プラハからウィーンへ、レギオジェットのリラックスの乗車記【予約方法や費用】

ドイツ・オーストリア・中欧

多くの観光客が訪れるウィーンとプラハ。
この魅力的な中欧の二都市間の移動は鉄道が便利です。
本記事では民間の鉄道会社が運営する、割安でコスパの高い「レギオジェット」を紹介します。

2023年5月下旬の土曜日、プラハからウィーンまでレギオジェットのリラックス(一等車)に乗車しました。

なお、この区間にはレギオジェットの他にチェコ・オーストリア両国鉄が運行するレイルジェット(Railjet)も走っています。
レイルジェットとレギオジェットの比較については、以下の記事をご覧ください。

スポンサーリンク

スチューデントエージェンシーが運営する黄色い列車

チェコはオープンアクセスの先進国

ヨーロッパの鉄道では、列車の運行権を国鉄以外にも開放する「オープンアクセス」が進んでいます。
日本で例えるなら、JRの線路上に、新規参入した会社や外国の国鉄が運行する列車が走るわけです。

そのオープンアクセスのフロントランナーは、欧州鉄道の秩序構築に貢献してきたフランスでも、元祖「自由競争の輸出国」イギリスでもなく、約30年前まで社会主義をやっていた旧東欧のチェコです。
2010年に高速バス事業で人気のあった「スチューデント・エージェンシー」が親会社となり、民間鉄道運営会社のレギオジェット(Regio jet)が運行を開始しました。
バスと同じ黄色がよく目立つ列車です。

スチューデント・エージェンシーの高速バス
2015年プラハ

レギオジェットは国内のみならず、スロバキアやオーストリアへも勢力を拡大し、中欧の鉄道を大いに活気づけました。
チェコでは、その後レオエクスプレス(Leo Express)も参入し、チェコ国鉄(CD)と激しい戦いを繰り広げています。

レギオジェットとは:安くて快適なコスパ抜群の列車

バスに続いて鉄道事業でも存在感を増すレギオジェット。
その特徴は、何と言っても料金の安さです。
チェコ国鉄の特急列車と比べて、かなり割安にチケットを買うことができます。

次の章で紹介するように設備の種類も豊富で、予算や都合に合わせて適したクラスを選択することができます。
また民間参入企業とはいえ、主要駅には自社専用ラウンジを用意するなど、「いっちょ前」なところもあります。

大半のレギオジェットの車両は、オーストリア国鉄からの中古車両をリニューアルしたものです。
車両は古いものの、少なくとも昼間の列車に関する限り車内は快適です。
そして、飛行機や高速列車の格安キャリアと違って、厳しい荷物制限もありません。
よって、決して「安かろう悪かろう」ではなく、非常にコスパに優れた列車だということはお分かりいただけると思います。

ウィーン中央駅にて

プラハからウィーンまでの所要時間は4時間

2023年現在、プラハ・ウィーン間では4往復のレギオジェットが運転されています。
同区間の距離は約400㎞、所要時間はおよそ4時間です。
チェコやオーストリアには新幹線のような高速鉄道は存在しないので、スピードは日本の特急列車より少し速い程度です。
途中、チェコ第二の都市ブルノを経由します。

なお、ライバルであるレイルジェットの方が本数は多いですが、所要時間は変わりません。
とにかく名前が非常に似ていて紛らわしいので、誤乗車には気を付けてください。

スポンサーリンク

レギオジェットの車内・サービス

レギオジェットのクラスは、ローコスト・スタンダード・リラックス・ビジネスの4つがあります。
さらにスタンダードには2タイプの客室が存在します。

スタンダード(二等車)の車内と座席

レギオジェットのコンパートメントタイプのスタンダードの車内
コンパートメントタイプのスタンダードの車内

最も基本的な設備が二等車、つまり普通車に相当するスタンダード(Standard)です。
昔ながらの6人用のコンパートメントになっています。
水とコーヒーが無料でサービスされます。
このクラスでもWi-Fiやコンセントがあります。

スタンダード・アストラ(二等車)の車内と座席

レギオジェットのオープンサロンタイプのスタンダードアストラの車内
オープンサロンタイプのスタンダード・アストラの車内

スタンダードには、スタンダード・アストラ(Standard Astra)というオープンサロン式の客室(コンパートメントではなく日本の新幹線と同じタイプの客室)もあります。
こちらの方が遥かに新しい車両です。
各座席の目の前にモニターが付いていて、飛行機のような雰囲気です。
レギオジェットでは予約時に座席を選べるので、コンパートメントかアストラか自分で決めることができます。

