【中世の城と街並み】ラトビアの古都ツェーシスを半日で観光する

ヨーロッパ鉄道

ラトビアの首都リガから北東へおよそ100㎞弱。
ツェーシス(Cesis)は人口2万人足らずの小さな田舎町でありながら、中世の城跡と素朴な街並みが美しい地方都市である。
13世紀に「北の十字軍」ことドイツ騎士団が、布教活動(=軍事侵攻)の拠点としてここツェーシスに城を築き、その後も幾多の戦いにおいて重要な軍事的要衝の地となった。
リガからの日帰りだけでなく、鉄道でエストニアのタルトゥやタリンに行く途中に立ち寄ることもできるお勧めの訪問先だ。

2025年9月、ツェーシスを半日で観光した。
夜に到着してその日は軽く散策のみ、翌日の午前中に見どころを周った。

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黄昏時の田舎街

リガ発の列車でツェーシス駅に着いたのが夜の8時ごろ。
まだ薄暗くなり始めたばかりだ。
何処かで焚き木でもしているのか、燻製の香りが辺りに漂っている。
やや寂れた感はあるが、雰囲気の良い街である。

ツェーシス駅舎

円安ユーロ高と経費削減のため、今回の旅行ではセルフチェックイン式のアパートホテルを利用していたが、今日は中心部の格式あるホテルに泊まる。
というのは、ツェーシス駅周辺や市内には荷物預かり所が無い可能性が高いので、チェックアウト後も荷物を預かってくれるホテルでないと、明日12時過ぎまでこの街を観光する際に都合が悪いからである。
高級ではないが、綺麗で快適なホテルだった。

部屋にスーツケースを置いてすぐに外出。
小さな街なので見所は全て徒歩圏内である。
地平線がオレンジ色に輝いている。
それにしても、ツェーシスは周辺よりも標高が高いようで、街を取り囲む森林を果てしなく見渡すことができた。
こうした地形も軍事戦略上の優位性だったのだろう。

賑やかそうに見える通りを歩いてみたが、人は少なかった。
昨日まで2泊したリガの夜とは対照的だ。
都会と田舎を両方訪れると旅にメリハリができる。
とはいうものの、私の旅行は鉄道に乗るのが第一の目的なので、どうしても都市部が中心になってしまうのだが。

何とかセルフ式のレストランを見つけたので夕食にしよう。
ちょうど21時なので閉店まであと1時間あるはずだが、客は全くおらず店員は閉店準備をしていた。
地元の大衆食堂といった感じの所で、ラトビアにはこうした「早い・安い・美味い」の店が結構あって助かる。
チキンカツにかけてもらったキノコクリームソースは、ラトビアで最も私の心に残った料理となった。
ソースなど所詮は脇役などと言うなかれ。
林業と酪農が盛んなこの国の風土を実によく体現しているではないか。

外に出るともう夜だった。
教会の塔、城の塔、そして満月が、藍染めされた空を彩っていた。

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ツェーシス城は新旧2つの城から成る

翌朝、今日はツェーシス城を訪れる。
営業時間は10時からなので、それまでは散策をしよう。

宿泊したホテルの裏手にも公園があった

城の周辺には池のある公園があって、ジョギングをしている人やベンチでずっと佇んでいる人たちがいた。
日本式で言う「三の丸公園」だろうか?
都会の朝ラッシュ時間帯とは思えないほど、ゆっくりとした時間が流れている。

また、古い木造の住宅が並ぶ、生活感が滲み出た区画もある。
近くには学校もあって、子供たちが集団で中に入っていった。
浮世離れしたように静かで古風なこの街も、この時ばかりは活気に満ちていた。

そろそろツェーシス城が開く10時だ。
入り口の前で水を飲んでいると、通りかかった男性が「水で渇きを癒すことで永遠の命が云々…」と話してきた。
彼はドイツ騎士団の末裔なのだろうか?

チケットを買って城壁の内部に入る。
園芸や修練所などを見た後に、内堀に架かる橋を渡って城の建物へ。
いかにも中世の城といった雰囲気で、ゲームだったら騎士や魔法使いが敵キャラとして登場することだろう。
外壁は壊れている部分が多いが、四方の塔は何とか応急手当された状態で建っている。

城の建物の内部へ入っていくと、中庭でローソクをともしたランタンを配っていた。
最初は雰囲気だけかと思ったが、狭い塔の螺旋階段は真っ暗でランタンが無いと何も見えない。
塔の内部にはビデオや展示コーナーがいくつかあった。

ランタンを持って城を攻略する

ツェーシス城は「いい感じに廃墟」だ。
復元すべきかどうかはともかくとして、遺構が全く残っていないよりは少しでも跡形がある方が良いし、逆に雰囲気だけの復興(もともと天守閣が無かったのに「復元」している日本の城は幾つもある)をされるのも違う。
ツェーシス城は修復を最小限にしつつも、イラスト等を交えて往時の姿を訪問者が容易に想像できるのだ。
嬉しくなった私は再度ランタンを借りて、明るい中庭を散策した。

往時のイラストと現状を見比べる

さて、ツェーシス城には13世紀に建てられた古い廃墟の城に隣接して、18世紀の領主の館(新しい城)がある。
こちらは博物館として利用されており、城のチケットで入ることができる。
古い城とは対照的に、品の良い調度品と内装の部屋だ。
内部はかなり入り組んでいて、じっくり見学すると新しい城だけでも1時間以上かかる。

新しい城の塔の屋上は展望台になっている。
見渡す限りの深緑の森林が大海原なら、赤い屋根の家が点在する街はそこに浮かぶ小島だ。
ここが交易の中心・軍事的要衝だった頃の面影は、古城の廃墟以外には見いだせない。

あっという間に12時を過ぎた。
ホテルへ荷物を取りに行って、ツェーシス駅12時45分発のヴァルガ行き列車でエストニアのタリンへ向かった。





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