チェコの看板列車、スーパーシティでプラハからオストラヴァへ【車内・予約方法】

ドイツ・オーストリア・中欧

旧東欧の中ではかなり鉄道が発達したチェコ。
サービスは向上しているものの、チェコ国鉄は車両に関しては保守的で、どれも無骨な機関車がどれも同じに見える客車を牽くタイプです。
その中で異色ともいえる存在が、イタリアの高速列車をベースとしたスマートな電車、「スーパーシティ」です。

2023年5月下旬、首都プラハから国内第三の都市オストラヴァまでスーパーシティの二等車に乗車しました。

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プラハ~オロモウツ~コシツェで運行

ペンドリーノ型の新型電車

1980年代末の社会主義政権崩壊後、旧東欧のチェコは「ヨーロッパへの回帰」を目指して民主化・市場経済化を進めました。
そして2004年、他の旧社会主義国と共にチェコはEU加盟を果たします。
もともと歴史的・地理的に西欧に近い「東欧の優等生」だったこの国は、これを機に順調な経済成長を続けました。

チェコの西欧化は鉄道にも及びました。
EU加盟と同じ2004年、イタリアの「ペンドリーノ」をベースとした新型電車「スーパーシティ」が登場します。
「ペンドリーノ」とは、車体傾斜方式を採用してカーブでも速く走れるように設計された電車のことです。
少ない投資費用で高速化を果たすことができるので、パスタやピザよろしくヨーロッパ各地で導入されています。

ペンドリーノの新型車両
2011年ミラノ中央駅にて

民間企業の挑戦にリニューアルで対抗

スーパーシティは当初から現在に至るまで、チェコ国内のプラハ~オロモウツ~オストラヴァのルートで運行されています。
一部の列車は国境を越えて、スロバキア東部のコシツェまで足を延ばします。
ちなみに、一時期はウィーンやブラチスラバ(スロバキアの首都)行きの便もありましたが、現在その路線ではスーパーシティは運転されていません。

2010年頃からはチェコの鉄道のオープンアクセス(国鉄だけではなく他の事業者も鉄道運行ができるように自由化すること)によって、レギオジェットレオエクスプレスといった民間鉄道会社が参入します。
彼らはチェコ国鉄よりも割安な料金で様々なサービスを提供し、競争環境は厳しさを増していきました。

チェコ国鉄のライバル、民間のレギオジェット

現在のスーパーシティは内装がリニューアルされており、他のチェコ国鉄の優等列車や競争相手と比べても、居住性がかなり良くなっています。
また、車体傾斜できる電車なので所要時間も他の列車よりも短いです。

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スーパーシティの車内(リニューアル済み)

スーパーシティの編成は二等車・一等車・ビストロから成ります。
全車指定制なので予約が必須です。

二等車の車内と座席

チェコ国鉄スーパーシティの二等車の車内
二等車の車内

「この写真は一等車の間違いでは?」と思った方もいるでしょう。
しかし、これは二等車の車内です。
意外なことに、二等車でも通路を挟んで2&1列の座席配置なのです。

独立座席は一人旅には重宝しますし、何より内装がシックかつエレガントです。
また、二等車ではペットボトルの水が無料で配られます。

チェコ国鉄スーパーシティの二等車の座席
二等車の座席

一等車の車内と座席

チェコ国鉄スーパーシティの一等車の車内
一等車の車内

一等車も二等車と同じ横3列の座席です。
こちらは革張りで高級感があり、内装も寒色系ではなく暖色系になっています。
注意したいのは、一等車は向かい合わせ式の座席が多いということです。

一等車ではウェルカムドリンクや軽食のサービスがあります。
また、食堂車で注文した品を自席まで運んでくれます。

3号車に食堂車(ビストロ)がある

チェコ国鉄スーパーシティの食堂車

スーパーシティにはビストロ(軽食堂車)があります。
基本的にカウンターで商品を注文してテイクアウトする方式です。
ただ、同じ3号車には他の客室と同じ座席が並んでいる飲食用のエリアがあります。
メニューは一般的なチェコ国鉄の食堂車メニューで、ホットミールも皿に盛って提供してくれます。

