本拠地チェコをはじめ、中欧でコスパの良い鉄道会社として市民権を得たレギオジェット。
実は長距離国際路線では夜行列車も走っています。
昼間の列車のような座席車だけでなく、寝台車をやはり格安で利用することができます。
2023年5月下旬、スロバキア東部のコシツェからプラハまで、個室寝台車を貸し切りでレギオジェットに乗車しました。
プラハからコシツェ・クラクフ・クロアチアへ
夜行レギオジェットは同社の本拠地プラハを拠点に、コシツェ(スロバキア)・クラクフ(ポーランド)・ザグレブ・リエカ(クロアチア)などへ運転されています。
クロアチア発着の列車は毎日運行ではなく、夏期しか運転されません。
このうちで日本人観光客に最も需要があるのが、クラクフ行きの路線でしょう。
この列車は終点がクラクフではなく、ウクライナ国境近くのプシェミシル(Przemyśl)です。
そのためクラクフ着は早朝、クラクフ発は深夜になります。
夜行レギオジェットの営業路線のうち、プラハ~クラクフ・コシツェなどは既存の国鉄系の夜行列車「ユーロナイト」と被ります。
両者の費用を比較すると、レギオジェットの方がかなり安いです。
一方で居住性やサービスの良さは「ユーロナイト」の方が上なので、値段を取るか快適性をとるかの問題です。
夜行レギオジェットの寝台車の車内
重要な前提:レギオジェットの寝台車は実際はクシェット
レギオジェットにはユーロナイトなどと同様に「寝台車」と呼ばれる設備があります。
ヨーロッパの寝台車は部屋の中に洗面台が付いているのが普通ですが、レギオジェットの「寝台車」は簡易寝台と呼ばれるクシェットと同じです。
そして、路線によって寝台車は二段ベッドと三段ベッドの二種類があります。
レギオジェットのサイトでも説明されているのでご覧ください。
ページ下の方にあるイラストが分かりやすいです。
なお、夜行レギオジェットにも座席車(編成は路線により異なる)が連結されています。
ただ、夜行列車では寝台車を利用することをおすすめします。
座席車の車内などについては、昼間のレギオジェットの記事をご覧ください。
1~6人用寝台車(三段ベッド)
ベッドは相変わらず3段のままだった
私が乗ったプラハ・コシツェ間で使用されている車両は三段ベッドのタイプです。
各コンパートメントに2つベッドが並んでいます。
寝台車の設備は車両の造りは全て同じなのですが、使い方によってクラスの名前が異なります。
まず、「クシェット(Couchette)」は最も安い寝台車の設備です。
2つ並んだベッドのどれかを選び、他の乗客と相部屋になります。
就寝時以外は中段のベッドを収納して、下段を座席にします。
次に「バース(Berth)」も相部屋なのですが、上の写真のように片側のベッドは収納されて座席として使用します。
最も高い「プライベートコンパートメント(Private compartment)」は部屋のセッティングは「バース」と同じで、コンパートメントを貸切ることができます。
つまり一人で利用しても相部屋になることはありません。
気づいた方もいるかもしれませんが、3人で利用すると「バース」と「プライベートコンパートメント」は実質的に全く同じです。
この場合は「プライベートコンパートメント」の方が安くなります。
1~4人用寝台車(二段ベッド)
プラハ~クラクフ~プシェミシル、プラハ~ザグレブ~リエカの路線では、寝台車は2段ベッドになっています。
この場合のクラスは「バース」と「プライベートコンパートメント」の2種類で、いずれも両側のベッドを使います。
人数分の寝台だけ予約して相部屋になるのが「バース」、部屋を貸し切ってしまうのが「プライベートコンパートメント」です。
就寝時以外は上段ベッドを収納して下段が座席になります。
朝食は朝早いと提供されない?
