オーストリアの首都ウィーンを中心に各都市へ乗り入れているレイルジェット。
国内のみならず周辺諸国への移動にも欠かせない存在です。
レイルジェットには3つのクラスがあり、その最上級が今回紹介するビジネスクラスです。
適切な座席を選べば、一人利用でもまるで個室感覚で快適な旅をすることができます。
本記事ではビジネスクラスの車内・座席やサービス内容、それから予約時の座席を選ぶポイントについて解説していきます。
なお、レイルジェット全般の内容については、以下の記事をご覧ください。
【車内と座席】ビジネスクラスには2種類ある
まず、レイルジェットのビジネスには2種類のレイアウトがあります。
路線ごとに使い分けられているので、乗車する区間によってどちらのタイプなのかが分かります。
プラハ~ウィーン~グラーツは狭いビジネスクラス
ベルリン~プラハ~ウィーン~グラーツ~ヴェネツィアのルートでは、ファーストクラス(普通の一等車)とさほど変わらない、狭いビジネスクラスの車両が使われています。
ビジネスクラスを占めるのは先頭車両のほんの一部、通路を挟んで座席が1つずつ3列並ぶ、僅か6席だけのエリアです。
ファーストクラスとの仕切りも無いので、ただのバリアフリー対応座席かと思って見過ごしてしまいそうです。
ファーストの座席から撮影
座席自体はレッグレストも付いていて、ファーストクラスよりも快適なものが使用されています。
また、座席の間隔もかなりゆったりしています。
ブダペスト~ミュンヘン・チューリヒは広いビジネスクラス
ブダペスト~ウィーン~ミュンヘンまたはチューリヒで運行されているレイルジェットは、より広くより豪華なビジネスクラスとなっています。
こちらは先頭車両の半分以上を占め、合計で16席あります。
片側が通路で3または4つ座席が並ぶ簡易コンパートメント式の車内です。
「簡易コンパートメント」と表現したのは個室のドアは無いためです。
同じ車両にあるファーストの客室とはドアで仕切られているので、特別クラス感が十分に味わえます。
次の乗車記の章で紹介しているのも、こちらのビジネスクラスです。
さて、コンパートメントタイプと聞いてがっかりしたソロトラベラー諸君に朗報です。
客室の端(ファーストとの仕切りドア近く)には、通路を隔てて1つずつ独立した座席があります。
前の座席とは仕切りがあるので、この2つの座席はまるで1人用個室感覚で利用することができます。
とりあえず、南北方向に走るレイルジェットは狭いビジネスクラス、東西方向に走るレイルジェットは広いビジネスクラスと覚えておきましょう。
ビジネス利用客はドリンクが1杯無料
ビジネスクラスの特典として、食堂車のメニューの中から飲み物が1杯無料でサービスされます。
これにはアルコールも含まれます。
一応、オーストリアを含む区間に乗車する場合という条件があります。
また、プラハ~ウィーンで運行されているチェコ国鉄の青いレイルジェットでは、50チェココルナ(≒300円)分の食堂車用バウチャーもチェコ領内で利用できるようです。
【乗車記】オーストリア=ハンガリー二重帝国の首都を結ぶ
6月初旬のブダペストの昼間の気温は30度近くまで上がりました。
強い日差しを浴びながら王宮の丘を上り下りし、昼過ぎにはすっかり体力を消耗しました。
帰り際、王宮の正面にはオーストリアの将軍、プリンツ・オイゲンの騎馬像を見つけました。
ハンガリーの文化的中枢ともいえるこの場所に意外な人物だなと思いますが、異教徒トルコとの戦争で活躍したためでしょう。
ブダペストからウィーンへの列車旅の前座としては、上々の景気づけとなりました。
さて、壮麗なブダペスト東(Budapest-keleti)駅を17時40分に発車するレイルジェットでウィーンまで行きます。
この二都市間の所要時間は2時間半程度です。
ブダペストはレイルジェットの始発駅で、20分くらい前には既に入線済みでした。
今回乗るのは最上級のビジネスクラス。
最後尾の車両(つまりホームの行き止まり近く)でした。
ビジネスクラスが占めるのはこの車両の半分強です。
残りのファーストの客室との間にはドアがあるので、両クラスは完全に分離されています。
ドアを通ってビジネスクラスの客室へ。
嬉しくなる導入演出です。
私が予約したのはコンパートメント部分ではなく、端の独立した座席です。
ドアこそありませんが、前後は完全に仕切られていて、居心地は最高です。
なお、この座席はブダペスト方向を向いているので、ブダペスト発の便だと進行方向とは逆向きになります。
ブダペスト市街地をしばらく走った後、ドナウ川を渡ります。
