レイルジェットの一等車でウィーンからミュンヘンへ【車内・予約方法や費用】

ドイツ・オーストリア・中欧

音楽の都にしてオーストリア帝国の首都ウィーンと、南ドイツ・バイエルンの州都ミュンヘン。
この2都市の間には、オーストリアの看板列車レイルジェットが運転されています。
途中でモーツァルトの故郷として知られるザルツブルクも経由します。
観光旅行にも大変便利なうえ、スマートかつ快適な列車です。

2022年10月、レイルジェットの一等車に当たるファーストクラスで、昼過ぎのウィーンからミュンヘンを目指しました。

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ウィーン~ザルツブルク~ミュンヘンの所要時間は4時間

フランスやドイツと違って、オーストリアには時速300㎞を超えるスピードで走る高速列車はありません。
しかし、それは鉄道のレベルが低いことと同義ではありません。
オーストリア国鉄は昔から派手さは無いものの、堅実でレベルの高い輸送サービスを提供していました。

2008年、それまでの優等列車に代わって「レイルジェット」(Railjet:RJと略される)という新しいブランドの列車が運行を開始します。
車両も赤と黒というエレガントな編成が使われました。
最高速度は時速230㎞で、昔の新幹線と同じくらいの速さです。

レイルジェットはその後も運用範囲を広げていますが、旅行者が最もよく使うであろう路線がウィーン~ザルツブルク~ミュンヘンです。
およその所要時間は、ウィーン~ザルツブルクが2時間半、ウィーン~ミュンヘンは4時間

なお、駅や車内の案内表示などでは”RJX”と”RJ”の2種類が存在することに気づくかもしれません。
RJXは”Railjet xpress”(expressではない)の意味で、レイルジェットの中でも停車駅の少ない列車です。
使われる車両は同じなので、特に気にする必要はありません。

レイルジェットは現在ではチューリッヒ・ヴェネツィア・プラハにも進出しています。

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レイルジェットの車内・サービス

レイルジェットの編成は、エコノミー(二等車)・ファースト(一等車)・ビジネス(特等車)そして食堂車から成ります。

エコノミークラス(二等車)の車内と座席

レイルジェットのエコノミーの車内
エコノミーの車内

二等車に相当するエコノミークラスは、通常の2&2列の座席配置です。
全席にコンセントがあり、Wi-Fiも利用可能です。

レイルジェットのエコノミーの座席
エコノミーの座席

ファーストクラス(一等車)の車内と座席

レイルジェットのファーストの車内
ファーストの車内

一等車に相当するファーストクラスは、日本のグリーン車と同じ2&1列です。
革張りの座席で高級感が増しています。
ウィーン・ミュンヘン間のように4時間程度の所要時間がある場合は、こちらのファーストクラスをお勧めします。

レイルジェットのファーストの座席
ファーストの座席

さらに上のビジネスクラス(特等車)

レイルジェットには、ファーストクラスのさらに上級クラスであるビジネスクラスがあります。
上下関係が飛行機と逆なので紛らわしいですが、ビジネスクラスが特等車相当です。

私はまだビジネスクラスには乗ったことがないので、現状は写真や乗車の様子はお届けできず申し訳ありませんが、次回のヨーロッパ旅行で取材できればと思っています。
(2023年6月追記)
有言実行。
ブダペストからウィーンまでビジネスクラスに乗車しました。
ブダペスト~ウィーン~ミュンヘン・チューリヒの路線では、簡易コンパートメントと独立した座席がある素晴らしい車両が使われています。

レイルジェットのビジネスクラスの車内
ビジネスクラスの車内
レイルジェットのビジネスクラスの座席
1人でも個室感覚で利用できる座席もある

一方、ベルリン~プラハ~ウィーン~ヴェネツィアのビジネスクラスは、ファーストの客室の隅っこに、通路を隔てて座席が1つずつ3列並んでいます。
座席はいずれもレッグレスト付きでとても快適です。

レイルジェットのビジネスクラスの車内
プラハ発着便のビジネスクラスの車内

本格的な食堂車もあり

レイルジェットの食堂車の車内
食堂車の車内

スマートな新型車両には珍しく、レイルジェットには着席してきちんとした食事が楽しめる食堂車があります。
食堂車の内装はシンプルでモダンです。
特に予約は必要ありませんが、座席数が少ないため昼食時間帯は混みあうので、訪れるタイミングは計算しておきましょう。

食事ではなく、コーヒーやアルコールだけの利用も問題ありません。
またカウンターで飲み物を注文して座席に持ち帰ることもできます。
メニューはOBBのサイトから確認できます(リンク先のPDFから見れます)。

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【乗車記】ザルツブルク前後の山岳風景が見どころ

一等車利用客はウィーン中央駅のラウンジが使える

ハプスブルク帝国の首都ウィーンは、私が海外個人旅行で初めて訪れた、思い入れのある都市です。
鉄道移動の合間の数時間、ガイドブックやグーグルマップ無しで、かつて訪れた観光地を歩き回りました。

ウィーン市内
左手の建物がウィーン国立歌劇場

私が乗車するのはウィーン中央駅を14時30分に出発するレイルジェットエクスプレス(RJX)です。
まだ少し時間があるので、OBB(オーストリア国鉄)ラウンジに行きます。
ここでは自由にコーヒー・紅茶やジュースを飲むことができ、トイレも無料で使えます。
一等車の乗客は割引チケットであっても、主要駅にあるOBBラウンジを利用することができます。
出発前でも到着後でも1時間半以内なら入ることができます。

ウィーン・中央駅のOBBラウンジ
ウィーン・中央駅のOBBラウンジ

OBBラウンジで昼食後のコーヒーも済ませ、いよいよホームに向かいます。
予約時に座席指定はしていなかったのですが、混雑した車内でも何とか窓側の席を確保できました。
列車はハンガリーのブダペストから来ており、ブレゲンツ(ドイツやスイスとの国境近くの街)行きの編成も繋いでいます。
ミュンヘンに行くのに、ブレゲンツ行きの車両に乗ってしまうと、途中のザルツブルクで切り離されてしまうので注意してください。

ファーストクラスに乗車
奥ではドラマチックな光景が…

険しい山脈が迫りザルツブルクへ

列車は定刻に発車。
ウィーンの郊外を抜けると、まもなく車内の情報ディスプレイには最高速度230㎞に近いスピードが表示されます。
なお、230㎞を出すのは最初の方だけで、国境付近の山地ではだいぶ遅くなります。

この車両上部に幾つかあるディスプレイは、各駅の到着予定時刻や予想される遅延などを3か国語(ドイツ語・英語・ハンガリー語)で教えてくれます。
ちなみにドイツ語と英語は同じゲルマン系等の言語なので似ているともいえますが、ハンガリー語はアジア系言語なので全く違います。

ドイツ語のNaechster(ネヒスター)は英語のnext

この辺りの車窓は割と単調といいますか、それなりに住宅や工場も存在する農村続きます。
産業構成としては健全なのでしょうが、旅行者からすると中途半端な車窓です。
車内では仕事をしている人が多く、子供を抱いてあやしている若い母親がずっと通路を行ったり来たりしています。

1時間少々でリンツ中央駅に到着。
ウィーン、グラーツに次ぐ国内第三の都市で、ここで結構乗客が減りました。
モーツァルトの交響曲の曲名の他、ブルックナーの故郷としても知られています。

リンツ市内、2016年10月

気晴らしに食堂車に行って、ハーフボトルの白ワインを注文します。
このリースリングという葡萄は、ドイツやオーストリアの主要品種です。
高貴で華やかな香りが特徴で女性受けも良いので、お土産には喜ばれると思います。

両側から険しい山地が迫ってきました。
時折湖も見かけます。

急なカーブが増えてきたので、後ろの車両からは先頭部が見えます。
今のスピードは出だしの快走とは比べ物にならない遅さですが、この豊かな自然こそオーストリアの列車旅だと言わんばかりの、堂々たる長大編成です。

やがてザルツブルク中央駅に到着。
モーツァルトの故郷として有名な観光都市です。
その印象の割には拍子抜けするほど近代的なドームの駅でした。

ザルツブルク中央駅

国境を越えドイツへ。マスク着用ルールがあるが…

ザルツブルクを出ると5分程度でドイツ国境の川を渡ります。

ドイツとの国境

ザルツブルクの次は終着ミュンヘンですが、コロナの関係でドイツ側の国境駅で臨時の運転停車があり、職員が乗ってきました。
一通り車内を巡回するだけなので、「不審な人間がいないか確認しているのだろう」と思っていると、何と私のところだけには来て、パスポートチェックを始めるではありませんか。
まだアジア人観光客はかなり少なく、私が異質な人間だったのでしょう。
もっとも、こんなことは今まで何度も経験(特に東欧)しています。

当時ドイツでは公共交通機関内ではFFP2マスクの着用が義務付けられていました。
しかし、前の座席で資料作成している人達は相変わらず未着用で、車掌や私を不審者扱いした職員も特に何も言ってきませんでした。
またFFP2ではない普通のマスクをしている人も多かったです。

南ドイツではバルコニーに花を飾っている家が散見され、建物の質実剛健さとの組み合わせが何とも印象的です。
なお、ドイツ=プロテスタントと思われがちですが、南ドイツはオーストリアと同じカトリックが多数派です。

