ドイツの高速鉄道ICEの一等車でミュンヘンからベルリンへ【予約方法・費用など】

ドイツ・オーストリア・中欧

ヨーロッパの大国ドイツの主要都市間移動では、国内各地で網の目のように運転される新幹線ICEイーツェーエー(Inter City Express)が便利で速く、そして大変快適です。
実際鉄道好きの中でも、世界を牽引する日欧の高速鉄道のうちドイツのICEに乗るのが一番という人が多いです。

2022年10月中旬、ICEで南ドイツの中心都市ミュンヘンから首都ベルリンを目指しました。

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ドイツ新幹線ICEの最高速度は300㎞、フランスでは320㎞も。

初代ICE車両
2016年10月、ミュンヘン中央駅にて

ICEが登場したのは意外と遅く、ドイツ再統一の翌年1991年のこと。
初代ICEは、シャープな形状の新幹線やフランスのTGVとは違って、機器の代わりにジャガイモが詰まっていそうな、顎の大きな車両です。
とにかく、いかにもドイツらしい質実剛健な高速列車でした。
やがて高速鉄道網は旧東ドイツにも達し、ICEはドイツ国内を網の目のように駆け巡っています。

2000年に登場したICE3は、ややスマートさを増した電車です。
ドイツで初めて最高速度300㎞を実現したのもこの車両で、現在は国内各地で活躍する主力車両となっています。

現在の主力車両ICE3
2008年3月、フランクフルト中央駅にて

さらにICE3は、戦後ドイツの基本精神であるヨーロッパ周辺諸国との協調にも精を出し、オランダ・ベルギー・フランスへの直通列車にも使われています。
最高速度はドイツ国内では300㎞ですが、フランスの高速線ではTGVと同じ320㎞を出しています。
本記事の乗車記もICE3を利用しています。

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ICE3の車内・サービス

多種多様なクラスの名称が用いられる昨今のヨーロッパ高速列車ですが、ICEの客室はシンプルに二等車と一等車から成ります。

二等車の車内と座席

ICE3の二等車の車内
ICE3の二等車の車内

ICEの最大の魅力はその上質なインテリアにあります。
強者揃いのヨーロッパの高速列車の中でも、快適性はICEが最高との呼び声高いのも納得です。
二等車は通常の4列シートですが、これでも十分なレベルです。
全席コンセントあり、Wi-Fiも利用可能です。

ICE3の二等車の座席
ICE3の二等車の座席

ICEの客室は基本的に新幹線と同じ「オープンサロン」ですが、下の写真のように一部で昔のヨーロッパのコンパートメントタイプもあります。

一等車の車内と座席

ICE3の一等車の車内
一等車の車内

一等車は1&2列の座席配置です。
座席は二等車のものよりさらに高級感があります。

ICE3の一等車の座席
一等車の座席

また一等車では、食堂車のスタッフが注文を取りに時々(特に駅出発時など)客室を巡回します。
頼んだ飲み物や食事を自分の座席に運んでくれますが、無料サービスではないのでそこは間違えないように。

本格的な食堂車「ボードレストラン」がある

食堂車の内部

ICEのもう一つの魅力が食堂車の「ボードレストラン」です。
カフェテリア・バーと呼ばれる軽食堂車ではなく、ウェイターが陶器の皿に盛られた料理を給仕する本格的な食堂車です。
しかもビールも本場のグラスに入れてくれるので、雰囲気は最高です。

2016年10月

食堂車は全てのICE編成にあるわけではなく、軽食堂車「ボードビストロ」だけのものもあります。
また食堂車の車両反対側のエリアも下の写真のようなバー形式です。

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乗車記:停車駅の少ないICE Sprinter

ミュンヘン中央駅発。割引一等車ではラウンジは使えない。

南ドイツ最大の都市ミュンヘンは天気良好。
前日夜にはおどろおどろしい屋敷に見えた新市庁舎も、バルコニーに花を飾って無骨な時計塔を青空に突き出しています。

ミュンヘン新市庁舎

ミュンヘン中央駅など主要駅にはDBラウンジがありますが、一等車でも割引チケットでは利用できません。
さて、今回乗車するのはミュンヘン中央駅を12時少し前に発車するICE Sprinter(イーツェーエー・シュプリンター)です。
ベルリンを経由して北ドイツの港湾都市ハンブルクまで行く列車で、車種はドイツ国内外で幅広く活躍するICE3です。

ところで、ICE SprinterとはICEのうち停車駅の少ない速達タイプです。
普通のICEが「ひかり」や「さくら」だとすると、ICE Sprinterは「のぞみ」「みずほ」に当てはまります。
特に料金や車両が異なるわけではありません。

列車は定刻にミュンヘン中央駅(Muenchen Hbf)を出発。
新市庁舎や聖母教会のある観光エリアは、半ズボンに羽飾りのついた帽子をかぶった陽気なビール腹が歩いていそうな雰囲気ですが、列車から市内を見ると自動車・電機メーカ―が本社を構える産業都市らしい眺めでした。

ここで駅で購入したビールを開栓。
ミュンヘンを出る時も、やはりこれが欠かせません。

ミュンヘンのビール
※本章1枚目の写真と同じ教会の鐘楼が缶のイラストに描かれているのに気づきましたか?

