ザグレブからミュンヘンへ、夜行列車「リシンスキー」個室寝台車に乗車【予約や費用】

ヨーロッパ鉄道

クロアチアの首都ザグレブから南ドイツの中心都市ミュンヘンまで、夜行列車が運行されています。
列車種別は「ユーロナイト」、つまり国際寝台特急の意味で、「リシンスキー」の列車名がつけられています。
これはクロアチア出身の作曲家の名前のようです。

「リシンスキー」は、寝ている間に鉄道でアクセスしにくいヨーロッパの南東部へ行くことができる、利用価値の高い列車です。
2016年10月に、ザグレブからミュンヘンまで個室寝台車に乗車した時の様子を紹介します。(時刻や編成は2019年の情報を参考にしています。)

ちなみに昼の列車ではオーストリアのウィーンからスロベニアのリュブリャナを結ぶ列車もあります。
こちらは車窓を楽しむことができます。

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南ドイツ~リュブリャナ~ザグレブを結ぶユーロナイト

列車編成

座席車・クシェット(簡易寝台)・個室寝台車の3つの設備から成ります。
食堂車などの設備はないので、夕食は済ませておきましょう。
ヨーロッパの寝台車には部屋にトイレ・シャワーが付いているタイプもありますが、この列車にはそうしたデラックス寝台車は連結されていません。

ミュンヘンからシュトゥットガルトまで延長

ユーロナイト「リシンスキー」は、季節に関わらず毎日運行されています。
途中でスロベニアの首都リュブリャナを経由します。
私が乗車した当時はミュンヘン~ザグレブの運行でしたが、2023年現在はドイツ側が産業都市シュトゥットガルト(stuttgart)まで延長されています。
また南側も季節によっては、リュブリャナからザグレブに向かわずクロアチアの港町リエカ(rijeka)行きの編成もあります。

クロアチアの港町、リエカ
2016年10月

南行きの場合、シュトゥットガルトを出発して、アウクスブルクなどを経てミュンヘン発は深夜。
以前はリュブリャナに着くのが早すぎたのですが、理想的な時間帯に改められました。
その分ザグレブ着は少し遅めです。
北行きの便も、ザグレブ発はやや早めで、ミュンヘン着は早朝になります。
ミュンヘン~ザグレブの所要時間はおよそ11時間弱、ミュンヘン~リュブリャナだと8時間強です。
最新のダイヤはこちらで確認してください。

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個室寝台車の乗車記

以下は2016年の乗車記です。
現在ではダイヤが大きく変わっています。
また、2023年よりクロアチアでもユーロが導入されました。

ザグレブ駅にはシャワー・コインロッカーがある

ザグレブ中央駅の外観
ザグレブ中央駅の外観

クロアチアの国内移動手段の主役はバスであるとはいえ、ザグレブ駅は立派な駅舎を持つ、一国の首都に相応しい駅です。
駅の近くにある「エスプラネードザグレブホテル」は、かつてオリエント急行の乗客が宿泊していた由緒あるホテルです。

オリエント急行の乗客を迎え入れたエスプラネードザグレブホテル
オリエント急行の乗客を迎え入れたエスプラネードザグレブホテル

駅にはキオスクがあるので、飲み物の準備ができます。
また深夜でも営業しているベーカリーもあるので、夜食や夕食の調達も可能です。
このベーカリーは種類も結構多くて、地元の人もよく利用していました。

列車にはシャワーの設備はありませんが、駅の一番手前のホームの隅の方にシャワールームがあります。
私は出国に際してクロアチアの通貨クーナをほとんど使ってしまっていたのですが、足りない分はユーロで支払いさせてもらうことができました。

コインロッカーもあるので夜行列車利用客にとってはありがたい駅です。

クロアチア国鉄の寝台車は快適

ザグレブ駅のユーロナイト「リシンスキー」
ザグレブ駅に入線したユーロナイト「リシンスキー」

ヨーロッパの夜行列車はたいてい出発時刻の30分くらい前に始発駅に入線していることが多いです。
しかし私が乗車した日はダイヤが乱れていたのか、ほとんど発車直前に入線してきて、乗車した客がまだ自分の部屋を探しているうちに慌ただしく21時半過ぎに出発しました。

さて、今回乗車したユーロナイト「リシンスキー」は、クロアチア国鉄の車両と乗務員で運行されています。
「クロアチアの鉄道ってどんなだろう?」と思ってしまいますが、寝台車は予想以上に快適な車両でした。

