ポーランドからドイツへ、ベルリンワルシャワエクスプレス1等車の乗車記【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

ドイツとポーランドの両首都、ベルリン・ワルシャワ間には、その名もズバリ「ベルリンワルシャワエクスプレス」が運行されています。
所要時間はやや長いですが、食堂車付きの快適な列車旅を楽しむことができます。

2023年6月初旬、ワルシャワからベルリンまでベルリンワルシャワエクスプレスに乗車しました。

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ベルリン・ワルシャワ間の所要時間は5時間半

ドイツとポーランドの両首都を結ぶ列車が「ベルリンワルシャワエクスプレス(Berlin-Warszaw Express)」です。
列車種別としては「ユーロシティ(Eurocity)」、つまりヨーロッパ国際特急列車です。

ベルリンからワルシャワまでの距離はおよそ570㎞。
両都市間の所要時間はおよそ5時間半程度です。
概ね2時間毎、1日6往復が運転されています。

機関車が客車を牽く伝統的なヨーロッパスタイルの列車で、客車は全てポーランド国鉄の車両です。
また食堂車もポーランド国内線と同じ会社が運営しています。

旧塗装のベルリンワルシャワエクスプレス
旧塗装のベルリンワルシャワエクスプレス
2011年11月

途中経由する最も大きな都市が、ワルシャワから300㎞程度のところにあるポズナニです。
ここはポーランドで5番目に人口が多く街並みも綺麗な都市で、日本語の某ガイドブックにも載っています。
ベルリン・ワルシャワ間の所要時間が長すぎるなと感じる方は、ここで途中下車して観光するのも良いと思います。

ポズナニの街並み
2015年10月
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ベルリンワルシャワエクスプレスの車内・サービス

二等車・一等車それぞれコンパートメントタイプとオープンサロンタイプの2種類があります。

二等車の車内と座席

ベルリンワルシャワエクスプレスの二等車の車内
二等車の車内

二等車のオープンサロンタイプは通路を隔てて2&2列の座席配置です。
格別に快適というわけではありませんが、内装はすっきりして新しいです。
各座席にコンセントが付いています。
座席が車両中央部を向いている「集団見合い型」と呼ばれる車内です。
列車によってはオープンサロンタイプの車両がなく、全てコンパートメントタイプの客室になっているようです。

ベルリンワルシャワエクスプレスの二等車の座席
二等車の座席

この列車では撮り損ねたのですが、コンパートメントタイプは横3列の6人用です。
広さではこちらの方がゆったりしているので、他人と相部屋になってもかまわない人はこちらの方が良いかもしれません。

(参考)ポーランドの6人用コンパートメント
写真は国内線の格安急行

一等車の車内と座席

ベルリンワルシャワエクスプレスの一等車の車内
一等車の車内

一等車は1両だけで、オープンサロンタイプかコンパートメントタイプかは便によって異なります。
私が乗ったオープンサロンタイプは2&1列の座席配置で、やはり「集団見合い型」です。
また、コンパートメントタイプは二等車と同じ6人部屋です。
1列座席にこだわらなければ、正直二等車と比べてさほど付加価値はないと思います。

ベルリンワルシャワエクスプレスの一等車の座席
一等車の座席

なお、一等車の乗客にはミネラルウォーターとコーヒー・紅茶、チョコレート菓子の無料サービスがあります。

食堂車

ベルリンワルシャワエクスプレスの食堂車

1両全てが食堂車になっており、2人用と4人用の向かい合ったテーブルが並びます。
ポーランドの列車の食堂車は評判が良く、メニューも豊富で料金も結構安いです。
食事の他、コーヒーを自席にテイクアウトする場合にも使えます。

