高松から徳島へ、2600系特急うずしお11号自由席の乗車記【車窓・混雑具合など】

幹線

四国の「みぎうえ」部分の県都・高松と徳島を結んでいる特急「うずしお」。
その一部は2600系という珍しい車両で運転されています。
量産化が中止され「失敗作」と見る向きもありますが、令和時代のJR四国を語るうえで欠かすことのできない存在です。

2024年1月初旬、2600系「うずしお」で高松から徳島に向かいました。
本記事では2600系の話だけでなく、「うずしお」の概要や車窓風景について述べていきます。

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高松から徳島までの所要時間は1時間、最高速度は130㎞/h

特急「うずしお」は高松・徳島間(2往復のみ岡山まで直通)を1時間強で結んでいます。
運転本数は1時間に1本と結構多いです。

沿線には小規模の市町村が点在しており、特急の途中停車駅も結構多いです。
そして「うずしお」が走る高徳線は全線非電化単線。
そんな条件下でも最高速度は130㎞/h、表定速度(停車時間も含めた平均速度)が75㎞/hを越える列車もあり、なかなか健闘しているといえます。

「うずしお」に使われるのは大半が2700系という四国の主力車両ですが、うち4往復は2600系という珍しい車両による運用です。
2017年に登場した2600系はカーブでも高速で通過できる車体傾斜車両で、従来の「振り子式」よりもコストパフォーマンスが高い「空気バネ式車体傾斜」を採用しました。
この空気バネ式は2010年代より全国で主流となったタイプなので、特殊なものではありません。

しかし、峻険な四国山地と大歩危小歩危の峡谷が2600系を阻みました。
本命となる岡山・高知間の土讃線では、カーブが多すぎてコスパ重視の空気バネ式車体傾斜が機能しないことが分かったのです。
そのため2600系の製造は2編成で打ち切られ、新時代のディーゼル特急車両として従来通りの振り子式車両2700系が量産されました。
2600系はカーブが土讃線ほど多くない高徳線の「うずしお」に投入されて今に至ります。

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予約はJR西日本のe5489で

JR四国の特急列車の予約は、JR西日本のネット予約サイトe5489から行うことができます。
予約した切符の受け取りは四国のみどりの窓口・みどりの券売機でも可能です。

ただ、割引商品の「WEB早割」は四国の特急には適用されません。
四国の特急にはまだ自由席が残っているので、繁忙期でなければ敢えて指定席を予約しなくても良いと思います。

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乗車記:自由席もがら空き

正月休みのピークも過ぎた平日、ヨーロッパのターミナルを思わせる行き止まり式の高松駅には潮風の香りが漂っています。
冬晴れの空に陽も高くなると、ダウンコートでは暑すぎるくらいです。
私が乗車する11時10分発の「うずしお11号」は2600系の2両編成。
前の車両の前半分が指定席、残りは自由席です。

高松駅を出発した時、自由席の乗車率はせいぜい20%、指定席には乗客がいませんでした。

10分くらいで屋島駅に到着。
新型気動車の乗り心地は良好です。
左手に見える、山の上部を切り取ったような台地が源平の古戦場で知られる屋島です。

高松駅で地酒と「干ベイカ」を買いました。
「干ベイカ」は人工的な味付けが一切なく、イカ天然の風味が大変美味しいです。
チューインガムのようにずっと嚙んでいたくなります。
嬉々としてお酒の缶を開けようとするも、取手に変な力を加えてしまい大苦戦。
結局、船に掲げられた扇の的を見事に矢で射抜いた那須与一を思い浮かべながら、しぶしぶ缶切り(呑み鉄の必需品)を使って開栓しました。

その後も5~10分毎に駅に停車します。
四国では25㎞以内の自由席特急券はたったの330円で、「うずしお」に限らず特急でも短距離利用客が多いです。
そのため客層はむしろ市内路線バスに近いです。

単語帳とにらめっこしているのは受験生でしょうか。
そして私の後ろの席では男性がビールを飲んでいます。
彼は僅か30分弱の乗車中に缶二本を開けていました。
時々列車は丘陵越えのために高度を上げ、その際に田園風景越しに何度か海が見えます。

引田駅ひけたを過ぎると県境を越えです。
比較的平坦な高徳線にしては例外的にトンネルが続きます。
空と見分けがつかないくらいに青い海には小さな島が幾つか浮かんでいます。

やがて前方が開けて吉野川下流に広がる徳島平野に出ると板野駅いたのに到着です。
香川県と比べると、徳島県は全体的に家が古めかしく感じます。
人口密度が低くなって畑が広くなりますが、この季節は作付けされていないところがほとんでした。

最後の方で吉野川を渡ります。
日本三大暴れ川の一つで「四国三郎」と呼ばれるこの川も、河口は瀬戸内海の一部のようです。
右手には徳島市街を見渡す眉山びざんが見えてきました。

近代的なターミナルらしい高松駅と比べると、終着の徳島駅はいかにも地方ローカル線の主要駅といった面構えです。
折り返し列車を待つ人が、乗ってきた「うずしお11号」よりもずっと多かったので安心しました。

なお徳島県は日本で唯一電車がいない(つまり電化された路線がない)県となっています。
「隣の高知県の方が田舎では?」と思いますが、高知には辛うじて路面電車が走っているので徳島県が不名誉なタイトルを保持しています。

徳島の言葉は四国の中で最も関西に近く、四国・中国地方でよく使われる「○○けん」もほとんど聞かれません。
阿波尾鶏あわおどり(ブランド地鶏)の唐揚げを食べてからバスで神戸へ帰省しました。
淡路島を通ってたったの2時間弱です。
大鳴門橋のみならず、明石海峡大橋も鉄道が通れる構造で建設されていたら、四国新幹線でもっと近くなるのでしょうが…

徳島駅前
神戸・大阪行きのバスが頻発している
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陰の功労者

「失敗は成功の母」とはトーマス・エジソンの格言です。
たしかに2600系は主役を2700系に譲りましたが、その2700系とて基本的な設計は2600系に準じています。
実際、鉄道に詳しくない人には両形式の違いなどほとんど気にならないでしょう。
よって、2600系は現在の四国の鉄道の土台を築いた陰の功労者だといえます。

高松と徳島は共に四国にありながら播磨灘を隔てた関西との結びつきが強く、それは人々の方言からも感じられます。
路線にせよ車両にせよ、2600系「うずしお」は四国の主流派から一歩引いた立ち位置を貫いているのかもしれません。

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