Ouigoはフランスの新幹線、TGVの格安版です。
居住性やサービスレベルではやや劣るものの、通常のTGVの割引運賃と比べてもかなり安い費用で都市間をスピーディーに移動することができます。
2022年10月にリヨンからパリまでOuigoに乗って移動しました。
本記事ではOuigoの予約方法や車内の様子、乗車する際の注意点を解説していきます。
なお、両都市間移動の候補となる列車、TGV・Ouigo・フレッチャロッサの比較については、以下の記事で解説しています。
Ouigoとはフランスの格安版TGV
ローコストのTGV
ヨーロッパ初の高速鉄道でもあるフランスの新幹線TGVは、航空機との熾烈な競争を繰り広げていました。
一方2000年頃には、航空業界ではLCC(ローコストキャリア)と呼ばれる、サービスを簡素化する代わりに価格を抑えた会社も台頭し、新たな需要を開拓しました。
そこでフランス国鉄は子会社を立ち上げ、LCCの鉄道版とも言うべきTGVの運行を2013年に開始しました。
この格安新幹線が今回紹介するOuigoです。
従来のTGVとOuigoの関係は、日本だと通信業界に当てはめると分かりやすいです。
例えばauもUQも同じKDDIという企業のサービスですが、それぞれの顧客層に合ったサービスを展開しています。
なお、その後通常のTGVはinOuiというブランドに改められました。
高速列車の中でもOuigoではないものがTGV inOuiだという認識でよいでしょう。
車両はオール二階建て。所要時間もTGVと同じ。
車両自体はTGV inOuiと同じで、オール二階建てのTGV Duplex編成が使用されています。
こちらは格安キャリアらしく、センスのあるTGV inOuiとは対照的にラフなTシャツ姿のような塗装で、外見の印象は相当異なります。
Ouigoはその圧倒的な低価格によって支持を集め、今回私が乗車したリヨンのみならず、運行範囲はマルセイユ・ボルドー・ストラスブールなどフランスの主要各都市に拡大されました。
ただ運転本数は本家のTGV inOuiより少ないです。
発着する駅は異なる場合がありますが(後述)、都市間ではTGV inOuiと同じルートを通り、最高速度も320㎞です。
よってパリ~リヨンの所要時間は約2時間で、他の区間でもTGV Inouiと変わりません。
ただし、たまにTGV車両ではない在来線を走る列車もOuigoを名乗っているので要注意です。
費用は片道最安で10€と謳われています。
実際にこの値段で購入するのは難しいでしょうが、1カ月くらい前なら20€以下の便は沢山見つかります。
なお、本記事の乗車記では16€で予約しました。
いずれにせよ新幹線にこれほど安く乗れるのは、日本では考えられません。
ちなみにOuigoの8両編成(+前後に機関車)を2つ繋げると、定員は1,288人になります。
3&3列の座席配置もあったJR東日本のE4系新幹線は1,634人なので、さすがにこれには及びません。
スーツケースや座席指定も追加料金が必要
さて、速くて安いOuigoですが、格安キャリアならではの相違点も当然ながらあります。
車内・サービスの相違点は後の章に譲るとして、ここではそれ以外の注意すべき点について述べていきます。
まず、スーツケースやバックパックのような大きな荷物を持っている場合、追加料金が必要になります。
また、予約する時に座席を指定するためにも追加料金が要ります。
それからユーレイルパスでOuigoを利用することはできず、割引制度もありません。
パス所有者は追加料金を払ってTGV inOuiに乗りましょう。
Ouigoの車内・座席とサービス
格安列車のOuigoには1等車はありません。
全車両2等車で運転されます。
一般的な車内
座席配置はTGV InOui2等車と同じ2&2ですが、こちらはもっと小型で薄いな座席です。
もともと値段が安いことですし、数時間程度の乗車ならそれほど問題にはならないでしょう。
逆にパリ~ニースのような6時間の行程には考えものです。
そのあたりはご自身の予算・体力・価値観に合わせて、TGV InOuiと使い分けるようにしてください。
1~3号車の1階席は1&3列座席
同じ2等車でも、1~3号車の1階席は写真の通り1&3という変わった配置になっています。
この粗末な3列座席、E4系の自由席で見覚えのある人もいるかと思います。
逆に独立した1列座席が魅力的に感じられるかもしれませんが、ここは眺望の良くない1階席だということは留意しましょう。
バーとWi-Fiは無し
TGV InOuiにあった4号車のバーは撤去され、その代わりに座席がぎっしり詰まっています。
途中車内販売もないので、食事や飲み物は各自持ち込む必要があります。
また、OuigoにはWi-Fiの設備はなく、充電用コンセントがあるのも一部の車両のみとなっています。
乗車記:約2時間でリヨンからパリへ
発着する駅は要注意。5分前までには乗車を。
10月上旬のリヨンの朝、曇り空でパッとしません。
今回私が乗車する駅はリヨンの中心部にあるLyon Port-Dieuですが、やや離れた場所にある駅を発着するOuigoもあります。
