ドイツの格安列車フリックストレイン(Flix Train)の乗車記【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

ドイツの列車というと、ドイツ鉄道(DB)が誇る高速列車ICEが我が世の春を謳歌しています。
しかし2018年、その独占的地位を揺るがすように民間オペレーターのフリックストレイン(Flix Train)が参入しました。
この新たな挑戦者は、スピードではICEには敵わないものの、高速バスのような格安運賃が魅力的です。

2023年6月初旬、ベルリンからハンブルクまでフリックストレインに乗車しました。

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ドイツ各地で運行、ダイヤは変則的

線路を走る格安高速バス

ドイツの高速列車、ICE(Inter City Express)といえばドイツ国内の勢力は言うに及ばず、その車両は各地輸出されており、ヨーロッパを代表するブランドとして君臨しています。
んなウォーレン・バフェットの言う「ワイドモート」(既存企業のブランドロイヤリティが高く、参入が難しい状態を「堀」に喩えた表現)に敢えて挑んだのがフリックストレインです。

ヨーロッパ各地で高速バスを運行するFlixBusが鉄道事業に参入したもので、バスと同じライトグリーンの車体が特徴的です。
機関車がリニューアルされた客車を牽くタイプの列車で、スピードはICEよりも遅く設備もシンプルな代わりに料金は本当に安いです。
ICEが新幹線だとすると、フリックストレインは格安高速バスの列車版と言えるでしょう。
もっとも、ドイツの鉄道は普通の在来線でもかなり速いので、日本における感覚よりも所要時間の差は大きくありません。

フリックストレインはドイツ国内各地(リンク先の各路線毎の”here”をクリックするとドイツ語の時刻表に飛べます)で運行されています。
本数はあまり多くなく、運転日も毎日ではない列車がほとんどなので、予定をたてるときは要注意です。

荷物持ち込み制限はあまり厳しくない

フリックストレインには荷物の重量・個数・サイズについて持ち込み制限があります。
しかし、飛行機と比べると基準はかなり緩いです。
7㎏以下のハンドバックと、80×50×30㎝以下で20㎏以下のスーツケースなら無料で持ち込むことができます。

そもそも車内で検札する時もあまりチェックしている様子は無く、どこまで運用が徹底されているのか疑問です。

キャンセルは可能だがバウチャーでの払い戻し

フリックストレインは料金が格安ながら、変更・キャンセルも可能です。
ただし、出発日から30日以内のキャンセルには手数料が必要です。
例えば7~29日前ならチケット代の75%、当日の出発15分以上前なら25%が払い戻しされます。

注意したいのはクレジットカードに払い戻されるのではなく、返金相当分のバウチャーだということです。
何カ月も前に予約しなくても十分安いチケットが手に入りますし、予約後も会社都合の列車の運休(その場合は手数料なしでキャンセル・変更できる)の可能性があります。
なので慌てて予約せずに、予定が固まってから購入することをおすすめします。

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フリックストレインの車内と座席

フリックストレインの車内

フリックストレインは二等車のみのモノクラスです。
車両そのものは古いですが、内装は新車と見間違うほど綺麗に仕上げられています。
車両端のデッキに出る扉の位置が、昔のコンパートメント型客車時代の名残をとどめています。
それにしても「環境意識高め」な若者受けしそうな内装です。

フリックストレインの座席

座席の前後の間隔は狭いです。
車内ではWi-Fiが利用でき、スマホを充電するコンセントもあります。

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乗車記【ベルリンからハンブルクへ】

6月初旬、日曜日の昼前のベルリン。
気温は30度近くまで上がり、街や人々の雰囲気はすっかり夏です。
なよなよしたアジア人旅行者だけが上着を羽織り、彼らの宗教衣装(マスク)を身につけています。

ベルリン中央駅

私が乗ったフリックストレインはベルリン中央駅(Berlin Hbf)を12時7分に出発します。
5分前にライトグリーンの列車が姿を現しました。
会社のイメージカラーそのものに明るくフランクなのはいいのですが、車体は結構汚れています。
それくらいなら他の列車でもよくあるのでかまいませんが、車両によっては落書きが残っていました。

隣のホームに停まっていたICEの発車を待って、数分遅れでフリックストレインも出発しました。
日本人の持つ印象とは違って、近年のドイツの鉄道の定時性はあまり良くありません。
もっとも1時間以上遅れることもあまりなく、数分遅れというのは「いつも通り」といった感じです。

ドイツ統一が成った19世紀後半以来、人々が順応することができないくらいに激しく変化してきたベルリンでは、今日も街の開発が行われています。

首都ベルリンは国内人口最多、ハンブルクが二番目の都市です。
この両都市間には、戦前の1930年代(つまり東西分裂前)から時速160㎞の高速列車が運転されていました。
フリックストレインの最高速度は時速200㎞。
在来線の線路規格が高いドイツでは、普通の特急列車でもこのくらいを出します。

