3つ存在する本州四国連絡橋のうち、最初に開業した瀬戸大橋には鉄道も通っています。
そして瀬戸大橋を隔てて隣接する県都、岡山と高松を結ぶのが連絡船の後継者である快速「マリンライナー」です。
この列車には2階建て車両が連結されており、2階はグリーン席となっています。
2024年1月、岡山から高松まで「マリンライナー」のグリーン車に乗車しました。
本記事では「マリンライナー」の概要・乗車記、そして予約について述べていきます。
※料金は2024年1月を基にしています。
岡山から高松まで所要時間は1時間弱
快速「マリンライナー」の運行区間は岡山~高松。
距離にして約70㎞、平均的な所要時間は1時間弱です。
途中単線区間があったり、瀬戸大橋でもスピードが抑えられることを考えるとなかなかの俊足といえます。
運転本数は概ね1時間に2本です。
車両はJR四国の5000系が使われます。
高松寄りの先頭車が二階建てになっているインパクトのある車両で、2階部分がグリーン車、1階部分が普通車指定席です。
両方ともリクライニングシートですが、座席背面テーブルの有無や内装で差別化が図られています。
座席にコンセントはありません。
残りの車両は普通車自由席で、外観も車内も関西の新快速とほぼ同じものです。
予約:普通車指定席は530円、グリーン車は1000円の追加料金
「マリンライナー」の予約はJR西日本のe5489から行うことができます。
予約した切符の受け取りはJR西日本の駅はもちろん、JR四国の管内であってもみどりの窓口またはみどりの券売機から可能です。
座席表から好きな席を選ぶこともできます。
追加料金は普通車指定席が530円、グリーン車が1000円(50~100㎞の区間)です。
また、普通車指定席は閑散期には200円引きになります。
なお首都圏の普通・快速列車のグリーン車は自由席ですが、「マリンライナー」のグリーン車は指定席なので着席は保証されています。
ところでグリーン車が2階席と述べましたが、一部例外がありまして、最前列の1列だけは運転席のすぐ後ろの平屋建てです。
この席からは前面展望を楽しむことができます。
しかし、個人的には敢えてここを選ぶ必要はないと思います。
というのも、「マリンライナー」の車窓ポイントは言うまでもなく瀬戸大橋ですが、鉄道は道路の真下を通るので、構造物が目立ってあまり景色が見えません。
それなら2階席から瀬戸内海を眺めた方が良いです。
グリーン車には青春18きっぷは使えない
「マリンライナー」は快速列車なので、当然ながら自由席は青春18きっぷで利用することができます。
ここで問題になるのは、普通車指定席やグリーン車は追加料金だけで乗れるのか否かでしょう。
結論は「普通車指定席は追加料金だけで乗れるが、グリーン車は別途乗車券も必要」です。
なお、岡山・高松間の乗車券は1,660円です。
首都圏の普通列車と混同しがちですが、あれはグリーン車自由席だからです。
「マリンライナー」のようなグリーン車指定席には、快速列車であっても青春18きっぷは無効なので注意しましょう。
それから青春18きっぷの盲点としては、普通車指定席でもチケットレスサービス(画面上の表記は「チケットレス特急券」となっている)は使えません。
チケットレスだと通常期の指定席料金より200円安くなりますが、青春18きっぷで利用する場合は通常の指定席券が必要です。
乗車記:瀬戸大橋を渡る
西日本の一大鉄道ジャンクションの岡山駅。
令和時代になっても昭和の車両だらけで、「懐古鉄」にとっては聖地のような場所です。
そんな岡山駅も四国行きの列車が出るホームだけは、JR四国の比較的新しい車両が顔を揃えます。
「マリンライナー」の5000系もその一つで、二階建ての大きな前面窓の車両が「昭和くさい」周囲とは一線を画しています。
隣にはロケットのような松山行き特急「しおかぜ」。
明るくも懐かしい感傷を呼び起こす駅メロ「瀬戸の花嫁」は、四国のイメージそのものを岡山駅のホームに運んでくるようです。
私がこれから乗る「マリンライナー17号」は出発10分程前にグリーン車の清掃作業が終わり乗車できるようになりました。
床は紫色のカーペットが敷かれシックな雰囲気です。
9時33分に岡山駅を出発。
すぐに勢いよく左折し山陽線に背を向け、四国を目指して南下します。
グリーン車の乗客数は5人くらいでした。
寒い朝でもアイスコーヒーを片手に乗り込んできた背広姿の男性は、席に着くなりブラインドを完全に下げてしまいました。
そうするのであれば普通車指定席で充分な気もしますが、まあ良しとしましょう。
ところで、「マリンライナー」の運転区間である岡山~高松には「瀬戸大橋線」という呼称が使われますが、これは正式な路線名ではありません。
岡山~茶屋町が宇野線、瀬戸大橋を含む茶屋町~宇多津が本四備讃線、宇多津~高松が予讃線です。
茶屋町駅までの宇野線は単線区間が多く、スピードもあまり出ません。
快速や特急が結構行き来するので複線化を望みたいところですが、もしかしたら四国新幹線開業を見据えてそのままにしているのでしょうか。
瀬戸大橋とともに開業した新しい本四備讃線に入ると、列車は水を得た魚のように快走し、立ちはだかる山塊をトンネルで突破していきます。
JR四国の乗務員に交代する児島駅を出ると、まもなくお待ちかねの瀬戸大橋です。
窓から真下を眺めるとガラス張りになった所から海面が見え、思わず足がすくみます。
多数の島と船舶が浮かぶ瀬戸内海を、独特な走行音を奏でながら慇懃に渡っていきます。
四国が見えてきました。
出迎えてくれるのは塩田跡地を活用した大規模な工業地帯で、間違って北九州市に渡ってしまったと勘違いするかもしれません。
もっとも、周りの穏やかな瀬戸内の風景は変わりません。
四国に着陸すると大掛かりな複線のデルタ線(三角形の線路)が展開します。
右に分かれていくのが松山・高知方面に向かう線路です。
やはりここも、ほとんどが単線でその多くが非電化の四国の鉄道らしからぬ光景です。
なおも市街地が続きます。
右手にはお行儀の良い形をした城山が見えます。
後ろの普通車自由席は坂出駅で乗客が増えたようです。
雨の少ない香川県にとって大切な農業用のため池を幾つか通過し、終着の高松駅に到着しました。
ここはヨーロッパのような行き止まり式のターミナル駅です。
改札内にあったうどん屋は閉店していました。
駅周辺は再開発されていて宇高連絡船時代の面影はほとんど残っていませんが、近くには港や高松城があります。
駅の外に出るとすぐに潮風の香りがしました。
四国へのアプローチ
「マリンライナー」で四国に渡ると、そのイメージは岡山駅で聞いた「瀬戸の花嫁」の情景とはだいぶ異なります。
我々を迎えてくれるのはこじんまりとした島ではなく、工業化・宅地化の進んだ瀬戸内地方です。
北海道新幹線から函館に入っても北海道の真髄には触れられないように、「マリンライナー」から見える四国はその要素のほんの一部分だけです。
これからの導入演出として、2階グリーン席から瀬戸内海を眺めながら四国入りするのも良いと思います。
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