ポーランドのペンドリーノ型高速列車、EIPの一等車でクラクフからワルシャワへ【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

旧東欧諸国の中で唯一日本から直行便が飛んでいるのがポーランドです。
ポーランドの二大観光都市といえば首都ワルシャワと、古都クラクフでしょう。

この二都市間は鉄道で便利に移動することができます。
今回はポーランドの鉄道で最も速くて快適な「エクスプレス・インターシティ・プレミアム(EIP)」をご紹介します。
2023年6月初旬、クラクフからワルシャワまでEIPの一等車を利用しました。

スポンサーリンク

最高速度は時速200㎞、中欧最速の電車

2014年、ポーランドに新しい高速列車が運行を開始します。
イタリアの「ペンドリーノ」と呼ばれる電車をベースにした新型車両には、「エクスプレス・インターシティ・プレミアム」(以下EIPと表記)というブランド名が付けられました。
なお、ペンドリーノは本来車体を傾けてカーブでも速く走れる電車ですが、EIPにはこの機能が付いていません。
国土が平坦なので不要だとされたのでしょう。

スマートな車体

社会主義経済からの自由化に伴う「ショック療法」を経て、EU加盟を果たしたのが2004年。
旧東欧からヨーロッパの一員に回帰したポーランドにも、西欧水準の車両がお見えしたのです。

EIPの営業最高速度は時速200㎞で、これは中・東欧では最速です。
首都ワルシャワを起点に国土中央部を南北に走る高速線を経由して、観光地として外せないクラクフや工業都市カトヴィツェを結んでいます。
この他にも南西部のヴロツワフやバルト海沿いのグダンスクへも運転されています。

スポンサーリンク

EIPの車内・サービス

EIPの編成は二等車・一等車そして軽食堂車のバー車両から成ります。
客室はオープンサロンタイプで、ごく僅かな子連れ用の席を除いてコンパートメントはありません。

二等車の車内と座席

ポーランドのペンドリーノ型高速列車の二等車の車内
二等車の車内

二等車は通路を挟んで2&2列の座席配置。
車体と同様に客室もスマートな印象です。
写真で見るとやや窮屈にも見えますが、実際に座って見ると掛け心地は意外と良いです。

客室は「集団見合い型」と呼ばれるタイプで、各座席が車両中央部分を向いています。
また二等車ではミネラルウォーターの無料サービスがあります。

一等車の車内と座席

ポーランドのペンドリーノ型高速列車の一等車の車内
一等車の車内

一等車も二等車と似たような内装ですが、座席配置は2&1列となっています。
後で紹介するように、一等車では食事と飲み物が提供されます。
これがかなり良いサービス(乗車記の章で説明)なので、写真だけ見比べて一等車の差別化が不十分だと感じた方も、試してみる価値はあると思います。

ポーランドのペンドリーノ型高速列車の一等車の座席
一等車の座席

3号車にはバー(軽食堂車)車両がある

ポーランドのペンドリーノ型高速列車の軽食堂車

3号車の一部には立ち席タイプのバーがあります。
上の写真では若者たちがビールを飲んでいますが、食事も注文することができます。
ポーランド国鉄で食堂車・バーを運営している”WARS”という会社は評判が良く、メニューも結構豊富です。

スポンサーリンク

乗車記:クラクフからワルシャワまでノンストップ

ショパンを聞きながらクラクフ中央駅出発を待つ

ポーランド南部の古都クラクフ。
かつてオーストリア帝国の支配下にもあったこの都市は、チェコのプラハにも通じる中欧らしい街並みで、「ワルシャワが東京ならクラクフは京都」と呼ばれるのも納得です

クラクフ旧市街

拠点となるクラクフ中央駅は旧市街から歩いて10分程度の所にあります。
大きなショッピングセンターを併設する近代的な駅に、水色で鼻の細長いEIPが停車していました。
角ばった車両ばかりのポーランドでは、一際西欧風に洗練された姿をしています。

