世界最速350km/h、中国の高速鉄道総論【予約・乗り方・車内など】

アジア

日本と比べて25倍の面積と11倍の人口を擁する中国は、世界でも断トツの高速鉄道大国だ。
2025年現在、その総延長距離は約50,000㎞にも及んでいる。
世界2位のスペインが4,000㎞、3位の日本が3,000㎞だから圧倒的な存在である。
広大な国土に網の目のように張り巡らされた高速鉄道は、今や国内移動に欠かせない手段となっている。
本記事では、中国高速鉄道の予約方法や乗り方、そして注意すべき点や日本の新幹線と違う点について解説していきたい。

国土の輪郭を描き出している中国の高速鉄道網。
出典:https://www.travelchinaguide.com/
台湾の路線も含まれている理由はお察し。
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中国鉄道の主役、「復興」号

最新型の復興号

中国高速鉄道の主役となるのが、世界最速の350km/hを誇る最上位列車「復興」フーシン(Fuxing)号だ。
国内各地で運行されており、日本の新幹線だと「のぞみ」「はやぶさ」あたりが該当する。
これは巷で言われる「パクリ車両」ではなく、国産技術で開発された車両である。
ちなみに復興号よりも下位の高速列車は「和階」フーシエ(Héxié)号と呼ばれている。

なお日本で「復興」というと自然災害からの復興を思い浮かべるが、ここで言う「復興」とは、習近平国家主席が掲げる「中華民族の偉大な復興」のことである。
一応説明しておくと、輝かしい文明を築いた中華民族は、1840年のアヘン戦争後は列強による半植民地化のどん底にあったが、戦後中国共産党が人民を団結させて現在に至るまで中国を復興させている、というわけだ。(もちろん筆者個人の歴史認識ではない。)

中国の簡体字で「復興号」
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【予約】公式「中国鉄路12306」か予約サイトで

中国高速鉄道は原則完全指定制である。
予約は公式の中国鉄路12306か、あるいはTrip.comなどの予約サイトを経由して行う2通りの方法がある。
いずれの方法でも予約開始は乗車日の2週間前からとなっている。

中国鉄路12306には英語版と中国語版があり、ボタン1つで切り替えられる。
だが英語版は内容が簡略化されており、中国語版ほど詳しい情報が得られない。
なので英語版の公式を使うくらいなら、日本語にも対応した予約サイトを使った方が良いと個人的には思う。
ちなみに私はホテル予約にも利用したTrip.comを使った。
ただ予約サイトの場合は手数料が発生する。

中国の高速鉄道の基本運賃は、他の物価を考慮すると高い。
例えば上海~北京間の2等席は662元≒15,000円。
距離が似ている近い東京~鹿児島中央間で新幹線を利用すると約30,000円になる。
ざっくり、中国の一人当たりGDPは日本の3分の1なので、現地の人にとってはかなり高い乗り物だと言える。
もっとも運賃は変動制で、列車・設備によっては割引が適用される。
割引率はたいてい10%以下だが、時には30%近く安くなることもある。
一般に、早朝など時間帯が悪かったり、所要時間が長い便ほど割引率が高くなる傾向にある。

中国鉄路12306中国語版にて
「○○折」は割引率のことで、例えばG132列車の商務席は8,1折なので、定価より19%割引の値段となる。
当列車はスマート編成(後述)なので、所要時間の長さを気にしなければ商務席はお買い得だ。

外国人の場合、中国のチケットはパスポート番号と紐づいており(そのため予約時にパスポート番号が必要)、駅の改札でもパスポートがチケット代わりになる。
また日本のように好きな座席を選択することができず、横1列の位置(日本で言うA~E席)の希望を出すことしかできない。
これは公式で予約しても同じである。
私がtrip.comを使った感じでは、早めに予約しても今一つ思い通りにならなかった。

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【乗り方】大都市の駅に着く目安は30~60分前

中国の高速鉄道の駅に行くと、きっとその規模の大きさに驚かされるだろう。
関西弁の「アホみたいにデカい」が最も的確な形容詞である。
また発着駅は市内中心から離れていることが多く、しかも地下鉄の乗り換えも駅構内が複雑で時間がかかることがある。

空港のように巨大な上海虹橋駅コンコース

それだけではない。
駅に辿り着いてから列車待合所までには、パスポートチェックと簡単なX線荷物検査もある。
さらに改札が始まるのは出発20分前で、5分前には閉め切られてしまう。
そのため、列車が発車予定時刻よりも早く出発してしまうことすらある。

