【TGVとフレッチャロッサ】パリからトリノ・ミラノまでの高速鉄道はどっちがおすすめ?

ヨーロッパ鉄道

フランスの首都パリと、北イタリアの中心都市ミラノ。
2つの魅力あるファッションの都を2種類の高速列車が結んでいます。
1つがフランス国鉄のTGV、もう一つがイタリア国鉄のフレッチャロッサです。
いずれもその国を代表する列車で、互いに競合する立場にあります。

両方の列車に乗車した私が、TGVとフレッチャロッサを比較しながら、どちらかがおすすめかを解説していきます。

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パリ~ミラノの所要時間は7時間

TGVもフレッチャロッサも最高速度は300㎞で、パリとミラノを約7時間で結んでいます。
全座席に充電用のコンセントがあり、車内でWi-Fiを使うこともできます。
長時間乗車となりますが、カフェバー(ビストロ)車両があり、飲み物・アルコール、レンジで温める簡単なホットミールも買うことができます。

フレッチャロッサのビストロで購入したラザニアと赤ワイン

後述するように経由地は若干異なる部分もありますが、基本的にはルートは大して変わらず、国境付近のアルプス越えの車窓風景は大変綺麗です。
飛行機よりもはるかに時間がかかりますが、「移動」にとどまらない「旅」の一部として考えれば魅力的だと思いますし、実際に鉄道会社の予測を越えた乗車率を実現させています。

国境付近、フランス側の車窓
国境付近、イタリア側の車窓

いずれも航空運賃と同じような需給に合わせた変動料金制で、早めに予約するほど安くなります。
例えばパリ~ミラノの2等車だと最安値は29€というオファーもあります。
同じ日でも列車によって価格差があり、一般的にTGVとフレッチャロッサのどちらが安いという明確な傾向はありません。

ということで、どちらを選んでも間違いではないことをまずは理解していただけたと思います。
以上を踏まえたうえで、両者を比較していきます。

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結論:総合的にフレッチャロッサがおすすめ

結論として、フレッチャロッサの方が全体的なスペックが高いです。
以下、その理由を列挙します。

理由①:ミラノ中央駅を発着する

両方ともパリではParis Gare de Lyon(パリ・リヨン駅)を発着しますが、ミラノの駅は異なります。
フレッチャロッサは市内中心部にあるMilano Centrale(ミラノ中央)駅を発着します。
この駅は非常に壮麗な行き止まり式の構造で、我々が思い描く「ヨーロッパのターミナル駅」そのものです。
中央駅だけあって周辺にはホテルやレストランが数多くあります。

ミラノ中央駅
ミラノ中央駅の通路

イタリア国内・国外の列車も多くがミラノ中央駅を発着するので、特にミラノから乗り継ぎがある場合はフレッチャロッサが有利です。
TGVの場合は一つ前のTurin Porta Susa(トリノ・ポルタ・スーザ)駅で乗り換える方が便利です。
しかしそれでも、ミラノ中央駅の方がネットワークが充実しています。

一方のTGVはMilano Porta Garibaldi(ミラノ・ポルタ・ガリバルディ)駅を利用します。
中央駅からは1.5㎞しか離れていませんが、駅の規模・格・利便性でかなり劣ります。

理由②:車両が新しく快適

フレッチャロッサに使われるETR1000という形式は、2010年代半ばに登場した新型車両です。
そのため乗り心地が良く快適に過ごすことができます。
座席はやや狭く見えるかもしれませんが、実際座って見ると掛け心地は良好です。

パリ~ミラノのフレッチャロッサの2等車の車内
フレッチャロッサの2等車の車内
パリ~ミラノのフレッチャロッサの1等車の車内
フレッチャロッサの1等車の車内

TGVは近年主流となっている2階建て車両ではなく、やや古めの通常の平屋建て構造の車両が使われています。
こちらも車内インテリアがとてもセンスを感じられるものに仕上がっていますが、快適性という観点ではフレッチャロッサに軍配が上がります。

