東京から九州へ、新幹線「のぞみ」で博多駅まで乗車【値段・車窓などを解説】

幹線

今や、東京から九州に行く場合、ほとんどの人が飛行機を利用します。
データで見るJR西日本2022によると、東京都対福岡県の輸送シェアは8:92で飛行機が圧倒しています。

たしかに飛行機は断然早く、しかも早めに予約すると安いです。
しかし新幹線では、窮屈な点から点の移動ではなく、車窓の変化を眺めながら旅行気分を味わうことができます。

2022年12月中旬、東京駅を早朝に出発する東海道山陽新幹線の「のぞみ」に博多駅まで乗りました。
ダイヤ・料金も2022年の情報です。

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新幹線の東京~博多の所要時間は約5時間

東京駅から新大阪駅までが東海道新幹線、新大阪駅から博多駅までが山陽新幹線です。
両者は一体となって運用されているので、東海道・山陽新幹線とも呼ばれます。
また、東海道新幹線がJR東海、山陽新幹線がJR西日本の管轄です。

「のぞみ」の東京から博多までの所要時間は約5時間弱です。
羽田空港から福岡空港までの飛行時間はおよそ1時間半で、乗り継ぎや空港までのアクセスを含めても4時間もかからないので、新幹線はこの点では明らかに不利です。
博多まで通し運転の「のぞみ」の本数は日中でも1時間に2本あるので、距離の長さを考えれば充分でしょう。

「のぞみ」に使われる車両は2022年の時点で主力車両のN700Aと、2020年に登場した新型車両N700Sの2種類あります。

見た目は似ていてダイヤも変わりませんが、車内インテリアは若干異なります。
最も大きな違いは、N700Aには窓側と車両端の列の各座席にしか充電用コンセントがありませんが、N700Sでは全座席にコンセントがあることです。

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乗車記:海が見える左側もおすすめ

「新幹線はトンネルばかりで景色が見えない」ことはない!

まずは乗車記の前置きを。
よく「新幹線は大半の区間がトンネルで、車窓を楽しむことなどできない」と言われます。
たしかに在来線と比べればスピードが速くて、トンネルも多いので景色を見るには不都合です。
しかし、ほとんどがトンネルというのは比較的新しく開業した区間、つまり南九州や東北北部のような山がちで沿線に小規模の都市しかない路線です。

これは1960年代半ば~70年代半ばにかけて開業した東海道・山陽新幹線には当たらず、東海道新幹線区間では約13%、山陽新幹線区間でも50%です。
一方で高架区間も多いため、その分景色が眺めやすいという在来線には無い利点もあります。

朝の東京駅を出発。新横浜駅からやや混雑。

12月の平日の朝。
今回乗車する東京駅6時51分発車「のぞみ7号」は、一番端の19番線に停車しています。
車両は依然として多数派のN700Aでした。
ちょうど日の出と同時に出発。
縁起の良い滑り出しです。

私は今回A席、つまり進行方向左側の3列座席の窓側を予約しました。
一人予約ではE席が圧倒的に人気ですが、おそらくその理由は座席が2列であることと、富士山が見えるが右側だからでしょう。
しかし、指定席で真ん中のD席が埋まることはあまりなく、車窓も富士山の一点豪華主義の右側に対して、海が所々に見える左側の方が総体的には景色が楽しめると思います。

東京駅を出た頃の乗車率はまだ3割程度でした。
さて、いつもとは違う新幹線の旅を演出するのに最も適しているのが駅弁です。
駅で購入した「貝づくし」を開きます。
東京の名物駅弁「深川めし」を豪華にしたような感じで、オフィスビルを見て優越感に浸りながらの朝食は格別です。
ちなみに、右側では通勤客を収容した電車を見ることができます。
これも富士山・浜名湖に次ぐ、右側の「車窓ハイライト」だと私は思っています。

横須賀線と並走して武蔵小杉駅を過ぎる辺りから加速して、新幹線らしいスピードで走ります。
「いよいよだ」と姿勢を正すも束の間、新横浜駅に向けてすぐ減速してしまう展開には毎回シラケます。
新横浜駅で乗客が増え、7割程度の座席が埋まりました。
この程度なら2列座席のE席より、隣が開いているA席の方が快適です。
一方自由席では新横浜で降りる人が結構います。

私が座る席の列に、男性が申し訳なさそうに頭をペコペコさせて乗ってきました。
真ん中の席を隔てたC席なので全く気にしないのですが、まるで私がよほど偉そうに座っていたかのようです。

小田原駅を出ると一瞬だけ小田原城を左手に見送り、その後はトンネルの連続です。
トンネルの合間にミカン畑と海の景色がやはり一瞬ですが見えます。
特に、撮影名所として名高い東海道本線の白糸川橋梁は印象的です。