予約した一等車の一人用座席に腰かけて出発を待ちます。
ところで、停車中にはBGMでショパンの「ノクターン第二番」が流れます。
クラシックに興味が無い人でもおそらくほとんどの人が聞いたことのある知名度の高い曲です。
これぞショパンを生んだポーランドと思わせる歓迎です。
EIPはクラクフ中央駅からワルシャワ中央駅までノンストップなので、残念ながら(?)ショパンを聞けるチャンスは多くありません。

一等車では食事・ソフトドリンクの無料サービスあり

さて、19時10分にクラクフ中央駅(Krakow Glowny)を出発すると、街並みはあっという間に途切れて後方に去っていきました。

ポーランドの地形というと「ずっと平原」というイメージが漠然とあったのですが、実際のところは「多少は車窓に変化があるかな?」という感じです。

まもなく、食事サービスのメニューが配られました。
5種類の中から好きなものを選択し、他に飲み物としてコーヒー・紅茶も付いています。
暫くするとスタッフが注文を聞きに来るので、希望するものを伝えて待ちます。

今回選んだのはブルーチーズとクルミ入りのサラダです。
自称「文字通りの肉食系男子」の私がかくも健康意識高めの食事を頼んだのは改宗したからではなく、単純にセルフ式食堂で肉と小麦とジューレック(ライ麦風味のスープ)ばかり食べて、ビタミン不足を生理的に実感していたからです。
旧東欧で高緯度に位置するポーランドというと、良くも悪くも「素朴で農民的な」重たい食事をイメージしますが、EIPで提供されたのは現代的で西欧的な食事でした。

ポーランドのペンドリーノ型高速列車の食事サービス
(参考)ポーランドの典型的な郷土料理
左は餃子やピロシキに近い「ピエロギ」、右はライ麦の酸味がクセになる「ジューレック」

ちなみに、ポーランドで安く手っ取り早く郷土料理を楽しみたい方、あるいは「ポーランド人としてのショパンの真髄はポロネーズではなくマズルカだ」という庶民派の方には、こうした大衆食堂がおすすめです。

バーは若者でずっと混雑

時刻は夜21時前。
ヨーロッパ北部の6月はこの時間でもまだ明るいです。
日没直後の空は地平線だけが余熱でほのかなピンク色に染まり、はるか遠くの平原は太陽を沈めた海原のようです。

気分転換にバーへ赴くと、若者たちで大賑わい。
皆ビールを飲んでおり、私の目の前の青年は両手に瓶を構える二刀流です。

ちなみに、ポーランドの酒はウォッカのイメージがありますが、最近はビール党が多いです。
実は学生時代、コンパの買い出しに行った友人がポーランド産のスピリタス(アルコール度数96%のウォッカ)を買ってきて、私はそれをグイグイ飲んで周りに多大な迷惑をかけたことがあります。
その後10年くらいは、彼らと会うとその話で盛り上がりました。
そんな失態を繰り返すまいと、今日は一人おとなしくエスプレッソを1杯やりました。

外はだいぶ暗くなり、木々の色もより濃く感じられます。
時折見える白樺の幹が目立ちます。

ワルシャワ中央駅は治安が悪い

やがてワルシャワ市街の灯りが見え始めました。
10分遅れの21時50分頃にワルシャワ中央駅(Warszawa Centralna)着。
列車はこの先ワルシャワ東駅まで行きます。
ショパンのノクターンに見送られながら下車しました。

ポーランドは治安のよい国ですが、ワルシャワ中央駅付近は相対的に危険度の高いエリアと言われています。
今回の私のケースでは夜の22時でも周りに人は多くいたので、用心していれば事件に巻き込まれるリスクは低いと感じました。
もっとも、不審な人物は散見されます。
駅を出るとスターリン時代に建てられた文化科学宮殿が、周囲を警戒するように光を放っていました。

