ローマからシチリアのパレルモへ、夜行列車寝台車の旅【予約方法や費用など】

ヨーロッパ鉄道

南北の経済格差が大きいイタリアでは、ナポリ以北には高速鉄道が張り巡らされているものの、それ以南となると列車の速度は速くありません。
しかし夜行列車を使えば、ローマやナポリを夜に発って翌朝にシチリア島に着くという、効率の良い移動ができます。

2022年10月、ローマからシチリアのパレルモまで個室寝台車を利用しました。

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ミラノ・ローマ・ナポリからシチリアへ

ローマからナポリを経由してシチリア島へ向かう夜行列車、インターシティ・ノッテ(Intercity Notte:「夜行特急列車」の意味)が毎日運転されています。
ローマからシチリアの州都パレルモまでの所要時間は約13時間です。
途中でパレルモ行きの編成とシラクサ行きの編成に分かれます。

また、北部のミラノを夜出発する列車もあります。
ただ、所要時間が20時間を越えますし、パレルモ到着も夕方になるので、ローマかナポリまで高速列車を利用した方が良いと思います。

さらに、昼間のインターシティ(Intercity)もローマから出ています。
景色が楽しめるのは大きなメリットですが、1日がかりの移動となるので、よほど鉄道旅行が好きでなければ夜行列車を利用すべきでしょう。

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寝台車・クシェットの車内とサービス

シチリア行きの夜行列車の編成は個室寝台車と4人用の簡易寝台車から成ります。
座席車はありません。
さらに寝台車には2種類のタイプがあり、各部屋にトイレ・シャワーが付いている1~2人用の「エクセルシオール」と、トイレ・シャワーの代わりに洗面台だけがある1~3人用の「デラックス」とに分けられます。
紛らわしいですが、通常の寝台車が「デラックス」です。

なお、本記事の乗車記ではデラックス利用のパレルモ行きを収録していますが、帰りのパレルモ発の便ではエクセルシオールに乗っています。

トイレ・シャワー付き個室寝台、エクセルシオール

一人で利用したが、なぜか二段ベッドになっていた。

最もグレードが高いのがシャワー・トイレが各部屋にあるエクセルシオールです。
この設備は全ての車両にあるわけではなく、ローマ発パレルモ行きの便にのみ連結されています。
また、車両のうち半分が4室のエクセルシオール、残り半分が6室のデラックスという構造になっています。
その意味でも希少価値の高い個室寝台です。

上の写真の右手に見えるドアの先が、下の写真のトイレ・シャワー室です。
洗面台もここにあります。

ちなみに、私が利用したエクセルシオールでは、シャワーが故障していて水が出ませんでした…

シャワー・トイレなしの個室寝台、デラックス

通常のデラックス寝台は、トイレ・シャワーの有無以外の基本的な構造はエクセルシオールとあまり変わりません。

エクセルシオール車両のデラックス
室内は車両によって若干の差異がある

内装がエクセルシオールのものと若干異なりますが、これは寝台車の種類による違いではなく、車両ごとの差異です。

上の写真の左端に見える取っ手を引くと、下の写真の洗面台が現れます。
また、個室寝台車には部屋の中に充電用コンセントがあります。

4人用簡易寝台車、クシェット

上段ベッドを収納した状態

コンパートメントの中に2段ベッドが2つずつ並んでいるのが、簡易寝台のクシェットです。
ICNでは「コンフォート」と呼んでいます。
他人と相部屋になるのが基本ですが、2~3人で排他的に使うこともできるようです。
また、ベッドにはカーテンがありません。

食堂車・カフェ等はない。軽い朝食あり。

乗車する際に気を付けることは、この列車には食堂車・カフェなどの設備はないということです。
飲み物やスナックくらいなら車内で買えるらしいです。

簡素な朝食が料金に含まれています。
内容は菓子パン・ラスクにスナック(どれも炭水化物)、飲み物はコーヒーまたは紅茶にジュースが付いています。
行きのデラックスの時は「コーヒーでいいか?」とだけ聞かれて「はい」と答えると、エスプレッソが運ばれてきました。
クシェットでは内容がさらに簡略化されているようです。

