青春18きっぷで利用したい、赤穂線の乗車記【車窓やダイヤを解説】

ローカル線

赤穂線は相生駅から東岡山駅までを結ぶ路線で、山陽本線の補助線的な機能も持っています。
また同区間の距離は赤穂線の方が3㎞短くなっています。

兵庫県と岡山県の境で山越えをする山陽本線と比べると、海側を走る赤穂線は穏やかな車窓です。
特に青春18きっぷユーザーにとっては、混雑する山陽本線を避けるルートとして有効活用したい路線です。

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相生~播州赤穂

新快速が直通する

赤穂線の運転系統は播州赤穂で分かれています。
播州赤穂までは新快速が朝と夕方の時間帯に直通しており、山陽本線の補助線というより、京阪神地区の最西端の通勤圏といった様相です。
一部にははるばる4時間以上かけて、北陸本線の敦賀から米原経由で来ている新快速もあります。
走行距離は275㎞程度で、今どき在来線の特急でも長距離列車の部類に入ります。

普通列車の車両も新快速と同じステンレス製の車両が多いです。
相生~播州赤穂の所要時間は約10分です。

播州赤穂駅は京阪神地区の車両が多く、JR神戸線の末端部分にも感じられる。

長閑な景色

相生駅を出ると山陽本線と分かれ、赤穂線は海側へと進んでいきます。
ここから山陽本線はトンネル無しで山越えにかかりますが、意外というべきか赤穂線の方はトンネルが幾つか続きます。

車窓は相変わらず山に囲まれた田舎の風景といった感じです。
130㎞で疾走するはずの新快速にまで来てもらって申し訳ない、という気にもなります。

千種川橋梁を渡る

少し長い橋梁で千種川を渡るとすぐに坂越駅で、やがて播州赤穂駅に到着します。
忠臣蔵の舞台で知られる播州赤穂駅は街中にあります。
駅周辺にはホテルもあり、通勤客だけではなく観光客の利用もそれなりにありそうです。

播州赤穂駅は観光地の要素も強い
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播州赤穂~岡山

山陽本線ほどは混雑しない

播州赤穂からはいよいよ地方交通線らしくなりますが、本数は1時間に1本あります。
また途中の長船からはさらに1時間に1本列車が運転されており、計2本となります。
車両は岡山地区でお馴染みの黄色の115系です。
車両自体は国鉄時代の製造なので古いですが、車内は新快速と同じようなクロスシートにリニューアルされており快適です。

115系の車内は快適になっている

播州赤穂~岡山の所要時間はおよそ1時間半で、播州赤穂駅での接続は概ね良好です。
山陽本線経由だと相生~岡山の所要時間は1時間10分くらいなので、赤穂線だと30分余計にかかるという認識でよいでしょう。
混雑度も赤穂線の方が低いです。

また山陽本線についてもいえることですが、岡山方面への下り列車の場合だと、岡山駅止まりではなく、さらにその先の福山・三原や伯備線に直通する列車もあります。

車窓から海が見える区間は僅か

播州赤穂を出ると両手に工業地帯が広がります。
JR神戸線の延長のような位置づけだったそれまでの区間と異なり、赤穂線らしくなってくるのはこれから先です。
軌道も貧弱になったのか、乗り心地も悪くなったようにも思われます。

播州赤穂駅発車直後は工場を見る

兵庫県と岡山県の境は、備前福河駅~寒河そうご駅の間にある福河トンネル内にあります。
北を走る山陽本線が県境を越えるにあたって標高115Mのサミットに達するのに対して、赤穂線はせいぜい20M程までしか上りません。

こじんまりとした備前福河駅。
駅の規模にもローカル線らしさが感じられる。

寒河駅を過ぎたあたりから日生ひなせ駅にかけて瀬戸内海が見え隠れします。
特に日生駅の近くでは漁船や小豆島行きのフェリーも停泊していてうららかな入り江の景色です。
県境の山間部から海岸に放り出されるこの辺りが、赤穂線の車窓のハイライト区間で、海が見えるのは最初で最後です。

日生駅の手前でついに海が見える。
駅前に小豆島行きのフェリーが口を開けて客を待つ。
旅情を誘う光景である。

伊部いんべ駅の周辺は備前焼の産地で、古い建物や焼き物工場の煉瓦造りの煙突が点在しています。

「ノスタルジック」という言葉が見合う伊部駅周辺。

伊部駅を過ぎると右手に山陽新幹線が接近してきます。
新幹線の線路は池の上に建設されています。

赤穂線の方が本線より距離が短いので、新幹線はこちらの近くを通る。

香登かがと駅からは山間部の風景は終わり、線路は平坦になります。
周囲は水田地帯で、住宅も増えてきます。

沿線人口も増えてくる

運転本数が増える長船駅を経て、吉井川を渡った先にあるのが西大寺駅。
赤穂線の中では主要な駅で、昔運転されていた急行列車の停車駅でもありました。

清々しい朝の吉井川

以降も乗客を増やしながら、山陽本線と再会する東岡山駅に到着します。

複線電化で一部は高架化された線路を走って岡山駅に到着します。

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歴史がつまった線路

せっかく本線よりも距離が短い赤穂線ですが、1960年代~1970年代前半の時刻表を当たってみても、優等列車が運転されているのはどれも1日1往復のみです。
いずれも昼行急行で、電化前は伯備線経由の大社(山陰本線の出雲市駅より分岐していた大社線の終着駅)行きの「おき」。
電化後は九州行きの「つくし」(博多行き)と「べっぷ」(大分行き)です。

1969年5月号の赤穂線の時刻表
1969年5月号の時刻表より。
優等列車は1往復だけ。
赤穂線が電化された後もその本数は変わらなかった。

似たようなバイパス路線である呉線なんぞは、非電化の時代でも東京・大阪からの夜行列車が大型蒸気機関車に牽かれて乗り込んでくるのとは大きな違いです。

つまり赤穂線は建設当初の目的はともかく、実態としてはローカル輸送を主眼としていたといえるでしょう。

言わずと知れた忠臣蔵ゆかりの地、播州赤穂をはじめとして、備前焼の煉瓦工場が散在する伊部など、赤穂線沿線には歴史を感じる箇所が多くあります。
海が見えるだけでなく、そうした風情が味わえる分、どちらかといえば山陽本線よりも赤穂線経由の方が鉄道旅行を楽しめるのではないかと思います。

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