シギショアラからシビウへ、車窓も乗客もローカルなルーマニアの普通列車に乗る

旧ユーゴ・バルカン

ルーマニア西部のトランシルヴァニア地方には魅力的な都市が多数ある。
特にルーマニアで最も美しい町と言われるシギショアラ(Sighisoara)は、まさに「中世ヨーロッパの町」を体現した世界だ。
是非この町に1泊して昼と夜の異なる表情を味わいたい。

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一方で、シギショアラ観光は半日もあれば十分である。
そのため、スケジュールによっては時間を有効に活用できない可能性がある。
そこで提案したいのが、近くにあるシビウ(Sibiu)への日帰りである。
シビウもシギショアラ同様にドイツ文化の薫る街だが、こちらはより都会的な雰囲気なので両者は好対照を成していて都合が良い。

2026年4月、シギショアラ10時39分の普通列車に乗り、途中メディアシュ駅(Mediaș)で乗り換えてシビウに向かった。
帰りの列車はシビウ17時40分発、シギショアラまで直通で19時48分着だった。

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シギショアラ⇒メディアシュ

シギショアラ駅に、無骨な電気機関車がたった1両の客車を引き連れてやって来た。
機関車1両に客車1両というのは、あまりに不経済な編成と言わざるを得ない。
客車はさほど古くはない二階建て車両だったが、薄汚れて塗装はボロボロに剝がれている。
乗車する前から車内の清潔感の無さは容易に想像できた。
これがメディアシュ行き普通列車だった。

シギショアラからメディアシュの区間は、今朝ハンガリーからの夜行列車で乗ってきた幹線である。
最初は感動した車窓も、シギショアラ観光後に再びとなると退屈に感じられてしまう。
寝不足なことだし、ここはしばらく仮眠としよう、と思ったがそうはいかなかった。

途中駅で大人と子供4人ずつのグループが乗ってきた。
子供たちは普通列車ではとりわけ珍しい「ガイジン」を見て嬉しくなったのか、ウトウトしている私の所にやって来て、口々に「ハロー」と言ってくる。
お互い通じる言葉がこれしかないので、私も顔の表情だけ変えながら一人ひとりに「ハロー」と応対するしかない。

子供たちの服と顔は汚れており、彼らの経済状況は察しがついた。
あまりに私に興味を持っているので、もしや子供のスリ集団ではないかと一瞬疑ったが、彼らの純粋で無垢な目を見るとそんな邪推は消えた。
面倒見など皆無の私の苦戦をよそに、大人たちは子供のしつけには熱心でない様子だった。
孤立無援のまま、この奇妙な挨拶会が3セットも繰り返された。

時間通りにメディアシュ駅に到着。
子供たちと手を振って別れて、私の「東洋人代表」としての使命は無事終わった。

メディアシュ駅はいかにも東欧らしい、広くてがらんとした雰囲気だった。
2階の待合所は全面ガラス張りで50年前はモダンなデザインだったのかもしれないが、今は埃を被ったベンチと売店の跡があるのみだ。
せっかくの開放的な造りであるにもかかわらず、雨が降り始めたせいで相変わらず駅舎内部は精彩を欠いていた。
乗り換え時間の1時間半は長く感じられた。

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メディアシュ⇒シビウ

メディアシュからシビウまではローカル線となる。
2両編成のディーゼルカーが、雨上がりの大きな駅の端にちょこんと停まっていた。

先ほどの列車と比べて明らかにスピードが遅い。
途中駅も仮乗降場のように小さなもので、民家の庭の延長上にホームがあるような感覚だ。
初めは駅に停車していることにも気づかなかった。

小さい粗放的な農家が軒を連ねる、生活感が立ち込める車窓が続く。
昼間のローカル線だから空いているだろうと思っていたが、入れ替わり立ち替わりに乗り降りがあったのは意外だった。

しばらくすると突然景色が一変して、目の前に広大な荒地が広がった。
まるで北フランスやイギリスの僻地にやって来たようだ。
なだらかな丘陵地は、微かに日が差して弱々しく輝いている。
鉱山に面した池のほとりを、列車は恐る恐るゆっくりと進んだ。

はるか遠くに延びる道を見ると、馬車を牽く老人の姿があった。
今でもルーマニアの田舎ではこうした光景を見かける。
こんな調子で、浮世離れしたようにのんびりとした列車旅であったが、メディアシュからの1時間半はあっという間だった。
シビウ駅に着いたのはほぼ定時の14時20分。

シビウはオーストリア帝国領のトランシルヴァニア公国の首都だった。
立体的で都会的な街並みは、シギショアラとはまた違った魅力がある。
天気はすっかり回復した。
これから帰りの列車までの3時間、シビウの街を散策しよう。

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