パレルモ行き「デラックス」寝台車の朝食

帰りの便は若干様相が違って、まず紙を渡されて好きな品目にチェックを入れるというやり方でした。
エクセルシオールとデラックスで異なるのか、たまたま列車によってサービスが違ったのかは分かりません。

結果的に、内容は行きのデラックスのものとあまり変わりませんでした。

パレルモ発「エクセルシオール」寝台車の朝食
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乗車記:メッシーナ海峡を列車ごと船で渡る

ローマ・テルミニ駅を1時間遅れで出発

私が今回乗車するのは、ローマ・テルミニ駅を20時31分に発車するインターシティ・ノッテ(Intercity Notte:「夜行特急列車」の意味)です。
チケットをかざしゲートを通過してホームに行くも、列車は到着が遅れているようです。
早く寝台車に籠りたい私はイライラしていましたが、イケメンのクルーたちは全く気にすることもなく、楽しそうにおしゃべりに興じていました。

列車が入線した時には出発時間を過ぎていました。

予約していたシングルのデラックス寝台車、つまりシャワー無し通常の個室へ。
派手な赤の座席に濃いめのシックな内装と、イタリアらしいセンスのある部屋です。
私が乗車したデラックスはエクセルシオールと同じ車両の部屋だったためか、ヨーロッパの個室寝台車の中でも快適な方でした。

通勤電車と同時にローマ・テルミニ駅を出発。
夜行列車での最高の風景は、通勤電車それに乗っている客です。
駅構内のスーパーで買ったトスカーナのキャンティ(イタリアワインの定番中の定番)を飲んでいると、1時間待たされたことなどどうでも良くなりました。

しばらくすると、マスクを着用(珍しい)した大人しそうな車掌が、水やアメニティーキットを持ってきました。

1時間ほど走ると船の明かりに照らされた港町が開けました。
昼間の列車で景色を見ながらシチリアに行くのも楽しそうです。
ナポリに着く頃に寝ました。

フェリーで海峡を渡りシチリア島へ

大きな振動で目が覚めました。
ブラインドを開けると、列車は船に乗り込んでいました。
ガッタンというジョイント音が船内に響き渡ります。

イタリア本土とシチリア島の間には橋やトンネルが無いので、列車ごとフェリーに搭載してメッシーナ海峡を通過します。
ヨーロッパ唯一の列車航送です。

一応列車の外に出ることもできるようですが、外は真っ暗ですし、真夜中に辛気臭い甲板をうろつくのも嫌なので部屋に戻りました。
実際に船で海峡を渡るのは約20分です。

何両かに分割されて船内に搭載される

シチリア島へ上陸

再度目覚めると、そこはシチリア。
まるで保養地の別荘のように愉快な家が、海岸沿いに並んでいます。
シチリアを舞台とした映画「ニューシネマパラダイス」の主題曲が爽やかに脳裏に流れます。

朝8時過ぎに朝食が運ばれてきました。
ちなみに、エスプレッソはおかわりできました。

地図上では長靴に蹴飛ばされた小石のように見えるシチリア島ですが、上陸後終着のパレルモまでは4時間くらいかかります。
パレルモ行きは進行方向右手が、シラクサ行きは左手が海側です。

結局30分程遅れてパレルモ中央駅に到着しました。
海と山に囲まれた南の果ての都市で、何となく鹿児島に似ています。

ちなみに駅構内には売店はありますが、あまり大きくありませんでした。
パレルモから本土を目指す場合は、街中で買い物を済ましておくことをおすすめします。

主要観光地は駅から徒歩圏内です。
午前中は土砂降りでどうなることかと思いましたが、昼からは暑いくらいに晴れました。

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予約方法と費用

トレニタリアの公式サイトから予約

シチリア行きのIntercity Notte予約は、イタリア国鉄のTrenitaliaのサイトから行うことができます。
その方法を写真付きで解説します。

Roma(Tutte-)はローマの全駅の意味

まず、トレニタリアの英語ページのトップから、発着駅と日付・人数を選択します。
ローマのイタリアでの綴りはRomaです。
Roma TerminiからPalermo Centraleの区間を検索します。

