電車化でクリーンになったしおかぜ、8000系とその時代【普通・グリーン車の車内など】

四国の車両
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四国のフラッグシップ列車「しおかぜ」

予讃線の電化

1960年~70年代にかけて、全国各地の幹線・亜幹線では電化や複線化が進められていました。
これは九州や北海道の道央地区も例外ではありませんが、そんな進歩の時代にあって唯一蚊帳の外だったのが四国でした。
四国から蒸気機関車が姿を消した時期は早かったものの、路線の近代化は遅れていたのです。
民営化された直後でも複線化または電化されている区間は、予讃線の観音寺までや土讃線の琴平までと、局所的な香川県のエリアに限られていたのです。

1988年に本四備讃線、通称瀬戸大橋線が開通して鉄路が本州と結ばれますが、一方でそれは高速道路網のさらなる拡充を促進しました。
そこで折から進んでいた軌道強化等に加えて予讃線の電化が松山の先、伊予市まで行われます。
この電化工事完了に合わせて、1993年に登場したのが8000系です。
松山行きの「しおかぜ」(岡山発)と「いしづち」(高松発)に投入されました。
予讃線特急(松山~宇和島間の「宇和海」も含む)は2000系の他にキハ181系やキハ185系も残っていましたが、8000系の登場によってこれらの古い2形式が追い出されました。

貫通型の正面。
宇多津駅で「しおかぜ」と「いしづち」が分割併合される。

通常電化というのは増加した交通量をさばくことを目的に行われますが、予讃線の場合はもっと能動的な動機で、道路をはじめとした他交通機関との競争力強化が念頭にありました。

最高速度160㎞を目指した

JR四国が開発した2000系気動車と同じく振り子式の構造ですが、最高速度は130㎞となっています。
また電化の際にトンネルの改築を避けるため、屋根を低くして狭いトンネルにも対応できるようになっています。
この辺りの苦心にJR四国の懐具合が窺われます。

下部がくびれた振り子式特有の車体断面。
8000系は特に背丈が低い。
ドアの周りが青いのが指定席、オレンジが自由席。

ところで、この車両は試運転では160㎞走行も目指していたようです。
しかしながら、カーブの多い予讃線は160㎞はおろか、130㎞運転さえ短い区間でしか行うことはできません。
もし160㎞の営業運転を視野に入れていたとすれば、途中区間で湖西線やほくほく線のような高規格在来線の新設を考えていたということでしょうか。

また曲線通過速度も他の振り子式車両よりも10㎞高い本則+40㎞を目指していましたが、結局2000系と同じ本則+30㎞という無難なところに収まりました。
そのため「しおかぜ」や「いしづち」が2000系から8000系に代わったことによるスピードアップは、さほど劇的ではありませんでした。

そもそも速達性に関しては、鉄道は高速道路よりも松山まで遠回りしている分、距離が長いというハンデがあります。
もしかしたら8000系には、そんな状況でも鉄道が所要時間で優位に立つくらいの野心が込められていたのかもしれません。
しかしJRの中では最も零細なJR四国には、そこまで高性能な車両を運用するインフラ投資はやはり不可能だったのでしょう。

また現代の四国の特急は、途中相互駅間の短距離輸送も担うため停車駅が多いのも難点です。
例えば四国に初めて特急列車が走り始めた1972年3月の時刻表を見ると、特急「しおかぜ」(高松~松山)の途中停車駅は新居浜と今治のみです。
それに対して2020年の「いしづち」は多いもので途中14駅に停車し、これは当時の急行をも上回ります。

四国鉄道文化館の急行型キハ65系。
四国は長い間ディーゼル急行の天下だった。

岡山発の「しおかぜ」なら新幹線からの乗り換え客が期待できる(こちらも航空機との競合は発生しているが)一方、島内特急の「いしづち」はボチボチと客を拾う方策を取らざるを得ないのも事実です。
予讃線は瀬戸内海に面した東西の縦貫幹線で、沿線に中小都市があるだけまだいい方で、土讃線の「しまんと」は沿線都市が少なく、列車本数が減らされています。