支払いはポーランドズロチだけでなくユーロも受け付けています。
また、ポーランド領内ではクレジットカードも利用可能です。

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乗車記

臨時措置でワルシャワ・グダンスク駅発

通常ベルリンワルシャワエクスプレスはワルシャワ中央駅(Warszawa Centralna)を経由しますが、私が乗車した時期は臨時ダイヤで、国際列車の多くはワルシャワ・グダンスク(Warszawa Gdanska)駅を発着していました。
中央駅から地下鉄で2駅ほどと近いですが、今一つパッとしない雰囲気。
日本風に言えば国鉄時代を、ポーランド風に言えば社会主義時代を思わせる駅舎です。

機関車のすぐ後ろ、先頭車両が私が乗る一等車です。

ワルシャワ出発時の一等車は、あまり混んでいませんでした。
まもなくチョコレート菓子とソフトドリンクが配られました。
線路工事でも行われているのか、前の機関車がずっと警笛を鳴らしています。

あまり変わり映えしない車窓

平原の国だけあって景色は実に開放的で、線路もカーブが少ないです。
駅の周辺以外はずっと畑が広がります。
地面には濃い緑色の木が点在し、真っ青の空には千切れ雲が散っています。

ポズナニ(Poznan)駅で乗客がかなり増えました。
土曜日の朝からベルリン旅行をするポーランド人かと思いましたが、彼らはドイツ語を話しています。
ちなみにポズナニを含むこの辺りは、1871年のドイツ統一から第一次世界大戦までドイツ帝国の領土でした。

ポズナニ駅付近

ポーランドの食堂車はリーズナブルでおすすめ

昼になったので混む前に食堂車へ向かいます。
注文したメインはズッキーニとチーズを豚肉で巻いた料理。
見た感じはチェコ料理に似ていますが、クネドリーキ(茹でパン)の代わりにそば粉か大麦のダンプリング添えなのが緯度の高いポーランドらしいです。

無濾過のビールも芳醇な味わいです。
ポーランドのお酒はウォッカとイメージする人がいるかもしれませんが、特に若い人はビールをよく飲んでいます。
これでポーランドズロチを使い果たし、心置きなくポーランドを去ることができそうです。

ベルリンワルシャワエクスプレスの食堂車の料理

西欧で高速列車が発展する中、今や中欧は食堂車や夜行列車が最も栄えている地域です。
それも旧態依然としたものが残存しているのではなく、サービスレベルの向上に努めているのです。

ドイツ・ポーランド国境のオーデル川を渡る

国境が近くなると少しカーブが多くなりました。
ちょっとした丘陵越えといったところでしょうか。

出発から4時間半以上経った13時過ぎ、ドイツ・ポーランド国境のオーデル川を渡ります。
つまりベルリンワルシャワエクスプレスの5時間半に渡る旅程のうち、そのほとんどがポーランド領です。
ここからベルリンまではあと1時間弱です。
表向きはともかく、これはドイツ人にとっては不本意な国境線かもしれません。

ドイツ・ポーランド両国ともシェンゲン協定加盟国なので、パスポートコントロールはありません。

川を渡り終えてフランクフルト(Frankfurt an der Oder)駅に到着。
ドイツにはフランクフルトという地名が2つあり、国際空港があり有名な方がフランクフルト・アム・マイン(マイン川沿いのフランクフルト)です。
こちらはフランクフルト・アン・デア・オーダー(オーダー川沿いのフランクフルト)です。

相変わらず似たような雰囲気のドイツ領を走ります。
やがて住宅地や工場が増え、黄色と赤の近郊電車が並走するようになるとベルリン市内です。
旧東ドイツ側にあるベルリン大聖堂などの名所も見えます。

ベルリン中央駅に到着

定刻通り14時5分にベルリン中央駅(Berlin Hbf)に到着しました。
通過式(行き止まり式ではない)の近代的な駅です。
土曜日の昼となれば、数多くの観光客でごった返しています。

ベルリン中央駅

ヨーロッパの都市では、たいてい何処かに中世や近世の面影が感じられます。
しかし比較的歴史が浅く、劇的な勢いで歴史を歩んだベルリンには近代と現代のみが同居しています。
「第二帝国」(1871~)、旧東ドイツ、そして現在の再統一されたドイツと、それぞれの時代背景ごとに異なる顔を見せるこの首都は、美しいとは言えなくとも面白い都市であることは確かです。