クシェット含むレギオジェットの寝台車には、無料の朝食(クロワッサンらしい)が含まれるとされています。
しかし、私がプラハまで乗った時はコーヒーだけで、食べ物はありませんでした。
海外の動画でも同じ報告があり、目的地到着が早朝の場合は朝食が無いのかもしれません。
【乗車記】個室を一人利用できるプライベートコンパートメント
車両・車内の清潔さはイマイチ
スロバキア東部のコシツェ。
国内第二の都市とは信じがたい程こじんまりとしています。
首都ブラチスラバが周辺国の都会の中で埋没しないよう必死に自身を飾っているのに対し、コシツェは自然体で落ち着いた雰囲気が感じられます。
個人的にかなり気に入っている都市です。
出発時間まで結構ギリギリになってようやくホームが判明。
線路を跨いだ先、駅舎から一番遠くの乗り場にレギオジェットが停まっています。
外が暗くても車両がかなり汚れているのが分かります。
機関車のすぐ後ろの車両に乗り込みます。
号車番号の並びは一部不規則なので、近くのスタッフに確認すると良いでしょう。
私が予約したのは「プライベートコンパートメント」です。
これで6人部屋を一人で貸切ることができます。
外観からも想像された通り、内装も古さというかボロさを感じます。
レギオジェットの昼間の座席車は古くても綺麗にリニューアルされているのですが、寝台車はそれほどではありません。
コンパートメントのドアはロックすることができます。
ドアの窓は布のカーテンで覆います。
水とオレンジジュースが人数分無料
なんだかんだ言って夜汽車に乗った喜びに浸っていると、列車はコシツェ駅(Kosice)を発車しました。
周りに灯りも多くない小さな駅に停車していきます。
コンパートメントの内部は特に暑いので窓を開けます。
コシツェ駅でスロバキア産赤ワインは用意しましたが、コップがありません。
車掌から貰うつもりが、なかなか検札に来ません。
仕方がないので下品を承知でラッパ飲みしました。
通路で飲んでいると、私の倍以上は屈強な男がこちらを見て驚いていました。
出発後1時間程してようやく、ピンク色のポロシャツ(レギオジェットの制服)を着た貴公子のような車掌が来ました。
長い編成の一番端の車両なので、時間がかかったのでしょう。
車内販売もありますが、この感じだと提供にも時間がかかりそうです。
ということで、コップは諦めます。
なお、上の写真にはオレンジジュースと水が3つずつありますが、それぞれ乗車人数分だけ無料です。
明日の朝はコーヒーがサービスされるとのこと。
紅茶は無いそうです。
夜遅く、車内も静かになりワインで気分も良くなってきた頃、時々気味の悪い声が聞こえてきます。
その声は駅を出発する時に、前の方から聞こえてくるようです。
やがて、私を不安にさせた声の主は機関車であることが判明しました。
日本でも少し前まで「歌う電車」が京急や常磐線で走っていました。
これはモーター音を音階風に調整したもので、ヨーロッパでは今でも見かけます。
この電気機関車もそのタイプですが、どうしてこうなってしまったのでしょうか?
それとも、設計したエンジニアは革新的な音楽理論の開拓者なのかもしれません。
朝食はコーヒーだけだった
翌朝、うなされることはなく無事に目覚めました。
プラハ近郊は曇り空です。
金髪の貴公子がコーヒーを持ってきました。
車内紹介の章でも記した通り、食べ物はありませんでした。
遅れるどころか定刻より速くプラハ本駅(Praha hlavni)に到着しました。
ようやく例の機関車と対面。
旧式かと思いきや、かなり新型で驚きました。
彼は整備工場に行く代わりに、プラハのコンサートホールでドボルザークの美しい曲を聞いて、旋律とはいかなるものかを学ぶべきでしょう。
改めて明るい時間に見ると、やはり車体が汚れています。
レギオジェットのイメージカラーは黄色だけに、なおさら汚れが目立ちます。
朝6時前のプラハは予想以上に寒かったです。
軽く上着を羽織って市内散策をします。
普段はパフォーマーによる商業主義で汚されたカレル橋も、朝早くに訪れると街並みにしっとり溶け込んで静かな時間が流れていました。
予約方法と費用
レギオジェットの予約は公式サイトから行うことができます。
シンプルで分かりやすいので、慣れていない人でも簡単にできると思います。
以下、プラハからクラクフまでの夜行レギオジェットを予約してみましょう。
値段は安いが直近まで無料でキャンセル可能
トップページにアクセスして、発着駅・日付・人数を選択します。
プラハ本駅はPrague-MS(メインステーションの略)、クラクフ中央駅はCracow-main stationです。
以降、青いボタン(ここではSearch)を押下して進んでいきます。
設備選択画面です。
この路線にはスタンダードの座席車と、バース・プライベートコンパートメントの寝台車があります。
なお、アイコンの写真は正確ではないので注意してください。
車内の章でも述べた通り、クラクフ行き路線のバースは2段ベッドが2つ並んだタイプです(写真はコシツェ行き路線のバース)。
30€以下から寝台車(ユーロナイトでいうクシェット)を利用でき、一人用の個室でも90€以下なので安いです。
しかも、出発6時間前までならキャンセルも無料です。
上の写真は1か月後の結果を照会していますが、1週間後でも値段はあまり変わりません。
もっとも、夏期シーズンの人気路線は売り切れるのも早いので、なるべく早めに予約した方が良いです。
「バース」を独占できるのが「プライベートコンパートメント」
プライベートコンパートメントを選択しました。
「シートマップ」から好きな場所を選ぶことができます。
プライベートコンパートメントは4人用個室を丸ごと予約します。
バースは個室ごとではなく寝台単位で予約します。
上の写真では51番のベッドを希望しています。
1の位が1または2の寝台が下段です。
次にメールアドレス・電話番号・名前を入力します。
電話番号は日本の国番号の+81を選び、頭の0を除いた電話番号をいれます。
最後にクレジットカードで支払いです。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。
格安の夜行列車
昼間のレギオジェットが既存の長距離列車に真っ向から勝負しているのに対して、夜行レギオジェットは「ユーロナイト」と夜行バスの間くらいのポジションです。
「ユーロナイト」の寝台車のようなハイレベルなサービスはありませんが、レギオジェットならではの料金の安さは魅力的です。
近年再評価されつつある夜行列車の良さを多くの人に知ってもらうため、レギオジェットのような「格安夜行列車」というジャンルも、これから増えていくと面白いと思います。
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