かつては日本にも「北斗星」「トワイライトエクスプレス」といった列車が走っていましたが、今ではそういった列車は廃止されてしまいました。(「ななつ星」のようなクルーズトレインは除く)
鉄道網が発達している西ヨーロッパでも、実は夜行列車が削減または編成が簡素化される傾向にあります。
そんな中でも夜行列車に力を入れているのがロシア国鉄です。
そしてロシアの夜行列車の中でも最も有名なのが、同国の二大観光都市であるモスクワとサンクトペテルブルクを結ぶ「赤い矢(レッドアロー)」号です。
2017年10月に最上クラスである特等車の乗車したので、その時の記録をご紹介します。
「赤い矢(レッドアロー)」号について
列車概要
ソビエト時代の1930年代から運行されている由緒ある列車です。日本でいうところの、特急「富士」(廃止されていますが)のようなものかもしれません。
こちらの列車は、昼行列車の高速化や旅客機の発達といった時代の流れにも負けず、その豪華さで人気を集めています。JR各社さんもロシア国鉄を見習ってほしかったですね。
ダイヤ
両方向とも23時55分発、翌日7時55分に到着です。
便利な時間帯で、移動手段としても完全に機能します。敢えて言えば、列車の質の割に乗車時間が短く感じられてしまいます。
ちなみに、ヨーロッパの主要都市でよくあるように、「モスクワ駅」は複数あります。
サンクトペテルブルク行きの列車は基本「モスクワ・レニングラード駅」発着です。
駅から次々と夜行列車が出発していく様子は、まるで1960年代~1970年代の東京駅や上野駅のようです。
列車編成
- 2等車(4人用個室寝台)
- 1等車(2人用個室寝台)
- 特等車(1または2人用個室寝台)
- 食堂車
以上の編成です。
2等車か1等車を定員未満の人数で利用する場合は、相部屋になる可能性があります。
また、2等車といっても列車自体のグレードが高いので、内装は豪華です。
特等車の室内・サービス
他のクラスと違って、特等車は部屋単位の販売となります。そのため私のような「おひとり様」利用の場合は割高になります。
部屋にはシャワーとトイレが付いています。
クロス掛けで花も供えられたテーブルには、フルーツやチーズ・チョコレートが用意されていました。その後アテンダントがウェルカムドリンクを持ってきてくれます。
なおアルコールは有料で、かなり高いです。
翌朝朝食が運ばれてきます。
西ヨーロッパの1等寝台車でも朝食付きの列車はありますが、朝食のボックスが渡されるか、良くても何種類か選んだコールドミールがトレーに載せられてくるタイプです。
ですが、この列車ではホットミールがお皿で提供されます。
予約方法と費用
予約の仕方(写真あり)
ロシア国鉄のホームページhttps://pass.rzd.ru/main-pass/public/enからできます。英語のページもあります。
なお、似たような名前の旅行代理店サイトが複数あるので注意してください。代理店利用の場合は手数料が上乗せされます。
発着する駅と日付入力後、
列車選択→設備選択(De Luxeが特等車)→車両選択(この場合だと1号車のみ)→部屋選択
の順になります。
その後会員登録をする必要があります。
送られてきたメールにあるURLをクリックします。
登録が済んでログインしたら、必要事項を記入します。
ミドルネームは「-」で構いません。
画面の下の方に保険のオプション選択があり、デフォルトではチェックが付いていますが、必須ではありません。私も付けませんでした。
<注意>
クレジットカード決済することになりますが、2015年ごろより、ロシアのクレジットカードしか使えない、という期間がしばらくあったそうです。
私が予約した2017年夏の時点では、日本のカードも問題なく使えました。米露対立の制裁の影響と言われており、状況が今後変わる可能性もあります。
また現地でも、ロシア国鉄関連の支払い時に「ロシアのカードしか使えない」と何度か言われました。
予約出来たら、登録したメールアドレスに送られたPDFを印刷すれば、それがチケットです。
費用
上の写真にもある通り、現在だと特等車で14000ルーブル(執筆時1ルーブル=1.7円)程度です。ロシアは物価上昇率がやや高めで、為替変動もあるので目安としてください。
ちなみに同区間を4時間弱で走る高速列車は2等座席で3500ルーブルくらいです。
そもそもロシアって治安は大丈夫なの?
ここまで読んで、「豪華寝台列車は魅力的だけど、ロシアって怖いイメージがある」と思っている方もいるでしょう。
ですが、結論から言うと
ヨーロッパ旅行をある程度した人なら問題なく楽しめます。
治安について
特に他のヨーロッパと比べて悪いわけではありません。
警官の汚職の話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、私が今まで計2週間ほどロシアに滞在して、そのような経験は1度もありません。
テロも心配されがちですが、その点ではむしろ西欧諸国の方がハイリスクです。
ロシアが危険だというのは、誤ったイメージといえます。
外国語について
私が乗った車両のアテンダントは英語を話せました。「赤い矢」号のみならず、ロシア国鉄全体の傾向として、英語ができるスタッフは結構いたように思います。
ロシア語はできなくても仕方ありませんが、キリル文字とアルファベットの対応は覚えていくとよいでしょう。
意外とビザは面倒ではない
ロシア旅行にはビザの取得が必要です。
非常に面倒な印象ですが、近年では業者によっては簡単で安く手続きできます。
ホテルも他のヨーロッパの個人旅行と同様に、旅行サイトからネット予約できます。
ロシア旅行のハードルは確実に下がっています。
夜行列車の理想郷、ロシア
「ドイツで生まれて世界中に広まった後にロシアで最盛期を迎え、やがて終焉したもの」が2つあると言われます。
それは交響曲(ハイドン→ショスタコーヴィッチ)と共産主義(マルクス→ゴルバチョフ)です。
今思えばクラシック音楽と同じで、夜行列車というものもその起源はともかく、ロシアが西欧への対抗心としてまず彼らに追いつき、やがては凌駕してしまった存在なのではないでしょうか。
西欧の夜行列車が衰退する中、ロシアでは国内国外問わず、寝台列車が各地に運転されています。
日本でも「ロイヤル」「スイート」といった個室寝台に結局乗れず、後悔している人もいるのではないでしょうか。
ですが、ロシアではまだそういった旅情・文化が残っています。
異国で格式ある豪華寝台列車「赤い矢」号の旅をしてみませんか?