエレガントなデザインは、外観・インテリアにも生かされています。
もちろんデザインだけでなく、静寂性・快適性も高水準です。

iryoを推す理由②:AVEと比べて安い

比較対象となるフルサービスキャリアのAVEと比べると、iryoの料金は割安です。
だからといってサービス品質に妥協しているわけではないので、「コスパが高い」と表現できると思います。
一番安いinicialクラスは格安キャリアに近いですし、食事付きの最上級クラスinfinitaにアップグレードしてもさほど料金が跳ね上がらないのも良い点です。
いわば、「分厚い中間層」に訴求する戦略だといえるでしょう。

iryoを推す理由③:食事メニューが豊富

iryoがウリにしているのがビストロ「Haizea」です。
本格的な食堂車ではないのですが、スペインバルのように気軽に注文できる軽食が揃っています。
定番の生ハムのサンドイッチや、ワインも数種類あり、他の列車のバーとは一線を画す内容です。
値段もあまり高くありません。
メニューはこちらのページで確認できます。

なお、おすすめを選ぶにあたって列車本数は評価点として考慮しませんでしたが、
多い順にAVE>iryo>Ouigo>AVLO
です。

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協調から対立へ

ヨーロッパの鉄道はこれまで「協調主義」に基づいて運営されてきました。
各国鉄は互いの主権を尊重し、自国で排他的に営業を行い、国際列車も関係国の協力のもと運行されていました。

しかし、オープンアクセス(その国の国鉄以外の事業者でも鉄道運行に参入できるようになること)の進展により、ベルエポックを思わせる「コンサートオブヨーロッパ」は崩れ、対立の時代が到来しました。
マドリード・バルセロナ間の競争は、そうした対立の最前線です。

19世紀~20世紀初頭の協調の終わりは、社会・文化・生命の破壊をもたらしました。
一方、現在ヨーロッパ鉄道界で進行している対立は、健全な競争が行われることで消費者、さらには地球環境(実際に鉄道利用者が大きく増えた)にも大きな恩恵を与えているのです。



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