ミラノからパリへ、フランスの高速鉄道TGVで移動【車内・予約方法や費用など】

ヨーロッパ鉄道

フランスの首都パリと北イタリアの中心都市ミラノ。
2つの魅力あるファッションの都を高速列車が結んでいます。
飛行機と比べると所要時間は長いですが、途中のアルプス越えの素晴らしい景色を見れば、移動も旅の一部だと納得できるでしょう。

2022年10月、二種類ある高速列車のうち、フランスのTGVに乗ってミラノからパリを目指しました。
乗車記の章では、トラブル続きの旅の顛末をご覧にいれます。

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パリ~トリノ・ミラノの所要時間は7時間

フランス・イタリア国境に跨るアルプスを越えるため、最高速度300㎞のTGVといえども、パリからミラノまでの所要時間は7時間少々とかなり長いです。
経由する主要都市はイタリアのトリノで、パリからは5時間半強の所要時間です。
ただ、フランス第二の都市リヨンは郊外を通過(空港駅に停まる列車もある)します。

専用編成による運転

この列車はかつてフランス国鉄とイタリア国鉄の共同運行でした。
しかしイタリア国鉄は袂を分かち、2021年12月には同じ区間に看板列車のフレッチャロッサを走らせるという勝負を挑んできました。
現在、パリ~ミラノでは1日にTGV3往復、フレッチャロッサ2往復が運転されています。
両者の比較については以下の記事をご覧ください。

最近のTGVは2階建て車両が多いですが、この区間のTGVは通常の平屋構造です。
強敵フレッチャロッサがいるにもかかわらず、古い車両が使われている理由は乗車記の章で説明します。

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ミラノ発着TGVの車内と座席

列車は両端の機関車に挟まれた8両編成で、2等車・1等車・カフェバーから成ります。

2等車の車内と座席

パリ・ミラノ間のTGVの2等車の車内
2等車の車内

著名なフランス人デザイナー、クリスチャン・ラクロワ氏による内装は、やはりセンスを感じます。
全体的にシックな車内の雰囲気です。

パリ・ミラノ間のTGVの2等車の座席
2等車の座席

2等車の座席は2&2の配置で、向きを変えることはできません。
一部は向かい合わせになった4人用ボックスもあります。
2等車でも全座席に充電用コンセントを備え、Wi-Fiも利用可能です。

1等車の車内と座席

パリ・ミラノ間のTGVの1等車の車内
1等車の車内

派手な色遣いが特徴的だった2等車と比べると、1等車はおとなしくなった印象です。(昔はもう少し明るかったらしい)
座席配置は1&2で、良くも悪くもスタイリッシュな2等車よりもどっしりしています。

パリ・ミラノ間のTGVの1等車の座席
1等車の座席

なお、競合するフレッチャロッサでは、1等車でスナックやコーヒーなどのウェルカムサービスが行われますが、TGVの1等車にはこうしたサービスはありません。

カフェ車両

パリ・ミラノ間のTGVのカフェ

カフェも相変わらずファッショナブルなデザインです。
ワインなどのアルコールに軽食、レンジで温める簡単なホットミールも販売されています。

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乗車記:フランスからイタリアへ、トラブル続きの旅行記

ミラノの駅に要注意!Milano Porta Garibaldi駅を出発

早朝発のTGVはミラノを早朝6時に出発します。
発着する駅はMilano Centrale(ミラノ中央)駅ではなく、Milano Porta Garibaldi(ポルタ・ガリバルディ)駅なので注意しましょう。
中央駅から距離にして1.5㎞、地下鉄で6分と遠くはありません。

私が乗ったのは日曜日のためか、地下鉄の便がなかったのでタクシーを使いました。
早めに着いたものの、売店はどこも閉まっています。

15分ほど前になって発車番線が判明し、列車に乗り込みます。
2階建てではない古い車両ですが、TGVと聞いてこの顔をイメージする人も多いのではないでしょうか。
外観のカラーリングは他と同様に新しくなっています。

ミラノを発った時は車内はガラガラでした。
外がまだ暗いので車窓は見えませんでしたが、平坦なロンバルディア平野を走っているはずです。
フレッチャロッサと違って、このTGV車両は設備が高速線に対応していないため、トリノまで在来線を走ります。
それでも160㎞近いスピードは出ていました。

参考:トリノ~ミラノ高速線からの車窓

トリノ駅から国境越えも、まさかの車両ダウン!

