【ウィーン・プラハ間の鉄道】レイルジェットとレギオジェットの違いと比較

ドイツ・オーストリア・中欧

中欧を代表する観光都市、ウィーンとプラハ。
この両都市間の移動は鉄道が快適で便利です。

ウィーン・プラハ間にはレイルジェットレギオジェットという、二つの競合する列車が走っています。
美しい街を観光する代わりに、乗り比べをするためだけに丸1日使ってウィーン・プラハ間を往復した私が、「名前も似ているしどちらに乗るべきか分からない」という貴方のために両列車を比較検討します。

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国鉄系レイルジェットVS民間レギオジェット

まずは両列車について軽く紹介します。

レイルジェット(railjet)はオーストリア・チェコの両国鉄が運行する列車です。
オーストリア国鉄が周辺国に走らせている列車のブランドですが、ウィーン・プラハ間のレイルジェットはチェコ国鉄の保有する青い車両が大半です。
編成はエコノミー(二等車)・ファースト(一等車)・ビジネス(特等車)そして食堂車から成ります。
2時間毎に1日7往復が設定されています。

もう一方のレギオジェット(regiojet)は、高速バス事業で成功したスチューデント・エージェンシー社を親会社とした、チェコの新規参入民間オペレーターです。
バスと同じ黄色の車体が目を引きます。
こちらの編成はローコスト(二等-α)・スタンダード(二等車)・リラックス(一等車)・ビジネス(特等車)で、食堂車・バーの設備はありません。
1日4往復と、運転本数はレイルジェットより少ないです。

なお、クラスの呼称が異なるため、以降は二等車・一等車という呼び方で統一します。

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共通点:所要時間は4時間、Wi-Fi・コンセント完備

まずは共通点から述べていきましょう。
レイルジェットもレギオジェットも所要時間は約4時間で同じです。
全車両でWi-Fi・充電用コンセントが利用できます。

二等車が通路を隔てて2&2列、一等車が2&1列配置の座席なのも変わりません。

発着する駅はウィーン中央駅(Wien Hbf)とプラハ本駅(Praha hlavni)で、途中の経路も同じです。
レギオジェットでは英語風にPrague MS(メインステーション)と表記していますが、プラハ本駅のことを言っています。
列車の定時性はヨーロッパの中ではかなり良い方だと思います。

よって、両者はハイレベルで互角なスペックを有しています。
そこで、以下では敢えて両者の違いに着目して比較しながら、読者の皆さんが自身の価値観に基づいて決めるための判断材料を提供したいと思います。

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費用の安さ→レギオジェットに軍配

まずは分かりやすい料金から。
この点ではレギオジェットの方が全体的に(必ずではない)安いです。

レイルジェットも1カ月以上前に予約すればかなり安くはなりますが、レギオジェットは出発日近くになっても料金の上がり方がマイルドです。
レイルジェットは特等以外は座席予約をする場合に3€追加料金が必要になります。
一方、レギオジェットの場合は料金に座席指定が含まれています。

また、レギオジェットの料金体系は、等級間の価格差が小さいことも特筆されます。
そのため、もともと安い二等車の料金から、わずかな追加費用でアップグレードすることができます。
なお、レギオジェットは所謂「格安キャリア」ではないので、厳格な荷物持ち込み制限はないので安心してください。

安さを強調するレギオジェットの広告
商売敵の拠点、ウィーン中央駅にて

それからチケット以外の料金では、車内販売の値段もレギオジェットはとても安いです。
ビールが1€、機内食タイプの食事も3~4€程度と、スーパーマーケットのような値段で販売されています。

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快適性→レイルジェットが若干優勢

次に、座席の質や車両の揺れ等の乗り心地について比較します。
結論から述べると、レイルジェットに軍配が上がります。

まず、車内のアコモデーションに関しては、ほとんど差がありません。
どちらも一等車は横3列の革張り座席、二等車のスタイリッシュな横4列座席(レギオジェットには6人用コンパートメントもあり。選択可。)です。
レギオジェットだけにある二等-αのローコストは、スタンダードと価格がほぼ同じで、長時間乗車には向かないので除外します。(つまりレギオジェットではスタンダード以上に乗りましょう)

それぞれの個性が出るのが特等車で、レギオジェットは4人用の贅沢なコンパートメント、レイルジェットは通路を挟んで1&1列の座席配置です。
どちらもウェルカムドリンクとしてアルコールが提供されます。