集落の中心にある教会の塔だけがまだ微かに夕日を浴び、取り囲むように寄せ合う民家は既に夜の気配です。

ミュンヘン中央駅に到着

外はかなり暗くなった18時45分頃、数分の遅れで終着のミュンヘン中央駅に到着です。
予定より15分遅れですが、これはドイツ国境での臨時停車の影響で、それまではほぼ定時運行でした。
オーストリアはヨーロッパではかなり列車の遅れが少ない方です。
なお、ミュンヘンのDB(ドイツ鉄道)ラウンジはOBBラウンジと違って割引運賃では利用できません。

ドイツ語の教科書で習う”Guten Tag”(こんにちは)ではなく、”Gruess Gott”で挨拶するオーストリアと南ドイツ。
地理的にも文化的にも近いウィーンとミュンヘンですが、「帝都」のウィーンから来ると「州都」に過ぎないミュンヘンは素朴な印象です。

ミュンヘンの新市庁舎

こんな時間にミュンヘンに着いて、やるべきことは一つしかありません。
ということで、有名なホフブロイハウスに行き、周りの人と乾杯しながらビールを飲みました。

周りが空いていた時に撮った写真

三密?マスク?アクリル板?
まさかそんなことを言っている人が「海外呑み鉄」の旅行記なんか読みませんよね?

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予約方法と費用

レイルジェットの予約はオーストリア国鉄のサイトから行えます。
以下そのやり方を写真付きで説明していきます。

【予約前半】同じ日でも便によって値段が異なる

先に進むボタンは行き先の選択プルダウンで隠れている

発着地や日付を入力します。
「ミュンヘン」の綴りの “Ü”は、”UE”で代用します。
右側の赤いBook Ticketボタンで進みます。

人数を入力した後、Find Service、続いてOne-way ticketを選びます。

列車選択画面です。
ウィーン~ミュンヘンを直通する便は2時間に1本です。
同じ日で2時間ずらしただけでも、かなり料金が変わることが分かります。
今回は12時28分発の直行RJXを予約してみましょう。
ちなみに、これは2カ月先の日付を照会しています。

【予約後半】3€の追加費用でできる座席指定はおすすめ

ここでは料金カテゴリーを選択します。
キャンセル不可で数量限定の早割運賃が一番上のSparschiene、逆にキャンセル可能な代わりに割高な通常運賃がStandard-Ticketです。
今回はSparschieneにチェックを入れて、下にスクロールします。
右上の赤いボタンの金額が、選択したサービスによって変動することを確認しましょう。
なお、Sparschieneだからといって必ずしもこの値段になるとは限りません。

ファースト(15€)と座席指定(3€)が右上のバスケットボタンに反映されている

下の方の画面ではアップグレード(ファーストorビジネス)と座席指定を行うことができます。
料金カテゴリーによっては座席指定が既に料金に含まれていることもあります。
今回はSparschieneのファーストなので、座席指定は別オプションです。
3€という少額なので、座席指定を行うことを推奨します。

特等車のビジネスには、ファーストよりさらに15€の追加料金が必要です。
上の写真で₊12€となっているのは、座席指定料金分が減算されているからです。
Reservationにチェックを入れたら、その下のRESERVATION DETAILSで座席指定画面に飛びます。

赤枠の真ん中のプルダウンから窓側・通路側の希望をしてもよいですが、シートマップから選ぶ方がおすすめです。
青で囲った箇所をクリックします。

座席を回転させることはできませんが、進行方向が分かるので、テーブルの位置からどの座席が進行方向を向いているか判別できると思います。
選択されている22番席は進行方向です。
座席を決めたら、右上の金額が表示されたバスケットのボタンを押して進みます。

必要事項を埋めると、矢印のボタンが活性化する

メールアドレスと支払い方法を記入・選択したら右下のボタンが活性化します。
最後にクレジットカード情報を入力して終了です。
もしクレカ認証で問題がある場合は、PayPalを利用しましょう。

決済完了するとメールアドレスにメールが届きます。
チケットへのリンク先があるので、QRコード付きの画面を印刷するかスマホに保存しましょう。
メール自体はチケットではないので注意してください。

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伝統と革新

レイルジェットの魅力はモダンでスマートでありながら、列車旅の醍醐味の一つである食堂車も連結している点です。
しかも合理化が進む中、ビストロ(軽食堂車)から本格的な食堂車に改装したのは特筆すべきです。

ウィーン会議を主宰したメッテルニヒのような保守反動でもなく、クリムトを中心としたウィーン分離派のような急進性もない、伝統と革新のバランスが非常によく取れた列車だといえます。


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