明るくなってきた頃、Turin Porta Susa(トリノ・ポルタ・スーザ)駅に到着。
ここで学生や中高年のグループがどっと乗り込んできて、車内は一気に満席になりました。

ここからはフランス国境のアルプスに挑みます。
まだ薄暗い空の中から、次々と山が姿を現していきます。

イタリア・フランスの国境がある10㎞超のトンネルは、1871年に開通したものが改良を経て使われています。
日本で鉄道が開業する前年で、開通した当時は最長のトンネルです。
そんな誇らしき19世紀の西欧文明に敬意を表した後、フランスに入国するはずでした。

しかし、あろうことか列車はトンネルの中で立ち往生してしまいました。
途中で何度か車内の電気まで消える始末。
最初はケラケラ笑っていた学生達も、この状況が20分、30分と続いて(しかも寒い)、今や顔がひきつっています。

ようやく列車が動き出した!のですが、何と逆走しているではありませんか。
そして、車内放送の後に深いため息が起こり、乗客は下車する準備を始めました。
「どうなっとんねん!(意訳)」と立ち上がって叫ぶと、近くの人曰く「しばらく戻った駅からバスでフランス側のModane(モダーヌ)駅に行く。そこから別のTGVに乗り換える」とのこと。
悪い予感は当たってしまいました。

列車を降ろされたbussoleno駅

スーツケースにはネームタグが必要だった

事情があって、私は隣の車両にスーツケースをロックをかけて置いていました。
自分のスーツケースを取ろうとすると近くの学生が「誰の荷物か分からず車掌がとても心配していた。車掌を呼んでくるからここで待っていろ」と言います。
トレインマネージャーが来て、私をカフェ車両まで連れていきます。
朝から予定が崩れて途方に暮れている学生たちの間を、持ち主が判明して胸をなでおろした車掌に続いて、全く状況が把握できていないアジア人観光客が無表情で付いて行く、実に奇妙な光景です。

彼は英語がそれほど話せなかったのですが、要するに、TGVではスーツケースにネームタグを付けなければならない。周りの乗客に呼び掛けても誰のものか分からないので、私のスーツケースはテロリストの不審物と疑われていた、ということでした。

恥ずかしながら、ネームタグを付けるルールを知りませんでした。
ただでさえ列車が止まり、そのうえひと騒動起こして憔悴した私でしたが、トレインマネージャーは
“Masaki,Don’t worry. I’m happy to meet you”と声を掛けてくれました。
踏んだり蹴ったりの旅でしたが、明るく人格者の車掌と出会えたのは不幸中の幸いでした。

ネームタグは駅で無料で貰えるらしいです。
QRコードがあるので、スキャンして必要な情報を入力します。
なお、列車が止まった原因は車両故障で、私のスーツケース事件とは関係ありません。

タクシーで国境通過。前代未聞の6時間遅れ。

1時間たっても代行バスは来ません。
英国人らしき強面の男性が低い声で車掌に詰め寄ります。
「なぜバスが来ない?」
「運転手を探しているが日曜日なので見つからない。」
「Modane駅にいるTGVがこの駅に来ればいいだろう?」
「ModaneにいるTGVは2階建てだ。今乗って来たTGVより大きいのでここには来れない。」