チェコ国鉄スーパーシティの食堂車

そしてビール好きにとって嬉しいのが、ピルスナービール(一般的な透明のビール)の元祖である「ピルスナーウルケル」の生ビールが飲めるという点です。
ビール・ワイン共にいくつかの銘柄があります。

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スーパーシティペンドリーノ二等車の旅

二等車でもプラハ本駅のCDラウンジが使える

私が今回乗車するのは、プラハ本駅を11時34分に発車するスーパーシティのオストラヴァ行き二等車です。
この駅にはCDラウンジがあり、優等列車(レイルジェットやユーロシティなど)の座席指定券を持っていれば二等車の乗客も利用することができます。
コーヒー・紅茶を無料で飲むことができますが、トイレはありません。
また、ここで列車の出発ホームや遅れに関する情報を見ることができます。

プラハ本駅のCDラウンジ

出発20分ほど前にホームに行くと、既にスーパーシティが停車していました。
発車時刻が近づく頃には、二等車はほとんどの席が埋まりました。

プラハ中央駅を発車

進行方向左側の1列座席に乗車。
定刻通りプラハ本駅(Praha hlavni)を出発し、左手後方にはプラハの旧市街に建つプラハ城や二本の塔を持つティーン教会が見えます。
車内チャイムでは、チェコ出身の作曲家ドヴォルザークの「ユーモレスク」が流れます。

チェコの国土はおおまかに、西半分(プラハ含む)のボヘミアと東半分のモラビアに分けられます。
プラハからオストラヴァまでのルートでは、前半はボヘミア地方を走ります。
比較的森が多く川や湖も見られます。

最高速度はおそらく時速160㎞程度でしょうか。
中欧諸国の鉄道は速くてもこのくらいです。
途中通過するだけの近代的な街でも、カトリック教会がその中心に位置しています。

モラビア地方は広々とした起伏のある丘陵地が目立ちます。
とりわけこの季節は、緑色と黄色に塗り分けられた大地が青空に映えます。

食堂車でピルスナーウルケルの生ビール

さて、食堂車に行ってお待ちかねの「ピルスナーウルケル」の生ビールです。
テイクアウトだとプラスチックの容器(ピルスナーウルケルのロゴマーク付き)、同じ号車のイートインスペースで飲むと専用のグラスに入れてくれます。
日本の「生中」と違ってキンキンに冷え過ぎていないので、香りや味わいを楽しめます。

隣のボックス席では夫婦と子供2分がいました。
男の子は相当不機嫌でモノに当たる始末。
不穏な空気が一家を支配していましたが、その時、ウェイターがチョコレートとクリームがたっぷりかかったパンケーキを持ってくると、乱暴なガキンチョが一瞬にして瞳を輝かせる無垢な少年になったではありませんか。
いやはや、子供にとって砂糖には魔法の力があるのかもしれません。

列車はオロモウツ駅(Olomouc)を過ぎます。
オロモウツは国内ではプラハに次いで文化財の多い都市で、世界遺産に登録された聖三位一体柱があります。
車内はだいぶ空いてきました。

オロモウツの聖三位一体柱

シレジア地方にあるオストラバは工業地帯

オストラヴァに近づくと工場が増え、貨車や機関車の姿をよく見かけるようになります。
チェコ第三の都市オストラヴァは、ボヘミアでもモラビアでもなく、シレジア地方に位置しています。
チェコ・ポーランドに跨るシレジアは、プロイセン(今のドイツ)とオーストリアがその領有をめぐって何度も争った地で、炭鉱地帯のために工業が発達しています。

