ハンガリーのブダペストからトカイへ、インターシティのプレミアムクラスに乗る【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

日本ではあまり馴染みがありませんが、ハンガリーはヨーロッパでも屈指のワイン大国です。
そんなハンガリーの中で、最も名高い産地が貴腐ワイン(甘口の高級白ワイン)で知られるトカイ(Tokaj)
首都ブダペストからトカイへは、ハンガリー鉄道の特急列車インターシティ「トカイ」号で日帰りすることも可能です。

2023年5月末、ブダペストからトカイまでインターシティで最上位クラスのプレミアムクラスに乗車しました。

スポンサーリンク

ブダペストからトカイまで2時間40分

ハンガリー国内には首都ブダペストを中心に各都市へインターシティ(特急列車)が運行されています。
ブダペストからトカイに行くインターシティには「トカイ」という列車名がついています。
なお「インターシティ」は日本だと特急列車に相当します。

「トカイ」号の運転経路は非常に興味深いものとなっていて、始発がブダペスト、そして終着もブダペストなのです。
ブダペスト東駅を発車した列車はミシュコルツ・トカイ・デブレツェンなどを経由して、最後はブダペスト西駅に戻ってきます。
日本で言えば東京から東海道線で名古屋まで行き、今度は中央線経由で新宿に着く感じです。

観光客にとってハンガリーの地方都市は南部のペーチやセケドが有名で、「トカイ」号の経由する都市は馴染みが無いと思います。
しかし、デブレツェンは国内で人口が第二の都市で、ミシュコルツも国内有数の工業都市です。
つまりインターシティ「トカイ」号は、ハンガリーの経済にとって屋台骨となる都市を巡る、非常に重要な列車ということがいえます。

行先票

トカイまではブダペスト東駅から発車する便が近回りで、所要時間はおよそ2時間40分です。
距離が約240㎞なので、日本の特急と同じくらいの速さです。
基本的に1時間毎のパターンダイヤ(一定間隔で運行されるダイヤ)で運転されています。

スポンサーリンク

インターシティ「トカイ」号の車内

二等車・一等車、そしてさらに上のプレミアムクラスがあります。
また、小さな売店のカフェテリアがあります。

二等車の車内と座席

ハンガリーのインターシティの二等車の車内
二等車の車内

二等車の客室は全てオープンサロン式で、コンパートメントはありません。
向かい合わせになった座席が多いです。

ハンガリーのインターシティの二等車の座席
二等車の座席

一等車の車内と座席

ハンガリーのインターシティの一等車の車内
一等車の車内

一等車は通路を隔てて2&1列です。
車内の雰囲気はシックな感じですが、座席の快適さは二等車とさほど変わらないと思います。

ハンガリーのインターシティの一等車の座席
一等車の座席

一等車にはコンパートメントが2部屋だけあります。
座席が3つずつ向かい合う6人用です。

プレミアムクラスの車内と座席

ハンガリーのインターシティのプレミアムクラスの車内
プレミアムクラス

最近になって導入された、一等車のさらに上をいくプレミアムクラス。
こちらはコンパートメント式で、4席の部屋が2つだけあります。
さすがに横の座席との間隔が広く、向かい合う座席も正面からずれた位置にあるので、他人がいてもあまり気にならないと思います。

レッグレスト付きの豪華な座席で、コンパート内には列車の運行情報が分かるモニターもあります。
通路とコンパートとの間はガラス板で仕切られていて明るい雰囲気です。

ハンガリーのインターシティのプレミアムクラスの車内

設備としてはよく整っていますが、ウェルカムドリンク等のサービスは一切ありません。

カフェテリアがある

「トカイ」号には小さな売店があります。
ここでコーヒー・ビール・ワインなどの他、サンドイッチなどを売っています。
窓側のカウンターで軽く飲食することもできます。
クレジットカードも利用可能です。