レギオジェットのオープンサロンタイプのスタンダード・アストラの座席
オープンサロンタイプのスタンダード・アストラの座席

リラックス(一等車)の車内と座席

レギオジェットのリラックスの車内
リラックスの車内

一等車に相当するのがリラックス(Relax)です。
通路を挟んで2&1列座席が並ぶオープンサロンの客室で、内装も高級感があります。
リラックスでも水とコーヒーの無料サービスが有ります。

レギオジェットのリラックスの座席
リラックスの座席

ビジネス(特等車)の車内と座席

レギオジェットのビジネスの車内
ビジネスの車内

リラックスよりもさらに上の設備がビジネス(Business)です。
コンパートメント式で1部屋当たり定員が4人と、贅沢な造りになっています。
水やコーヒーだけでなく、ジュースまたはスパークリングワインも無料サービスに含まれています。

ローコスト(2等車-α)は無い列車がある

レギオジェットの設備には、スタンダードより安いローコスト(Low cost)があります。
これは全ての列車に連結されているわけではないようで、実際私の乗った列車にもありませんでした。

レギオジェットのサイトで写真を見ると、2席ずつ向かい合わせになった4人用ボックスシートが通路の両側に並んでいます。
しかし、予約時に席を選ぶときに、一等車のように通路を挟んで2列と1列のシートマップが表示されることがあります。
現にSNSでも3列座席のローコスト車両の写真があがっています。

車内販売も安い

ワインの小瓶は2€

レギオジェットには食堂車・バーの設備はありません。
しかし、車内販売で食事や飲み物を買うことができます。
メニューはデザート、サンドイッチから機内食のような食事まで幅広くあります。

特筆すべきはその安さで、車内販売価格どころかスーパーマーケットに近い値段で販売されています。
ビールなら1€、メインの食事のカレーライスも3€程度です。
気になる人は3.6€で寿司を試してみるのもよいでしょう。

スポンサーリンク

【乗車記】混雑のリラックスクラス

プラハ本駅ではラウンジが使える

レギオジェットも国鉄の列車と同じプラハ本駅(Praha hlavni)から発着します。
外から見ると普通の駅ですが、天井が美しいドーム型になっている所もあります。

レギオジェットの当日のチケットを持っている人は、等級にかかわらず出発1時間前からプラハ本駅のラウンジを利用することができます。
CD(チェコ国鉄)ラウンジではなく、レギオジェットの乗客専用ラウンジなので気を付けてください。
コーヒーなど飲み物のサービスがあると公式サイトに書いてありましたが、この日はコーヒーマシンが故障していていました。
ラウンジでも発車時刻と乗り場が分かります。
10分程度遅れているようです。

ホームで待っていると、レギオジェットの黄色い列車が滑り込んできました。
土曜日の朝9時前で、リラックスクラスもほぼ満員です。
車内は荷物置き場が少なく、皆スーツケースの場所確保に苦労していました。
そんな中私はというと、近所へ買い物に行く時と同じ手荷物のみ。
今日はレギオジェットでウィーンまで行ったら、1時間半後に商売敵のレイルジェットでプラハに引き返すのです。

水とコーヒー1杯が無料サービス

溢れかえる客の乗車が済むと、慌ただしく出発しました。

プラハの街並みは車窓からでも綺麗です。
反対側、つまり進行方向左手後方にはプラハ城とティーン教会が見えているはずです。

ピンク色の制服を着た車掌が検札に来ました。
この時に無料のエスプレッソを頼みます。

チェコの国土は、プラハを含む西側のボヘミアと東側のモラビアに分かれます。
ボヘミア地方は比較的森が多く、川や湖なども時々見られます。

市街地を回り込むように勾配を下り、ブルノ本駅(Brno Hlavni)に到着します。
ここでかなりの乗客が入れ替わりました。
相変わらず荷物棚には隙間なくスーツケースが並べられています。

ブルノはチェコ第二の都市で、モラビア地方の中心地でもあります。
プラハとウィーンの間に位置していて、両都市から日帰りも可能です。

モラビア地方は丘陵地が目立ちます。
起伏する大地にしがみつくように並ぶ農村部の集落は印象的です。
なお、チェコのお酒といえばビールがあまりに有名ですが、モラビア地方ではワイン生産も盛んです。

