ナイトジェットのクシェットでベルリンからウィーンへ【予約方法・費用など】

ドイツ・オーストリア・中欧

プロイセンと共に発展し、その後も目まぐるしく歴史に翻弄されたドイツの首都ベルリンと、ハプスブルク帝国の栄華を今なお映すオーストリアの首都ウィーン。
この2つのドイツ語国家の首都を、オーストリア国鉄(OBB)の夜行列車、ナイトジェットが結んでいます。
同区間は昼間の列車では7時間以上かかってしまいますが、夜行列車なら移動時間を有効に活用することができます。

2022年10月中旬、ナイトジェットのクシェット(簡易寝台車)でベルリンからウィーンを目指しました。

(2023年12月追記)
2023年12月のダイヤ改正で、ルートが変更になりました。
ポーランド南部経由ではなく、ドレスデン(ドイツ)・プラハを経由します。

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ベルリンからウィーンへ所要時間は12時間

ナイトジェットは座席車・クシェット・寝台車から成る

ナイトジェット」はオーストリア国鉄が運行している夜行列車のブランド名です。
お膝元のウィーンを中心に、周辺各国の主要都市を結んでいて、近年はオーストリアを含まない路線にも勢力を広げています。
いかにも夜をイメージした塗装の車両で、「現代ヨーロッパのブルートレイン」と呼んで差し支えないでしょう。

ナイトジェットの設備は大まかに分けて3種類、座席車・クシェット・寝台車があります。
座席車は6人用のコンパートメントです。
最も安い設備ですが、正直言って夜行列車にはおすすめできません。

クシェットは簡易寝台とも呼ばれる設備で、2段ベッドか3段ベッドが2つ並ぶドミートリータイプの部屋です。
相部屋なのでプライバシーは確保されませんが、リーズナブルな値段で横になって寝ることができるので、予算重視派の人にはこちらがおすすめです。

6人用クシェット

寝台車は1~3人用の個室で、部屋には洗面台が付いています。
設備によってはトイレ・シャワー付きの個室もあります。
ナイトジェットは昔から特に寝台車のサービスレベルが高く、予約は寝台車から埋まると言われています。

ベッドメイクする前の寝台車

食堂車はないが、車掌から食事・飲み物を買える

ナイトジェットには食堂車は連結されていません。
しかし、クシェットと寝台車の乗客は、それぞれの車両を担当している車掌から、アルコール含む飲み物や簡単なホットミールやサンドイッチなどを購入することができます。
いわば、カフェテリアのデリバリーサービスが利用できるということです。

クシェットの車掌から購入した白ワイン

また、クシェットと寝台車の料金には朝食も含まれています。
朝食の内容は寝台車とクシェットでは異なります。

寝台車の場合は、様々なリストの中から6種類自分で選択して注文するシステムで、ヨーロッパの夜行列車の中でも最高水準だと思います。
一方、クシェットではパン、コーヒー・紅茶、オレンジジュース、バター&ジャムといった簡単なものです。
それから、ペットボトルの水は最初から用意してあります。
サービスの内容は公式サイトのページで確認できます。

クシェットの朝食

これらを利用すれば、道中でひもじい思いをすることはないでしょう。
私はナイトジェットに乗るといつも、晩年の日本のブルートレインで出発前に車掌が「○号車に自動販売機がありますが、種類が少なくなっております。お飲み物は出発前に駅でお買い求めください。」と放送していたのを思い出します。

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4人用クシェットの夜行列車乗車記

近代的なベルリン中央駅を出発

近代以降急速に発展したベルリンは、ドイツの経済力・文化力を以ってすればパリと同じくらいに美しく洗練された都市になり得たかもしれません。
しかし、19世紀以降あまりに過酷な歴史を辿ったため、いつまでも未完成の大都市といった印象が拭えません。

東西統一後に開業したベルリン中央駅(Berlin Hbf)は、ガラス張りでホームが立体構造の近代的な駅です。

乗車する列車はベルリン中央駅始発ではなく、一つ前のベルリン・シャルロッテンブルク駅(Berlin-Charlottenburg)から出ています。
夜汽車の出発前の感傷に浸る間もなく、慌ただしく出発します。

今回利用する設備は4人用クシェットの下段です。
同室になったのは若い男性一人と、父娘と思しき男女でした。
クシェットでは寝台車と違って男女別に部屋が分かれていないので、気になる女性は要注意です。
ただし女性専用の部屋も一部にはあります。

父娘の二人組はウィーンのガイドブックを持っていたのでおそらくドイツ人、若い男性は英語を使っていました。
父親は私のスーツケースを上の荷物置き場に持ち上げてくれた大柄で親切な人でしたが、10代後半に見える娘はなぜか終始不機嫌でした。
ドイツの若者は反抗期が遅いのでしょうか?

ナイトジェットのクシェット
写真は6人用のセットになっており、4人用で使われるときは中段が収納される。

フランクフルト(オーダー)からポーランドへ

時刻は19時前、黄昏時のベルリン市内を窓に流して、私の3年半ぶりの欧州旅行の最後の長距離列車の旅が始まりました。
まもなく愛想の良いクルーが挨拶をしながらやって来て、検札をします。
4人中2人が外国人で、ドイツ人の二人組も英語ができるので、クルーも我々のコンパートメントでは英語を使っていました。

各自しばらくくつろいだ後、若い男性はまだ20時前だというのに上段の自身のベッドに潜り込んでいきました。
ムスッとした女性に父親がちょっかいを出して機嫌を取っています。

ベルリン出発から1時間ほどすると、フランクフルト駅(Frankfurt)に到着。
フランクフルトといっても欧州中央銀行のある金融都市、フランクフルト・アム・マインではなく、ポーランド国境に接するフランクフルト・アン・デア・オーダーの方です。
そして、ドイツ・ポーランド国境のオーダー川を渡ります。

国境の川を渡りポーランドへ

今や旧東欧のポーランドもEU・シェンゲン協定加盟国なので、パスポートコントロールはありません。
まだ寝るには早いので、車両端の車掌室に行って白ワインを買いに行きました。

深夜、ヴロツワフ中央駅(Wroclaw Glowny)に到着。
ここでも何人かが乗って来たようです。
ちなみに、ワルシャワとクラクフがポーランドの二大観光都市ですが、ここヴロツワフも大変綺麗でおすすめです。

ヴロツワフの夜景
2015年10月

周りが静かになってきたので、私もそろそろ寝ることにします。
上段の女性が部屋のライトを消しました。

クシェットの治安は大丈夫?

ここでセキュリティ面についての話をします。
クシェットの各コンパートメントには内側からかかるロックがあり、外からはクルーしか開けられないので安全です。
なお座席車のコンパートメントにはロックが無いので、安全面からもクシェットか寝台車をおすすめします。

ナイトジェットに限らず、ヨーロッパの夜行列車は全席指定制が増えたり、駅や車内のセキュリティが向上し、10年前と比べても全般的に安全になったと感じます。

クシェットでは簡素な朝食あり

翌朝、ウィーン到着30分前の6時半、クルーが愛想よく”Good morning”と言って朝食を持ってきた時は、まだ空はほとんど真っ暗でした。

上段でずっと寝ていた男性がすくっと起きたかと思うと、たちまちのうちに朝食を平らげてしまいました。
3人の旅行客に囲まれて、まるで彼だけが軍用列車に乗っているのかと思わせる日課です。

ナイトジェットのクシェットの朝食
クシェットの朝食

ドナウ川(たぶん)を渡ると、ウィーンはまもなくです。
川面の遥か向こうがオレンジ色に染まっていて、夜明けの海沿いに来たのかと勘違いしてしまいそうです。

ウィーン中央駅着。クシェットでOBBラウンジは使えない。

結局、まだ薄暗いままウィーン中央駅(Wien Hbf)に到着。
この列車は実はオーストリア南部の都市、グラーツ行きなのですが、ウィーンでほぼ全ての客が降りました。
こちらも2012年に開業した新しい駅です。