クロアチアの寝台車の車内
個室寝台車の車内

寝台車は他の西ヨーロッパの物と同じタイプで、1人~3人で利用可能な個室ですが、全体の印象としては車両が新しく清潔でした。
特徴としては普通の寝台車だと、洗面台が部屋の隅にあるテーブルの下に隠れているのですが、クロアチアの寝台車の場合は独立しており個室が広く感じられます。

クロアチアの寝台車の車内
洗面台が独立しているので個室内も広く感じる

朝食について

朝食というほどでもありませんが、クロワッサンとコーヒーまたは紅茶が出されます。
タイミングは目的地到着の20分くらい前だったと思います。
なおこのサービスは寝台車とクシェット利用者のみで、座席車にはありません。

また列車出発後の検札の時に、車掌が無料でペットボトルの水をくれました。
クロアチア国鉄のホームページにおける当列車の説明によると、アルコール飲料やソフトドリンク、軽食がいつでも注文できると記されていますが、私は利用しませんでした。

パスポートコントロールについて

「リシンスキー」はクロアチア・スロベニア・オーストリア・ドイツの4か国を走る国際列車です。
とはいっても、クロアチア以外の国はシェンゲン協定加盟国なので、パスポートコントロールが行われるのはクロアチアとスロベニアの国境のみです。

私の記憶では、国境駅に1つだけ停車して、両国の職員が順番にやって来るシステムだったと思います。
また国境駅はザグレブを出発してから僅か30分程度の駅なので、深夜に起こされることもありません。

ミュンヘン駅のDBラウンジが使える

翌朝、軽い朝食とコーヒーを持ってきた車掌がドアをノックする音で目を覚まします。
ミュンヘン到着予定時刻の約20分前なので、定刻通り走っているようです。
「リシンスキー」が経由する各国は、比較的鉄道の定時性が高い国ですから、それほど遅れを覚悟する必要はなさそうです。

さて、6時を過ぎたばかりのミュンヘン中央駅は、季節によってはまだ薄暗く寒いでしょう。
行き止まり式の駅は様々な列車が発着し旅情をかきたてられる場所ではありますが、一方で良からぬ人間も多く、寝起きで大きな荷物を持ってウロウロするのはやや危険が伴います。

ミュンヘン中央駅で顔を揃えたフランスのTGVとドイツのICE
ミュンヘン中央駅で顔を揃えたフランスのTGVとドイツのICE

ですが嬉しいことに、夜行列車の寝台車利用者はチケットを見せれば到着日の朝でもDBラウンジを利用することができます。
DBラウンジはドイツの主要駅にある、1等車利用客限定のスペースで、コーヒーなどを飲みながら自由に過ごすことができます。
もちろんトイレも無料で利用できます。

さらにミュンヘン駅では飲み物だけでなく、軽食のサービスもあります。
「駅の雰囲気は好きだけど治安が気になる」という方も、まさに安全に高みの見物ができます。
是非有効活用しましょう。
なお、オーストリアにも類似の設備があります。

ミュンヘン中央駅のDBラウンジ
ホットコーヒーと共にサンドイッチを食べながら、駅の旅情に浸れる
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予約方法と費用

チケットはネットで事前に予約・購入することはできません。
私が乗ったミュンヘン行きだと、ザグレブ駅の切符売り場の国際線ブースで買うことになります。
数日前に購入しましたが、一番高い寝台車の1人利用「シングル」で150€でした。(クロアチアクーナをユーロ換算したのではなく、ユーロ建ての値段です。)
早割りの設定があるようですが、割引が適用されていたのかどうかはわかりません。

窓口ではクレジットカードも受け付けていました。
またクロアチア全体に言えることですが、チケット売り場や列車の車掌にも英語も良く通じました。

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クロアチアの鉄道の実力

旧ユーゴスラビア構成国の鉄道と聞くとあまり良い印象を持てないかもしれませんが、クロアチアの鉄道は「リシンスキー」に限らず、新しい車両も多く、また古い車両であっても快適です。

「旧ユーゴスラビアの国の鉄道はノロくてよく遅れる」と言われますが、正確にはそれはセルビアやボスニアヘルツェゴビナ以東の国々のことであり、クロアチアとスロベニアの鉄道は幹線であればそれなりに利便性は高いです。

そもそもザグレブやリュブリャナはバルカン地方というよりは、文化圏としてはプラハのような中央ヨーロッパに近いといえます。

そのように認識すると、ザグレブへの(からの)夜行列車の旅もより身近に感じられるのではないでしょうか。

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