ダブリンからベルファストへ、エンタープライズ(一般車代走)の旅【予約方法・費用】

ヨーロッパ鉄道

アイルランド共和国の首都ダブリンから、イギリス領北アイルランドの中心都市ベルファストまで、鉄道で便利にアクセスすることができます。
この区間には「エンタープライズ(Enterprise)」という列車が、アイルランド国鉄と北アイルランド鉄道の共同によって運行されています。

2022年10月、エンタープライズでダブリンからベルファストまで移動しました。

(お詫び)
本来エンタープライズは専用車両で運転されますが、私が乗った列車はたまたま一般車両による代走でした。
そのため車内・サービスについては、軽く触れる以外は割愛させていただきます。

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ダブリンからベルファストまでの所要時間は2時間

エンタープライズはダブリンからベルファストまでおよそ2~3時間毎に運転され、所要時間も約2時間で結んでいます。
ディーゼル機関車が牽引する専用の客車で構成され、2等車・1等車とカフェテリアがあります。
カフェテリアではアルコール含む飲み物だけでなく、割と凝った軽食も提供しているようです。
アイルランドらしく、特に朝食メニューが充実しています。

ベルファストはアイルランド島にありながら、イギリス領北アイルランドに属します。
つまりエンタープライズは、アイルランドとイギリスを結ぶ唯一の国際列車ということになります。

なお、かつて北アイルランドではカトリック系(アイルランド)とプロテスタント系(イギリス)の対立がありました。
普通に観光している限りは特に問題ありませんが、20世紀末までテロや暴力の応酬があったことは一応知っておいた方がよいでしょう。

市内中心部から少し外れたカトリック派居住区。
上の写真から数百メートル離れたプロテスタント派の居住区
この付近では両者は分断されて住んでおり、政治的な壁画も多い。
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乗車記【ダブリンからベルファストへ】

朝のダブリン・コノリー駅を出発

朝7時過ぎのダブリン・コノリー(Dublin Connolly)駅は、まだ暗く人もまばらでした。
私が乗車するのは7時半発のベルファスト行きエンタープライズです。
駅の売店は開いているので、飲み物を購入します。

写真右奥のホームからエンタープライズが発着する

冒頭で断った通り、本来の専用車両ではなく一般型のインターシティ用車両での運転でした。
後で知ったのですが、この時間の便は時々こういうイレギュラーな運用がされるようなので要注意です。

ちなみに駅名になっている「コノリー」は、20世紀初頭にアイルランド独立運動の指導的立場にあったジェームズ・コノリーにちなんでいます。
アイルランドが自治領として独立を果たすのは、彼が処刑されてから6年後のことです。
それにしても、イギリス行きの国際列車のターミナルがコノリー駅を名乗っているとは、穏やかではありません。

ジェームズ・コノリーが処刑された、ダブリン市内のキルメイナム刑務所
ガイドツアーで見学できる

景色は進行方向右側が海

列車が出発した時も、どんよりとした薄暗い曇り空でした。
明かりの漏れる市街地をノロノロ走った後、10分もすると道東のような荒涼とした風景になりました。
この路線は海沿いを走るので、車窓の良い進行方向右側の席がおすすめです。

国際特急列車にしては途中停車駅が多く、そして乗客も頻繁に入れ替わり、まるで快速に乗っているようです。
エンタープライズに乗る人はほとんどがベルファストなど北アイルランドまで行くものと勝手に思っていましたが、この「回転率」は意外でした。

ダンドーク(Dundalk)駅で半分近い人が降りていきました。
なお、アイルランド共和国では普段英語が使われますが、実は第一公用語はケルト系のアイルランド語です。
そのため、駅名標も2か国語表記となっています。

上が英語、下がアイルランド語
ゲルマン系とケルト系なので、あまり似ていない

いよいよ国境の山越えに挑みます。
列車のスピードも遅くなったことが分かります。
丘陵地の向こうでは、相変わらず霧の中から海の気配がします。

北アイルランドに入るもパスポートコントロールなし

イギリス領北アイルランドに入り、ニューリー(Newry)駅に到着。
これまであったアイルランド語表記が無くなりました。

両国ともシェンゲン協定非加盟なので、パスポートコントロールがあるのかと思いきや、何事も無く出発しました。
警官がいる様子もありません。
国は変われど、風景は相変わらずです。