理由③:1等車にウェルカムサービスがある

長時間乗車になるため、座席クラスは1等車にするのがおすすめです。
ちなみに、フレッチャロッサでは2等車を「スタンダード」、1等車を「ビジネス」と呼んでいますが、本記事では2等車・1等車で統一します。
フレッチャロッサの場合、1等車の客には飲み物やスナック類のウェルカムサービスがあります。
必要とは言えないものの、あるとお得で嬉しいサービスです。
逆にTGVの1等車にはこうしたサービスはありません。

フレッチャロッサのウェルカムサービス
ワインは自身で購入したもの

なお、フレッチャロッサには特等車のエグゼクティブクラスがあり、TGVには相当するクラスはありません。
エグゼクティブクラスは座席数が少なく、値段も他より割引率が低いので、実際に利用する人は限られます。

理由④:リヨンに停車する

リヨン市内

パリから直接イタリアに行く人には関係ありませんが、フランス南東部の国内第二の都市リヨンに寄ってからイタリアに乗り込むのはいかがでしょうか?
特に7時間の乗車は長すぎると感じる方は、このプランを採用するのがおすすめです。

こうした柔軟な計画ができるのはリヨン中心部を経由するフレッチャロッサだけです。
停車する駅はLyon part-Dieu駅、市内で最も大きく中心となる駅です。
TGVはリヨン郊外を通過してしまうため、利用できる主要都市はパリ・トリノ・ミラノのみになります。

以上、総合的な魅力はフレッチャロッサの方が高い、という話をしてきました。
今度は逆にTGVのアドバンテージについて述べていきます。

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TGVにも利点はある

利点①:向かい合わせの座席が少ない

一つ目の要素は座席配置です。
フレッチャロッサは座席そのものの快適性には問題ないのですが、2等車・1等車共にほとんどが向かい合わせの構造(つまりボックスシート)になっています。
向かい合わせでない席もあるのですが数が少なく、既に予約されている可能性も考えられます。
これは日本の特急や新幹線では一般的ではないので、ストレスに感じる人は多いと思います。

その点、TGVだと座席の回転はできませんが、向かい合わせの席は少ないです。
特に一人旅の際は1等車の1人用座席は貴重ですし、二人旅でも2人掛け座席を好む人にとって、TGVの1等車は検討に値します。

パリ~ミラノのTGV2等車の車内
TGV2等車の車内
パリ~ミラノのTGV1等車の車内
TGV1等車の車内

利点②:パリ~トリノは所要時間が短い

前の章でフレッチャロッサはリヨンに停車する話をしましたが、逆にそのためにパリからトリノまではTGVよりも時間がかかっています。
トリノまでの所要時間はTGVが5時間半、フレッチャロッサは6時間です。

それでいてパリからミラノまではフレッチャロッサの方が少しだけ速いのは、トリノ~ミラノをフレッチャロッサが高速線を走るのに対して、設備が対応していないTGVは在来線を通るからです。

利点③:ユーレイルパス所持者は割引価格で利用可能

ユーレイルパスを所持している人はTGVのみ割引料金で乗ることができます。
フレッチャロッサには無効です。

もっとも、この割引料金が意外と高く、1等車では45€かかります。
1カ月くらい前に予約すると、このくらいの価格で普通にチケットを買うことができます。
個人的には、ネット予約が当たり前かつ全席指定で料金変動制の列車がメインとなった現代、ユーレイルパスは時代遅れの商品だと思っています。

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高速新線開業でTGVも巻き返しなるか?

フランスから周辺各国への高速列車は、ルイ14世やナポレオンの夢を体現するように、フランス国鉄のTGVが相手国の国鉄と共同で運転されているものが多いです。
国際列車タリスも車両はTGVベース、運行会社の過半数の株式をフランス国鉄が所有しています。

TGV

パリ~ミラノも、かつてはフランス・イタリア両国鉄が共同でTGVを運行していました。
しかし、フレッチャロッサがフランスに反旗を翻し、既存のTGVを上回る(と本記事では主張している)サービスを提供しています。

隣り合う国の政府同士が仲が悪い状況はお互いの国民には大して利益になりませんが、国鉄同士の確執は、むしろ乗客にとって自由競争による恩恵をもたらします。
2026年、リヨン~トリノに高速新線が開業する予定で、これを機にTGVにも新しい車両が投入される可能性があります。
アルプスを跨いだフランスとイタリアの鉄道が、今後どんな展開になるか楽しみです。

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