首都ローマをはじめ、ミラノ・ヴェネツィア・フィレンツェ・ナポリといった観光都市が並ぶイタリア。
これらの都市を移動するのに最良の移動手段が、イタリアの新幹線に当たる高速鉄道です。
イタリアの高速列車には2種類のキャリアがあり、一つは旧国鉄系のTrenitaliaが運行するフレッチャロッサ(Frecciarossa:「赤い矢」の意味)。
二つ目は新規参入した民間会社が運行するイタロ(Italo)です。
イタリアを何度も訪れ、両方の高速列車にも乗った私が、「どちらを選ぶべきか」にお答えします。
どちらもWi-Fi・コンセントあり、所要時間も同じ。
まず大前提として、どちらも速くて快適で安い、素晴らしい列車です。
最高速度は時速300㎞で、各都市間において経由するルートは同じなので、所要時間もほとんど差はありません。
例を挙げると、速達列車でローマ~ミラノは3時間、ローマ~フィレンツェなら1時間半弱です。
日本の新幹線で国内移動するような、利用しやすい所要時間だと思います。
また、一番安いクラスでも全座席に充電用のコンセントが設置されており、無料Wi-Fiも完備しています。
全席指定で、航空券のように早く予約するほど同じ席でも料金が安くなる変動制となっています。
正規料金の3分の1、4分の1で買うこともできるので、予定が決まったら早めに予約することをおすすめします。
なお、予約方法は各列車の解説記事にて写真付きで紹介しています。
ということで、「両方とも正解だから安くチケットが買える方、あるいは時間帯の都合が良い方を選んで大丈夫です」で終わっても間違いではありませんし、私もその方が楽です。
しかし、それではせっかく本記事を読んでくれている皆さんに対して不誠実・無責任だと思うので、私も敢えてポジションをとって、どちらに乗るべきか最大公約数的な答えを出します。
結論:おすすめはイタロ
私のおすすめはイタロです。
以下、理由を列挙していきます。
イタロを選ぶ理由①:料金が安い
一つ目の理由は費用です。
冒頭で「両方とも安い」と書きましたが、全般的にイタロの方がフレッチャロッサよりもさらに安い傾向にあります。
次の二つの料金表を見比べてください。
どちらも2カ月以上先の日にちを照会しているので、最安値が出そろっていると思ってかまいません。
もちろん区間はミラノ~ローマで合わせてあります。
クラスの呼び名は異なりますが、いずれも青・赤・緑で囲った部分が2等車・1等車・特等車に相当します。
また、同じクラスでも下に行くほどチケットの自由度が下がり、その分安くなっています。
さて、2つの料金表を見ると、下のイタロの方が全体的に安いということが分かると思います。
特に変更・返金不可なeXtra MAGICのSmartクラスの19.9€は、500㎞を超える高速列車の値段としては破格です。
ちなみに、どこかで「イタロは安い代わりに都市郊外の駅を発着している」と聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それは昔の話です。
今ではイタロもローマ・テルミニ駅やミラノ中央駅といった、都市中心部のターミナル駅に乗り入れています。
イタロを選ぶ理由②:座席の向き
イタロがおすすめな理由2つ目は座席配置の問題です。
どちらも通路を挟んで2等車が2&2、1等車が2&1の横配列なのですが、座席の並び方が違います。
フレッチャロッサの場合、座席が(全てではないが)2列ずつ向かい合わせになっている構造(ボックスシート)が基本なので、2等車で4人未満、または1等車で1人利用だと、見ず知らずの他人と対面する形になります。
その点、イタロは全ての座席が車両中央部を向いている構造(集団見合い型)なので、そうした不都合は起こりません。
特に一人旅では1等車の1人掛け座席は貴重な存在です。
なお、イタロでもフレッチャロッサでも、予約の際に2~4€で好きな座席を指定することができます。
よって、イタロに乗って意図せずにど真ん中のボックスシートに当たってしまうことは基本ないので、ご安心ください。
イタロを選ぶ理由③:車内インテリアや清潔感で優る
物理的な寸法以外の客室の雰囲気も、イタロの方が明るく落ち着いたインテリアで、座席もより洗練されていると感じます。
2等車でも革張りのシートです。
また清掃も行き届いているので、全体的に車内は綺麗です。
なお、これは列車の外観についても言えます。
綺麗に磨き上げられたブランドとプライドを感じさせるイタロの佇まいは、幼い私を鉄道好きにしてくれた(してしまった?)故郷の阪急電車に通じるものがあります。
フレッチャロッサにも長所がある
さて、これまでイタロを選ぶべき理由を述べてきましたが、これらはあくまで最大公約数的な話です。
当然フレッチャロッサにも利点があります。
以下、それらを挙げていきます。
フレッチャロッサの長所①:軽食堂車、ビストロがある
何と言っても、まずはこれを挙げなければなりません。
フレッチャロッサにはビストロと呼ばれる、カウンター方式の軽食堂車があります。
コーヒーやワインなどのアルコールはもちろん、簡単なホットミールもここで購入することができます。
旧型車両では立ち飲みできるスペースがありますが、基本は自席に持ち帰ることになります。
対して、イタロには2か所にコーヒー・スナック類の自動販売機があるだけです。
フレッチャロッサと同様、1等車と特等車にはワゴンによるウェルカムサービスがありますが、どちらかというとフレッチャロッサの方が充実した内容でした。
ワインはビストロで購入した。
何しろ、新幹線の車内販売でホットコーヒーが復活しただけで狂喜乱舞しなければならない我々日本人にとって、異国の鉄道のビストロは貴重な体験です。
こうした価値観に重きを置く人は、迷わずフレッチャロッサを選びましょう。
フレッチャロッサの長所②:2等+αのプレミアムクラスがある
前章の料金表比較で気づいた方もいるかもしれませんが、フレッチャロッサにはイタロには無い2等と1等の間のクラス、PREMIUM(プレミアム)があります。
プレミアムは2等車のスタンダードと同じ座席配列(つまりボックスシート主体の2&2)ですが、座席は1等車に近い、より高級感のあるものになっています。
つまり、イタロは3クラス制ですが、フレッチャロッサは4クラス制なわけです。
もっとも、「座席の色が変わっただけの2等車を以てして選択肢が多いと表現するのは詭弁だ」と思う人もいるかもしれません。
しかし、プレミアムの付加価値は座席の色だけではありません。
重要なのは、プレミアムにも1等車と同様のウェルカムサービスがあるということです。
それでいて値段も2等車とあまり変わらないので、プレミアムはかなりお得なクラスだと思います。
切磋琢磨するイタリアの高速鉄道
イタリアという国の固定観念からか、イタリアの鉄道はよく遅れるとか、遅いというイメージを持っている人もいるかもしれません。
しかし、旧国鉄と新興の民鉄がハイレベルな争いを繰り広げながらお互いのサービスを高めている、非常に良い環境にあることが分かると思います。
イタリアは国家統一がヨーロッパの中では遅れたこともあり、多様性に富む国土が魅力的です。
高速鉄道の移動中も車窓を楽しみながら、有意義なイタリア旅行をしてください。
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