リニューアルによって8600系登場後も存在感を示す

さて、一般的な傾向として1990年代中盤までの車両というのは、高速化に比重が置かれている一方で内装は割と簡素でした。
2000年以降アコモデーションに優れた特急車両が続々と登場する中、8000系にもやや接客設備の陳腐化が感じられるようになりました。
そこで8000系は2004年よりリニューアルが施されます。

リニューアルの内容は外装と普通車指定席・グリーン車の内装の変更です。
この工事はは2006年に完了しましたが、その年に尾道と今治を繋ぐしまなみ海道が全通しました。
四国の鉄道は常に高速道路との競合を意識しています。

2014年には第二世代目の特急電車、8600系がデビューします。
この時代のスタンダードとなる低コストの空気バネ式車体傾斜システムを装備し、内装も瀬戸内の自然を感じさせる明るい新型車両は、2010年代ならではのクオリティでした。
それに比べると20年前に製造された8000系ですが、リニューアルのおかげで古さをさほど感じさせない活躍を見せています。
四国初の電車特急車両とだけあって、簡単に予讃線の主役を譲り渡すわけにはいかぬ、といったプライドを感じさせます。

現在(2020年)では松山発着の「しおかぜ」と「いしづち」は8000系と8600系の2つの形式で運用されていますが、やや8000系の方が本数が多くなっています。

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8000系の車内

普通車自由席の車内と座席

8000系の普通車自由席の車内
普通車自由席の車内

普通車の自由席は非リニューアル車両が充てられています。
2000系と比べると少し洗練されている気もしますが、やはり簡素な印象はあります。
とはいえ落ち着いた雰囲気で、それほど不満がある車内ではありません。

むしろ気になるのは、振り子式車両特有の細かい振動です。
おそらく線路に負担がかかる曲線部はそれなりに軌道強化されていて揺れないのですが、逆に直線部を高速で走る時に跳ねるような揺れがあります。
8600系と乗り比べてみるとこれが明確に表れます。

8000系の普通車自由席の座席
普通車自由席の座席

普通車指定席(リニューアル車)の車内と座席

8000系の普通車指定席(リニューアル車)の車内
普通車指定席(リニューアル車)の車内

普通車指定席の車内はリニューアルされています。
車内は明るくなり、座席も新しいものに替えられています。
暖色系の座席モケットも相まって、木材のあたたかみを感じる空間です。

8000系の普通車指定席(リニューアル車)の座席
普通車指定席(リニューアル車)の座席

グリーン車の車内と座席

8000系のグリーン車の車内
グリーン車の車内

グリーン車は3列座席。
内装は焦げ茶色の木目調が支配的で、高級感があるというよりは、シックでモダンなカフェに居るような感じです。

ただ、個人的に殺風景だと感じるのが、枕カバーに書かれた「指定席」の文字です。
グリーン車は全て指定席なのだから、こんな余計な案内で格を落とさないで欲しいです。

8000系のグリーン車の座席
グリーン車の座席

デッキ

デッキもリニューアルされていて、なかなか遊び心があります。
どことなくJR九州を真似てみた感じがしないでもありません。
内装といい洗面所のカーテンといい、やたらと「生活臭」がします。

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総評

四国の最重要幹線である予讃線を走る8000系は、山間部を力走する2000系に対して、海沿いの線路を快走する電車です。
惜しむらくは、高いポテンシャルを持ちながらもそれを最大限に発揮することができなかったことです。
四国新幹線などといった仰々しいものでなくてもよいから、仮に伊予西条~松山間を短絡する単線の高規格路線が建設され、8000系がその持てる性能をいかんなく発揮できていれば、四国の鉄道全体もまた違ったものになったことでしょう。

四国新幹線誘致のポスター
四国の駅でよく見かけるポスター(写真は四国鉄道文化館)。
フル規格ありきでなく、もっと柔軟な交通政策は採れないものか?

野心的な設計で製造されながら、看板は特急といえども実質は急行のように走る8000系は、瀬戸内海を隔てて並走する山陽新幹線に対してどのような想いを抱くのでしょうか。

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