以上より、駅には30分~60分前に着くのが目安だ。
例えば朝8時発の便を予約しても、逆算するとホテルを出るのは早朝になるので注意しよう。
なお、大型連休の時期は1時間以上前の駅到着が推奨されている。

改札が始まった出発20分前。
既に長い列ができている。

ちなみに車内は禁煙だが、ホームではタバコを吸うことができるようだ。

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【車内・サービス】3クラス制で「食堂車」あり

「復興」号は2等席(日本で言う普通車)・1等席(グリーン車)・商務席(グランクラス)の3クラスから成る。
チケット価格は概ね1等席は2等席の1.5倍、商務席は1等席の2倍強といったところか。

2等席(普通車)

2等席は通路を隔てて2&3列の座席配置で、日本の新幹線の普通車とほぼ変わらない。
全座席に充電用コンセントがある。

ちなみに気になる人もいるであろう車内の静寂性に関しては、2等席でも「思ったほどうるさくなかった」というのが実感である。
電話をする際にきちんとデッキに行く人もいるが、デッキと客室を隔てる自動扉が事実上開放状態となっているので、車両端の席ではやかましい時がある。
とはいえ、全体的にはヨーロッパの鉄道の方が騒々しいと思う。

1等席(グリーン車)

1等席は2&2列だが、新幹線のグリーン車と比べてやや質は劣る。
水またはお茶と菓子・つまみのサービスがある。
2等車と比べて外国人の比率が高い。
また、1等車よりもややデラックスなプレミアム1等車を連結した列車もある。

商務席(グランクラス)

最上級クラスの商務席は、1&2列とグランクラス同等の大型リクライニングシートだ。
座席はフルフラットにもなる。
私が昼間時間帯に乗車した時には、コーヒーまたはジュースのウェルカムドリンクと、弁当のサービスがあった。
また出発前に駅のラウンジを利用することもできる。

ところで、「復興」号のうち「スマート編成」と呼ばれる新型車両で運用される列車の商務席は、さらに贅沢な1&1列の座席を備えている。
座席と通路の間の仕切りを閉めるとほぼ個室のようになる。
これはグランクラスを越えており、もはや飛行機の国際線ファーストクラス並みといえる。

列車がスマート編成か否かは、中国鉄路12306の中国語版で列車検索すると簡単に分かる。
商務席に興味がある人は、情報収集のためにもインストールしてみると良いだろう。

中国鉄路12306の列車検索画面
復興号(簡体字)の表示の横に「智能~」とあるのがスマート編成

食堂車(実際は売店)

食堂車は編成の中央部にある。
「食堂車」と名乗ってはいるが、実際は車内販売基地を兼ねた売店である。
食堂車まで足を運ぶのが面倒でもワゴン車内販売を利用できる。
弁当を持ってやって来るのはだいたい11時頃からだ。

車内販売・食堂車のメニューは全体的に割高だと思っておこう。
ちなみに私が購入した弁当は80元(≒1,600円)で、下段にご飯、中・上段におかずの3段重ねというボリュームたっぷりのものだった。

またデッキにはかつて日本の新幹線にあった冷水器のような、お湯が出る機械がある。
現地の人たちはこれで魔法瓶にお茶を入れたりカップ麺を作る。

ところで肘掛けにあるQRコードから列車案内のページに飛べるが、その中にケータリングサービスがある。
これは各停車駅にあるファストフード店の商品などを乗務員を介して自席に届けてもらえるというもので、私は利用していないがとても興味深いサービスである。
というか日本の鉄道も、車内販売を廃止するなら中国を見習って「モバイル駅弁売り」でも始めてみてはどうか?

トイレは和式に似たタイプもある

最後に、中国高速鉄道で一つだけ私が不満だったのはトイレである。
日本のようなウォシュレットなどを期待しているのではない。
洋式トイレもあるが、しゃがむ方式(和式と似ているがしゃがむ向きが逆)も結構あるのだ。
350km/hで走る最新車両でこれはいただけない。
もっとも、客室通路やトイレをモップ掛けしている乗務員がいるから意外と清潔ではある。

多目的トイレは洋式で広い

以上、予約・乗車手続きに関しては管理社会を実感させられる煩雑さが存在するが、一旦乗ってしまえば日本の新幹線と変わらないくらい快適でクオリティの高い列車旅が楽しめる。
長い間、新幹線のライバルといえば欧州各国の高速列車たちだったが、いつの間にか中国がこれほど発展していたのは驚きである。

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