スペインの高速電車iryo、infinitaの車内や食事などを解説【マドリード~バルセロナ】

ヨーロッパ鉄道

スペインの二大観光地、マドリードとバルセロナを結ぶ鉄道路線は、現在4種類のブランドの高速列車がしのぎを削る大激戦区となっています。
そのうち最も新しく勢いがあるのが、今回紹介するiryo(イリヨ)です。
比較的割安な料金でありながら、車内は快適で食事サービスに力を入れているのが特徴です。

2023年5月、バルセロナからiryoの最上級クラス、Infinita Bistroに乗車した時の様子をご覧に入れます。
マドリード・バルセロナ間の列車の比較については、以下記事をご覧ください。

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マドリード・バルセロナ間の大競争時代

スペインはヨーロッパの高速鉄道大国

2020年、鉄道事業の自由化が欧州最大の高速鉄道路線長を誇るスペインで行われました。
その結果、列車の運行は国鉄のみならず、他の事業者にも開放されます。

この機を待っていたかのように参入したのが、フランス国鉄が送り込んだ格安新幹線Ouigu(ウィゴ―)です。
これにより、国内屈指のドル箱路線、マドリード・バルセロナ間の高速鉄道も、スペイン国鉄の誇る新幹線AVE(アベ)の独占状態は終わりました。
スペイン国鉄もその翌月に子会社の格安列車AVLO(アブロ)を投入し、隣国からの刺客に対抗します。

競争が激しさを増す中、4番目の列車が2022年秋に登場します。
それが、近年あからさまな対外拡張政策を打ち出しているイタリア国鉄が運営するiryo(イリヨ)です。

iryoの特徴は快適性と食事サービス

敢えて自身の車体と同じくらいのレッドオーシャンに飛び込んだiryo。
他の競合するブランドに対する差別化ポイントは3点あります。

iryoの評価点①:車両が新しく快適

iryoに使われる車両はイタリア国内の新幹線でもお馴染みとなった、フレッチャロッサ1000と同じものです。
内装もフレッチャロッサ1000に準じた、スマートで洗練されたものになっています。
センスのある自動車の車内のような感じです。

iryoの評価点②:食事サービスに力を入れている

iryoには座って食事できる本格的な食堂車はありませんが、ビストロで提供されるメニューは広範です。
定番の生ハムのサンドイッチはもちろん、スペインのバルのような食事が揃っています。
国産ワインやビールも数種類あります。

iryoの評価点③:料金が比較的割安

車両が良くて付帯サービスも充実しているなら料金はどうなのかと思うでしょう。
iryoの料金はスペイン国鉄のフルサービスのAVEより全体的に安いです。
なので、かなり競争力のある列車だといえるでしょう。

厳しい荷物制限はない

割安な料金を提供しているiryoですが、荷物持ち込みに関して特に厳しい制限はありません。
大型のスーツケースでも追加料金なしで乗ることができます。

iryoを「格安高速列車」と表記してる日本語メディアが時々ありますが、個人的には誤解を招く表現だと思います。
位置づけとしてはAVEと同じフルサービスブランドです。
ちなみに、10㎏以上のペットについて規定がありますが、日本からスペインに来ている人にはほぼ関係ない内容でしょう。

マドリードからバルセロナの所要時間は2時間30分~45分

マドリード・バルセロナ間の距離は約620㎞。
新幹線だと東京から姫路までの距離です。
二都市間の所要時間はノンストップ便で2時間半、途中サラゴサに停車する便では2時間45分です。
新幹線と比べてもかなり速いことが分かります。
これはiryoだけでなく、他のキャリアでも同じです。

2023年のダイヤだと、iryoは同区間では概ね1時間毎に運転されています。
昨年運転を開始したばかりなのに、だいぶメジャーな存在になりました。
なお、ノンストップ便だからその分料金が高いといった法則はありません。

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iryoの車内・サービス

iryoのクラス分類は複雑で、人によって何種類と表現するかも違ってきます。
実際に座席・車両の種類だけで分類すると4つになります。
覚えておくべきは2等車相当(2+2列座席)と1等車相当(2+1列座席)の車両があり、食事サービスの有無とフレキシブルさによってさらに分かれる、という点です。

 Inicial(2等車)の車内と座席

スペインの高速列車iryoのinicialの車内
inicialの車内

最もベーシックな車両がInicialです。
それでも革張りで光沢の美しい座席で、充電コンセントやWi-Fiを使うことができます。

Singular(2等車)の車内

スペインの高速列車iryoのsingularの車内
singularの車内

同じく2等車に相当するSingular。
車両はInicialと区別されます。
ただ、実際のInicialとの車内設備の差は座席の色くらいしか分かりません。
Inicialとの違いは予約時の制約の緩さで、Singularの方が変更・取り消し手数料が安くなっています。
もっとも、Inicialであっても変更・取り消し不可ではありません。

