東京発四国・九州1日弾丸旅行③:2つの島の渡し舟、国道九四フェリーに乗る

旅行記

2024年11月に鉄道と路線バスで四国を1周してから改めて地図を見た時、ルートから愛媛県西部の佐田岬半島がはみ出ていることに気付いた。
ノコギリのような形をした長さ約40㎞の細長い半島である。

2024年11月の四国一周ルート
国土地理院の地図を加工して利用

この不愉快な取り残しを処理すべく、翌2025年10月に路線バスとタクシーで佐田岬半島を縦走し、さらにはフェリーで豊予海峡を渡って九州に上陸した。
これは新幹線計画で構想された四国新幹線ルートを辿る旅ともなった。

本記事では佐田岬の三崎港から九州大分県の佐賀関港まで、国道九四フェリーに乗船する。
その後トラブルを経て、日豊本線に乗って小倉駅へ向かい、休む間もなく東京九州フェリー(門司~横須賀)乗り場を目指した。

赤線:鉄道、青線:バス、黄色線:航路
九州側の鉄道の始点が幸崎駅
国土地理院の地図を加工して利用
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国道九四フェリーの徒歩利用は一人だけ

約4時間の佐田岬滞在を終え、17時30分出航の国道九四フェリーに乗船する。
フェリーのネット予約は徒歩の場合はできないので、チケット売り場で乗船券を購入した。
車両はトラックと自家用車が半々、あとは自転車やバイクが数台ずつ、徒歩での乗船は私一人だけだった。
車両の搭載が終わるのを待ってから、肩身の狭い思いをしながら車両搬入口の端っこを歩いて客室へ向かった。

国道九四フェリーは、その名前の通り航路が国道197号線、つまり路線バスで佐田岬半島を縦走してきたのと同じ道路の一部となっている。
運行本数は1時間毎の1日16往復。
数ある四国・九州連絡船のなかで営業距離は約30㎞と最も短く、所要時間も僅か70分である。
フェリーというより、四国と九州の渡し舟というべきだろうか。
ちなみに、私の計画では豊予海峡に自動車・新幹線併用の2階建てトンネルが建設され、松山~大分間が70分で結ばれることになっている。

船舶は新しくて綺麗だった。
客室はほとんど座席が並んでいるだけだが、そもそも乗船時間が短いので十分だ。

船内

甲板で出航を見届けてから、しばらくは先ほどタクシーで通った佐田岬半島先端部を眺めた。
細長い半島には果てしなく風車が突き刺さり、まるで動物の尻尾にハリ治療を施しているように見える。
船内には売店もあったがこの時はずっと閉まっていた。

佐田岬をやり過ごして今度は大分県の方を見ると、西の空は既に夕日で薄くオレンジがかっていた。
複雑なリアス式海岸を甲板に出て眺めていると、「佐田岬までタクシーで行ってましたよね?」と30代くらいの夫婦に声をかけられた。
佐田岬の駐車場で私を見かけたらしい。
四国を車で数日周って、これから九州に渡って夫の実家がある宮崎へ行くという。

「宮崎で母親を拾って近くの名所を訪問するつもりです。」
「それは親孝行ですね。」
「いやいや、母親に金を出させるんですよ。」
まるで絵に描いたような、人情味と茶目っ気のある南九州人だ。
恥ずかしながら私の今日の無意味な乗り鉄弾丸旅行スケジュールを説明すると、「何かに詳しいのは凄いことやと思いますよ。」と奥さんがフォローしてくれた。

二人と話しているうちに外は暗くなっており、船は佐賀関港に接近していた。
18時40分に到着。
車両を待ってから下船した。

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佐賀関フェリーターミナル~幸崎駅は交通手段を確保すべし

さて、佐賀関フェリーターミナルから最寄りの幸崎駅経由の大分駅行バスの最終便は16時台である。
そこで幸崎駅まではタクシーを使って19時43分発の普通列車に乗れば、門司駅から出る東京九州フェリーの送迎バスに間に合う。
しかし乗船すれば一目瞭然だったように、国道九四フェリーは車両利用が前提となっており、フェリーターミナルにタクシーはいなかった。
タクシーアプリを幾つか使ってみたが、あいにく配車可能エリア外だった。
最後の望みをかけてチケット売り場で近所のタクシー会社の連絡先を聞いたが、これまた全滅。

万策尽きて、歩くより他ない。
予定していた19時43分は不可能だが、20時22分の列車なら小倉駅か門司駅でタクシーを使えばフェリーには何とか間に合う。
これが最後のチャンスである。
こうして、真っ暗で狭い見知らぬ7.5㎞の道を1時間で自力で辿るという、最悪の展開となった。

歩道もない海沿いの道路を歩く。
歩くだけでは間に合わないので時々走った。
「寂しい」とか「心細い」とかいった感傷に浸る余裕さえなかった。
感じるのは本能的な「怖い」だけである。
海を隔てた遥か先には大分市の工場夜景が輝いていた。
時々タクシーが追い越していく。
バックミラーに移るように手足をバタバタさせてアピールしたが、結局無駄だった。

今やスマホのライトとマップが命綱だ。
だがバッテリーが残りわずかとなった。
アンパンマン列車の特急「宇和海」発車待ちの松山駅でAIに余計な議論を吹っかけて、ChatGPTのデータ分析量とバッテリーを無駄遣いしたのがつくづく悔やまれる。

歩いたり走ったりすること1時間、幸崎駅の駅舎の灯りが見えた。
暗闇の中に佇むちっぽけな駅だったが、私にとっては砂漠のオアシスのような存在だった。
女子高生がたむろしていて、大分行の列車の発車番線を聞かれた。
普段この辺の電車に乗っている彼女がなぜ旅行者に聞くのだろうか?

幸崎駅のホーム
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幸崎駅から日豊本線で小倉駅へ

まだ20時22分の普通列車まで5分くらいある。
安心した私は、いつも通りネットで門司駅までの乗車券・自由席特急券(大分~小倉)を購入したのだが、ここにも落とし穴が潜んでいた。
幸崎駅にはみどりの券売機がないので、ネット予約の発券はできない。
QRコードならいけるはずだが、かざしてもどういうわけか反応しないのだ。

仕方なく強行突破して普通列車に乗る。
大分駅では10分の接続時間で特急「にちりん16号」に乗り換え。
改札で駅員に事情を話すと、「改札の外に出て指定席券売機で発券してくだい」とのこと。
QRコードがあるのに、今時なぜこんな面倒なことをしなければならないのか。
もっとも、改札外に出たついでに酒を買うことができた。

「にちりん16号」の自由席車両には充電コンセントが無かった。
だが最前列だけ指定席になっていて、そこにはコンセントがある。
「助かった…」とばかりに瀕死のスマホを充電し始めると、まもなく車掌が検札に来た。
「指定席券を持っている客が来たらすぐ代わるから充電させてほしい」と願い出るも、「料金が変わるので自由席に移動せよ」と敢えなく却下された。
無論、車掌は間違ったことを言っていないので、彼を非難するのは不当である。
しかし、グリーン車やグレードアップ座席でもないのにこの程度の融通が利かないのは、正直息苦しくてしかたがない。

小倉駅に着いた「にちりん16号」

そんなわけで、時々トイレでスマホを充電しながら22時27分に小倉駅に着いた。
東京九州フェリーが出航する新門司港の最寄り駅は門司駅である。
だが、仮にそこでタクシーを拾えなければ今度こそゲームオーバーだ。
それだけは避けなければならないので、少し遠くなるが大事を取って小倉駅で下車した。
さすがに政令指定都市の中心駅なのですぐタクシーに乗れた。

運転手は「この車はうちの会社のじゃないけん、カーナビついとらんけ。近くまでは分かるからその後はお宅でナビしてくれ。」と頼りないことを言うので、またまた心配になってきた。
だが彼が言っているのは、新門司港は空港と同様に会社によってターミナルビルが違うので、どこのフェリーかを教えてくれという意味だったので安心した。

23時過ぎに東京九州フェリーのターミナルビル前に着いた。
国道九四フェリーとは比べ物にならないくらい巨大な船が、ターミナルビルを飲み込むように停泊していた。
出航時刻は23時55分。
予約確認メールには1時間前に来いと書いてあるが、このくらいなら大丈夫だろう。
カウンターに置いてある機械でチケットを発券していると、まもなく乗船開始時刻になった。

九州に上陸してからは何もかもが上手くいかなかったが、それでも何とかフェリーに間に合った。
ちなみに、佐賀関港から幸崎駅まで必死に走ったので、翌々日の夕方から激しい筋肉痛と腰痛に苛まれた。







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