ベルファスト・ランヨンプレイス駅に到着

ベルファスト・ランヨンプレイス(Belfast Lanyon Place)駅に到着しました。
この駅は以前はベルファスト・中央駅を名乗っていましたが、実際には市内からやや離れているため現在の駅名に変えられました。
市内中心部に近いのはグレート・ビクトリアストリート(Great Victoria Street)駅の方です。
エンタープライズの乗客はグレート・ビクトリアストリート駅までの近郊電車に乗れるそうですが、ランヨンプレイス駅から歩いても10分程度です。
コノリー駅がアイルランドのナショナリズムの発露なら、グレート・ビクトリアストリート駅は大英帝国の威信の表われです。

ベルファストはイギリスだけあって、アイルランドの都市とは違った華やかさがあります。
また、通りや施設にも「クイーン」「ビクトリア」という王室ゆかりの名前が目立ちます。
2022年に新国王のチャールズ3世が、即位後まもなくベルファストを訪れたのを覚えている方もいるかもしれませんが、それだけ政治的な意味合いのある都市だといことです。

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予約方法と費用

出発地によって予約すべきサイトが違う

エンタープライズの予約はウェブサイトからできます。
ただし注意すべき点として、出発する場所の鉄道会社のサイトから予約しましょう。

というのは、アイルランド国鉄のサイトで予約完了後に送られる確認メールはチケットではなく、現地の駅に行って自分で発券する必要があるからです。
また、北アイルランド鉄道でダブリン発の便を予約しようとすると、やはりアイルランド国鉄のサイトで買うように促されます。
以下ではダブリン発を想定して、アイルランド国鉄のサイトから予約します。

アイルランド国鉄のサイトからの予約方法

サイトにアクセスしたら発着地と日時・人数を指定します。
ダブリンの駅はコノリー駅、または”Dublin”のみでも可です。
アイルランド国鉄のサイトでは、オレンジ色のボタンを押して先に進んでいきます。

列車の候補が現れました。
便によって値段の差は無く、2等車には自由度に応じた割引があります。
一番安いチケットでも全く変更・返金不可というわけではありません。

ダブリン~ベルファストの距離は約180㎞。
それでいて最安値の13.99€というのは、アイルランドの物価(特にダブリンのホテル代!)を考えるとかなり安いです。

次の画面では座席の割り当てを自動でするか、自分で指定するかを選択します。
自分で座席を決めたい人はMANUAL-の方を選びます。
座席指定は無料でできます。

乗車記パートでも説明した通り、右側の座席が海が見えておすすめです。
進行方向とテーブルの位置が分かるので、どの座席が進行方向かつ右側なのか判別できます。

その後ログイン画面に移りますが、登録せずゲストとして予約することができます。

乗客情報を入力します。
チケット受け取り方法は「発券機で受け取る(Collect at Ticket Machine)」にデフォルトでチェックが入っています。

その後の支払い方法設定画面では、クレジットカード欄にチェックを入れてカード番号等を入力します。
決済完了すると、駅の発券機で必要になる予約番号が記載されたメールが届くので、ブックマークしておきましょう。

コノリー駅のチケット発券機は、改札の手前正面の左脇にあります。

コノリー駅にあるチケット発券機

1等車にも割引価格で乗る方法がある

さて、予約した時に1等車の割引チケットがないことに気づいたでしょうか?
しかし、1等車にもフレキシブルより安く乗る方法があります。
そのためには2段階の作業が必要になります。

まず1回目は、上記の手順で2等車の割引チケットを購入します。
そして2回目の作業。
もう一度トップの画面を開き、発着地・日付も同様に入力します。

Adultsを0に変えるのを忘れずに

ここから重要なのですが、到着駅の下の欄のPassengersAdults(またはChildren)を0にして、その代わりFree Travel Passに人数分をいれます。
何をやっているかというと、有効なパスやチケット(つまり1回目の作業で予約した割引2等車のチケット)保持者のためのオプションを購入していると思ってください。

この条件にして検索をかけた結果が下の写真です。

1等車の追加料金に注目してください。
16€というのは、1回目の予約の時の1等車料金と2等車フレキシブル(つまり割引無し)の差額です。
よって、1等車を定価で31.99€で買うよりも、1回目で2等車のLowを13.99€で買い、2回目で16€のアップグレードをした方が2€安くなるのです。

今回は割引自体が小さい額なので、あまり有難みがないかもしれませんが、場合によっては効果を発揮するテクニックなので、是非駆使してください。

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イギリスとアイルランドの陸橋

カラー写真の黄色と紫色の列車が本来の車両

不幸な出来事が続いた時期もありましたが、北アイルランド問題は一応の解決をみせています。
自治領だったアイルランドが正式に共和国となったのが1947年。
その年以来、困難に阻まれながらも、エンタープライズは両国の間を繋いできました。

今後も両国関係の深化とともに、さらなるエンタープライズの進化を期待したいと思います。

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