近鉄特急ひのとりとその時代【プレミアム車両の車内や予約方法と費用を解説】

私鉄有料特急
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さらに高品質な名阪ノンストップ特急

トレンドとなった高級志向

2010年代前半より、車内アコモの豪華さや食事などの付加価値・乗車体験を売りにした列車が全国で登場します。
その最たる例がクルーズトレインですが、ローカル線を走る行楽観光列車や着席保証の通勤ライナーなど、高級志向は幅広く浸透しました。
こうした動きはリーマンショック不況から脱却し、東日本大震災がきっかけかどうかはともかく、「モノ消費からコト消費へ」というこの時代のトレンドをよく表しています。

(個人的には)わりかし保守的なイメージがある近鉄もこの流れに乗り、観光特急「しまかぜ」や「青の交響曲」の運転を始めます。
一方で都市間特急としては、名阪特急が古くは関西本線、その後は新幹線との競争を演じてきました。
ノンストップ特急として1988年に登場した「アーバンライナー」は、速さでは新幹線に適わないものの、割安感と快適性を武器に健闘しています。
しかしリニューアルされているとはいえ、令和時代に入ると大半の車両が製造から30年が経過している状況でした。

2020年3月、その「アーバンライナー」の後継となる新型車両「ひのとり」が誕生しました。
ダイヤ上は他の名阪ノンストップ特急と変わらず、「アーバンライナー」もまだ残っています。
「ひのとり」の特長はスピードではなく、大幅に進化した快適性にあります。
否、快適性というよりも「居住性」という表現の方が正しいでしょう。
移動を主目的としながらも、乗車することそのものの価値をも提供するという、都市間特急の新たな方向性を打ち出したといえます。

近鉄特急のイメージを変えるハイデッカーな車体

プレミアム車両はハイデッカー構造

近鉄特急というと黄色・青あるいは白の車両というイメージでしたが、「ひのとり」は全く新しい装いで登場しました。
車体は光沢のある優雅な赤。
ビスタカーのようなダブルデッカーではありませんが、前後の先頭車両はハイデッカーなので他の車両よりもやや背丈が高くなっています。
「アーバンライナー」のスマートな顔つきから、大型の正面ガラスが印象的な堂々とした表情となりました。

一般型車両より背が高く、高貴な赤をまとった「ひのとり」の存在感は抜群。

編成はプレミアム車両とレギュラー車両の2種類から成ります。
「アーバンライナー」にもデラックス車両が1両ありましたが、「ひのとり」のプレミアム車両は両端に2両連結されています。

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「ひのとり」の車内とサービス

レギュラー車両の車内と座席

ひのとりのレギュラー車両の車内
レギュラー車両の車内

レギュラー車両でもスマートで上質な客室です。
床は落ち着いたグレーで、壁の一部は木目調となっており、味気ない印象は全くありません。

座席もちゃんとしたフットレストと全席コンセント付き。
そしてバックシェルを備え座席の前後間隔も広いので、レギュラー車両でもグリーン車並みの設備ということができます。

ひのとりのレギュラー車両の座席
レギュラー車両の座席

プレミアム車両の車内と座席

ひのとりのプレミアム車両の車内
プレミアム車両の車内

プレミアム車両はE5系やE7系新幹線のグランクラスのような雰囲気です。
内装は赤い絨毯とシックな壁で高級感があります。
電動リクライニングシートはレッグレスト付きでとても快適です。
プレミアム車両はデッキと客室の間に段差があり、ハイデッカー構造なので眺望にも優れています。

私が一番感心したのは揺れの少なさと静寂性です。
他の形式はもちろん、レギュラー車両と乗り比べてみてもその違いは明らかです。

ひのとりのプレミアム車両の座席
プレミアム車両の座席

プレミアム車両は先頭車両なので、座席によっては前面展望が楽しめますが、車内があまりに静かなので、運転席からの様々な音がよく聞こえてきます。

カフェスポットやロッカーなど共用設備も充実

「ひのとり」では客室だけではなく、共用設備にも新しい試みが盛り込まれています。

近年特急列車では車内販売が削減される傾向にあり、近鉄特急もその例に洩れませんが、それに対する回答としてカフェスポットが設けられました。

ひのとりのカフェスポットとロッカー
カフェスポットとロッカー。
鉄道車両の新たなスタンダードになるのだろうか。
近鉄特急のおしぼり
記念に持って帰りたくなるコーヒーカップ。
近鉄特急伝統のおしぼりを取るのもお忘れなく。

