クラクフからプラハへ、レオエクスプレスのプレミアムの乗車記【車内・食事・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

日本人にも人気がある中欧の古都、プラハとクラクフ。
本記事では両都市間を結ぶモダンで快適なレオエクスプレスを紹介します。
特に最上級のプレミアムクラスは、チェコのグランクラスとも言うべき、ヨーロッパでも屈指の豪華さといっても過言ではありません。

2023年5月下旬、クラクフからプラハまで、レオエクスプレスのプレミアムクラスで移動しました。

スポンサーリンク

レオエクスプレスは低価格・高品質の電車特急

チェコで二番目の民間鉄道会社

近年のヨーロッパ鉄道界では、列車運行権をその国の国鉄以外にも開放する「オープンアクセス」が進んでいます。
例えば東海道新幹線であれば、JR東海以外の民間企業や外国の国鉄も独自の列車を走らせるという事例が増えています。

30年前まで社会主義をやっていたチェコは、今やオープンアクセスの先進国となっています。
レギオジェット(Regiojet)に続き、2012年より第二の民間オペレーターのレオエクスプレス(LeoExpress)が運行を開始しました。
チェコ国内線から始まり、現在レオエクスプレスはプラハを拠点にコシツェ(スロバキア東部)やクラクフ(ポーランド南部)といった国際路線も展開しています。

レオエクスプレスの特徴は、チェコ国鉄と同等かそれ以下の価格を維持しながら、高品質のサービスを提供している点です。
車両も中古ではなく、自社で発注したものです。
車両自体はどこにでも走っている汎用電車ですが、塗装・内装・客室は独自のシックなスタイルに仕上がっています。

週3日運転、所要時間は7時間弱

プラハ・クラクフ間のレオエクスプレスは週3日、1日1便運転されています。
プラハ発は木・金・日曜日運転、昼過ぎにプラハを出発してクラクフに着くのは深夜になります。
クラクフ発は月・金・土曜日運転、早朝にクラクフを発ちプラハに昼頃着きます。
予約後も含め、時刻は頻繁に変更になるので公式サイトやメールをよく確認しましょう。

クラクフ中央駅

プラハ・クラクフ間の所要時間は、6時間半~7時間弱です。
両都市間の距離は525㎞程度で、レオエクスプレスの最高速度が時速160㎞な割には時間がかかります。
国境付近は山がちで、国境駅では長時間停車するのが要因です。

スポンサーリンク

レオエクスプレスの車内・食事サービス

レオエクスプレスにはエコノミー・エコノミープラス・ビジネス・プレミアムの4種類のクラスがあります。
どのクラスでもWi-Fi・コンセントが使えます。

食堂車・ビュフェはありませんが、車内販売のメニューは豊富です。
以下で記載した食事サービスは、プラハ・クラクフ間に該当する内容です。
同じクラスでも距離によって異なるので、詳しくはこちらをご覧ください。
リンク先のページの下の方で、それぞれのクラスでの距離別のサービス内容が確認できます。

エコノミーの車内と座席

レオエクスプレスのエコノミーの車内
エコノミーの車内

もっとも標準的なクラスで、通常で言うところの二等車がエコノミーです。
オープンサロンタイプ(コンパートメントではない通常の客室)で、ボックスシートもあまり多くありません。

レオエクスプレスのエコノミーの座席
エコノミーの座席

エコノミーには食事・飲み物のサービスは含まれていません。

エコノミープラスの車内と座席

レオエクスプレスのエコノミープラスの車内
エコノミープラスの車内

エコノミープラスは次に紹介するビジネスと車内はほぼ同じです。
通路を隔てて2&1列の座席配置で、一等車に相当するクラスです。
革張りの座席で高級感が増し、内装もエコノミーと比べて上質になっています。

レオエクスプレスのエコノミープラスの座席
エコノミープラスの座席

このクラスでは、エコノミープラスメニュー(軽食またはデザート)から一品と、ソフトドリンク2杯がチケット代金に含まれています。

ビジネスの車内と座席

ビジネスの車内

ビジネスはエコノミープラスと座席は同じですが、エコノミープラスよりやや広いそうです。
一番大きな違いは車内の静寂性です。
エコノミープラスがエコノミーの客室の隣で仕切りも無いのに対して、ビジネスの客室はデッキで仕切られています。

