2025年12月、中国高速鉄道旅行序論:北京~上海~香港を南北往復5,000km

アジア
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速さ・路線網・質で急速に発展する中国の新幹線

海外でも鉄道旅行をするようになって15年以上になる。
ここで言う「海外」とは専らヨーロッパ、つまりロンドン・リスボン・イスタンブール・モスクワで囲まれた長方形に収まる世界のことだった。

2025年12月、私は新しい鉄道の世界を開拓しようと思う。
日本と比べて25倍の面積と11倍の人口を持つ中国である。
2007年の営業開始以来、中国の高速鉄道は爆発的に路線網を拡大しており、その総延長は今や5万km近くにも及ぶ。
世界で2番目のスペインが約4000㎞、3番目の日本が約3000㎞だから、文字通り桁違いだ。

上海虹橋駅

また営業最高速度も350km/hと、やはり世界最速である。
これは巷で言われる「パクリ車両」ではなく、国産技術で開発された車両による運行である。
しかも来年か再来年辺りにはさらに速い車両が登場するらしい。

またハード面のみならずソフト面でも進化している。
新幹線のグランクラスに勝るとも劣らない豪華設備や、新幹線では消えてしまったカフェテリア車両、さらには私が自分の頭の中だけで勝手に計画している夜行寝台新幹線まである。
これだけのスペックとポテンシャルを持つ国の高速鉄道に見向きもしないのは、好みの問題とか偏見とかで済まされる話ではなく、もはや知的怠慢に分類されるような気がしてきた。

かくして、上海を入口にして広州・香港を訪れてから北京まで北上し、また上海に戻ってくる高速鉄道旅行ができあがった。
それぞれ華中・華南(+香港)・華北という中国の三大地域をカバーしている。

地図で見ると中国のほんの一部しか訪れていないのだが、これでも総延長で5,000㎞を越える大旅行である。
なお、この旅程の距離を日本に当てはめてみると、まず東京へ入国して鹿児島まで行き、そこから北海道の旭川辺りまで列島を縦断し、最後にまた東京へ帰るようなことになる。
最低限の観光をしながらこれを実質5日間でやるのだから、私がいかに阿呆な計画を立てたか分かってもらえるだろう。

さて、今回の旅行で乗車した高速鉄道は4つ。
①上海~広州(2等車)、②広州~香港(特等車)、③香港~北京(寝台車)、④北京~上海(1等車)である。
それぞれ異なるクラスに乗車しながら、世界最速の350km/h運転や夜行寝台新幹線といった未知の世界を体験できた。
昨今の日中関係悪化のあおりを受けて、行きのフライトが運休となり出発日の変更を余儀なくされたが、それ以外は遅延もなく計画通りの旅行だった。

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突き進む中国と停滞する日本

中国の急速過ぎる高速鉄道整備が採算度外視の国家計画なのは間違いない。
その赤字や「幽霊駅」の存在を揶揄する記事や動画を、貴方も目にしたことがあるだろう。
もっとも日本においても、莫大な投資(青函トンネル)に対して輸送量が小さすぎる北海道新幹線の現状や、先行開業後3年経っても残り区間50㎞のルートすら決まらない西九州新幹線など、嘲笑の対象になる要素はいくらでもある。
北海道新幹線札幌延伸の遅れで最高速度の向上意欲も阻害され、開発中の新型車両E10系にはグランクラスが採用されないことから、優れた鉄道文化が未来に継承されない懸念が生じている。

都会駅付近の大規模なジャンクション

また、最高速度が世界最速の350km/hだからといって、私は中国の新幹線が日本の新幹線を上回っているとは思わない。
速く走らせるだけなら30年以上前に日本の300Xという試験車両が443㎞/hを出しているし、フランスのTGVに至っては2007年に574km/hというとんでもない速度を記録している。
また加速力やカーブ通過速度は、東海道新幹線のN700Sの方が明らかに優れている。
それはともかく、中国の新幹線に乗った印象は非常に快適で、安全軽視で無理やり走らせているようには感じなかった。

あの有名な映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、1955年の博士が1985年から来た車の壊れた部品を見て「メイド・イン・ジャパンじゃ故障するわけだ」と呟く。
未だに「中国製=安かろう悪かろう」というイメージしか語れない人は、1955年の博士と同じ過ちを、同じ時代に生きながら犯しているのである。

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