車内サービスは人手不足気味

ということで、車内販売の赤ワインを2€で購入。
色は濃いですが、軽めの味わいです。
ちなみに、チェコのワインは質・量ともに白の方が上です。

なお、レギオジェットでは車内販売サービス等も車掌が行っており、その人数は車両・乗客数の割には少ないようです。
そのため、特に混雑時は何か買おうと思っても、車掌呼び止める機会がなかなか来ない点を留意してください。
この辺は、食堂車のスタッフがビールのお替りまで促してくれるレイルジェットとの差でしょう。
もっとも、最上位のビジネスだと接客ももう少し手厚いのかもしれません。

オーストリア・スロバキア国境近くのBreclav駅は交通の要衝です。
ここからブラチスラバ・ブダペスト方面への線路が分かれています。

まもなくしてオーストリアに入りました。
田舎風のモラビアの風景と比較すると、家が小綺麗になったように感じます。

ウィーンの街並みが現れ始める頃、ヨーロッパを代表する大河、ドナウ川を渡ります。
その包容力はウィーンの大都会をも包み込むようです。

ウィーン中央駅にもラウンジあり。出発駅のみ利用可。

ほぼ定刻にウィーン中央駅(Wien Hbf)に着きました。
一部のレギオジェットは、ここからさらにブダペストまで足を延ばして、「中欧三都物語」を一列車で完結させます。
プラハ・ブダペスト間には各国の国鉄による「ユーロシティ」がブラチスラバ経由で運転されています。
所要時間はいずれも7時間弱です。

駅の出口付近にひっそりとレギオジェットのラウンジがあり、ウィーンからレギオジェットに乗る人はここを利用できます。
コーヒーのサービスの他、トイレもあるようです。
OBBラウンジではないので注意してください。

スポンサーリンク

予約方法と費用

予約はレギオジェットの公式サイトから行うことができます。
込み入ったチケットの制度は無いので、列車選択→設備選択→座席選択とシンプルで分かりやすい流れになっています。

トップページにアクセスしたら、発着駅と日付・人数を選択します。
駅名は鉄道駅だけでなくバス乗り場も候補に出てくるので、列車アイコンが付いた駅を選択しましょう。
地名を現地語(Praha)で入力しても英語名(Prague)が候補として挙がります。
Prague-MSとはプラハ・メインステーション、つまりプラハ本駅のことです。
プラハに少し詳しい人はプラハ・マサリク駅と勘違いしないように。

次の列車選択画面で、乗りたい列車の”from€○”ボタンを押して進みます。

設備選択画面です。
上の写真は1週間先の照会をしていますが、それでも安いです。
よく”○€~”という宣伝文句を目にしますが、ほぼ例外的な値段を示した「釣り」がほとんど。
その点、レギオジェットは1週間前でもまだまだ安い料金を提示していて大変良心的です。
さらに、ローコストとビジネスの価格差が1.5倍弱と小さいのも特徴です。
ちなみに、私が1カ月半前に予約した土曜日朝のリラックスは30.9€でした。

次は座席選択画面です。
レギオジェットの料金は全て座席指定込みで、シートマップから席を選択することができます。
進行方向(上の写真では左上で途切れている)も記されていますが、私の記憶では実際は逆だったように思います。

ところで、上の写真の右側に記載ある通り、キャンセルは出発15分前まで無料です。
安い料金だからチケットの自由度は低いと思いがちですが、驚くほどフレキシブルです。
下にスクロールして進みます。

続いて乗客情報です。
電話番号は国を選択して、最初の0を除いた番号を入力します。

確認画面を経て、最後に支払い画面です。
クレジットカードを選択してから、カード情報を入力します。
決済成功すると、チケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

スポンサーリンク

ヨーロッパ鉄道界のヤン・フス

プラハの旧市街広場に建つヤン・フス像

チェコ国鉄やレイルジェットが神聖ローマ帝国における「エスタブリッシュメント層」だとすると、レギオジェットは既存の強大な権力と闘ったヤン・フスです。
フス派がチェコ人にとっての自由の闘士を見なされるように、レギオジェットは鉄道事業参入によって国鉄の独占状態を終わらせたのです。

もちろん、現代は権力に逆らってたとて火刑に処される野蛮な時代ではありません。
レギオジェットの成長は中欧各国に健全な競争をもたらし、それは我々利用客に恩恵を及ぼしているのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました