失敗は成功の母、2600系とその時代【普通車の車内など】

四国の車両
スポンサーリンク
スポンサーリンク

四国特急車両の世代交代

2000系の後釜

世界初の振り子式気動車として1989年に満を持して登場した2000系は、急曲線の多い各線で大いに力を発揮し、四国の鉄道の飛躍的な高速化を成し遂げました。
その成功によって北海道や山陰などの地方幹線にも振り子式気動車が投入され、過疎化の進む地域で鉄道が生き残るために必死の健闘を見せました。

そんな偉大なる2000系も、2010年代後半になるとさすがに老朽化が目立ち始めます。
一部では車内設備のリニューアルが行われてはいたものの、特にリニューアル未実施の車両は接客設備はかなり陳腐化していました。
2014年に誕生した新型特急電車の8600系が、2016年に本格的に営業運転を開始。
それに伴い一部に残っていた「しおかぜ」「いしづち」の2000系による運用は消滅しますが、これは局所的な縮小に過ぎませんでした。

JR四国がいよいよ2000系の置き換えに本腰を上げるのは2017年。
2000系の後継車両として次世代の四国を担うべく、新型の特急用気動車2600系が開発されました。

コスト面で有利な空気バネ式車体傾斜装置

2600系は3年前に登場した8600系電車と同じく、この時代のスタンダードとなる空気バネ式車体傾斜装置を採用しています。
車体傾斜角度は振り子式車両の5度に比べると2度と小さくなりますが、曲線通過速度は振り子式の2000系と変わりません。
それでいて振り子式より簡単な車体構造で済むことから、近年ではこちらが主流となっています。

2600系の車体側面。
特殊な振り子式ではないので車体下部の絞りは小さい。

外観のデザインはステンレス車体に赤と金色が施されていて、凛とした佇まいを感じさせます。
JR四国のコーポレートカラーは水色で、これまでの車両には必ず使われてきましたが、今回は全く逆のイメージを打ち出してきたのは新時代に対する決意の表明のように思えます。
エンジン音も2000系の豪快な唸り声に比べるとスマートな音ですが、それでいて出力は大きくなっています。
このあたりは技術の進歩と余裕を聞き取ることができます。

雅やかな赤と金という配色。
今までの四国の車両のイメージから脱皮した。

2600系はまずお披露目として高徳線の臨時列車に使用されます。
そしてその後は四国各地に活躍の場を広げていく、はずでした。

土讃線では運用できず、「うずしお」に限られる

ところが大きな問題が生じます。
高知行き「南風」の走る土讃線は大歩危小歩危に沿って走るため、かなりの急曲線が連続する羊腸のような路線ですが、この土讃線では2600系の空気バネによる車体傾斜が十分に作動しないことが判明したのです。
「宇和海」や「うずしお」には使用できても、本命の「南風」を担当できないのでは車両運用上不都合なのか、結局2600系は2編成4両で製造打ち切りとなってしまいました。
「空気バネを調整するための空気タンクの容量を試運転の結果を踏まえて増やした」というのは、同じくJR四国の8600系や新幹線のN700系の時でさえも聞いた話ですが、これまで振り子に代わるコスパが良い方式として、積極的に採用されてきた空気バネ式車体傾斜の限界が明確に認識されたきっかけとなりました。

2019年、2000系の正当な後継車両として、制御付き振り子車両に戻った2700系が量産されることになります。
2700系の車体には緑色のラインが施されているのが、2600系との分かりやすい違いです。
また車体断面も振り子式の2700系は車体下部のくびれがより目立っています。
全体的な車内の雰囲気は変わりませんが、2700系にはグリーン車付きの編成もあります。

2020年現在、2700系は「南風」の他「あしずり」や「うずしお」と幅広く運用されているのに対して、2600系の働き場所は高徳線の「うずしお」にとどまっています。

ちなみに「うずしお」は4つの形式によって運転されていますが、2600系とN2000系という希少価値の高い車両に2つも巡り合うチャンスがあります。
N2000系は「しまんと」や「宇和海」では通常の2000系と共通運用ですが、「うずしお」では確実にこちらの編成に乗車できます。

(2020年7月追記)
2700系の追加投入に伴い、N2000系は「うずしお」運用から外れます。

高松駅で並ぶ2600系とN2000系の「うずしお」
高松駅で並ぶ2600系とN2000系の「うずしお」。
共に編成数の少ない車両である。
スポンサーリンク

2600系の車内

2600系はモノクラス編成で、グリーン車の設定はありません。

2600系の普通車の車内
普通車の車内

2000系と比べると車内設備はかなり改善しています。
床は四国の特急車両の普通車ではお馴染みのフローリングです。

私はN2000系と2600系の「うずしお」で高松と徳島を往復して乗り比べてみたのですが、新型の2600系の方が乗り心地は良いと感じました。

ただ曲線通過時は車体傾斜角度が小さい2600系の方が強い遠心力を感じます。
空気バネが作動するためでしょうが、曲線部から直線部に移行する時に、「プシャー」という音が聞こえます。

2600系の普通車の座席
普通車の座席
スポンサーリンク

総評

エジソンは「このやり方で上手くいかないことが分かったのだから、それは失敗ではない」という旨の格言を残しています。
土讃線で運用ができなかった2600系は、たしかに当初の期待に応えることはできなかったわけで、その意味では残念な結果に終わりました。
しかし、特に本形式に技術的な欠陥や特別な不評があったわけではなく、結果的には「捨て石的な存在」にはなったものの、「失敗作」だと断ずることはできません。
むしろ、その後誕生した2700系の内装や外観が、2600系のそれと非常によく似通っているのは2600系が優れていたことの証左なのであり、2600系あっての2700系であることは間違いありません。

2020年、2700系は完成度の高い車両であるとしてローレル賞を受賞しました。
おそらく2700系はその受賞記念スピーチで、先代の2000系だけでなく、自身を開花させる土壌となった兄の2600系に対して、心からの謝辞を述べていたことでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました