第四の選択肢、高速で快適な東京九州フェリーのツーリストSに乗船する

旅行術

東京・九州間を移動する時、ほとんどの人は飛行機を使う。
物好きな人は新幹線に乗るかもしれないし、時間と費用を節約するために夜行バスに乗るかもしれない。
そして2021年に第四の選択肢として、横須賀港と新門司港(福岡県北九州市)の間に直通フェリーが就航した。

2025年10月、丸1日がかりの四国・九州弾丸旅行を終え、帰りは新門司港から横須賀港まで東京九州フェリーに乗った。
前日の過酷なハードスケジュールとは対照的に、21時間のゆったりとした船旅となった。
それはかつて東京と九州の間を駆け抜けていた夜行列車と同様、贅沢な時間を過ごす旅であった。

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深夜発、夜着のダイヤ

九州に上陸してからトラブル続きの末に小倉駅に22時半ごろに到着。
新門司港からは小倉駅22時10分発、あるいは門司駅22時30分発の無料連絡バスが出ている。
本来なら徒歩利用者はこれを利用すべきなのだが、間に合わないので小倉駅からタクシーで港に向かった。
フェリー乗り場に着いたのは23時ごろ過ぎだった。

出航時刻は23時55分。
予約確認メールには60分前に来いとあったが、このくらいなら問題ないだろう。
カウンターに置いてある機械でチケットを発行していると乗船時間を告げるアナウンスが流れた。
船内に足を踏み入れると、エントランスは吹き抜けとなっていてエレベーターもある。
リゾートホテルや高層オフィスビルの中庭のような明るい空間だ。

私が今回予約したのは2番目に安いツーリストSクラス。
ベッドと机とテレビだけの簡素で小さなスペースだが、鍵もかけられるので一人用個室として安心して利用できる。
もちろんここで21時間過ごすとなると退屈するが、船内にはレストラン・大浴場など公共施設が充実している。
なお、一番安いツーリストAでもカプセルホテル式のブースとなっている。

ツーリストS

横須賀港に着くのは明日夜の20時45分である。
逆方向のダイヤもほぼ変わらない。
豊後水道を南下して太平洋を進んで神奈川県まで、航行距離はおよそ1000㎞。
所要時間が21時間だから船としては速い部類に入る。

船舶の運用面からしても、この所要時間は非常に効率的である。
関東の寄港地が東京でなく横須賀なのも、東京湾をゆっくり航行して東京まで行っていては、当日中の折り返し運用ができないためと聞いたことがある。
ちなみに東京九州フェリーは、徳島経由で同じ区間を結ぶオーシャン東九フェリーとは別なので混同しないように。

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太平洋航路は揺れる

いつも通り、甲板に出て出航を見送った。
巨大な船が勢いよく黒い煙を夜空に向かって吐き出し、回転しながら港を離れて方角を定める。
何とも旅情ある光景である。

大浴場には露天風呂・サウナもある。
洋上の露天風呂は風が強く寒い。
あいにく曇り空で星も見えないが、酔い覚ましにはなる。
船内は出航直後こそ酒盛りをする人がいたが、もう既に深夜なので1時を過ぎた頃には静かになっていた。

翌朝目が覚めたのは朝8時ごろ。
夢の中で揺られている感じがしていたが、起きてもやはり同じだった。
足摺岬を過ぎて、今は高知沖を航行している。
穏やかな瀬戸内海と違って、太平洋航路はそれなりに揺れるようだ。
10時過ぎには新門司港行きの姉妹船とすれ違う。
あれほど大きかった船が、果てしない太平洋では小型ボートのように見える。
風が強くてあまり人が立ち入らない甲板も、この時ばかりは人だかりができた。
なお、この日は露天風呂が強風のため使用禁止になっていた。

昼食にはレストランに行ってみた。
時間帯によって朝食・昼食・夕食・夜食と、それぞれメニューが異なる。
注文はタッチパネル式で、全体的に値段が高めのファミレスのようなスタイルだ。
関東と九州にちなんだメニューが多い。
また、食事の時間帯以外でもレストランは解放されていて自由に水が飲める。
なお、「水道水も飲める」とスタッフから聞いたのだが、海水のような味がしたので私はやめておいた。

夕食の定食

乗客の多くは車有りのため、2日目は酒を飲んで盛り上がるグループもなく、船内はとても静かだった。
エントランスホールのテレビを見る人は少なかったが、女子ゴルフの放送時だけは、主に50代~60代の気の弱そうな男性が食い入るように視聴していた。
通信状態もよくなく、読もうと思っていた本も忘れてしまったので、ロビーでぼんやりと曇った太平洋を見る。
他の乗客の話を聞いていると、九州や四国の旅行についての話が多い。
コロナ対策禍の最中にはあちこちを格安で旅行し、今ではインバウンドに汚染されていない行き先を巡っているという、アクティブな老人たちもいた。
夕食もレストランでとり、ハーフボトルの大分県産赤ワインを持ち帰って飲んだら、予想以上に高品質で驚く。

東京湾へ

横須賀港に着岸したのは20時半前。
予定時刻よりも20分早かった。
横須賀港の最寄り駅は京急横須賀中央駅で、徒歩で15分ほどのところにある。
東京駅までは1時間はかかるが、終電を気にするような時間でもない。
やはりほとんどの客が車有りのようだ。
私と共に駅へ歩いて行く徒歩組のリュックサックや格好を見ると、いかにも旅行好きな人たちという感じがした。

最後に余談となるが、当時の主役だった1950年代後半の夜行急行列車たちも、関東から九州まで同じくらいの時間を要した。
例えば2泊3日のダイヤでその名を残した急行「さつま」は、横浜22:19発、門司に翌20:48着、そして終着鹿児島に翌々日5:46である。(1956年12月号)

つまり、現代の大型フェリーはSL時代の列車のスピードに追い付いたのだ。
あとは、通路まですし詰め状態の暑苦しい車内でずっと過ごすか、設備の整った快適な船内で優雅に過ごすかの違いだけである。






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