このクラスでは、ビジネスメニュー(エコノミープラスより若干選択肢が多い)から一品と、ソフトドリンク4杯が無料になります。

プレミアムの車内と座席

レオエクスプレスのプレミアムの車内
プレミアムの車内

僅か6席しかないプレミアムは、大型の電動リクライニングシートを備えた特等車です。
レッグレストも付いているので、長時間乗車でも快適に過ごすことができます。
日本の新幹線のグランクラスに近い座席です。

レオエクスプレスのプレミアムの座席
プレミアムの座席

照明は控えめで、特にトンネルや夜間ではとてもシックな雰囲気になります。

プレミアムの車内

プレミアムのサービスはかなり充実しています。
まずソフトドリンクは制限なし、アルコール飲料も2杯まで無料です。
そして食事1品(朝食・軽食・メインいずれからも選択可)とデザート、さらにビジネスメニューからもう一品がチケット代金に含まれています。

スポンサーリンク

乗車記:ポーランドからチェコへ

ポーランドからチェコにかけてシレジアの炭鉱地帯

早朝のクラクフ中央駅(Krakow Glowny)はまだ人もまばらでした。
出発20分前でもレオエクスプレスは入線していましたが、あいにく準備中で乗車できず。
早く乗りたくてウズウズしていたのは私だけではありませんでした。
発車10分前にようやく扉が開きました。

私が予約したのは最上級プレミアムの独立した座席です。
贅沢な電動リクライニングシートのボタンを操作しながら、リラックスできるポジションを整えていると、6:05に列車が動き出しました。

この日のプレミアムの乗客は二人で、通路の向こうに30代くらいの女性がいました。
「メニューに載っている食事は無料ですよ」と私が教えると、とても嬉しそうにしていました。

しばし開幕の興奮に浸りながら、平坦で平凡な車窓を眺めます。
やがてクルーが来て朝食を勧めるので、「イングリッシュブレックファスト」を頼みます。
早朝の食事にしては充分過ぎるボリュームでした。
なお、注文をしていると登録したメールアドレスにレオエクスプレスから請求書が時々届きます。
チケットに含まれている範囲内なら、金額は0になっているので安心してください。

やがて景色がパッとしない炭鉱地域となり、工場をあちこちで見かけます。
駅を通過する度に石炭を積んだ貨車が並び、黒ずんだディーゼル機関車が荒々しく息をしています。
昭和中期の筑豊本線や室蘭本線もこんな感じだったのでしょうか?

現在のチェコ・ポーランドにまたがるシレジア(英語名)地方は、かつてオーストリアのマリア・テレジアとプロイセンのフリードリヒ2世がその領有をめぐり何度も争った土地です。
19世紀以降は炭鉱・鉄鋼業が栄え、ドイツ(当時)屈指の産業地域でもありました。

チェコとの国境を越えるとボフミーン駅(Bohumin)に到着。
周辺国からの列車が集まる交通の要衝です。

その後すぐにオストラバ中央駅(Ostrava hlavni)に到着。
オストラバはチェコ第三の都市で、ボヘミア(チェコ西部)でもモラビア(チェコ東部)でもなく、シレジア(チェコでは僅かな面積)に位置します。
やはりここも工業都市で、町はずれにある工場廃墟は殺風景を極めてもはや芸術と言えます。
石炭・産業遺産・廃墟…、これらの言葉に心揺すられる貴方には必見のスポットです。

モラビア・ボヘミアの田園風景

これまで炭鉱地域を走って来たので、モラビア地方の牧歌的な田園風景に心和みます。
この機会に、そろそろアルコール1杯目をいただきましょう。
「スタロプラメン」はプラハで造っているビールです。

プレミアムクラスの客室や座席の写真を撮っていると、隣の女性が「写真撮りましょうか?」と声を掛けてきたので、丁重に断りました。
その後「中国人ですか?」と100%予想された質問がありました。
なお、彼女はアブダビ在住のインド人とのこと。