朝日でぼやけてしまった写真

ご覧になって分かる通り、「貝づくし」弁当は美味しいのですが味付けが濃いです。
よって、その後の当然の成り行きとして、演出第二弾の缶ビールを開けました。

関東を脱出、富士山は在来線より眺望が良い

温泉街を見渡しながら熱海駅を通過し、三島駅を過ぎるとトンネル区間は終わりです。
視界がにわかに開け、関東を脱出した清々しさと共にホッとする場面です。
遥か遠くの海沿いに松林も並んでいます。

ここでの見所は何と言っても右側の富士山です。
日本海側はこの冬一番の大雪が予報されていたこの日、太平洋ベルトでは冬晴れの富士山です。
在来線からは民家に遮られがちですが、新幹線からは、この山の美の本質であると私が考える、裾野まで眺めることができます。
その後、モクモクと煙を上げる大きな紙パルプ工場が聳えます。
この辺りの右手の見せ場は派手なので、右側からでも何とか見えます。

掛川駅付近では一面に水田が広がっています。
実に平凡な景色ですが、平地では住宅や工場が多い東海道新幹線では珍しいです。

浜松駅を通過して車窓名所の浜名湖を、在来線と国道と共に渡ります。
緩いカーブを描きながら、海を左手に、湖を右手にして爽快に駆け抜けるこの区間は、富士山に次ぐ東海道新幹線における第二ハイライトでしょう。

豊橋駅通過後、東海道新幹線最後の海が見える箇所となります。
ひょうたん島のような島が浮かんでいます。

やがて中部地方の中枢、名古屋駅に到着。
ここで半分くらいの人が降りるも、同じくらいの人が乗って来て、相変わらず7~8割の乗車率です。

木曽川を渡り、岐阜羽島駅を通過後も長良川・揖斐川と大きな河川が続きます。
そしていよいよ関東と関西を隔てる関ヶ原越え。
沿線で最も雪が多いのもこの辺りで、雪に弱い東海道・山陽新幹線は遅れが出ることもしばしばです。
この日は雪の訪れはまだでした。

以前正月に東海道新幹線に乗った時、関ヶ原付近でたちまち雪景色になり、前に座っていた小さい女の子が「ここはスキー場なの?」と言ったのを覚えています。
やはり子供の無垢な想像力と表現力には敵いません。

京都駅を出るとまもなく、左手に五重塔が見えます。
日本の古都の雰囲気は、経済の大動脈である東海道新幹線でも感じられます。

やがて、山と川に挟み撃ちにされた線路や道路たちが所狭しと束ねられる交通の隘路、天王山です。
高度な土木技術によって建設された新幹線も例外ではなく、かつて国鉄の超特急「つばめ」を追い抜くことで有名だった阪急電車と並走します。

新大阪駅から山陽新幹線。車内販売の有無には注意。

住宅や町工場が密集する大阪の街を過ぎて、新大阪駅に到着しました。
これからは山陽新幹線を走ります。
新大阪で人が減るかと思っていましたが、意外と微減程度でした。
2つ隣の席に座っていた腰の低い紳士もここで下車します。

東京からおよそ550㎞、東北新幹線の距離なら盛岡です。
仙台・盛岡で輸送量がたちまち先細りしてしまう東北に比べ、さすが東海道・山陽新幹線、すなわち太平洋ベルトは人口・産業の集積具合が違います。

有名な豚まんの紙袋が荷物棚を賑わし、車内には関西弁が響きます。
ところで、上野駅には岩手県出身の石川啄木による
「ふるさとの 訛りなつかし 停車場の 人ごみの中に そを聴きにいく」
という大変美しい歌碑がありますが、新大阪駅に降り立って粗雑な言葉遣いに辟易しながらも、親近感を覚えてしまったことは、東京在住の関西人なら誰しもが経験したことでしょう。

新大阪駅を出発し、しばらく住宅地が続いた後、1972年の開業時は日本一の長さ(約16㎞)を誇った六甲トンネルに突入します。
六甲山地をもっと大胆に抜けることも可能でしたが、それでは国際都市神戸の駅がトンネル内にあってよろしくないということで、新神戸駅は長大トンネルの間に作られました。

古戦場で知られる摂津と播磨の国境をあっさりと越え、穏やかな瀬戸内海に近づきます。
ここも在来線より高台を走るので見晴らしが良好です。

姫路駅付近では右手に白亜の世界遺産、姫路城を見ることができます。
東海道新幹線の沿線は工場が多かったので、水田や山が目立つようになるとだいぶ田舎に来た印象です。

車内販売のワゴンが通りかかったので、定番&王道のバニラアイスクリームとホットコーヒーを購入しました。
東海道新幹線には「ひかり」「のぞみ」の全列車に車内販売がありますが、山陽新幹線では一部の「のぞみ」しか営業していないので要注意です。
また、JR西日本の自社ブランド列車の「みずほ」「さくら」にも車内販売はありません。