Singular Only YOU(1等車)の車内

スペインの高速列車iryoのsingular Only YOUの車内
singular Only Youの車内

ここからが1等車の設備になります。
ビストロのある3号車の一部を占め、大型の3列座席が並びます。
このクラス以上になると、バルセロナ・マドリード駅近くの関連ホテルにあるラウンジを利用できます。
詳細はリンク先を参照してください。

Infinita Bistro(食事つき1等車)の車内

スペインの高速列車iryoのInfinitaの車内
Infinitaの車内

最上級クラスがInfinita。
3列座席はSingular Only Youと同じですが、このクラスには自席での飲み物・食事サービスが料金に含まれています。
この列車最大のウリだといえましょう。
食事の内容は後ほど紹介します。

スペインの高速列車iryoのInfinitaの座席
Infinitaの座席

軽食堂車のビストロがある

スペインの高速列車iryoの軽食堂車

3号車の一部はビストロ(軽食堂車)になっています。
写真の男性のように立って飲食するスペースも僅かながらありますが、基本的にカウンターで注文して自席に持ち帰るスタイルです。

前章でも紹介した通り、メニューが豊富なのが特徴です。
メインディッシュよりもサイドメニューが多いので、スペインバルのように気軽に立ち寄れるのも魅力です。
メニューはこちらから確認できます。

このビストロには、バスク語で「風」を意味する「Haizea」という名前がついています。
それにしても、スペイン語ではなく敢えて少数民族言語(しかも政治的にセンシティブな問題)であるバスク語から持ってくるあたりは、「正規軍」のスペイン国鉄に対する挑発に思えてしかたありません。

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乗車記

出発駅では荷物検査あり

日曜日の9時過ぎのバルセロナ・サンツ(Barcelona – Sants)駅
大勢の人で賑わっています。
スペインの高速列車に乗る際は、まず荷物をベルトコンベアーに載せて検査を受けなければなりません。
乗り場に着く前に混雑していて焦りますが、この検査自体はすぐ終わりますし、液体を持ち込むこともできるので、特に気を付けることはありません。

これでコンコースに入ることができました。
列車に乗るためには、ホームへ降りる階段の前で検札を受けます。
私が駅に着いたのは出発30分前でしたが、下の写真の通り既に長蛇の列です。

スマホに保存した二次元コードをスキャンしてもらい、iryoとのご対面です。
フレッチャロッサ1000には去年イタリアで乗ったので、特に目新しさはありません。
地下の暗いホームに赤い車体が映えます。

バルセロナの街並みを後にして、列車はやがて高速線に入ります。
活気のあるカタルーニャの首都は、山腹にだいぶ食い込んでいます。

自席での食事

出発30分後くらいに、自席での食事サービスが始まりました。
これはInfinitaの料金に含まれています。

ポテトオムレツのようなものにスペイン産チーズ、そして主役は何と言っても生ハムです。
車内サービスとは思えないほど健康的で上品な朝食でした。
なお、この時にワインも頼めたのかもしれませんが、この時は飲みませんでした。
下の写真は「スペイン風朝食」で、時間帯によって選択肢・内容は変わります。

スペインの高速列車iryoのInfinitaの食事

【車窓】地中海性気候から赤い大地メセタへ

速さが目立つスペインの高速鉄道ですが、車窓もなかなか見応えがあります。
バルセロナ寄りは地中海性気候らしい、緑に覆われた景色です。

唯一の停車駅、サラゴサ・デリシャス(Zaragoza-Delicias)駅は、大きなホールのような構造です。
サラゴサも美しい古都らしいですが、マドリードとバルセロナの間というロケーションだと観光客からは見過ごされそうです。
日本でいえば名古屋みたいなものでしょうか。

次第に景色はゴツゴツとした、荒々しい岩山が目立つようになります。
植生も減り、南欧というよりも新大陸的な風景が展開します。

ここで、序盤に飲み損ねたワインをビストロで購入。
スペインでワイン選びに迷ったら「とりあえずリオハ」です。
ついでに写真で気になっていた一品を注文。
オリーブ・しし唐と魚の内蔵みたいなものの酢漬けが楊枝に刺さっています。
味は面白いのですが、ワインとのペアリングは失敗しました。

目の前に広がるのは赤茶色をした大地、メセタです。
遥か遠方に辛うじて見える地平線には風車が回っています。

マドリード・アートチャー駅に到着。駅前のラウンジを利用可

定刻に発車して、マドリード・アートチャー(Madrid – Puerta de Atocha)駅に着いたのは予定時刻の5分前。
スペインの高速鉄道の定時性はヨーロッパでは抜群に高く、今回のように遅れるどころか早く着くことが多いです。