ほぼ定刻に終着のオストラヴァ中央駅(Ostrava hlavni)に到着。
駅から市内中心部まではやや離れているのでバスでアクセスします。

オストラヴァは工業都市なので、市内は観光地としては大して見るべきものはありません。
しかし、トラムで行ける町はずれの巨大な工場跡はもはや悲哀なる芸術品です。
(鉄道もそうだが)20世紀型の重厚長大な産業が持つノスタルジーに魅力を感じる人は、これだけのためにプラハからオストラヴァを訪れるべきです。

オストラヴァにある工場廃墟
これでもほんの一画に過ぎない
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予約方法と費用

スーパーシティの予約はチェコ国鉄のサイトから行うことができます。
若干分かりづらいところがあるので、その辺りも含めて写真付きで解説していきます。
執筆時から1か月後の8月下旬の予約を想定しています。

料金が安いチケットは制約が厳しくなる

トップページにアクセスしたら、発着駅(または都市名)・日付・時間帯を選択します。
人数は赤丸で囲った鉛筆マークから変更できます。
このアイコンは後でも重要は役割を果たすので要注意です。
以降、黄緑色のボタン(上の写真では”Search”)を押下して先に進んでいきます。

6時発の便がスーパーシティです。
その下のユーロシティ(EC)より若干速いです。
スーパーシティとユーロシティの差額は座席指定料金(前者は全席座席指定だが後者は任意のため)です。
また、画面右上で二等車と一等車を切り替えられます。
ビジネスクラスの設定はこの路線にはありません。

666CZKの二等車チケットは割引無しの代わりに自由度が高い

この辺りから分かりづらくなってきます。
同じ列車の二等車でも、その自由度・フレキシビリティによって幾つかのチケットの種類があります。
安い504CZK(1CZK≒6.5円)のチケットは返金・変更は15分前までできるものの、決められた列車に乗らなければ無効になります。

この時の一等車の料金は919CZKで、一番条件の緩い(つまり割引無しの)タイプでした。
ハイシーズンでは早めに予約しても、そもそも割引率の高いチケットはそもそも販売されないことがあります。
ちなみに、私が同区間(プラハ~オストラヴァ)のスーパーシティ二等車を予約した時は約400CZKでした。

座席表から好きな座席を選べる

チケットを選択すると、その次に確認画面ののようなものが現れます。
下にスクロールして飛ばしてしまいがちですが、”Reservation”の項目にある鉛筆マークから好きな座席を選べるので見落とさないように。

号車・座席番号を聞かれても分からないので、赤丸で囲った所をクリックするとシートマップが現れます。

二等車のシートマップ
一等車のシートマップ

上の写真が二等車、下が一等車です。
見て分かる通り、一等車は中央のテーブルを介した向かい合わせ座席が基本です。
一人旅で他人と対面するのが気になる人は二等車の方が良いと思います。
なお、座席選択を飛ばすと自動的に席が割り振られます。

その後、名前・メールアドレスを入力してクレジットカードで支払いです。
電話番号は不要(というか日本の番号はエラーになる)です。
決済成功するとチケットが添付されたメールが届きます。
印刷するかスマホに保存して完了です。
お疲れ様でした。

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「脱・伝統」のモダンな電車

スリムな車体を傾けながら走るスーパーシティは、チェコの看板列車に相応しいクオリティを持っています。
車両そのものは一世代昔の設計ですが、車内がリニューアルされたことにより古さを感じさせません。

実は15年前、デビューから間もないスーパーシティに乗っていた。

惜しむらくは、運用されている路線には日本人観光客になじみのある都市が無いため、スーパーシティを利用する機会が限られる点です。
幸い、オロモウツやオストラヴァはプラハからクラクフへの路線上にあるので、この人気都市間の移動の途中に立ち寄ることもできます。
重たくてバリエーションが少ないチェコ料理、つまり機関車が牽く客車に食傷気味の方は、たまにはチェコ風にアレンジされたパスタ、スーパーシティを試してみるのも良いでしょう。

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