パリからスイスのチューリッヒへ、TGV Lyria(リリア)スタンダードプレミアの乗車記【車内・車窓】

ヨーロッパ鉄道

フランスの首都パリからチューリッヒ・ジュネーブなどスイスの主要都市へは、高速列車のTGV Lyriaリリアで3~4時間でアクセスすることができます。
運転本数も充実しており、人気観光都市を結ぶとても利用価値の高い路線です。

2023年5月下旬、パリからチューリッヒ(途中のバーゼルで乗り換え)までTGV Lyriaのスタンダードプレミア(一等車)に乗車しました。

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最高速度320km/h、フランスとスイスを結ぶ高速列車

TGV Lyriaはパリとスイス各地を結ぶ高速列車のブランド名です。
フランスの新幹線TGVの一種で、フランス国鉄とスイス国鉄によって共同運行されています。
使われている車両はヨーロッパでもお馴染みとなったオール二階建てのTGVですが、TGV Lyriaには専用の塗装が施されています。
機関車の車体には「フランス<>スイス」の文字が英語・ドイツ語・フランス語で書かれていて、多言語国家のスイスらしいです。

TGV Lyriaの最高速度は時速320㎞。
フランス国内の高速線ではこの速度で走りますが、スイスでは特急より少し早い程度です。
パリからの所要時間はチューリッヒやローザンヌまでが約4時間、ジュネーブやバーゼルまでが約3時間です。
各都市へは概ね2~3時間毎に運転されており、利用しやすいダイヤとなっています。

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TGV Lyriaの車内

TGV LyriaにはStandard(スタンダード),Standard Premier(スタンダードプレミア)そしてBusiness Premier(ビジネスプレミア)の3種類の予約クラスがあります。
このうち、Standardが二等車で、残りの2つは一等車です。
Standard PremierとBusiness Premierの違いは、座席での食事・飲み物のサービスの有無です。

スタンダード(二等車)の車内と座席

TGV Lyriaのスタンダードの車内
スタンダードの車内

1階・2階共に通路を挟んで2&2列の座席配置です。
国内線の最新型TGVは二等車でも内装や座席がかなり良くなっていますが、それと比べるとTGV Lyriaのアコモは少し見劣りがします。
Wi-Fiやコンセントを利用することができます。

TGVも含めてヨーロッパのほとんどの列車では座席を回転することができません。
上の写真では、各座席が車体中央部を向いている「集団見合い型」と呼ばれる構造になっています。

スタンダードプレミア・ビジネスプレミア(一等車)の車内と座席

TGV Lyriaの一等車の車内
一等車の車内

一等車に相当するスタンダードプレミア・ビジネスプレミアは横3列の座席です。
通路に赤い絨毯が敷いてあり高級感があります。

TGV Lyriaの一等車の座席
一等車の座席

バー車両あり

TGV Lyriaの一等車の軽食堂車

他のTGVと同じで、TGV Lyriaにも軽食堂車のバーがあります。
立ち席テーブルで飲食しても、自分の席に持ち帰ってもよいです。
サービスを運営している会社が違うのか、国内線のTGVとはメニューが若干異なります。

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【乗車記】パリ~バーゼル~チューリッヒ

スタンダードプレミアでもパリ・リヨン駅のラウンジが使える

平日の昼下がりのパリ・リヨン駅(Paris Gare de Lyon)
ハイシーズンでもない中途半端な時間帯ですが、駅は大勢の人がごった返しています。
この駅は広大で、列車乗り場(”Hall”と表現される)が3つあります。

そんな雑踏をよそにして静かにくつろげるのが、ラウンジです。
場所はHall1とHall2を繋ぐ通路の中ほどにあります。
通常フランスのラウンジはビジネスプレミアでなければ利用できませんが、TGV Lyriaだけはスタンダードプレミアでも利用できます。

写真左寄りにラウンジの入り口がある

広くゆったりしたスペースでコーヒーなどを自由に飲むことができ、トイレも備わっています。
窓の外に見えるホームの喧騒が別世界のようです。

パリ・リヨン駅のラウンジ内部

発車ホームが判明するのは15分くらい前

いつも通り、出発15分くらい前にホームが判明しました。
乗り場に向かった時には、既にバーゼル行きTGV Lyriaは入線していました。
この便は通常はチューリッヒ行きなのですが、この日は臨時ダイヤなのでドイツ・フランス国境近くのバーゼル止まりです。
予約していた一等車の2階席に乗車します。

定刻の14時15分に発車。
一等車は英語がよく聞こえるので外国人が多いのでしょう。
アジア人も時折見かけます。

フランス語・ドイツ語・英語の順に自動放送のアナウンスが流れます。
大都会パリの街並みはあっという間に通り過ぎていきました。

発車から15分も経たないうちに、東海道新幹線がまだオフィスビルやタワーマンションの合間を走っている頃、景色はもう見渡すばかりの平坦な畑です。
市街地を避けるためにトンネルを掘らなくとも320㎞が出せるのですから、日本の鉄道建設者たちにとっては羨ましいことでしょう。
静岡県知事みたいな人さえいなければ、現在の日本の整備新幹線よりも相当工期は短そうです。

