ワルシャワからクラクフへ、ポーランドの格安急行(TLK)の乗車記【車内・費用など】

ドイツ・オーストリア・中欧

東欧の大国ポーランドでは、主要都市を結ぶ鉄道網が張り巡らされています。
西欧水準の近代的な看板列車のエクスプレス・インターシティ・プレミアム(EIP)が導入されていますが、価格重視派の方におすすめなのが「格安急行」と呼ばれるTLKという列車です。
所要時間はEIPよりも遅いものの、料金はかなり安いのが魅力です。

2023年6月初旬、ワルシャワからクラクフまでTLKの一等車を利用しました。

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【EIPとの違い】やや遅く、やや古く、かなり安い

ポーランド国内を走る長距離列車のうち、最上位のものがエクスプレス・インターシティ・プレミアム(EIP)です。
イタリアの高速列車を輸入した新しくスマートな電車で、旧東欧からヨーロッパへの回帰を象徴する列車となっています。

ポーランドの看板列車、EIP

一方で、「格安急行」ことTLK(Twoje Linie Kolejowe:「あなたの鉄道」の意味)は機関車が客車を牽く昔ながらスタイルで、使われている車両もやや古いです。
所要時間もEIPよりも長いですが、その分料金はかなり安くなっています。

「格安急行」といっても、TLKは厳しい荷物制限などのある「鉄道版LCC」の類ではありません。
運行しているのはEIPと同じポーランド国鉄で、乗り方も他の列車と変わりません。

TLKのネットワークは国内全域に広がっており、ワルシャワ対各都市だけでなく、地方都市と地方都市を結ぶ便もあります。
その名前が示す通り、TLKはポーランド人が気軽に利用できる長距離列車といった位置づけです。
運用される車両は様々なので、次章以下で述べる車内やサービス等についてはワルシャワ・クラクフ間のTLKの一例だと思ってください。

TLKの客車

EIPとTLKの他に、その間のクラスの列車種別としてIC(インターシティ)EIC(エクスプレス・インターシティ)があります。
どちらもTLKより新しい車両が使われており、特にICは(機関車が牽くスタイルではなく)最新型の電車による運用もあります。
ICは料金や所要時間はTLKとほぼ同じなので、新型車両で運転されるTLKといったイメージです。
EICはEIPが登場する前のポーランドの看板列車で、IC以上EIP以下の存在です。

ICの新型電車

ポーランドで新型車両の導入が進むにつれて、最近ではTLKよりもICが増え、そしてEICはEIPに置きかえられる傾向にあります。

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TLKの車内・サービス

二等車の車内と座席

ポーランドのTLKの二等車の車内
オープンサロンの二等車

二等車はコンパートメントタイプとオープンサロンの2種類の客室があります。
コンパートメントは4列の座席が向かい合う8人部屋で、オープンサロンは上の写真の通り2&2列です。

客室はボロいわけではありませんが狭いです。
格安なので乗車率も高く、コンパートメントでは背の高いポーランド人達が長い脚を折り曲げて8人座っていて、見るからに窮屈そうでした。
なお、一部の二等車には6人用のコンパートメントもあるらしいです。

一等車の車内と座席(おすすめ)

ポーランドのTLKの一等車の車内

一等車は6人用のコンパートメントです。
まあこれで一般的な二等コンパートメントの標準といったところでしょうか。
乗車率は二等車よりも低めなので、だいぶ居心地は良くなります。
というわけで、TLKでは二等車よりも一等車をお勧めします。

なお、EIPやEICでは一等車利用客には飲み物や軽食の無料サービスがありますが、TLKにはこうしたものは一切ありません。

車内販売はある

TLKの車内販売で買ったホットコーヒーとパン

TLKには食堂車やビストロはありませんが、ワゴンによる車内販売は営業しています。
ホットコーヒーや菓子パンのような軽食を買うことができます。
取扱商品は限られているので朝食ならともかく、食事は乗車前に済ますか車内に持ち込んだ方が良いです。
巡回する頻度もあまり多くないようでした。

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乗車記:ワルシャワ・クラクフ間の所要時間は3時間前後

ワルシャワ中央駅付近は治安があまり良くない

6月初旬のワルシャワは朝早くは少し肌寒かったものの、昼間は夏らしい暑さでした。
午前中は学生たちにまじってワルシャワ蜂起博物館を見学した後、クラクフ行きのTLKに乗るため中央駅に向かいます。