さて、今まで順調に走って来た列車は、少し遅延している模様。
まあ、プレミアムに長く乗っていられるので結構なことです。
ボヘミア地方に来ると、森林が目立つようになります。

担当のクルーはとても感じが良い若い男性で、適切な頻度で「何か注文はありますか?」と声を掛けてくれます。
レオエクスプレスは車内設備のみならずホスピタリティも大変良い印象です。

遅れはさらに拡大するとのこと。
前の駅で抜かれた国鉄の「スーパーシティ」に追いつきました。
両者ともしばらく停車した後、スーパーシティを先に通します。
ダイヤはかなり乱れているようです。

チェコ国鉄が運行する「スーパーシティ」

あまりに遅れるとプラハ観光に支障が出ますが、国民劇場のオペラ(ドボルザークの「アルミダ」)に間に合えば良いので、白ワインを飲みながらリラックスします。

2杯目のアルコール白ワイン(リースリング)

車内サービスはコリン駅まで

プラハまで30分程度のコリン駅(Kolin)で食事サービスが終了します。
せっかくなので、最後にデザートのチーズケーキを頼みました。

結局1時間遅れでプラハ本駅(Praha hlavni)に到着。
駅の手前では右手前方に、二本の塔を持つティーン教会とプラハ城が見えます。
スメタナ作曲の「モルダウ」と同様に、華々しいフィナーレで7時間半(遅れ含む)の充実した旅を終えます。

民間オペレーターゆえに冷遇されているのか、プラハ本駅の隅っこのホームに遠慮がちに停車しました。

スポンサーリンク

予約方法と費用

予約はレオエクスプレスの公式サイトから行うことができます。
以下、そのやり方を写真付きで解説します。
レオエクスレスの予約はシンプルで簡単です。

長距離ならプレミアムがおすすめ

トップページにアクセスし、発着地(都市名)・日付・人数を選択して検索します。
プラハ・クラクフ間のレオエクスプレスが運転されていない日は、オストラバでバスに乗り換えるルートが現れるので注意してください。
プラハ市内ではプラハ本駅とLiben駅に停車します。
以降、オレンジ色のボタンを押下して予約を進めていきます。

4種類のクラスから選択します。
もしかすると、前の章の乗車記を読んで「プレミアムはさぞかし値が張るだろう」と思った方もいらっしゃるでしょう。
ところがご覧の通り、500㎞以上の距離を贅沢に移動しているにもかかわらず、プレミアムでも77.8€(≒12,000円)です。
なお、チケットの変更はできませんが、出発15分前までキャンセルは可能です。

上の写真は1週間後の結果を照会したもので、早めに予約するとさらに安くなります。
ちなみに、私が2カ月前に予約した時の費用はプレミアムがたったの54.1€!
その時のエコノミーは25€でした。
概ねプレミアムはエコノミーの2倍くらいの値段です。
付加価値と価格差を考慮すると、特に長距離路線のプレミアムは大変おすすめです。

座席表から選択可能

次に、個人情報(メールアドレスと電話番号)を入力します。
電話番号はデフォルトでイギリス国旗になっているので、日本の国番号を選択して最初の0を除いた電話番号を入れます。
座席は自動的に割り振られますが、赤丸で囲った”CHOOSE”を押すと、シートマップから座席を選ぶことができます。
追加料金は必要ありません。

オレンジ色が現在選択中の座席。
緑の座席から選び直すことができる。

ここで、公式サイトでもおすすめされているエコノミープラスについて補足しておきます。
車内紹介の章でも触れた客室のビジネスとの違いについて、下の座席表を見ると分かりやすいと思います。
エコノミープラスとエコノミーを隔てているのは、乗車扉付近の空間とトイレのみです。
チェコ国内線ならエコノミープラスが良いと思います。
座席は同じでも、ビジネスは客室がデッキで仕切られているので、空間としては落ち着いています。