当時、ドイツの列車内ではFFP2マスクの着用義務がありました。
乗客は皆マスクはしているのですが、実際は普通のマスクの人も多かったです。
何より、食堂車のスタッフのマスクがFFP2ではありませんでした。

ドイツの田園風景は森林が多いなと毎回思います。

ニュルンベルクを過ぎ、食堂車でランチ

1時間少々でバイエルン州第二の都市のニュルンベルク中央駅(Nuernberg Hbf)に到着。
ここはドイツ初の鉄道が開通した都市ですが、それ以外でも歴史・グルメ(ソーセージ)・クラシック音楽のいずれかに通じている人なら興味をそそられる場所でしょう。

2023年中にニュルンベルクを訪問予定

ニュルンベルクを出た後に食堂車へ行きました。
4人席の向かいにいた40歳代くらいの男性が英語で話しかけてきました。
「貴方のビールが来た。これでマスクを外せるね。」
どうやら彼もマスクをするのが嫌で食堂車に来ているようです。

「飛行機ではマスク着用義務は撤廃されたのに、鉄道は普段から利用するという理由でICEまでマスクを強要されるのはけしからん」と熱弁します。
もはやマスクが民族衣装となった、近代国家に値しない祖国の事情を思い出しながら、私は「左様。」と深く頷きます。
「日本ではどうか?」と聞かれて「強制はされていないがほぼ全員がしている」と答えると、特に驚いた様子もなく、「そんなもんだろうね」といった感じで受け止められました。
ドイツ人は日本人のことを、良くも悪くも、正しく認識している(東欧のようにステレオタイプな幻想を抱いていない)人が多いです。

その後、話は時事ネタに。
「日本ではウクライナ戦争はどう捉えられている?」
「もちろん、不当な侵攻でロシアを制裁すべきと思われている。一方で日露は隣国同士なので、エネルギーや漁業では協力関係がある。」
「ドイツとロシアも少し前までは友人だった。ノルドストリーム(ガスパイプライン)も建設され、そのおかげでエネルギーはとても安かった。」
そして、彼が低いエネルギーコストを前提をしたクリーンエネルギー政策の失敗について語っていた時、私の料理が運ばれてきました。

ハーブ入りソーセージとビール
ランチセットで安かった

すると、彼は切りのいいところで話をピタリと終え、パソコンを取り出し、眼鏡をかけ、マスクは外したままで仕事を始めたのです。
「なるほど」と私は納得しました。
これがドイツ人の切り替え、環境問題への意識、そして無意味なルールは適当にやり過ごして本来の仕事に集中する生産性の高さ(日本では大抵逆になるのは読者諸氏ご存じの通り)なのだと。
まことに典型的なドイツ紳士の登場に感動しながら、ブラウンソースのハーブ入りソーセージとマッシュポテトをビールと共にいただきました。

窓の外を見ると、国土の中央部の丘陵地に敷かれた高速線を北に走っているようです。
ちなみに、ドイツの高速線は南北に縦貫する路線から先に建設されました。
東西に分かれていたため、西ドイツは東ドイツへアクセスする路線を計画できなかったからです。

北ドイツに来ると地形は平坦に

やがて、景色は平坦になってきました。
山がちな南部と比べてドイツ北部は比較的平地が多いです。
ドイツの東西は政治的に唐突にこしらえられた区分ですが、南北は自然や歴史に基づいたもっと奥深い区分けです。

高速線を引き続き走って、まもなくハレ中央駅(Halle Hbf)に停車。
ここはもう旧東ドイツ領です。
かつて鉄のカーテンが敷かれていた国境も、今は高速鉄道が行き来しています。
先ほどから風車がよく見られます。

ベルリンが近くなってきました。
食堂車のスタッフが通りかかったのでカプチーノを注文します。
紙コップではなく、きちんとしたコーヒーカップを片手に、最後の30分を味わいました。

ベルリン中央駅に到着

5分程度遅れてベルリン中央駅(Berlin Hbf)に到着しました。
ヨーロッパではこのくらいは誤差範囲内です。
なお、「ドイツは日本人同様に真面目で時間も正確」というイメージが強いですが、残念ながらドイツの鉄道の定時性は期待ほど高くはありません。