風車と太陽光パネルの群れ。
自他共に認める環境先進国のドイツらしい光景です。
逆に、この区間の車窓はそれくらいしか見所がありませんでした。

車内を見渡すと満席のようでした。
客層は若者が多く、それも気のせいか、飛行機を嫌って丸1日かけてでもパリまで列車で行きそうな雰囲気の人達です。
隣の席では背の高い青年が足を窮屈そうに折り曲げながら、スマホで日本のアニメ(たぶん)を見ています。

やがて運河が張り巡らされたハンブルクの市内に入りました。
遠くには天を突くようなプロテスタント教会の塔が見えます。

駅までもう少しなので降りる支度を始めた頃、列車は停止してしまいました。
しばらくするとICEが横を通り過ぎていきます。
おそらく遅れていた列車を先に通したのでしょうが、駅の手前でも待たされるとは相変わらずフリックストレインは肩身が狭いものです。

約10分遅れでハンブルク中央駅(Hamburg Hbf)に到着しました。
当然想定すべき範囲内です。

ハンブルクはヨーロッパを代表する港町。
市内のアルスター湖畔では多くの人が日光浴をしていました。
全体的には暗くどんよりした北ドイツの、夏のひと時です。
ハンブルクは2度観光したことがあるので、今日は鰊の酢漬けのサンドイッチを食べて駅周辺を散策するだけで、1時間半後にはICEに乗ってベルリンに帰りました。

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予約方法と費用

予約はフリックストレインのサイトから行うことができます。
ドイツ国鉄のサイトでは予約できないので注意しましょう。
やり方は簡単です。

まずトップページにアクセスしたら、発着都市や日付・人数を入力して検索をかけます。
今回はベルリンからハンブルクまでのフリックストレインを予約してみましょう。

表示される候補にはバスの便も含まれています。
列車だけを調べたい場合は、上の写真の赤丸で囲った”Train”のタブを活性化させます。
なお、上の3つの候補はベルリン市内の乗車駅が違うだけで同じ列車です。
ドイツ語で”Hauptbahnhof”と表記される「中央駅」は、このサイトでは英語で”Central Station”になっています。

午前中の便の料金はなんと4.99€(≒800円)
ベルリン・ハンブルク間の距離は東京・豊橋間と同じです。
速度は遅いとはいえ、同区間の新幹線の10分の1以下で収まってしまう安さです。

列車を選択したら、次のページで乗客の名前・オプション・連絡先・支払い方法を全て決めます。
フリックストレインは全席指定制ですが、シートマップから好きな席を選ぶには追加料金が必要になります(LCCと同じ)。
この場合は”Select your seat”を選択します。
大型テーブルのある席など一部割増料金が必要な席もあります。

その下の”Travel neighbour-free”というのは、好きな座席を選択かつさらに追加料金(2.49€)を払って、隣の席を空席にできる権利です。
このオプションにすると、チケット代4.99€に座席指定の4.49€、そしてさらに隣を空席にするための2.49€の計11.97€が必要になります。
こうして見るとオプション費用が高めに思われますが、そもそも基本のチケット代が安すぎるだけです。

規定範囲以上に荷物がある場合は4.99€で追加できます。
しかし乗客一人1つまでしか追加できません。

決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

ですが、予約完了後にも列車がキャンセルになることがあるので、メールは無視しないようにしましょう。
その場合はもちろん手数料なしで便を変更できます。
ちなみに、当初私は座席指定付きで予約していたのですが、代替便では追加料金なしで座席選択権を行使できました。

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結局フリックストレインはおすすめ?

最後に「フリックストレインはおすすめできるのか?」について話したいと思います。

結論として、乗車時間が2時間程度ならICEよりもコスパの良い選択肢だと思います。
たしかにICEはフリックストレインよりずっと快適で速く、それに食堂車も付いています。
しかしベルリン・ハンブルク間を例にとれば、ICEの所要時間が1時間40分程度に対してフリックストレインも2時間程度とあまり変わりません。
料金もICEの早割よりかなり安いですし、この程度の乗車時間であれば狭くても大して苦にはならないでしょう。

両者は「競合」より寧ろ「棲み分け」の関係性にあります。
短・中距離移動ではコスパの高いフリックストレインか、快適で設備の整ったICEかを選ぶことができます。
新幹線がいかに素晴らしいとはいえ、東京・静岡間を2時間で結ぶ特急に1,000円くらいで乗れたら需要はあるのでしょうが、日本ではどうしても無理なのでしょうか?



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