十勝亜阿房列車④:三国峠の国境を越えて大雪ダムへ

旅行記

梅雨後半の日本の7月上旬は旅行に行きたくなる季節ではないが、梅雨がない北海道は例外である。
他の地域よりは涼しいし、何より湿度が低いのでカラッとしていて過ごしやすい。
そんなわけで2025年7月の第2週、私(185系)と元同僚で某寺院副住職の地蔵氏の二人は、2日間レンタカーで道東の大地十勝を巡った。
廃止された国鉄士幌線しほろせんの関連設備を見たい私と、十勝平野の直線畑を車で運転したい地蔵氏の興味が嚙み合ったのだ。

本記事は第4話。終着の十勝三股駅跡からさらに北上、士幌線が果たし得なかった三国峠越えをして大雪ダムを見に行った。
なお「亜阿房列車」とは題しているものの、今回は実際に列車に乗るわけではなく、廃線跡や駅跡を訪れてかつて列車が走っていた姿を偲ぶのが目的である。

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北海道の分水嶺三国峠

何もない原野と化した十勝三股に降り立って、今日成すべき士幌線巡りの目標はすべてクリアした。
あとは明日のタウシュベツ川橋梁ツアーを残すのみである。
まだ15時前でホテルに行くには早すぎるということで、ダムハンター(またはダム寺住職)地蔵氏の提案に従って大雪ダムに行くことにした。
大雪ダムは今まで走ってきた国道273号をさらに北上して三国峠を越えた先にある。

実は士幌線にも、三国峠を越えて旭川方面へと続く北海道縦貫鉄道という大きな夢があった。
おそらく層雲峡を経て石北本線の上川駅辺りで合流するつもりだったのだろう。
もっとも仮に北海道縦貫線が実現して士幌線の価値が上がっていたとしても、国鉄民営化以後の道路整備と人口減少・バブル崩壊、そしてJR化後の災害対応を考えれば、2025年まで生き延びることは絶対になかったと思われる。

というわけで、士幌線の遺志を継いで十勝三股からさらに北へ車を進めよう。
相変わらず原野を切り開いた真っすぐな道路がしばらく続いた後、やがて正面には山塊がそびえ立っていた。

視線を上げると、今走っている道に対して直角に自動車道が前方を横断していた。
周囲の景観に溶け込んでいた士幌線のコンクリートアーチ橋とは対照的に、北海道最高峰の大雪山系にも挑みかかるような橋梁である。
「あの道を通るんやろか?」
「いや、あれはさすがに別の高速道路じゃない?」

ところが、我々が走る国道は離陸する飛行機のように旋回しながら舞い上がり、先ほど見えた橋に出た。
「オートマ車じゃ物足りねえなぁ!」と地蔵氏が目を輝かせて叫ぶ。
大パノラマのなかで小さく見える細い灰色の線が、先ほど通ってきた道路だった。

橋を渡り終えてまもなく、駐車場とカフェのある三国峠展望台に着いた。
看板の説明書きによると、ここから見渡している広大な樹海は100万年前の噴火でできたカルデラだという。
そしてその中心地には士幌線の十勝三股駅があって、最盛期には2,000人の人が生活していたこともしっかり記されていた。
「へぇ、十勝三股に2,000人住んでたって本当なんだ。185系さんが言ってたことは嘘じゃないんですね。」
と、私の説明を信じなかった地蔵氏が驚く。
私が意図的に嘘をついたり大げさな誇張をする人間ではないことは、当ブログの読者なら当然知っておられるはずだが、我が相棒の地蔵氏はそうでないのは誠に遺憾である。

展望台を出ると、いよいよ峠越えのトンネルだ。
今回は「十勝亜阿房列車」と銘打っているが、十勝国から脱線して石狩国にまで足を延ばすことになる。
ところで、私は国境越えのトンネルではサミットが気になってしまう。
「あっ、今勾配が上りから下りに変わった?」
「さすが、鉄道旅行者はよく分かりますね。」

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北海道のへそ、大雪ダム

石狩国に入ってから大雪ダムまでは意外と遠かった。
大雪湖まではすぐだったが、そこから湖のほとりをくねくねと走った。

大雪ダムは北海道随一の大河石狩川の上流に建設されたダムだ。
北海道のほぼ中央部に位置している。
通常はコンクリートが剥き出しになっているダムの斜面に草が生えているが、これは珍しいタイプだという。
ダムカードを手に入れるために管理事務所まで足を運んだ。
地蔵氏は関東地方のダムカードはかなり制覇しているらしい。
「こんな所には185系さんと一緒じゃなかったら絶対来れませんよ。」
と興奮している。

車のナンバープレートを見ると今までの「帯広」ではなく「旭川」になっている。
北海道の分水嶺を超えて来たのだ。
「内地」なら太平洋側から日本海側、ここならば太平洋側からオホーツク海側と言うべきだろうか。
後で聞いたところによると、冬の降雪量はオホーツク海側の方が格段に多いらしい。

15時半を過ぎた。
お互いの目的を思い残すことなく果たしたのでホテルに向かう。
ホテルの手配は地蔵氏に任せていて、たぶんぬかびら温泉郷の何処かだろうと思っていたが、ぬかびら温泉郷から車で30分ほどの所にある然別しかりべつ湖畔のホテルだった。
然別湖での極上の滞在については次回の記事にて。





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