ところで、私が今回乗ったICEは乗客にはマスクを強要するくせに、自身はずっと口を開けたままで走るのはけしからぬことです。
食堂車のドイツ的紳士も同意見でしょう。

プロイセン・ドイツ帝国・東ドイツ、そして現代ドイツの首都として、急激な変化を体験してきたベルリンは、区画によって雰囲気が全く異なるクワトロピザのような街です。

近未来的なポツダム広場
2016年10月
東ドイツ時代の雰囲気を色濃く残すカール・マルクス・アレー
2017年10月
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予約方法と費用

予約はドイツ鉄道(DB)のサイトから行うことができます。
以下、そのやり方を写真付きで解説します。

列車選択まで

まずはトップページにアクセスして、日付や区間などを入力します。
駅名は中央駅なら都市名だけでもかまいません。
“München”(ミュンヘン)は”Muenchen”で代用、英語ではMunichです。

列車候補が出てきました。
一番上の列車名の横にSに似たマークがついていますが、これがICE Sprinterです。
料金は特に変わりませんが、他のICEと比べても所要時間が明らかに短いのが分かります。
今回はこの7時42分発のICE Sprinterを予約します。

なお、右上の赤線を引いたShow our best pricesにチェックを入れると、下の写真のように時間帯ごとに値段の安い列車から順に表示してくれます。

料金カテゴリーはSparpreisがおすすめ

列車選択が終わると、今度は料金カテゴリーを決めます。
要するに、チケットの自由度が低い代わりに安くするか、自由度が高い代わりに高くするかの問題です。
一番安いSuper Sparpreisはキャンセル不可です。
二番目に安いSparpreisは手数料を払えばキャンセル可能で、市内交通のチケットも含まれているものの、値段はSuper Sparpreisとさほど変わらないのでおすすめです。

一等車を予約する場合は赤丸で囲った1st classの所にチェックを入れます。
追加費用はカテゴリーによって異なります。

その次の画面ではチケットの受け取り方法を決めます。
デフォルト通りにPDFをダウンロードする形式にしましょう。
下にスクロールすると座席指定の選択です。

料金カテゴリーがFlexpreis Plusまたは一等車以外の場合、座席指定は有料オプションになります。
シートマップからは選ぶことはできませんが、窓側・通路側の他に、オープンサロン・コンパートメント、静かな車両かどうかを決めることができます。

クレジットカードが使えない時はPayPalで支払い

その後支払い方法選択画面です。
仮にクレジットカードの認証で問題があって使えない(短期間に集中して海外サイトで買い物をすると時々はじかれる印象)時でも、PayPalで支払いを済ませることができます。
決済完了すると、二次元バーコード付きのチケットが添付されたメールが届きます。
プリントアウトするかスマホに保存しましょう。
メール自体はチケットではないので要注意です。

もしかしたら、私のようにコロナで旅行を中止するなどして、返金相当額のバウチャーを持っている人がいるかもしれません。
その場合は支払い方法選択画面を下にスクロールした所のチェックから番号を入力します。

ちなみに、私は2020年4月分のDBの予約をキャンセルする時、WEBサイトでは「メールで問い合わせをしても莫大な量を処理するので時間がかかる。○○日に専用フォームをつくるから、そこを使うことを強く勧める」と書いてあり、実際にすぐに手続きが完了してバウチャーが送られてきました。
一方、JR東日本のえきねっと予約のキャンセルは電話対応のみでしたが、当然ながら全く繋がらず、結局諦めて手数料を払ってキャンセルしました。
日独の労働生産性の歴然たる格差を典型的に示すエピソードです。

途中下車も追加費用無しでできる

さて、ミュンヘンから途中のニュルンベルクに寄ってからベルリンに行きたい、と考える人がいるかもしれません。
それを無理なく可能にしてくれるのがStopoverです。

ストップオーバーをする場合、トップページで赤い検索の横にあるFurther optionsをクリックします。

するとより細かく条件を決めることができます。
Stopoverのプルダウンを開いて、青で囲った部分の①途中下車する回数、②途中下車する駅、③途中下車する時間の長さを入力します。

他は通常通りに列車を検索すると、上の写真のように料金は直行と同じで、ニュルンベルクで3時間(今回の場合)以上間隔が空いたプランが提示されます。
是非活用してください。

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輸出大国ドイツの会心作

ロシアの高速列車「サプサン」
2011年10月、モスクワ・レニングラード駅。

ドイツ国内と周辺国で一大勢力を築いたICE3シリーズは、そのバリエーションの輸出という形でスペイン・英仏海峡のユーロスター・中国・ロシア(こちらは本国ドイツからの部品供給が不可能になったため元気にしているか不明…)にまで進出しています。

高い性能を誇るだけでなく居住性も大変優れたICEは、ヨーロッパにおいてフランスのTGVと双璧を成す存在です。

それは、工業力・輸出力と生活の質を高い次元で両立させたドイツそのものといってよいでしょう。

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