ポーランドの地図を見て、ふと気づいたことがある。
クラクフ・グダンスク・ポズナニ・ヴロツワフなど、この国の有名な観光都市はいずれも首都ワルシャワから西に位置しているのである。
そもそもワルシャワが国土の東寄りなのだと言われればそれまでなのだが、にしても東ポーランドの都市を訪れたくないだろうか?
そこでおすすめなのが、ウクライナ・ベラルーシ国境にもほど近いルブリン(Lublin)である。
街並みが綺麗で、ワルシャワからも日帰り可能だ。

一部加工して利用
2025年9月、ワルシャワ~ルブリンを鉄道で往復した。
本記事では、乗車記と併せて同区間の列車の予約方法や費用などを解説する。
ルブリンについて
首都ワルシャワから南東に約170㎞のところにあるのがルブリンだ。
ウクライナやベラルーシとの国境まではおよそ100㎞しかない。
世界史に詳しい人なら、中世の大国ポーランドとリトアニアの連合国家を生んだ1569年の「ルブリン合同」を思い出すかもしれない。
その舞台となったルブリン城がこの街のランドマークである。


ルブリンは1795年の第三次ポーランド分割の結果オーストリア領になった。
しかし、ナポレオン戦争後の1815年のウィーン会議以来、独立するまでの約100年間をロシア領として過ごした。
オーストリア要素が強いクラクフ、ドイツ(プロイセン)要素が強いポズナニ・グダンスクに対して、ルブリンはロシア的要素も有する貴重な地方都市だといえるだろう。
ワルシャワからの所要時間は2時間弱

ワルシャワ~ルブリン間の列車は1~2時間毎に運行している。
それ以外に乗り換えを要する接続もある。
所要時間は速い便で2時間弱、遅い便で約2時間半となっている。
発着するのはワルシャワ中央駅(Warszawa Centralna)・ワルシャワ東駅(Warszawa Wschodnia)とルブリン中央駅(Lublin Główny)である。
この区間の列車種別はIC(インターシティ)で、「主に支線で活躍する都市間急行列車」をイメージしてもらえばよい。
人気路線のワルシャワ~クラクフ間で走っているEIP(Express InterCity Premium)ほど速い&快適ではないが、2時間の乗車時間なら充分な設備だろう。
機関車が客車を牽引するタイプが主流だが、便によっては軽食堂車付きの新型電車で運行される。

ちなみに、ワルシャワ~ルブリンはワルシャワ~キエフ間の国際列車”Kyiv-Express”(2025年9月現在も運転されている)のルートの一部である。
戦争が終わったら、15年ぶりにこの列車に再び乗りたいものだ。
予約方法と費用
予約の流れ
予約はポーランド国鉄のサイト(PKP INTERCITY)から行うことができる。
優等列車は全席指定制で、かつ早めに購入すると割引が効くことが多いので、極力事前にチケットを手配しておこう。
乗車日の30日前から予約できるようになる。
そのやり方をこれから写真付きで解説しよう。
まず日付・区間・人数を入力して列車検索画面へ。
候補のなかには乗り換えありのパターンも含まれるので、直通の”Direct”と書かれたものを選ぼう。
ページが切り替わるとポーランド語に戻ることもあるので、その時は右上の言語表示をPLからENに変える。

料金は現地通貨(ポーランドズロチ)建てで表記されている。
2025年9月現在1ズロチ≒40円だ。
ちなみに、東欧バブルがはじけた2009年のリーマンショック以降はユーロに対して比較的安定した通貨である。
ともかく、列車を選択したら、2等車か1等車かを選んで先に進む。

次の画面では”Seat selection preferences”からシートマップ画面へ。
ポーランドの列車にはオープンサロンタイプ(日本の新幹線と同じタイプ)とコンパートメントタイプ(たいてい6人用部屋)の種類の客室がある。
号車を選択して好きな座席を指定しよう。
また、編成の先頭部分に”locomotive”(機関車)の表示があるかないかで、その便が客車タイプか電車タイプかが分かる。
電車の場合は客室は全てオープンサロンタイプとなっている。