スポンサーリンク

予約方法と費用

EIPの予約はポーランド国鉄のサイトから行うことができます。
それらしい名称の代理店サイトもあるので要注意(悪質という訳ではない)です。
以下そのやり方を写真付きで解説していきます。

予約ができるのは乗車日の30日前から

トップページにアクセスしたら駅名または都市名と日付を選択します。
「中央駅」の綴りが分からなければ”dowolna stacja”でその都市の全てを含めることができます。
ポーランド国鉄では他のヨーロッパの国より予約開始日が遅く、30日前にならないと予約できません。

カレンダーの所が英語化されておらず分かりにくいので、選択した日付は数字で確認しましょう。
また英語で進めていても途中のページでポーランド語になってしまうことがあるので、都度右上の言語選択でPLをENに変えましょう。

他の列車より料金は高いがEIPはおすすめ

列車選択画面です。
3つある候補のうち一番右がEIPです。
ポーランドの優等列車にはEIPの他にTLK(格安急行)IC(特急)があります。
EIPを最上位として、それ以外の種別にはあまり明確な区別はありません。
予約する列車のCHOOSEボタンを押下します。

ポーランドの通貨はズロチ(zl)で1zl≒36円です。(2023年8月)
通貨としては、特にユーロに対して安定している方です。

見て分かる通り、EIPは所要時間が短い代わりに料金は高いです。
しかし、TLKやICと比べて車内の快適性・サービスの点でも圧倒的に優れているので、予算が厳しくなければEIPをおすすめします。
正直、TLKの二等車は「安かろう悪かろう」です。
また、二等車と一等車の快適さの違いはそこまで無いので、食事サービスが要らない人は二等車で良いと思います。

費用についてもう少し話すと、私が2023年6月に乗った夜の便は、一等車でも3割引きのチケットがありました。
また2015年10月に二等車を利用した時は、100zl程度の料金が結構あったように記憶しています。
本章では9月中旬の予約を行っていますが、シーズンによっては料金がもっと安くなるのかもしれません。

座席表から好きな席を選べる

さて、CHOOSEボタンを押すと画面が下に移り、下のような画面になります。

いろいろと項目がありますが、日本人観光客にとって気にするべきは人数とクラス(二等or一等)でしょう。
右下のオレンジ色のボタンを押すと、シートマップから好きな座席を選べます。

シートマップもどき
数字がない画像アイコンはテーブルを指していると思われる
選択中の72番席は進行方向

上の写真がシートマップなのですが、画面が重いのか私のPCではうまく表示されません…
体裁はともかく、座席番号など最低限の様式は備えているので、空いている席なら数字をクリックすれば座席選択ができました。
車内の章で述べた通り、座席は中央部を向いた集団見合い型です。
列車の進行方向も表示されているので、これらの情報があれば進行方向の席を予約できるはずです。

その後いくつかの確認画面で名前やメールアドレスを入力します。
電話番号は必要ありません。
会員登録しなくても予約することができます。
なお、時間制限があり焦るかもしれませんが、ページが切り替わるごとにタイマーはリセットされるので心配は要りません。

まるでエラー画面のようなポップアップが出ると、商品をカートに入れたことになります。
ここまで来ればあとは支払いだけです。

真ん中のクレジットカード払いを選択します。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

スポンサーリンク

ポーランドのイメージを覆すペンドリーノ

旧東欧の大国ポーランドでは、以前より鉄道が各都市間に発達していました。
その一方で、車両編成は角ばった機関車が客車を牽く昔ながらのタイプでした。

そんな中で登場したのが、イタリアンデザインを纏ったショパン弾きです。
かくして、この国につきまとう「田舎っぽい」「周囲の大国に蹂躙されてきたかわいそうな国」という健気で情緒的な偏見を吹き飛ばすほど、EIPはポーランドの鉄道の近代化を印象付けたのです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました