ラトビアのリガからダウガウピルスへ、ソ連式レトロなディーゼルカーに乗車

ヨーロッパ鉄道

リトアニアのカウナス、エストニアのタルトゥ。
両国の第二の都市は若く活気のある街として人気がある。
それに対してラトビアの第二の都市ダウガウピルスは、「地球の歩き方」にも載っておらず、訪問先としてほとんど認知されていない。

ダウガウピルスの観光地としての魅力は別記事で紹介するとして、本記事では首都リガからの列車での移動について解説していきたい。

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ダウガウピルスはラトビア第二のロシア系都市

ダウガウピルスはラトビア南東部、リトアニア・ベラルーシ国境近くに位置する国内第二の都市である。
特に街並みが綺麗というわけではないが、観光名所としてはかなり大きな要塞がある。
廃墟が散在する軍事施設跡で、内部には現役の古いアパートもある。
刺さる人には間違いなく刺さるスポットだ。
長崎の軍艦島に心を奪われた人は、是非ダウガウピルスを訪れるべきである。

そして何よりダウガウピルスを特徴づけているのは、その民族分布である。
この都市はラトビア人がマイノリティで、半数以上がロシア系住民となっている。
またこの地方がポーランド・リトアニア領だった時代が長いため、カトリック教徒も多く住んでいる。
そんなダウガウピルスの市街地には、ラトビア人のプロテスタント、ロシア人のロシア正教、そしてポーランド系のカトリック、さらには正教会の一派である古儀式派という4種類の教会が徒歩数分圏内に集まっている。
まさに多文化都市を象徴する光景といえるだろう。

左からロシア正教、プロテスタント、カトリック教会が見える。
さらにロシア正教の教会に隠れて古儀式派教会もある
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リガからダウガウピルスまで3時間前後

リガからダウガウピルスまでの列車は数時間毎に運行されている。
所要時間は速い便(急行列車)で3時間弱、遅い便(普通列車)だと3時間半ほどかかる。

ラトビアの鉄道

車両の近代化が進んでいるバルト三国にあって、ラトビアだけは依然としてソ連時代のディーゼルカーが幅を利かせている。
リガ~ダウガウピルス線も例外ではない。
古くて快適な車両とは言い難いが、4人掛けクロスシートでトイレ付と、長距離列車としての体裁は一応整っている。

ラトビアの列車の車内
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予約できる列車とできない列車がある

列車のダイヤの確認や予約はラトビア鉄道のサイト(Vivi)で行うことができる。

9.7€のiマークがついている便はネット予約不可の急行列車
2本矢印マークは乗り換えあり
急行はコンフォートシート付表示だが、実際は必ずしもない

予約する際に気を付けるのが荷物だ。
大きさが60×40×20、重さが20㎏を越える場合は追加料金が必要となる。
機内持ち込みと同じサイズなので、日本人旅行者はこれに収まらないことが多いだろう。
もっとも、サイズや重量を車掌が厳しくチェックしている様子は全くなかった。

赤丸が荷物超過分

もう一つ注意すべきは、所要時間が短い急行列車はネットで予約ができないということである。
その場合は駅の窓口で購入することになる。
ネット予約が一般的となっているバルト三国ではやはり異例のことである。
それはともかく、購入時に手渡されるレシートのような紙ペラがチケットなのでなくさないようにしよう。

また気にするほどでもないが、急行列車は普通列車よりも少しだけ料金が高い。
それから窓口購入する急行列車のチケットには座席番号が指定されている。

ところで、上の写真の予約画面では急行列車に上級座席の「コンフォートクラス」があることになっている。
だが実際には急行列車でも必ずしもコンフォートクラス付編成で運転されるわけではない。
次章の乗車記で示す通り、私が乗った急行列車は座席指定こそされたが普通の車両だった。

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乗車記:急行列車だが普通の車両だった

前日の午前中にリガに到着し、今日はダウガウピルスへ日帰りする。
朝は旧市街を少しだけ散策し、利用するのはリガ駅発10時1分の列車だ。
黄色と青色の、いかにもソ連時代の車両らしいディーゼルカーが待っていた。
編成端の運転台付き車両は半分が客室、残り半分は機械室となっていて、つまり機関車と旅客車を足して2で割ったような車両だった。

車掌にチケットを見せて乗車。
座席は指定されているが、乗客たちは気にせず好きな席に座っている様子だった。
私の席も小さな背面テーブルが壊れていたので適当な席へ移動する。
定刻になって扉が閉まる時に、車両全体がガックンと揺れた。
経年疲労なのか、もともとそういう仕様なのかは知らないが、年代物のソ連式ディーゼルカーは途中停車駅を出る度に武者震いを繰り返した。

リガ~ダウガウピルスの路線は、ダウガウ川沿線の都市を数多く経由する。
だから私は車窓に川を眺めることができるものかと楽しみにしていたのだが、それは全くの期待外れに終わった。
しかしその理由はすぐに分かった。
というのも、ラトビア、というかバルト三国の地形は、日本では考えられないことに山が無い。
そもそも日本の鉄道が川沿いに敷かれているのは、山を越えるために川が削った谷間を仕方なく通るためである。
ラトビアのような平地ならば、線路選定はわざわざ川の蛇行に付き合う必要もなく、駅を造る所だけ川沿いに寄れば済む話なのだ。
というわけで森林こそあれ、車窓は相変わらず平凡なものだった。

次第に駅前の市街地にはオンボロ工場とロシア正教の教会が見られるようになった。
この辺りはラトビア人よりロシア系住民の方が多いのだろう。
車内はリガ駅出発時からずっと空いている。
ちなみに、帰りに乗ったダウガウピルス夕方発、リガ夜着の便は結構混んでいた。

いかにも工業都市らしい雰囲気となって、終着のダウガウピルス駅に到着した。
貨車が沢山並んでいる広大な構内ではあるが、旅客用ホームは屋根も無い簡素なものだった。
いささか殺風景な駅に佇むソ連式車両、これは私にとって非常に魅力的なアングルである。

ラトビア鉄道のダウガウピルス駅
ダウガウピルス駅

写真を撮っていると若い男性が「君は大した冒険家だね。」と話しかけてきた。
地元の人らしい。
「なんでここに来たの?」
「ワルシャワからエストニアのタリンまで、列車でバルト三国全体を周ろうと思っていてね。ここはラトビアの第二の都市でロシア人が多いというので興味を持った。それで今日はリガから日帰りなんだ。」
「なるほど。たしかにほとんどの人はロシア語を使うよ。ここはあまり魅力的な都市ではないけど、要塞は良い所だ。歩いても行けないことはないがバスの方がいい。」

ダウガウピルスは「地球の歩き方」にも載っておらず、とにかく得られる情報が少ない。
まずは彼の薦める通りに、要塞へと冒険することにしよう。

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