カフェスポットはコンビニコーヒーと同じようなもので、200円で挽きたてのホットコーヒーが味わえます。
横にお菓子の販売機もありますが種類は少なめです。

また大型荷物を安全に保管できるロッカーも設置されています。
早くインバウンド需要で役割を存分に果たしてもらいたいものです。

ひのとりのベンチスペース
「ラウンジ」というほどのものではないが、共用のベンチスペースがある。

名阪ノンストップ特急の所要時間は2時間少々とそれほど長くありませんが、息抜きができるベンチスペースがあります。
腰掛は本当にただのベンチで長居するほどの場所でもありませんが、大理石風の内装はなかなか良い雰囲気です。

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予約方法と料金

ネット予約が便利

特急券の予約は近鉄のウェブサイトから可能です。
ここで会員登録をしなくても問題なく予約することはできます。
会員登録をすると10パーセントのポイントが溜まりますが、有効期間が1年で、クレジットカード等との併用はできないので、頻繁に近鉄特急を利用しないのであればそれほどメリットはありません。
予約の際にはクラス・車両・座席を指定することができます。

またチケットレスのサービスなので印刷した紙を持参する必要はなく、登録したメールアドレスに届いた予約内容を乗車時に確認するだけです。

料金や運賃について

まず、ネット予約で購入されるのは特急券部分のみなので、別途乗車券が必要です。
大阪難波~近鉄名古屋までの正規の運賃は2410円ですが、チケットショップで売っている株主優待券を使うと安くなります。
私が利用した2020年6月は緊急事態宣言解除後日にちが浅く、需給バランスが酷く偏っていたためか、店によっては1000円未満という価格破壊を起こしていましたが、「平時」の相場は2000円弱だったと思います。

さて、特急券に関しては通常の特急料金1930円に加えて、クラス・区間毎に設定された「ひのとり」特別車両料金が必要になります。
「特別車両料金」と聞くと身構えてしまいますが、大阪~名古屋間を例にすると、レギュラー車両が200円、プレミアム車両が900円です。
「ひのとり」のアコモの水準からすると、「近鉄は商売が下手なのか」と思えるほど良心的な値段です。

なお、近鉄の特急料金は前節で紹介したチケットレスサービスで予約すると、当日の列車で100円、前日以前だと300円の割引となります。
これはキャンペーンとしての施策ですが、結構昔から継続的に行われています。
が、「ひのとり」にはこの割引は適用されません。
なので、実質的な特別車両料金はレギュラー車両で500円、プレミアム車両だと1200円程度だと思っておくと良いでしょう。

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総評

車体の色もエンブレムも美しい

戦後も1950年代まで、国鉄の運賃は3等級制が採られていました。
その後、身分・階級意識の希薄化(制度の有無はともかく、令和の社会でさえ不逮捕特権を持つ「上級国民」は現に存在するため、あえて「希薄化」と表現しておく)と、優等旅客の民間航空機への移行により1等は廃止されます。(以後旧2等→1等、旧3等→2等となる)
1969年には等級制自体が廃止され、普通車・グリーン車の呼称になり現在に至っています。

ところで近年は名称は様々ながら、グリーン車を越える設備を持つ車両が増えてきました。
特に「ひのとり」はレギュラー車両でもグリーン車並み、プレミアム車両はそれを遥かに凌ぐわけですから、戦前の栄えある「一・二等特別急行」のような存在です。
同じく2020年3月に登場した「サフィール踊り子」もそうですが、2020年代は形を変えた旧1等車が新幹線以外でも本格的に復活する時代になるのではないか、と期待を持たせてくれる車両だといえます。

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