予約する時は値段や時間だけでなく駅名も確認しましょう。
念のため30分前に駅に着くも発着番線は未定。
公式では「30分前から5分前まで乗車できる」とアナウンスされていますが、30分前に関しては正直なところ意味のある時間ではありません。
ただ、実質的なリミットがTGV Inouiの2分前に比べて5分前と少し早いので要注意です。
パリ・リヨン駅のように、自動ゲートにチケットのQRコードをかざしてホームに出る駅もあります。
出発15分前になって番線が判明したものの、なかなか列車が来ません。
SNCFのアプリからは予約した列車は5分程度遅れる旨の通知が届きました。
結局10分遅れで出発です。
フランスらしい風景の中を走る
リヨンを出てまもなく、ローヌ川を渡ります。
昨日観光したリヨンの美しい街並みが蘇ってきます。
客層は様々でしたが、薄利多売を前提としたビジネスにしては意外なほど空いていました。
Ouigoのクルーは水色のベレー帽にピンクのベルトにポロシャツという、同社のイメージカラーをあしらった独特の制服でした。
一見すると「えっ?」となるのですが、それでも結局は納得させられてしまうのがフランスの凄いところです。
車窓は起伏のある耕作地です。
たまに山間部らしくなるのですが、新幹線のようにトンネルには頼らず、急勾配で乗り切ります。
小麦畑・葡萄畑・牧草地を浮き沈みしながら、大海原を航海する船のように時速300㎞で走り抜けていくのは爽快です。
リヨンからパリは400㎞以上離れていますが、途中で通過する都市の規模も小さく、大半の列車はノンストップです。
そして、大都市パリに近づいても、到着10分くらい前までは都会の郊外らしい雰囲気にはなりません。
自然地理・人文地理の両面において、距離が似ている東海道新幹線の東京・名古屋間とは大違いです。
曇り空がいつの間に快晴になっていました。
パリの駅はGare de Lyon。郊外の場合もあり。
パリの駅はTGV InOuiと同じGare de Lyon(パリ・リヨン駅)です。
やはりここでも、都会のターミナル駅ではなく、郊外の駅に到着する列車もあります。
やや遅れを取り戻して、定刻より5分遅れて到着しました。
ヨーロッパ鉄道旅行でこのくらいは誤差範囲内です。
歴史を感じさせるこの駅はとても広く、乗り場(Hall)が3つあります。
それぞれ結構離れているので、パリ・リヨン駅から乗車する場合は時間に余裕を持たせましょう。
予約方法と費用
パリ~リヨンの値段は10€台~20€程度も現実的
予約はOuigoのサイトから行うことができます。
この専用ページ以外だと、フランス国鉄SNCFのサイトからも手数料なしで予約することができます。
また、Ouigoの予約はインターネットのクレジットカード決済のみ可能で、駅の窓口で購入することはできません。
ここではSNCFのサイト(英語)を使った予約方法を説明します。
(注)Ouigoの予約決済はヨーロッパかアメリカのクレジットカードでしかできないという情報がありますが、私は日本発行のカードでSNCFのサイトから予約できました。
まず、目的地、出発地の順に入力し、搭乗者の属性(年齢など)を選択します。
発着地は分かれば駅名でもかまいませんし、都市名だけでも大丈夫です。
以下、写真の日程・金額はバラバラですが気にしないでください。
また1等車が無いのも判別ポイント。
日付(写真は1カ月以上先の日付を検索)も指定して、Lyon Part DieuからGare de Lyonまでの候補列車を検索しました。
上の写真に4つ映っている列車のうち、一番上がOuigoで他はTGV InOuiです。
本家のTGVと比べてOuigoの料金はかなり安いことが分かります。
値段は需給に合わせて変動するので、早めに予約する程安くなります。
金額の部分をクリックして進みます。
赤線がOUIGO ESSENTIELには含まれない部分
料金プランを2つから選択します。
OUIGO PLUSは7€で座席指定や大型荷物1つ分などのオプションが付いています。
個別に両方足すと8€なので少しだけ得します。
OUIGO ESSENTIELはオプションが無いプランです。
こちらは座席指定のみ、あるいは荷物のみなど、自分でカスタマイズする人に向いています。
今回はESSENTIELを選びます。
座席指定の画面です。
Select your seatで座席選択画面に移動するか、必要なければContinueで進みます。
オプションの座席指定はオススメ
号車番号の数字(ここでは3)の左右の階段マークで1階と2階を切り替える
アダプターのマークは充電できる座席を意味する
座席指定料金は座席の種類によって異なります。
2枚写真を載せましたが上が1階席で、このうち1号車から3号車は1&3という変わった配置になっていて、1列座席は+7€と他よりも高いです。
2階席は全て通常の2&2シートで、こちらは+3€。
号車によって充電用の電源付きの車両とそうでない車両があるので要注意です。
座席指定料金は充電付き車両でも+3€で変わりません。