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予約方法と料金

予約開始は30日前から

ベルリンワルシャワエクスプレスの予約は、ドイツ鉄道(DB)・ポーランド鉄道(PKP)いずれのサイトからでもできます。
DBの方が使いやすいですが、PKPではシートマップから座席を選ぶことができます。
以下、PKPでの予約方法を解説します。

英語版のトップページにアクセスしたら、日付と発着地を入力します。
細かい駅名が分からなければ、”dowolna stacja”を選ぶとその都市の全駅を含むことができます。
カレンダーの部分だけポーランド語のままなので、数字で確認しましょう。
なお、ポーランドの列車は30日前にならないと予約ができず、他のヨーロッパ諸国よりも遅いです。

最安料金で二等車は25€、一等車は35€程度

列車候補が現れました。
料金はポーランドズロチ(zl)で表示されています。
1€≒4.4zl(2023年8月)なので、二等車の割引チケットで25€程度だと思ってください。
DBサイトで買うと同じ列車での若干高くなるようです。
また、一等車は二等車よりも10€くらい高いです。

上の写真は1か月後の料金を照会しています。
数日前など直近になるとそれぞれ倍くらいの料金になります。

さて、希望する列車の欄から”CHOOSE”を押すと、下の画面に移行します。

いろいろありますが、ここで決めるべき主な内容は人数とクラスです。
赤丸で囲ったオレンジのボタンで座席選択ができるので、見落とさないようにしましょう。

座席表から好きな席を選択できる

シートマップもどき
進行方向・窓側など必要な情報はある

このシートマップは一つ難点がありまして、とにかく重い。
私のPCでは上の写真くらいがせいぜいです。
これでも一応最低限の情報は揃っているので、好きな数字(座席番号)を選ぶことはできます。
写真では少し見づらいですが、十の位が同じ座席が同じコンパートです。
また、ここで各号車がオープンサロンタイプかコンパートメントタイプかどちらかが分かります。

その後いくつかの確認画面で名前やメールアドレスを入力します。
電話番号は必要ありません。
会員登録しなくても予約することができます。
なお、時間制限があり焦るかもしれませんが、ページが切り替わるごとにタイマーはリセットされるので心配は要りません。

まるでエラー画面のようなポップアップが出ると、商品をカートに入れたことになります。
ここまで来ればあとは支払いだけです。

真ん中のクレジットカード払いを選択します。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

途中下車するならDBサイトのストップオーバー

ここで、ベルリン・ワルシャワ間をポズナニでの途中下車を挟んで移動するケースを考えてみます。
通常に買うとベルリン・ポズナニ間とポズナニ・ワルシャワ間のチケットが2枚必要なのですが、それだと割高になります。
そこでDBサイトの「ストップオーバー」機能を使うと、ポズナニでの観光時間を確保したうえで通しのチケットを買うことができます。

トップページにアクセスして発着駅を入力する際、青丸で囲った”stopovers”という項目が現れるのでクリックします。

“add stopover 1″から駅名(または都市名)と滞在時間を入力します。
すると次の写真のようにチケットの価格はそのままで、ポズナニ観光後に別の便に乗ることができます。

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開放的な景色と国境

イギリスの無責任な戦争保証を信じて、ドイツに立ち向かい敗れたポーランド。
その後ヒトラーに代わって彼らを支配したのはスターリンだった。
写真はワルシャワ蜂起博物館

ベルリンワルシャワエクスプレスの車窓は単調ながら、その走りは快調です。
山間部で身を傾けながら機敏に走る日本の列車と違って、特急よりもやや速いくらいのスピードをずっと維持しています。

しかし、これを「日本人にとって羨ましい」と感じるのはあまりに無神経でしょう。
この平坦な地形のおかげで、ポーランドはドイツ・ロシア・オーストリアという周囲の大国から侵攻を受けやすかったという事実を無視することはできません。

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