ブダペストの街並みは、プラハ・ウィーンのような非の打ち所がない「着飾った美しさ」ではなく、やや清潔感に欠けるところはあっても直情的な美的感覚を感じます。
丁寧で愛想の良いチェコ人と、良くも悪くも裏表のないハンガリー人の気質の違いに通じるものがあります。
通路を隔てた隣の席にはスーツを着た女性がいました。
犬を入れた大きなカバンを持っていました。
たまにキュンキュン鳴くだけで、よく躾されています。
ビジネスクラスに乗る犬は、エコノミークラスで大声で騒ぐ連中よりもはるかに利口です。
前の簡易コンパートメントでも男性が数人集まって、パソコンを叩きながら話し合っています。
食堂車から持って来させたコーヒーカップの音が響きます。
まるで重役の会議室のような雰囲気です。
ブダペスト・ウィーン間の車窓は単調で、特に見所らしいものもありません。
途中で停車するGyőrは比較的大きな街です。
2014年6月
ビジネスクラスの乗客は飲み物が1杯無料になりますが、スタッフは特にそのことについて言ってきません。
心配になって後で聞こうと思ってメニューを見ていると、利口な犬を連れた隣の女性が「食堂車は後ろにある。ウィーンまで行くなら飲み物が無料だ。」と教えてくれました。
早速食堂車へ行き、ヴァイツェンビール、Edelweissとシュニッツェル(薄く伸ばしたトンカツ)サンドを注文。
まずビールだけもらって、その後にスタッフがシュニッツェルを持って来てくれました。
オーストリア最高の列車で、オーストリアを代表する郷土料理と地ビールを頂きましょう。
特にさしたる自然障壁も無く、オーストリアに入国。
もちろんビールの最初の一口を含んだ時点で、私の心は既にオーストリアです。
20時を過ぎてようやく日が暮れてきました。
時間どおりにウィーン中央駅(Wien Hbf)に到着。
ここで乗客はほぼ入れ替わります。
一等車の乗客(つまりファーストとビジネスの乗客)は、割引料金であってもOBBラウンジを利用できます。
コーヒー・ジュース等が無料で飲め、Wi-Fi・コンセント・トイレ付の非常に役に立つ施設です。
予約方法や費用
予約はOBBのサイトから行うことができます。
これからビジネスクラスを予約していきましょう。
料金カテゴリーとクラスによって価格が決まる
トップページから区間・日付・人数を入力します。
Find SebviceからOne-way ticketを選択します。
列車を選択してからが本番です。
まず、料金カテゴリー(チケットの柔軟性)とクラスを決めます。
デフォルトのエコノミークラスでは選択可能でも、上級クラスではSparschieneなどの割引料金が選べないことがあります。
ビジネスクラスはファーストクラスから15€追加で利用できます。
ファーストクラスでは3€かかる座席予約は既に含まれているので、実質の差額は12€です。
特に広いビジネスクラスの場合、この差額はとても魅力的だと思います。
座席選択画面は分かりづらいですが、下の写真の赤丸のRESERVATION DETAILSからできます。
座席表から選択可。おすすめ座席は55番か51番
シートマップ(座席表)が現れました。
ビジネスクラスはブダペスト寄りの先頭車の半分程度です。
1人利用でおすすめの席は、座席番号55、または51です。
乗車記の章で私が利用したのが55番で、こちらの方がやや広々としています。
シートマップから分かる通り、簡易コンパートメントでも座席は千鳥配置になっているので、定員以下の人数で相席になってもそこまで気にならないと思います。
座席を選択したらバスケットに追加します。
最後に名前とメールアドレスを入力して支払い画面です。
決済成功したらアドレスにチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存しましょう。
お疲れ様でした。
オーストリアのフラッグシップトレイン
オーストリアには新幹線のように時速300㎞超で走る列車はありません。
しかしオーストリア国鉄は、その車両の質の高さや定時性の良さでは、ヨーロッパでも高い評価を得ています。
そんな鉄道会社の最上位の列車の最高クラスは、乗車記からも察していただけた通り、実に心地の良いものでした。
たった2時間半の乗車でオーストリアを満喫した気持ちになった私は、何の罪悪感もなく2時間後に発車するワルシャワ行き夜行列車「ショパン」号でウィーンを後にすることができたのです。
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