ヨーロッパに個人旅行する際、都市間移動に鉄道を利用するケースもあるかと思います。
せっかくの海外旅行、それも地球の裏側まで来ているのですから、移動時間でも旅の要素の一つとして楽しめた方がいいと思いませんか?
最近はヨーロッパでも新幹線のようなスマートで高速な列車が増えています。
その一方で、少し昔のイメージ通りの機関車が牽引するタイプの国際特急列車も健在です。
そんな鉄道旅行の醍醐味を味わえる、オーストリアの首都ウィーンとスロベニアの首都リュブリャナを結ぶ列車「Emona」号を、私の乗車体験から紹介したいと思います
ちなみに、 「Emona」 は現在のリュブリャナにあった、ローマ時代の街の名前らしいです。
列車時刻と費用
便利なダイヤ
執筆時(私が乗車した2019年2月も同様)、ウィーン中央駅を7時58分に出発し、リュブリャナ駅に14時14分に到着します。
所要時間は6時間余りです。
なお、逆方向の列車はリュブリャナを15時45分発でウィーンには22時02分着。ウィーン到着が深夜で、夏以外ではオーストリア側の景色が楽しめないので、ウィーン発の利用が望ましいです。
途中国境を越えますが、オーストリアとスロベニアはシェンゲン協定(加盟国同士の国境審査は撤廃される)加盟国なので、パスポートコントロールはありません。
もっとも国境で車掌は交代して検札は再度行われるので、チケットはなくさないようにしましょう。
リュブリャナはわりと小さい都市なので、到着後ホテルにチェックインして、一通りの市内散策と一つ博物館訪問くらいはできます。
なお、「外国の列車ってよく遅れるんじゃないの?」と思う方もいるでしょうが、オーストリアとスロベニアはヨーロッパの中ではかなり定時性の良い国です。
それほど遅延のリスクを見積もる必要はありません。
予約方法と費用
予約はオーストリア国鉄のサイトhttps://www.oebb.at/en/からするのが最適です。(英語可)
日付と発着都市を入力するところがあるので、「Wien」と「Ljubljana」を入れて検索します。
JRの「えきねっと」や割引航空券と同様に、早めの予約で安くなります。例えば、ウィーンからリュブリャナまで定価では二等車で83.8€(1€=123円、執筆時。以下同様)ですが、最も安くて変更不可の料金はなんと24.9€です。
10€の追加で一等車にグレードアップ、3€の追加で座席指定が可能です。
所要時間が6時間余りと長いので、私は一等車を利用しました。
予約後のチケット入手方法ですが、一般的なのは登録したメールアドレスに届いた2次元バーコード付きのPDFファイルを、家のプリンターかコンビニで印刷する方法です。
なおウィーン駅は中央駅以外にも「ウィーン・西駅」や、紛らわしい「ウィーン・ミッテ駅」(ドイツ語で「Mitte」は中心を意味するが、中央駅とは別)などがあるので、注意してください。
また、以下でもオーストリア国鉄の予約方法を解説しています。
「Emona」号の旅行記
ゼメリング鉄道の車窓が綺麗
昔の車両が保存されている。
まず一つ目の魅力は車窓が変化に富んで綺麗であることです。
特にウィーンとオーストリア南部の停車駅であるグラーツとの間にある山岳区間は、「ゼメリング鉄道」と呼ばれる、世界遺産にも登録されている路線です。
とはいってもスイスのような観光鉄道とは違って、特急列車や貨物列車が頻繁に通る、現役バリバリの主要幹線なのです。
山間部の自然と建物 を眺めながら、歴史を感じる高架橋を何度も渡ります。それまで平野部を快調に走ってきたのとは裏腹に、この区間では強力な機関車もとても苦しそうです。
スロベニアに入ってからは、やはり風光明媚な渓谷区間を走ります。
川に沿った曲線区間を加減速を繰り返しながら走っていく様子は、まるで日本のローカル線の特急に乗っているかのようです。
国境を越えて間もなくの所にある途中駅の「Maribor」(マリボル)は、スロベニア第二の都市で、一定数の乗降がありました。
また「Zidani Most」駅では、リュブリャナ~ザグレブ~ベオグラードに至る主要幹線に接続します。
この駅はリュブリャナとザグレブの間にあります。
つまり、ここで乗り換えてザグレブ方面に行くこともできるわけですが、クロアチア行きの列車の本数はあまり多くありません。
車内設備が快適
客室はオーストリア国鉄の車両とスロベニア国鉄の車両が混在しています。このあたりも「古き良き国際列車」というべきでしょう。
さて、オーストリア国鉄はその車両のアコモデーションの良さで定評があります。
整備もしっかりされているので、鉄道後進国の中古車両の購入元としても需要があるといわれています。
私の乗った一等車は、高級感のある革張りのゆったりした座席でした。
なおヨーロッパの鉄道というと、オープンサロンではなく6~8人用のコンパートメントを思い浮かべる人もいるかもしれません。
そういった雰囲気が楽しみたい人は、スロベニア国鉄の車両に乗ると良いでしょう。これらの車両も、いい感じに古くて快適です。
食堂車が連結されている
食堂車の存在も重要なポイントかもしれません。
何しろ合理化の進んだ日本では食堂車・ビュッフェはおろか、特急列車の車内販売すら減ってきているのですから。
運営はスロベニア国鉄によって行われています。
パプリカベースのシチュー「グラーシュ」やスロベニア風のカツレツやソーセージが楽しめます。
ランチ営業が始まるのは11時半ごろ、国境を越えてマリボル駅を出発してからです。
列車の旅を満喫して実りある旅行を
ネットのおかげで都市間移動手段の所要時間や費用が簡単に分かるようになりました。
これらは非常に分かりやすい指標なのですが、数字では表現しえない旅の貴重な経験や感動というものを、この区間の鉄道は提供してくれます。
本記事では触れませんでしたが、ウィーンは言わずもがな、リュブリャナも自然と多様な建物が調和した美しい古都です。
昔ながらのヨーロッパ鉄道旅行の雰囲気と、雄大で迫力のある車窓の両方が味わえる「Emona」号に、格安で乗車してみませんか?