バー車両に出かけてワインを買ってきました。
スイス行きの列車ということで珍しいスイスワインも売っていたので即決。
寒冷地なので酸味が強いのかと思いきや、カルフォルニアワインのようにリッチで驚きました。
500mlで20€と高いですが、おかげで3時間をより有意義に過ごすことができました。

丘陵地の窪みには集落が固まり、羊たちが白い小石のように見えます。
地形の波打ちが激しくなってきたなと感じているうちに山がちとなり、トンネル区間も多くなります。

パリから1時間半ほどで、ディジョン(Dijon)に来ました。
パリ以来の都市らしい街並みにハッとしますが、ここは通過します。
その後また高速線に入り、平坦な地形になります。

途中フランスの南東部の駅に幾つか停車するも、乗降客はほとんど無し。
時間どおりに終着のバーゼル(Basel)に到着です。
スイスというと天然の要塞に守られた永世中立国のイメージがあったのですが、その割にはあっさりと入国しました。

国境の街バーゼルからチューリッヒへ

バーゼルはフランス・ドイツ国境に近い国内第三の都市。
ライン川沿いにあり、中世より交通の要衝として栄えてきました。
TGV Lyria含め国際列車が発着するバーゼルSBB駅は、まるで首都のターミナルのように壮観な駅です。

バーゼルSBB駅の駅舎

ここで地域間列車に乗り換えます。
スイスにはフランスのような高速線は無いので、TGVでも普通の列車でもチューリッヒまでの所要時間は1時間と変わりません。
しばらくドイツとの国境を成すライン川沿いの谷間を進みます。

ライン川とは途中で別れますが、似たような景色が続きます。
やがて、行き止まり式のチューリッヒ中央駅(Zurich Hbf)に到着です。
スイス国旗と同じ色の赤と白の列車が並んでいます。
TGV Lyria以外にもドイツのICEやイタリアのペンドリーノ車両がおり、画一的な列車の塗装とは裏腹に国際色豊かな光景です。

チューリッヒは金融経済都市なので高層ビルが建ち並ぶイメージを持っている方もいるかもしれません。
ところが、駅前のチューリッヒ湖に面する落ち着いた街の風景は、まるで南ドイツの地方都市のようです。
湖に注ぐ川も驚くほど透明でした。
ちなみに人口では国内最大都市ですが、首都(正式には「連邦都市」という)はベルンです。

チューリッヒ中央駅のすぐ傍の風景

チューリッヒはドイツ語圏です。
しかし、標準語とはかなり異なる「スイス・ドイツ語」(ドイツのテレビでも字幕が出るらしい)なので、大学でちょっとドイツ語を学んだ程度の私には現地の言葉はほとんど理解できませんでした。
もちろん英語はよく通じます。

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予約方法と費用:おすすめクラスはスタンダードプレミア

TGV Lyriaの予約はフランス国鉄のサイトから行うのがおすすめです。
TGV Lyriaの専用サイトでも予約できるのですが、こちらではフランス国内の列車との乗り継ぎを含めることができません。
また、シートマップから好きな座席を選べる(一等車のみ)のも、公式サイトではフランス国鉄だけです。

フランス国鉄のサイトでの予約方法については、パリ・リヨン間のTGVの記事をご覧ください。

料金は変動制で、同じ日でも便によって大きく差が開くことがあります。
1カ月以上前に予約すれば、曜日や時間帯にも依りますが60€前後のチケットも見つかります。
一方、1,2週間前なら安くても100€以上費用が掛かります。

スタンダードクラスでプロモーション(最安で29€)をやっていない限り、スタンダードプレミアクラスとの料金の差はあまり大きくありません。
座席の広さやパリ・リヨン駅でラウンジを利用できることなどを考慮すると、スタンダードプレミアをお勧めします。

なお、ビジネスプレミアは予約するタイミングや便にかかわらず、区間毎に料金が固定されています。
例えばパリ・ジュネーブ間が205€、パリ・チューリッヒ間は229€です。
返金・変更が無料かつ無制限でできるメリットもあります。

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小国を繋ぐ大きな車両

スイスの工業製品の代名詞となっている時計産業。
それをもたらしたのは、ルイ14世がナントの勅令を廃止したことでフランスから亡命してきたユグノーたちでした。

そして今では観光業も重要な産業です。
特に小国のスイスでは外国人旅行客は重要です。
二階建て車両に観光客を乗せて世界的な都市パリからやって来るTGV Lyriaは、この国にとってのフランスの存在の大きさを示しています。

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