ウィーン中央駅にはOBBラウンジがありますが、クシェットの乗客は利用することができません。
アクセス権があるのは、寝台車か昼間の列車の1等車の利用客です。

ウィーンは私が個人海外旅行で初めて訪れた都市です。
色々な所に行ってきましたが、やはり中欧ハプスブルク帝国の首都ウィーンに着くとヨーロッパ旅行の原点に立ちかえった気持ちになります。
ベルリンが自身のアイデンティティーを模索している多感な青年時代だとすると、ウィーンは大きな仕事を成し終えた大家といったところでしょう。

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予約方法と費用

ナイトジェットの予約はオーストリア国鉄のサイトから行うことができます。
以下、そのやり方を写真付きで説明します。

前半:列車選択まで

まずはトップページにアクセスしたら、日付・区間を入力します。
駅名でなく都市名でも可です。
以下、赤いボタンを押下して先に進んでいきます。

次の画面で人数を選択します。
Find Serviceを押すと、上の写真のように2つ選択肢が出てきます。
通常の予約の場合は上のOne-way ticketを選びます。
下の選択肢はユーレイルパスなど「乗車券部分」のチケットを持っている人が、予約だけする時に使います。

列車候補が出ます。
赤で囲った直通のナイトジェットを選びます。

後半:チケットの値段は料金カテゴリーと設備で決まる

列車選択まで終わったら、いよいよ山場となる後半です。

まずは料金カテゴリーの選択です。
料金カテゴリーはチケットの自由度に関わっており、ここでは安いかわりにキャンセル不可のSparschiene(①)と、割高な分キャンセル条件が緩いComfort Ticket(②)があります。
今回はSparschieneを選びます。

同じ画面を下にスクロールすると設備選択です。
デフォルトでは座席車になっており、その場合の料金29.1€が右上の赤い部分に反映されています。
クシェットを予約するので、青丸で囲った所をクリックします。

クシェットを選んだので、先ほどの+19.4€の表記通り、右上の料金が加算されました。
ここではさらに詳細を決めます。
クシェットには6人用(3段ベッド)と4人用(2段ベッド)があり、デフォルトでは6人用になっています。
今回は6人用クシェットを予約します。
2段ベッド希望の場合は、さらに9.8€追加して4 bedsのラジオボタンにチェックを入れましょう。
そのすぐ下のpreferenceでは上・中・下段を希望します。
また、女性の場合は女性専用コンパートメントを選ぶこともできます。

なお、料金カテゴリーは設備毎に割り当てが決まっているようで、例えばクシェットでは割安なSparschieneが選択可能でも、寝台車では選択不可といったケースもあります。

これで設備選択が終わりました。
希望した設備を反映した金額になっていることを確認して、右上の赤いボタンを押下します。
次に名前と電話番号を入力します。
電話番号は080-なら、+8180-となります。

クレジットカードが使えない場合はPayPalで

最後に支払い画面です。
メールアドレスを入力し、支払い方法を選択すると、右下の青で囲ったボタンが活性化します。
その後クレカ情報を入力して、決済成功するとメールアドレスに予約完了メールが届きます。
もし、クレカ認証で問題がある場合はPayPalを使いましょう。

ここで必ず気を付けてほしいのが、届いたメールそのものはチケットではないということです。
リンク先からダウンロードできるバーコード付きの画面を印刷するか、あるいはスマホに保存する必要があるので注意してください。

兎にも角にも、6人用クシェットをうまくいけば50€弱、つまり昔の日本の開放寝台料金と同じくらいの値段で、しかも軽朝食付きで利用できるわけです。

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幅広い層に訴求する夜行列車

寝台車のサービスレベルの高さが目立つナイトジェットですが、クシェットでもリーズナブルに快適な一夜を過ごすことができます。
ナイトジェットは金持ちだけの道楽でも、一部のマニアのためのノスタルジーでもない、幅広い層のニーズに応えている列車です。

夜行列車が特別な存在ではなく、社会のインフラとして定着しているのは日本人として羨ましい限りです。



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