列車選択画面です。
表示されている料金は最安値です。
ここでは乗り換え無しのフィルターをかけていますが、そうでない場合は途中まで高速列車のフレッチャロッサを使うプランも出てきます。

ところで、12月中旬以降で検索をかけると、私も利用した20時台発の夜行列車が表示されません。
ヨーロッパでは毎年12月にダイヤ改正が行われますが、それを機に減便された可能性があります(公式発表未確認)。

20時12分発の列車を選択して、次に設備を決めます。
ここでイタリア語が出てきますが、慌てる必要はありません。
serviceのプルダウンからクシェット(Comfort)・デラックス寝台(Deluxe)・エクセルシオール寝台(Excelsior)のどれかを選びます。
クシェットが2つあるのは、promiscuoが性別不問、donnaが女性専用の部屋(車両ではない)です。

隣にあるofferはチケットの自由度です。
一番安いSuper Economyは変更・返金不可ですが、割引なしのBASEはいずれも可能です。
ここは重要なのですが、エクセルシオールの料金はBASEしかないため、他よりもかなり割高になります。

クシェットの場合は、すぐ下にあるpositionのプルダウンから上段か下段かを選ぶことができます。
また、フレッチャロッサなど昼間の列車では使える座席選択のCHOOSE SEATSは、この列車では活性化しません。
右下の赤いボタンを押下して進みます。
この段階でログイン画面が現れますが、登録しなくても先に進むことができます。

*(必須マーク)は付いていないが、電話番号は必要だった

乗客情報を入力します。
上の欄の名前・メールアドレス・電話番号は必須のようです。
電話番号は日本国内と同様に080‐で大丈夫です。

必要ではありませんが、Documentはパスポート、国籍はイタリア語でGIAPPONE(日本)です。
右下の赤いボタンで進みます。

最後に支払い画面になります。
クレジットカード情報を入力して決済が成功したら、登録したメールアドレスにチケット付きのメールが送られてきます。
印刷するかスマホに保存するかして、乗車時にQRコードを駅のゲートと車掌に提示すればOKです。

おすすめはコスパの良いデラックス寝台

さて、これまで説明してきた設備の中で「どれが一番いいか?」と疑問に思った方もいるでしょう。
私は費用対効果を考えて通常のデラックス寝台が良いと思います。

費用も一番安いSuper Economyだとクシェットが約50€、デラックス寝台が80€前後です。
この差額で、プライバシーが確保される寝台車の快適性・安全性を得られるのは、大変バリューではないでしょうか?
それにローマからパレルモまでの乗車時間は13時間なので、くつろぐ時間はたっぷりあります。

並走する通勤電車こそ、夜行列車にとって最高の「車窓」!

また、寝台車ならエクセルシオールも選択肢になりますが、こちらは先ほど説明した通り、割引が効きません。
参考までに、実際に私が乗車したデラックス(ローマ→パレルモ)の値段はBASE運賃だと216€のところ、Super Economy適用で75.9€、エクセルシオール(パレルモ→ナポリ)が269€です。

当然ながら個室内にトイレ・シャワーがあるというだけで、この価格差を正当化することはできません。
もっとも、夜な夜な寝台車で酒を飲むのが好きな私にとって、すぐそこにトイレがあるのは大きなメリットではありますが…

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郷愁の鉄道旅行

パレルモ大聖堂

ローマからシチリアへは飛行機で1時間で行くことができます。
しかし、夜汽車に揺られながら、そして船にまで搭載されてシチリアに上陸する体験は、ドラマチックな魅力があります。
もし、「ニューシネマパラダイス」で主人公の青年時代から航空機が発達していて、故郷シチリアは遠きにありて思うものでもなく、そしてローマから恋人と簡単に出会えていたら、我々はあの映画に感動するでしょうか?

東西南北の文明が交差するシチリアは、観光地としても大変興味深い場所でした。
今度は昼間の列車で1日かけて乗り込むことを、シチリア再訪の「大義名分」として楽しみにしています。

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