なるほど、パリ・ミラノ間のTGVは旧型の平屋構造の車両が使われている理由が分かりました。
主流型の2階建て車両は国境の古いトンネルを物理的に通過できないのです。

さて、肝心の代行輸送はというとバスをあきらめ、近くのトリノ市のタクシーを片っ端から集めるという力業が採用されました。
道路は鉄道よりも迂回するので、時間はかかりましたが景色はとても迫力があります。

国境を越えてModane駅に到着。
乗客乗員が全員揃うのを待ちます。
しかし、500人近く乗っていたTGVの客を4人しか乗れないタクシーで運ぶのはやはり無理があったようで、ここでも何時間も待ちました。
グループ客たちは何事も無かったようにカフェでビールを飲んで談笑しています。

フランス側の国境駅、Modane

国境を越えて来るタクシーの列も途絶え、ユーロスターでロンドンに行くはずだったイギリス人達と、お互いのパリの乗り継ぎ(この日はパリ東駅からウィーン行き夜行列車に乗る予定だった)をどうするか話していた時、1本後のミラノ発パリ行きTGVがやって来ました。
つまり遅れは6時間にもなっていたのです。
15年の欧州鉄道旅行歴でも、ここまで酷いのは初めてです。
このタイミングで全員が揃ったことから、残りの人はTGVで来たものと思われます。
待機していたTGVもカラーリングは新しいものの、車内は予備編成らしく古いままでした。

Modaneから乗った臨時のTGV
定期便ではあまり見ない古いインテリア

Modaneから運転再開。アルプスの絶景で気を取り直す。

ついにModane駅を出発しました。
このままの遅れなら何とかウィーン行きの夜行列車に間に合いそうです。
気を取り直して、生々しい地層を露にした岩山と、そんな自然に抱かれた山村を眺めます。

カフェ車両でランチボックスが配布されました。
ツナ入りのクスクス(米粒くらいの大きさのパスタ)は非常食にしては美味しかったです。

途中のChambery駅で停車時間が長引き、パリでの乗り継ぎが怪しくなってきました。
とはいえ、私にできることはせいぜいヤケ酒をして気を紛らわすことくらいです。
カフェは営業していなかったので、友人のお土産用にミラノで買っていたワインを開栓します。
やはり鉄道旅行はいいものです。

帰国後、ワインを渡す予定だった友人に今回のことを弁明すると、「分かりますよ。そりゃ酒呑みならそうなりますわなぁ。」だそうです。

気分よく車窓を楽しんでいるうちに、巡回していたトレインマネージャーと久々の再会を果たします。
「マサキ、元気そうにしているじゃないか。」
「ええ。おかげさまで。」
「それで、スーツケースはどこに置いてあるんだい?」
周りから笑いが起こりました。

フランスに入ってから車掌が増えているようで、彼が新しく乗務してきた車掌に私のことを紹介しています。
期せずして有名人になってしまいました。

リヨン郊外から高速線を時速300㎞で走る

列車はリヨン郊外から高速線に入り、ようやく最高速度300㎞の本領発揮となります。
畑・牧草地のある丘陵地を急ぎます。
絶景区間は終わりましたが、この辺りはフランスらしい風景です。
なお、TGVは競合するフレッチャロッサと異なりリヨン市街に寄らず、外縁部を通過していきます。

夕日が起伏のある大地を転がり落ちるころ、まるで日本のように延々と続く車内放送が始まりました。
パリの乗り換え案内をしているようです。

パリの駅はパリ・リヨン駅

19時15分過ぎ、Paris Gare de Lyon(パリ・リヨン駅)に到着。
7時間+6時間余りの長い旅が終わりました。
これからパリ・東駅へと地下鉄を乗り継がなければなりません。
かなり際どい時間ですが、友人のようになったトレインマネージャーを探し出して、謝罪と感謝を伝えた後、固く握手を交わして別れます。

この駅はとても広く、ホームは3つの区画(HALL1~3)に分かれており、しかもそれぞれが結構離れています。
接続する地下鉄の路線も多いので、時間に余裕を持って行動しましょう。