なお、2つ前の写真で超過荷物を追加する項目があって気になった人もいるかもしれないが、ポーランドの列車にはLCCのような厳格な荷物規定はない。
よって常識的な大きさのスーツケース1つや2つであれば、追加の荷物にチェックを入れる必要はないと思われる。
その後支払い画面へ。
会員登録をする必要はない。
決済完了するとメールアドレスにチケットが添付されたメールが届く。
スマホに保存するか印刷して終了だ。
お疲れ様でした。
ICの料金は安い
ワルシャワ~ルブリン間の料金は同じ日付でも列車によって異なるが、数日前に予約しても2等車が35~50ズロチ、1等車はその10~20ズロチ増しが相場だ。
数週間前なら2等車で15ズロチ程度、1等車でも30ズロチ弱という格安の割引料金が提示されることもある。
距離は半分程度とはいえ、人気路線のワルシャワ~クラクフのEIP1等車なら200ズロチを越えることが多いのを考えると、全体的にかなり安めだといえる。
おすすめは客車・電車ともに2等車
2等車と1等車のどちらを選べばよいか迷っている方にここでアドバイスしよう。
基本的に客車タイプでも電車タイプでも、2等車で充分である。
1等車は2等車と同じ6人用コンパートメントなので、付加価値があまり高くないからだ。
また、電車タイプの1等車は日本の特急と同様に2&1列の座席配置なので、特に1人旅の時は有難い存在となるように思える。
しかし、下のシートマップを見ればわかる通り、座席は向かい合わせ式となっていて本当の意味での「1人用座席」は無いに等しい。

ルブリン~ワルシャワの乗車記
ワルシャワとルブリンを往復するにあたって、行きと帰りとで違うルートの列車に乗った。
帰りは通常の所要時間2時間弱の列車だったが、行きはワルシャワ東駅を発着する遠回りルートを走る珍しいICだった。
ワルシャワ東駅も中央駅と似たような、無機質で威圧的なコンクリート建築だ。
「旧ソ連時代の画一的な云々」とありきたりな批評を行うのは簡単だが、私が今住んでいるJR中央線の小金井市の駅舎たちなんかはもっと画一的で金太郎飴的である。
やや旧式で強そうな電気機関車に牽かれたICがやって来た。
2等車の6人用コンパートメント席に座って出発を待つ。
座席には充電用コンセントがあったので助かった。


ワルシャワを出てしばらくは150km/hくらいのスピードで走ったが、途中からは単線になって遅くなった。
車窓は単調で道中に大した都市もなかった。
その代わり時々現れる農家の風景が印象的だ。
コンパートメントを貸切ったまま終点のルブリン中央駅に着いた。
街のランドマークのルブリン城によく似た駅舎である。


帰りは夕方ルブリンを出発する便で、こちらが一般的なルートだ。
今度は精悍な顔つきをした電車タイプだった。

新型車両だけあってインテリアはスマートで、天上の照明などは東武特急「リバティ」を思わせるものだった。


今度はほぼ連続して160km/h程度で走る。
途中駅はどれも新しいもので、比較的最近になって開業した路線だと思われる。
車窓は相変わらずで、ただただ草原や畑が広がるのみである。
やはり都市らしい都市が無かったにもかかわらず途中停車駅は結構あって、意外と乗って来る人が多い。
すっかり日が暮れて、夜景を見ながらビスワ川を渡るとワルシャワ中央駅に着いた。


ワルシャワ中央駅付近は治安が良くないと言われることがある。
もともとあまり雰囲気の良い場所ではないのだが、それでも危険というほどではない。
不用意・不用心な行動さえとらなければ、夜中に到着しても問題ないだろうと思う。

2023年6月
駅近くのホテルに投宿し、明日のリトアニア行きに備えた。
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