【コソボ鉄道の旅行記】プリシュティナからペヤとスコピエ(未遂)を目指す

ヨーロッパ鉄道
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コソボの鉄道事情

路線は2つのみ

2008年に独立を宣言したコソボでは、ヨーロッパ時刻表で確認できる限り2つの鉄道路線のみが旅客営業しています。

まずひとつは首都プリシュティナからペヤに至る、東西に跨る路線です。
この路線は1日に2往復の列車が運転されています。

もう一方はセルビア国境からコソボの国内を南下し、北マケドニア共和国へと接続する路線です。
これら東西を横断する路線と南北に縦断する路線は、プリシュティナ近くの「Fushe Kosove」という駅で交わっています。

セルビア・北マケドニア共和国への国際列車は無くなった

※セルビアは自国からのコソボの分離独立を認めておらず、自国領という立場をとっています。
ですが、本記事ではコソボを国として扱います。(日本国はコソボを国家承認しています。)

セルビアからコソボを経由して北マケドニア共和国に至る路線には、以前はそれぞれの国への国際列車がありましたが、2019年現在はいずれも運行されていません。

セルビアとの列車に関しては、国際関係が絡んでいるのでしょう。
私は現地で見かけませんでしたが、コソボ方面に向かうセルビア国鉄の列車の車体に、「コソボはセルビアです」と多言語で書かれていたというニュースがありました。
こんな状況では国際列車の運行どころではありません。

また北マケドニア共和国との列車も休止中です。
私は実際にプリシュティナからスコピエに行こうとしましたが、国境駅で降ろされてしまいました。(後述)

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乗車記

2019年3月にコソボの2つの路線に乗車しました。
バスに比べて圧倒的に本数が少なく、スケジュールを組むのには苦労しましたが、そうした区間でも鉄道を利用するのが鉄道ファンのプライドです。

コソボ鉄道の車両
コソボ鉄道の車両。
客車はドイツの近郊用車両の中古。

プリシュティナ~ペヤ

首都プリシュティナから、世界遺産に登録されたセルビア正教会の修道院がある観光都市ペヤまで鉄道で移動しました。
所要時間は2時間程度、運賃は3€だったと記憶しています
切符は駅ではなく、車内で車掌から買うシステムでした。

首都の駅であるプリシュティナ駅は、まるで日本のローカル線の終着駅のような侘しい存在でした。
列車が入線してくる際には盛んに警笛を鳴らしています。
おそらく普段は人が横断している線路を、珍しく列車が通過するためでしょう。
ここでは列車が走るのは大イベントのようです。

コソボの首都プリシュティナ駅の駅舎
首都プリシュティナ駅の駅舎

車両は何処かで見たことがあるものでしたが、ドイツの近郊路線で使われていた中古のようです。
その時の案内が未だに残っています。
そこまで古さは感じられず、2時間程度の乗車時間なら全く問題ないのですが、所々に窓ガラスにひびが入っているのが気になりました。

コソボ鉄道の車内
列車の車内
コソボ鉄道に残るドイツの近郊列車時代の案内
ドイツ、ブレーメンの近郊列車時代の案内がまだ残っている

プリシュティナ駅を出発した時には空いていましたが、前に触れたコソボ鉄道の十字路、Fushe Kosove駅でかなりの乗客が乗ってきました。
本数を考えると乗り換え客というより、駅周辺が栄えているのでしょう。
車窓は平坦で変わり映えのしない景色が続いていましたが、遠くには雪をかぶった立派な山脈が望まれました。
終着のペヤはやはり寂れた感じのする駅でした。

コソボ鉄道の車窓
遠くに山々を見ながら走る

プリシュティナ~スコピエ(途中から運行休止のため未遂)

ヨーロッパ時刻表によると、プリシュティナからスコピエへ向かう列車は1日1便、7:10発でスコピエに着くのは9:51です。
そして前日にも駅に貼られている時刻表で確認したところ、やはりその通りで、「インターシティ」の種別まで仰々しく付いていました。

先日のペヤ行きの列車でも通ったFushe Kosove駅付近は要衝らしく、機関車や客車・貨車が広い用地に佇んでいます。
特にディーゼル機関車などは、西欧なら博物館入りしていそうなクラシックな車両を見ることができました。

コソボ鉄道のFushe Kosove駅付近。
Fushe Kosove駅付近。
客車や貨車が広い構内に並び、鉄道の要衝らしい威容を見せる。
コソボ鉄道のクラシックなディーゼル機関車
クラシックなディーゼル機関車

今回は国境に近づくにつれて山間部の川沿いを走り、絶景とは言えないものの、ペヤ行きの列車よりは車窓を楽しむことができました。

コソボ鉄道の車窓
途中からは谷間を走るようになる

ところが国境駅、Hani I Elezitで困ったことになりました。
列車はスコピエには行かない。ここで終わりだ」と車掌に告げられたのです。
車内で切符を買うときに「スコピエ」とは言ったものの、どうも安すぎる気がしていましたが、どうやらこの駅までの運賃のようでした。

コソボと北マケドニア共和国の国境駅、Hani I Elezitの機関車
国境駅、Hani I Elezit。
私を見捨てて機関車は何処かに撤収してしまった。

唖然としているうちに、タクシーの運転者が声を掛けてきて、スコピエまで20€だと言います。
安いとは思いませんが、かといって私にはどうすることもできないので承諾して乗り込みました。
ドライバーは別に悪質なわけではなく、道中では「昔ここで戦闘があった」とか「スコピエ行きの列車は国境を超える乗客が少ないから運航休止になっている」などといった話をしてくれました。

結局スコピエ駅には予定よりも30分くらい早く到着しました。
ちなみにプリシュティナ~スコピエ間はバスだと1日10便以上、所要時間も2時間で行けます。

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新しい国家の挑戦

複雑な民族構成を持つ旧ユーゴスラビア諸国の中でも、コソボは特異な民族構成・歴史文化を持っています。
それは旅行者にとっては魅力である一方で、国内のみならず周辺国との間でも様々な厄介な問題を引き起こす要因でもあります。

客車や機関車の全てを外国の中古で賄い、国際列車も運航休止されている現状は、新生国家コソボの政治的・経済的な不安定さを象徴しているようです。

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