スポンサーリンク

乗車記:トカイワインの産地へ

立派な駅舎を持つブダペスト東駅。
レイルジェットなど国際列車は正面すぐのホーム発着しますが、インターシティ「トカイ」号はだいぶ奥に進んだホームからの出発でした。
少し早めに駅に着くことを心がけましょう。

予約したプレミアムクラスのコンパートには既に客が一人いました。
もう一つのコンパートも利用客は二人でした。
ハンガリーの国内線インターシティは古い車両しか乗ったことがありませんが、今回の列車は綺麗な新型です。

9時25分、ブダペスト東駅(Budapest Keleti)を発車。
ハンガリーでは赤い屋根の民家が多いです。

やがて見渡すばかりのハンガリー大平原に出ました。
数頭の馬を操りながら大地を疾走する、遊牧民族のマジャル人の姿が思い浮かびます。
ブダペストからわりと近い途中駅で同室の客が下車し、後はずっとコンパートは貸し切り状態でした。

トカイで思う存分ワインを飲む覚悟ではいるものの、せっかくプレミアムクラスに乗車しているわけですから、足が自然とカフェテリアに向かいます。
というわけで、ウォーミングアップにショプロン(オーストリア国境近く)のシャルドネを購入。
やはりハンガリーワインは赤も白も美味しいです。

5分くらい遅れてミシュコルツ駅(Miskolc)に着きました。
下車して街に繰り出すまでも無く、駅周辺の貨車と、おびただしいほど建ち並んだ社会主義時代風なマンションを見れば、ここが観光地ではなく工業都市だということが分かります。
東欧好きの私としては、これはこれでなかなか「萌える」車窓です。

しかし、そんな非人間的かつ人工的な光景もすぐ終わり、またすぐに平原の車窓に戻ります。
千年王国ハンガリーの歴史において、社会主義政権によって統治されたのは20世紀の半分以下の期間に過ぎません。

目的地のトカイが近づいてきた頃に穏やかな山が現れ、その斜面にはブドウ畑、その麓には埃っぽくて明るい民家とカトリック教会が見えてきました。
ついにワインの聖地にやって来たのです。
もう既に舌の上では甘い味を感じています。

なお、トカイは世界遺産に登録されています。
それはワインが美味いからではなく、畑と集落の景観であったり、世界に名だたる銘酒をつくる営みに価値があると認められたのです。

5分遅れのままトカイ駅(Tokaj)に到着。
ここが特急停車駅か?と思うほど、小さな駅で辺りには何もありません。

トカイの市内中心部は駅から15分以上歩いた所にあります。
全く普通の町というか村で、山へと続く坂道にワインセラーが点在しています。

私がテイスティングに参加したセラーでは、ドイツ語を話す中年の人々と日本人の若い女性が二人いました。
6種類のテイスティングを終え、その後もグラスワインを何杯か注文して、そのセラーで提供していたワインは全て制覇しました。

夕方、暑さとアルコールで真っ赤な顔をしてトカイ駅に戻ると、テイスティング会場で見かけた日本人女性二人がいました。
遅れていたブダペスト行きのインターシティの到着時刻に、タイミング悪く別の行き先のローカル線の列車が来ました。
私は「職業柄」すぐにブダペスト行きではないと分かりましたが、二人はそれに乗り込みます。

「ブダペストなら違いますよ!」と私が叫ぶと彼女たちは降りて来て、しきりに礼を述べました。
二人はブダペストに留学している学生さんで、酒飲みに対して「一人旅は気楽でいいですよね」と気を遣ってくれました。
兎にも角にも、私の鉄道知識が現地で、それも海外で若い女性のために役立ったのは初めてだったかもしれません。

スポンサーリンク

予約方法と費用

準備:会員登録が必要

予約はハンガリー国鉄のサイトから行うことができます。
かなり動作が重いので、そこはストレスに感じるかもしれません。

まず初めに、ネット予約するためには会員登録が必要になります。
登録自体は無料で難しくないのですが一つネックがあり、2023年春の時点では日本の住所(必須)が登録できません。