岡山駅は山陰や四国への列車が発着する、中国地方の交通の要衝です。
私は時刻表で地理を独学したも同然なので、広島よりも岡山の方がずっと大きな都市だと思っていました。

日本の最重要路線だけあって、沿線には城が点在しているものの、高速の新幹線からはなかなか目視が難しいです。
その点、福山城は福山駅のすぐ近くにあるので分かりやすいです。
ところで、広島県に入ってから、赤い石州瓦の民家が目立つようになります。
山陽路の入母屋造りの民家が佇む何気ない田園風景には、毎回感動させられます。

広島駅からは乗客数が減る。徳山駅の手前が車窓ハイライト。

東京駅から4時間弱で、広島駅に着きました。
ここまで来ると明らかに乗車率は減り4割程度となります。
新幹線と飛行機の勝敗ラインの目安とされる「4時間の壁」がちょうどこの辺りで、東京対広島では新幹線の輸送シェアが6割とやや優位です。

徳山駅の手前で繰り広げられる、20世紀的な巨大コンビナートと、それと対照的に静謐な多島海の組み合わせは、山陽新幹線の車窓ハイライトです。
この情報化時代、瀬戸内海沿線で今も重厚長大産業に頼るのはいかがとは思いますが、そんなことは19世紀後半から20世紀中盤までの近代化の象徴である鉄道の愛好家が指摘することでもありません。

山陽新幹線も西部になると、駅やその周りの都市の規模が小さくなったことが感じられます。
ただし、輸送密度(平均通過人員)は仙台以北を上回っています。

新下関駅を通過すると、すぐに九州へと続く新関門トンネルに入ります。
在来線の関門トンネルがまず単線で開通したのは、戦時中の軍事的要請を受けた1942年。
新幹線が同じ海峡を通るのは僅か33年後、高度経済成長期の直後です。

九州に上陸。迎え撃つライバルはJR九州。

九州に上陸するとすぐに小倉駅に停車します。
ここでさらに空きました。
福岡市では空港から近すぎますが、北九州市なら東京からでも新幹線はそれなりに健闘できるのでしょう。

九州に上陸

小倉駅~博多駅は一駅ですが、この区間は高速バスのみならずJR九州の在来線特急(山陽新幹線はJR西日本)とも競合しています。
自由席利用だと新幹線も安いので、近距離利用が多いです。

活気のある街並みが現れ、11時45分に終点博多駅に到着しました。

前方の自由席車両から大勢の人が降りてきました。
おそらく小倉から乗った人達でしょう。

博多駅に到着した「のぞみ7号」

博多駅到着時は晴れていましたが、福岡市内を散策しているうちにあられが降ってきました。
博多は太平洋ベルトの終着であるとともに、日本海側の山陰の続きでもあるのです。

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費用を安くするにはスマートEXのEX早得が便利

東京~博多の「のぞみ」普通車指定席の値段は23,390円で、自由席だと1,200円ほど安くなります。
これらは通常料金で、この区間にも割引価格のチケットが各種販売されています。

その中で利便性・割引率ともに高くおすすめなのが、東海道・山陽・九州新幹線のネット予約サービス「スマートEX」の「EX早得」です。
スマートEXは年会費が必要な「エクスプレス予約」もありますが、EX早得を購入するためにこちらに入会する必要はありません。
無料の会員登録をするだけで充分です。

21日前までに予約する「EX早得21ワイド」なら、東京~博多が17,000円になります。
時間帯の制限があるわけでもなく、終日の「のぞみ」指定席が利用可能です。
また、3日前までに予約できる通常の「EX早得」もあります。
こちらは平日より土日の方が安くなり、平日料金は17,720円、土日料金は17,310円と、「早得21」とあまり変わりません。
さらに「EX早得」にはグリーン車用の設定もあり、平日24,320円、土日22,100円という、普通車の通常料金並みかそれ以下で利用できます。

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新幹線の5時間はきつくない

新幹線で九州に行くことを奨めるにあたって、私は「鉄道を利用することでCO2排出量がいくら減る」といった、説教臭く宗教じみた話はしません。
好奇心を持って車窓や車内を眺めれば、意外と5時間の乗車はきついこともないと気付くと思います。
寧ろ、狭い座席とシートベルトに縛り付けられる1時間半~2時間の方が苦痛ではないでしょうか?

それでも高速鉄道の移動が無味乾燥に思われがちなのは、決してつまらないからではなく、それがあまりにも日常や仕事の中に埋没して、そもそも我々が好奇心を失ってしまっているからです。
92%ではなく敢えて8%の側を選択することで日常の倦怠から解放され、今まで見過ごしていた日本を再発見することでしょう。

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