治安の良いポーランドにあって、ワルシャワ中央駅付近は治安が悪いと言われることもありますが、少なくとも昼間は特別に不穏な雰囲気も無かったです。
ただ、身の危険を感じるほどではないにせよ、夜は不審者が徘徊していていたので不要不急の散策は避けた方が良いです。

安全性はともかく、私はこの駅はあまり好きではありません。
共産主義的な建築様式なのはまだいいとして、切符売り場や売店のあるフロアは薄暗く、通過式(ヨーロッパのターミナルによくある行き止まり式ではない)のホームも地下にあります。

どの車両も混雑気味でなおさら狭い

暗闇の中から電気機関車に牽かれたTLKが、轟音を立てて入線してきました。
5分程度遅れてワルシャワ中央駅(Warszawa Centralna)を出発です。

私が乗車したのは一等車で、客室は6人用のコンパートメントになっています。
各部屋4~5人乗っているようです。
また、二等車はどの車両もほぼ満席でした。
乗っているのは全体的に若い人が多い印象で、特に一等車では外国人が目立つEIPと比べると客層は全く違います。

ポーランドは平原の国なので車窓はあまり変わり映えしません。
その分カーブが少なく、列車のスピードは速いです。

クラクフまでに2,3の駅に停車しました。
聞いたことも無い地名でしたが、バックパックを担いだ若者たちが乗り降りしています。
停車時間が長いので何事かと思っていると、TLKの後にワルシャワを出発したEIPが抜き去っていきました。

ワルシャワ・クラクフ間の所要時間はTLKが2時間半強~3時間半弱なのに対して、EIPは2時間余りです。
私が乗ったTLKはかなり遅い便でしたが、列車によってはEIPとあまり変わらない所要時間なので割安感が増します。

中欧の古都、クラクフに到着

国土の南部寄りに来ると、ずっと平坦だった地形に起伏が現れました。
3時間乗っても、風景の変化らしきものはこれくらいです。
いつも何気なく乗っている東海道新幹線でさえドラマチックに感じられます。

17時過ぎにクラクフ中央駅(Krakow Glowny)に到着しました。
「ワルシャワが東京なら、京都はクラクフ」とよく言われるように、ポーランド王国の首都やオーストリア帝国の一部としての歴史を刻んだこの街は、プラハを思わせる中欧の古都です。
旧市街へは駅から歩いていける距離です。

クラクフ旧市街

実はクラクフ観光は何度かしているので、この日の滞在時間はわずか2時間。
EIPの一等車に乗ってワルシャワに戻ってきました。
TLKと乗り比べると、EIPの快適さが一層引き立ちました。

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予約方法と費用

TLKやIC、EIPの予約はポーランド国鉄のサイトから行うことができます。
詳しいやり方についてはEIPの記事で解説しているので、そちらをご覧ください。
英語にしてもページ切り替えのタイミングで時々ポーランド語になってしまうこともありますが、使いづらいサイトではないと思います。
本章ではEIPと比較したTLKの料金等について述べます。

下の写真は1週間後のワルシャワからクラクフまでの列車を検索したものです。
この区間の列車はEIPが一番多く、TLKまたはICが補佐的な立場となっています。

1zl≒34円

料金の差は明らかで、TLK(ICもほぼ同じ)の費用は一等車でもEIPの二等車の半分以下です。
EIPでも列車によっては3割程度割引されることもありますが、基本的に上の写真の料金が提示されることが多いです。
また、TLKの二等車と一等車の料金差は小さいので、繰り返しになりますが一等車をおすすめします。

所要時間がEIPに近いTLKであれば、あとは快適さを妥協できるか否かで選択肢に入ると思います。
ただし、両者の居住性・サービスには圧倒的な格差があることは付け加えておかなければなりません。

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庶民派の長距離列車

クラクフの大衆食堂での郷土料理
チーズのかかった肉詰めパプリカとジューレック(ライ麦風味のスープ)
※写真はイメージです

「ワルシャワからクラクフまでの鉄道移動でどの列車を使うのが良いか?」と聞かれたら、私の一般的な答えはEIPです。
西欧水準の看板列車と比べてしまうと、TLKが「安かろう悪かろう」な点は否めず、ポーランドがまだ貧しかった時代の面影にも思われます。

しかし、スタイリッシュな高速列車よりもローカル色のある鉄道旅行がしたい方、あるいはショパンの楽曲で喩えれば、華麗で饒舌過ぎるポロネーズよりも素朴なマズルカが好みの方にとっては、TLKは安くて魅力的な列車となるでしょう。

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