以下は自己責任でしていただきたいのですが、私の場合は郵便番号を1084(ブダペスト)にして、続けて日本の住所を登録しました。
実際にチケットが郵送されるわけではありませんし、ブダペストに住む全くの他人にところに郵便物が行くリスクもほぼ無いと思います。

予約:座席表から選択もできる

それでは、トカイ行きインターシティを予約しましょう。

まずトップページから発着駅を入力するのですが、バスの停留所も選択肢として出てきてしまいます。
駅名横のアイコンが鉄道になっているか確認して、列車選択画面に移ります。

乗り換え無しでトカイまで直通するのがインターシティです。
ここで下の2つの列車に注目すると、ブダペストの東駅(Keleti)と西駅(Nyugati)から出発するものがあり、料金(二等車)・所要時間も異なります。
これは最初の章で述べた通り、トカイに寄るインターシティはブダペストからブダペストまで一周するルートで運行されているためです。
ブダペスト東駅発着便を利用しましょう。

ここで一つ注意点があります。
このままではプレミアムクラスが予約できません。

プレミアムクラスを予約するには、列車選択画面の右上にあるホームボタンのようなアイコンから”1+Premium seat”をオンにする必要があります。

改めて検索すると、プレミアムクラスの料金が反映された結果になります。
それにしても、なぜハンガリー国鉄の最上位クラスが裏メニューのようになっているのでしょうか?

列車やクラスを決めて、乗客情報確認後に座席選択画面に移ります。

シートマップから座席を選ぶ場合は、上の写真のように”Graphic seat plan”をオンにします。
その後下の写真のような図が現れることになっているのですが、とにかく重いです。
パソコンでもエラーになることがよくあるので、次善策として”Seating position request”で窓側やオープンサロンなどと希望を出すのもありです。

私の記憶では、ブダペスト東駅寄りが一等車で、トカイ寄りが二等車だったと思います。

予約・決済が済むとチケットが添付されたメールが届きます。
PDFを印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

費用:二等車で4600HUF。追加料金が安いプレミアムがおすすめ。

料金はハンガリーフォリントで表示されています。
1HUF≒0.4円です。
ここ数年の日本円ほどは酷くはありませんが、フォリントは主要国通貨に対して下落傾向にあります。
ここで紹介する価格・レートは2023年9月のものですが、ハンガリーは慢性的にインフレ率が高いので最新の情報をチェックしてください。

ブダペスト~トカイの料金はインターシティ二等車で4,600HUFです。
一等車だと二等車に990HUFの追加料金がかかります。
しかし、上の写真にもある通り、場合によってはSmart ticket(二等車より安い一等車のチケット)という割引価格が提供されることもあります。

一番高いプレミアムクラスは合計6,930HUFです。
通常の一等車との差額は1,300HUF程度と小さいので、プレミアムクラスはおすすめです。
また、ネットで予約するとクラスに関わらず表示価格より5%割引になります。

プレミアムクラスを利用した時の料金内訳
一等車の座席指定料金650HUFの代わりに、プレミアム座席1990HUFがかかる。
スポンサーリンク

ハンガリー国内特急列車の新時代

第一次世界大戦まで、ハンガリーはオーストリアと共に二重帝国を形成した大国でした。
冷戦期間中でも、東ドイツ・チェコスロバキアに次いで経済が発展した「東欧の優等生」の部類に入りました。
しかし、21世紀になって西欧の高速電車を導入が進んだチェコやポーランドと比べると、ハンガリーの鉄道の近代化は遅れていたことは否めません。

新しくなったプレミアムクラス付きの国内線インターシティは、マジャル民族の誇りを取り戻しました。
今後は車両だけでなく、線路設備の更新にも期待したいところです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました