左沢線は奥羽本線の北山形駅から左沢までを結ぶ路線で、列車は山形を起点にしています。
地元の人以外で「あてらざわ」と正しく読める人は、おそらく鉄道ファンでしょう。
山形盆地を走り、その途中にはサクランボの生産で有名な寒河江市があります。
2021年3月に山形から左沢までを往復しました。
山形盆地を行くフルーツライン
ロングシートにトイレ無しの車両
他の東北地方の路線と違って、青い車体のディーゼルカーが使用されています。
また車内も2人用&4人用のボックスシートではなく、通勤電車のようなロングシートです。
山形~左沢の所要時間は約50分ですが、車内にはトイレも無いので要注意です。
寒河江までは1時間に1本くらいの本数が確保されていますが、寒河江~左沢は日中では数時間間隔が空くこともあります。
また、左沢行きの列車でも寒河江駅で折り返す車両があります。
左沢線の乗車記
朝7時前の山形駅はあまり寒くはありませんが風が強く吹いています。
左沢線は30㎞に満たないローカル線ですが、なんと6両もつなげていました。
出発前のひと時、運転士と駅員数人が、ボソボソした山形弁で会話をしています。
東京からの距離がほぼ同じ仙台ではあまり聞かれない方言が耳にできるとは、東北本線(新幹線)と奥羽本線の格差を感じさせます。
山形駅を定時7時03分に発車した時は、まだ通学時間帯には早かったので車内は空いていました。
山形駅を出えるとまもなく左手に山形城の堀と門が現れます。
次の北山形駅までは奥羽本線の線路を走ります。
北山形駅は奥羽本線と、そこから分かれる左沢線のホームがV字を形成している珍しい構造です。
列車は山形盆地をまずは西に進んでいきます。
「フルーツライン左沢線」の愛称に違わず、両手にサクランボ畑が広がり、その向こうには山地が横たわっています。
サクランボは全国の8割程度が山形県で生産されており、左沢線のシンボルでもあります。
小さな川を渡ると進路を北に変えて、羽前山辺駅の市街地に入ります。
この辺りから学生で混雑してきました。
それにしても、男子と女子とでロングシートの両側にきれいに分かれて座っているのは、一体どういうことでしょうか?
生産性の低そうな合コンの配置ですが、この辺りの学校にはよほど保守的な風紀委員会でもあるのかもしれません。
さて、地面は徐々に雪で覆われてきました。
羽前長崎駅を出ると最上川を渡り、寒河江の市街地に入っていきます。
左沢線では最大の寒河江駅では6両編成の列車を前後に切り離します。
前2両が引き続き左沢行きで、後ろの4両は折り返しの山形駅となりました。
左沢行きは空いていましたが、後ろの山形行きは学生で混雑していました。
寒河江駅からは沿線の住宅は少なくなり、その代わりサクランボ畑はより大規模なものになります。
加工工場と思われる施設も見られます。
羽前高松駅の前後で左沢線は逆Uの字を描き、南西方向へ進みます。
左手遠方には曇り空の中で月山がそびえています。
霊場出羽三山の最高峰なだけあって、「死」や「即身仏」を連想させる幽玄な姿です。
これまで平地が続いていましたが、最後になって最上川沿いの山裾を走ります。
トンネルを抜けて左手に川沿いの集落を見おろして、これから山間部のローカル線ムードかと期待しているうちに、終点左沢駅に到着です。
計画では左沢駅からさらに延長して、山形鉄道フラワー長井線の終着荒砥駅まで繋げる予定だったそうですが、結局これは実現しませんでした。
そう言われると、確かにこじんまりとして中途半端な終着駅に思えます。
駅でトイレを済まし、折り返しの列車で山形に戻りました。
短いが活気を感じる路線
「東北地方のローカル線」というと、高校生と老人しか乗っていない、いかにも廃線の危機に瀕した路線というイメージがつきまといます。
しかし、特に観光路線でもない左沢線は、通学時間帯を外れていても若者で混雑していました。
ブランド化に成功した小粒で繊細な味わいのサクランボと、短い盲腸線ながら活気を感じさせる左沢線は、地域振興のお手本のように思えてきます。
コメント