走っている時の乗り心地はレイルジェットが勝りま
レギオジェットは、オーストリア国鉄で使われていた古い車両をリニューアルして走らせています。
いわば、「元国鉄軍の寝返り反乱部隊」というわけです。
一方で「ハプスブルク帝国正規軍」のレイルジェットは、時速230㎞運転(ウィーン・プラハ間では時速160㎞まで)も可能な新型車両なので、この辺のスペックの差が乗り心地にも表れているものと思われます。

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人的・供食サービス→レイルジェットが明らかに優位

続いては、乗車中に提供されるサービスについて。
この点は勝者は明らかで、食堂車があるレイルジェットです。

ウィーン・プラハ間のレイルジェットの食堂車
レイルジェットの食堂車

ウェイターが持ってきた食事を席に座って食べることができる本格的な食堂車は、ヨーロッパ鉄道旅行の醍醐味といえましょう。
新幹線でホットコーヒーの車内販売が再開されたことを、イエス・キリストの復活劇のごとく喜ばなければならない我々日本人にとってはなおさらです。

チェコはビールのみならず白ワインも美味

レギオジェットでも車内販売でカレーや寿司(というか”sushi”)などを買うことができますが、これらは機内食スタイルのものです。
またサービスは車掌が業務の傍ら行うので全体的に人手不足で、なかなか彼らを呼び止めづらいと感じました。

レイルジェットの食堂車では料理は皿に盛られ、飲み物にも適切なグラスが付いています。
また一等車以上のクラスでは、食堂車のスタッフが注文した品を自席に届けてくれます。
最後に酒好きには重要なことを書きますが、レイルジェットではあの「ピルスナーウルケル」(我々が普段飲む黄金色の透明なスタイルのビールの元祖)の生ビールが飲めます。
ビール好きは迷わずレイルジェットを選びましょう。

日本のビールと違って、キンキンに冷えすぎていないのもポイント

さて、本章ではレイルジェットを誉めちぎってきましたが、一点だけレギオジェットをフォローさせてください。
レギオジェットでは二等車以上のクラスに、水とコーヒーが無料でサービスされます。
レイルジェットは水だけなので、無料サービスだけで比較するとレギオジェットに軍配が上がります。
よって、「食事も酒も不要。コーヒーが一杯あれば十分」という方は、レギオジェットが魅力的な選択肢でしょう。

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ラウンジ→OBBラウンジを使えるレイルジェットが有利

最後に意外と気になる駅のラウンジについて。
レイルジェットはウィーン中央駅ではOBB(オーストリア国鉄)ラウンジ、プラハ本駅ではCD(チェコ国鉄)ラウンジを使うことができます。
レギオジェットは両駅ともレギオジェット専用のラウンジを利用します。

プラハ本駅のラウンジは両者で大した差はありません。
どちらもコーヒーのサービスがあり、トイレは無しです。
CDラウンジを利用するには、レイルジェットの一等のチケットまたは二等の座席指定券が必要です。

ウィーン中央駅では、レイルジェットの一等車乗客がアクセスできるOBBラウンジの利用価値が高いです。
コーヒー以外にオレンジ・アップルジュースなどのソフトドリンク、時間帯によってはクロワッサンもあります。
しかも、Wi-Fi・コンセント・トイレが揃った完全なるセーフティーゾーンです。
出発する時も到着する時も両方使えます。
ただし、一等車の乗客限定なので気を付けてください。

ウィーン中央駅のOBBラウンジ

レギオジェットのウィーン中央駅のラウンジにもトイレが付いています。
こちらはウィーンが出発地の時のみ利用できます。

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結論:レイルジェットの方が全体的に良い

以上、両者は実力伯仲とはいえ、相対評価で表現すると、「レイルジェットは料金が高くてサービスレベルも高く、レギオジェットは料金が安くてサービスは簡略化されている」となります。
どちらか選べと言われたら、私ならレイルジェットをおすすめします。
しかし、付加サービス部分(食堂車・ラウンジなど)に価格差ほどの価値を感じない人にとってはレギオジェットの方が良いでしょう。

最後に繰り返しますが、どちらを選んでも正解です。
中欧諸国に君臨するレイルジェットに乗って、ハプスブルク帝国に思いを馳せるもよし。
活発な競争を促すレギオジェットに乗って、すっかり西欧の自由経済に慣れた旧東欧のチェコの変貌ぶりに感心するもよしです。


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