最後にクレジットカードかPayPalで支払いです。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

スポンサーリンク

孤高のクールガイ

その高品質なサービスにもかかわらず、レオエクスプレスの日本での知名度は高いとは言えません。
チェコ国内路線ではなじみ深い地方の観光地を経由せず、プラハ・クラクフ間は本数が少なく時間帯も良好ではないため、乗車する機会が限られているのは確かです。
しかし、それでも両都市をプレミアムクラスで移動する価値は十分にあります。

レオエクスプレスのように、勢力は小さくとも個性的な列車がヨーロッパには幾つもあります。
こうした会社が拡大することで、さらに鉄道業界全体が盛り上がることが期待されます。

コメント

  1. まや より:

    8月後半にクラクフからプラハへの移動で悩んでいたところ、貴殿様のこちらに出会いました。とても参考になり、無事、プレミアムクラスで発券することができましたよー。ありがとうございます。といっても、まだチケットがメールで送られてきておらず、とりあえず、決済が済みましたメールだけです。予約の際、面白いことに気付きました。プレミアムクラス2名合計117.4ユーロで、初めに予約しようと進めたところ、途中で日付が間違ってないか不安になり、やり直したところ、1名しか残席がないとの表示に変わり、諦めきれずに、数回試したところ、次は売り切れ表示、なら、ビジネスクラスでと予約を進めるも、また日付が不安になり最初に戻したところ、なんと、プレミアムクラスが2名分復活。それではと、やり直ししなければいいのに、また途中で日付が心配になり戻したら、次は、値段が倍以上に。試しに何回かやってみると、コロコロ値段が変わり、粘って、最安値になるまで繰り返し、無事、クレジットカードで切ることができました。コロコロ値段が変わるので、座席を選ぶ操作を繰り返してみることをお勧めします。残席や値段は、数分おきにコロコロ変わらようです。まだ、チケットが送られてきてないのが少し不安ですが、この度は、ジャストタイムな情報をありがとうございました。

    • masaki より:

      まや様、コメントと体験談ありがとうございます。
      予約の途中で元に戻っても、予約システム上すぐに反映されていなかった可能性がありますね。
      もともとプレミアムは座席数が少ないので、残席や安いチケットが無くなったのかもしれません。

      ところで、決済完了メールの直後にチケットが添付されたメールが届くはずなのですが、一度問い合わせされてみては?

      • まや より:

        心配になり、チャットで問い合わせましたが、すぐ、応答があり、無事、送られてきました。なかなかしっかりした鉄道会社ですね。
        座席の指定をみると、クラクフからプラハって、後ろ向きに進行する形でしょうか?少し、心配ですが、楽しみの方が大きいです。ほんとうに、楽しみが増えました。ありがとうございます。

        • masaki より:

          進行方向はチェコに入国後、少ししてから変わったように記憶しています。
          とにかく、お役に立てて良かったです。良いご旅行を!

  2. S.K. より:

    9月に中欧ヨーロッパを旅行するつもりなので、こちらの記事を参考に読ませていただきました。クラクフ中央駅からLeo expressの電車に乗って直接プラハの駅まで移動可能なのでしょうか?あと、記憶にございましたら乗り場のプラットフォーム番号を教えていただけると幸いです!

    • masaki より:

      S.K.様、こんばんは。
      仰る通り、クラクフ中央駅からプラハ本駅までレオエクスプレスが直通しています。ただし毎日運行ではないので、そこは要注意ですね。
      あいにくプラットホームまでは覚えておりません。駅に行けば電光掲示板があるのでそこで分かると思いますよ。

      • S.K. より:

        返信ありがとうございます。了解です!ネットでチケットを購入している場合は、当日は直接leo expressの列車に乗ればよろしいでしょうか?改札口などで乗車前の手続きなどを済ます必要がありましたら知りたいです。質問が多くて申し訳ございません。

        • masaki より:

          基本的にヨーロッパの鉄道には改札口がありません。
          事前の手続等も無いので、そのままホームに行って列車に乗って大丈夫です。

  3. S.K. より:

    了解です。ありがとうございました

タイトルとURLをコピーしました