私は追加コストを払っても座席指定することをおすすめします。
混雑具合によっては3列席の真ん中に当たる可能性もあるところを、充電可能な2階の窓側席を確約できるのは3€に見合う価値があると考えるからです。
座席選択が終わったら荷物のオプションの有無を選択します。
航空機と同様にサイズの制約もあり、大形のスーツケースやバックパックは追加料金が必要です。
以降はTGV inOuiと同じ流れです。
乗客の名前と連絡先を入力します。
女性はMrs、男性はSir、FirstNameが下の名前、LastNameが苗字です。
電話番号は先頭の選択肢からJapanを選んで、そのまま普通に番号を入れて大丈夫です。
もしそれでだめなら最初の0の代わりに+81を入力してください。
クレジットカード使えない問題について
最後に支払いです。
実はここが意外と難所でして、SNCFのサイトは海外のクレジットカードをたびたび拒否することで知られています。
これは日本のみならずアメリカやオーストラリアでも確認されているようです。
複数のカードがあれば別のものも試してみましょう。
国内で問題なく使えても短期間に海外サイトを利用しすぎるとエラーになることもあるようで、しばらく期間をおくと成功することもあります。
しかし、こればかりはどうしようもないケースもあるかと思います。
Ouigoはネットの直接販売が基本ですが、例外的に代理店のtrainlineでも購入することができます。
また、支払い方法をPayPalにすれば、クレジットカードの問題を回避することができます。
eチケットが送られて来るのは乗車4日前くらい
決済に成功するとメールが届きます。
ただし、ここで1つ注意点があります。
通常なら予約完了した時点でバーコード付きのチケットが添付されたメールが届きますが、Ouigoの場合は乗車する4日くらい前になってeチケット付きメールが送られてきます。
フランス語のみのメールですが、重要なのでスルーしないように。
そのeチケットに希望した座席が反映されているはずです。
TGVのダブルブランド戦略
昔から航空機との競争を強く意識してきたTGV。
かつて、その主眼はスピードに置かれている印象がありました。
しかし、LCCの台頭と客層の多様化という時代の流れに合わせて、フランス国鉄は従来のTGVとは全く異なるブランドを立ち上げ、それらを両立させています。
見事な戦略です。
諸制約があるのは重々承知ですが、もし日本の鉄道にフランス国鉄のような柔軟性と野心があれば、E4系も装い新たに現在も大宮~新潟・青森(東京~大宮は過密ダイヤであることを考慮した)で夜行バスに対抗していたかもしれません。
コメント
はじめまして。河野と申します。
9月にフランス旅行を予定していて、LyonからParisまでの移動手段を調べているときにOuigoの記事をみつけました。
Ouigoは旅慣れてる人におすすめとありましたが、初めての海外でしかも一人旅の私でも利用できるでしょうか?また復路はParisからGenevaへと移動しますが、その時もOuigoは利用できるのでしょうか?
いろいろ検索しているのですが欲しい情報がなく困っています。
賢い移動の仕方やチケットの買い方など教えていただけたらと思います。
河野様、こんにちは。
鉄旅遊民管理人のmasakiです。
①リヨンからパリへのOuigoについて
初めての海外旅行とのことですが、ご自身でいろいろ調べられているようなので大丈夫だと思いますよ。
注意点としては、一部のOuigoは発着する駅がLyon Part Dieu(リヨンの中心駅)やParis Gare De Lyon(パリの中心駅)ではない便があるので、それらは選ばないように。
それから荷物が機内持ち込みサイズを越える場合は、予約の際に若干のオプション追加が必要です。
②パリからジュネーブの移動について
パリからスイスまでの列車は格安のOuigoの運行はなく、TGV Lyriaという列車になります。
所要時間は3時間少々です。
(参考)
https://tetsumin.com/tgv-paris-zuerich
③チケットの買い方など
両方ともフランス国鉄のサイト
https://www.sncf-connect.com/en-en/
で予約するのが一番安いです。
上記サイトで何か問題があれば、代理店の「トレインライン」
https://www.thetrainline.com/
でも可能ですが、手数料がかかります。
移動に関しては出発時刻の20分前に駅に着いておく感じが良いと思います。
日本と違って発車ホームが判明するのが15分くらい前なので、着くのが早すぎてもあまりすることがありません。
OuigoもTGV Lyriaも二階建て車両で、階段近くに荷物置き場があるのでスーツケースはそこに置きます。
頭上の荷物棚は小さいです。
河野です。
とても分かりやすい説明をありがとうございました。
発着駅についてはよく調べないまま予約するところでした。
いただいたアドバイスを参考にしながら、列車の旅を楽しみたいと思います。