HALL1とHALL2を繋ぐ通路
ここも格式ある内装

後になってそう書くのは簡単ですが、その日の私は気がふれたように地下鉄駅を走り回り、本当にギリギリでウィーン行き夜行列車に間に合いました。

歴史あるパリ・リヨン駅

最後に、とりあえずは良い思い出になりましたが、読者の皆さんはネームタグを忘れないように。

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予約方法と費用

予約する前にTGVとフレッチャロッサの比較検討から

TGVの予約はフランス国鉄、SNCFのサイトから手数料なしで行うことができます。
しかし、パリ~トリノ・ミラノには競合するフレッチャロッサも運転されており、こちらはSNCFからは予約・照会できません。
そのため、まずRAILEUROPEのような代理店のサイトで時間を調べてから、公式サイトで予約するのが良いかと思います。

その際、具体的な駅名ではなく都市名で検索しましょう。
というのは、今回の場合だと、TGVが乗り入れるミラノの駅は中央駅ではなく、Milano Porta Garibaldiという別の駅だからです。

2つのクラス×3つのレート

さて、SNCFのサイトからTGV(パリ→ミラノ)を予約しましょう。
先に目的地、次に出発地を選びます。
乗客の属性などを入力して、下にあるSee Priceのボタンを押します。

1日3往復の直通TGVが検索されました。
2カ月程度先の日にちを照会しているので、かなり安い料金が出ています。
今回は一番上の便の1等車を選択します。

2等車、1等車それぞれにMini,Prima(2等ではSeconda),Liberte Primaという3つのレートがあります。
これらはチケットの自由度です。

  • Mini→変更・返金不可
  • Prima→2日前以降の返金・変更には15€の手数料が必要
  • Liberte Prima→出発の30分後まで返金・変更可能

今回は一番安いMiniを選びます。
1等車の場合は座席指定ができるので、Select your seatから座席選択画面に移ります。

なお、2等車の場合はシートマップから選ぶことはできません。
次の写真のように窓側・通路側の希望を出すことはできます。

Validate the basketで先に進みます。
その後、名前・メールアドレス・電話番号といった乗客情報を入力します。
電話番号は最初の0の代わりに+81を付けます。

最後にクレジットカード情報を入力します。
決済成功するとチケットが添付されたメールが送られてきます。
また、スマホにSNCFのアプリを入れておくと現地で便利です。

ところで、SNCFのサイトは時々海外のクレジットカードをはじくことがあるようなので、その場合は後日試してみるか(それでいけることもある)、代理店のサイトで予約することも検討してください。

費用の最安値は2等が29€、1等が39€

この章の一番上の写真にある通り、最安値は2等車で29€、1等車でも39€です。
このくらいの価格差なら1等車の方がおすすめです(特に一人の場合)。
Liberte Prima(Seconda)のレート、つまり定価が2等車149€、1等車189€なので、約80%の割引を受けられることになります。

最安価格にどうしても目がいきがちですが、ある程度自由度のあるPrimaのレートも、それほど値段が変わらない割には有利な条件なので、検討する価値はあると思います。

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リヨン~トリノの高速新線が開通予定

パリ~ミラノの7時間の旅のハイライトは、リヨンからトリノまでのアルプス越えです。
しかし、2026年にこの区間でも高速新線が開通する予定で、今までの素晴らしい景色は幾分失われることになるでしょう。
それは確かに残念ではありますが、鉄道の発展にとっては必要なものです。

アルプス越えのイタリア側
線路設備の形からも歴史が感じられる

高速新線経由になれば車両が2階建ての新型TGVに置き換わり、サービスレベルも向上する可能性があります。
付け加えれば、線路や車両が新しくなり、今回私が遭遇したような悲劇が起こるリスクも低下します。
現状、フレッチャロッサにやや押され気味のTGVですが、これを機に巻き返しを期待したいものです。

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