前章で述べた通り、一等車に相当するSingular Only YOUとInfinitaでは、マドリードとバルセロナの駅に隣接したホテルにあるラウンジを利用できます。
マドリードのラウンジはOnly YOUホテルにあります。

左側の建物がOnly YOU Hotel

場所はホテルの1階、つまり日本風に表現すると2階です。
コーヒーや紅茶を無料で飲むことができます。
駅の内部とは違った、モダンでファッショナブルな空間です。

今回のチケット代は53€でした。
この速さとクオリティで食事付きであることを考えると、驚異的な安さと言わなければなりません。

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予約方法と費用

予約はiryoのホームページから行うことができます。
しかし、マドリード・バルセロナ間には4種類の高速列車があるので、Trainlineのような会社横断的に使える代理店サイトで比較検討してから予約しましょう。

極めて複雑な予約システム

iryoのクラスはとにかく分かりづらいです。
二等車・一等車で2種類ずつクラスがあり、一等車にはそれぞれフレキシブルなオプション、Abiertaの有無があります。
それをまとめたのが、公式サイトの下の写真です。

公式サイト(https://iryo.eu/en/products)より

クラス名よりも座席・食事・柔軟性を意識しよう

それでは、公式サイトから予約しましょう。
区間や日付を決めて列車検索画面に辿り着きます。

列車とクラスの行列が現れます。
ここで出てくるクラスはInicial,Singular,Infinita Bistroの3種類。
前者2つは二等車でSingularの方が変更・キャンセルの自由度が高いのでした。

では一等車で食事なしはどうするか?
まず、Singular Only YOUを予約する場合、下の写真のようにSingularの部分を選択後、青丸で囲ったところにチェックを入れます。

ところで、「それならSingular Only YOUの横にあるビストロ無しのInfinitaとどう違うのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
正直乗る分には、Singular Only YOUはビストロと同じ3号車で、InfinitaはInfinita Bistroの客と同じ1,2号車、くらいの差でしょう。
とりあえずはクラス名称よりも①座席(二等or一等)、②食事有無、③フレキシブルさの3要素を特に意識しながら進めると良いと思います。

Infinita Bistroでは食事が選べる

今回はInfinita Bistroを予約してみましょう。
紫の丸で囲ったXL SEAT(つまり一等車)とInfinita Bistro(食事つき)が表示されていることを確認です。
さらにフレキシブルなAbiertaは黄色の丸で囲った所にチェックを入れます。
間違って右側のチェックボックスを選択しないように(食事無しになります)。

なお、Infinita Bistroは出発直前(2日前くらいが目安か)では予約できません。
その場合でもBistro無しのInfinitaは選択できます。

次に食事を選びます。
希望するメニューの赤いボタンを押して進みます。
どれを選んでも追加料金はかかりません。

次は乗客情報を入力します。
Nameが苗字、Firstnameが名前です。
ドキュメントは日本国パスポートです。
電話番号は最初の0を除いた部分を入力します。

最後に支払い画面です。
クレジットカードかPayPalで決済します。
審査が緩いカードほど、外国のサイトではエラーになりやすいと聞きます。
幾つか試して、それでも無理ならPayPalを使いましょう。

決済に成功すると、アドレスに二次元バーコード付きチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存しましょう。
お疲れ様でした。

料金がオトクなInfinita Bistroがおすすめ

iryoの費用は全体的に比較対象のAVEよりも安いです。
例えば、1週間前に予約しても、Infinita Bistroで100€を越える列車は少ないです。
Inicialを1カ月くらい前に予約すれば、特に平日は30€前後の料金を見つけるのは簡単です。

iryoの特徴としては、最安のInicialと最上級のInfinita Bistroの価格差が小さいことが挙げられます。
よって、列車の自席で洒落た食事ができるInfinita Bistroは個人的に大変おすすめです。

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イタリアのセンス、スペインの情熱

iryoで活躍するフレッチャロッサ1000は、今欧州の鉄道界で最も勢いのあるプレーヤーです。
お膝元のイタリアのみならず、念願のパリ進出も果たしています。
そして今回、イタリアのデザインセンスに加え、現地スペインの文化も取り入れたiryoという新しいブランドを確立し、増便と路線の拡大を続けています。

パリ・リヨン駅に乗り込んだフレッチャロッサ

フレッチャロッサの野心はとどまることを知らず、ドイツ・オーストリアへの進出も視野に入れているといいます。
ラテン系諸国を舞台に活躍してきたオペレーターが、今後どんなゲルマン民族との混血児を生み出すのか楽しみです。

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