津山まなびの鉄道館は津山駅近くにある鉄道博物館です。
この施設の特徴はまず第一に扇形機関車庫と転車台が目の前で見られることですが、それ以外にも懐かしい車両や昔の鉄道設備を自分で動かすことができるなどの見所もあります。
屋外展示は大迫力
シンボルの扇形機関車庫と転車台
まず入り口で出迎えてくれるのは、この施設のシンボルである扇形機関車庫と転車台です。これらは「鉄道記念物」に指定されている貴重なものです。
転車台の横にはC57形蒸気機関車の動輪があります。その高さは175㎝あり、最高速度は100㎞でした。
さて、1両のディーゼルカーに乗って津山にやって来た人はなぜこんな立派な施設がここにあるのか疑問に思うでしょう。
今となっては信じがたいですが、津山駅はかつては山陰と山陽を結ぶ鉄道の要衝だったからです。
その証拠に津山駅は今でも非常に堂々とした広い駅で、短い編成の普通列車しか来ないのが不自然なくらいです。
中国自動車道が開通するまでは今やローカル線の姫新線も、大阪から津山をはじめとして、美作地方の温泉地・観光地へとアクセスする役目を果たしていました。
また、現在では特急「スーパーいなば」での智頭急行経由となる岡山~鳥取間も、以前は津山線と因美線による津山駅経由がメインルートでした。
この時代は津山は中国地方の鉄道の要衝であったことが分かる。
D51やキハ181形・キハ58に出会える
機関車庫の中には13両の車両が展示されています。
各車両について説明書きがあるのも嬉しいです。
非電化区間ですから当然ディーゼルカーやディーゼル機関車、そして蒸気機関車のみです。
中央に鎮座するのはやはり人気者の「デゴイチ」ことD51 形蒸気機関車です。野暮ったい国鉄型のディーゼルカーたちに囲まれてもなお、その存在感は変わりません。
なお私は立ち会えませんでしたが、12時と15時に汽笛(「旅立ちの汽笛」)の吹鳴が行われるそうです。
この中では一番「華がある」といえるのは特急型のキハ181形でしょう。
かつての非電化区間のスターとして全国各地で活躍した車両です。
私は特急「はまかぜ」で使用されていたころに、この車両に乗ったことがあります。
起動時のあの「ボワーッ」という独特のエンジン音は今でも忘れられません。
急行型キハ58形のみ、僅かな区画のみですが車内に入ることができます。
私が子供のころは、青春18きっぷ旅行でこの車両にお世話になることもまだ多かったと記憶しています。キハ47などと外見は似ていても、デッキ付きでテーブルも大きく肘掛けもあるこの車両が好きでした。
その他にも、お馴染みのDD51形だけでなく、珍しいディーゼル機関車が幾つかあります。
また客車を改造したキハ33形気動車も希少価値が高いです。
屋内展示も地味で楽しい
津山まなびの鉄道館の魅力は、迫力のある屋外だけではありません。
テーマ別に小さな展示室が複数あります。
まちなみルームではジオラマ演出が行われる
機関車庫の入り口側の端にあるのがまちなみルームです。
ここでは10時から15時までの1時間ごとに約5分間のジオラマショーが行われます。
津山市と美作エリアの1日が演出されますが、因美線の古くて趣のある駅も見事に再現されています。また、転車台の模型も実際に車両を載せて回るので、見逃さないようにしてください。
あゆみルームで歴史を解説
機関庫から津山駅の方へ進んでいくといこいの広場があり、ここでは隣の留置線の車両と一緒に休憩ができます。(飲食可能)
さて、その手前にあるあゆみルームでは岡山の鉄道の歴史を中心とした展示がなされています。
「新幹線開業」と聞くと普通は1964年を思い浮かべますが、ここで強調されているのはその年ではなく、1972年の山陽新幹線岡山開業です。
広島に次ぐ中国地方の中心地にして、四国・山陰との結節点である岡山の役割を再度認識させられます。
しくみルームではタブレット閉塞器を動かせる
あゆみルームのとなりにあるしくみルームは屋内展示のハイライトです。
鉄道の構造や信号設備についての展示がなされています。
と聞くと「何だか地味でつまらなさそうだ」と感じるかもしれませんが、自分でいろいろ手で触って体験できるようになっているので子供でも楽しく学べるでしょう。
左に見えるタブレットキャリアの下部に金属のタブレットを入れる。
一番の注目は何と言っても、もはやJRでは消えてしまったタブレット閉塞器で、館内スタッフの指示に従いながら自分で操作できます。
「タブレット閉塞って、そんな昔からiPad使ってたの?」という人向けに説明すると、タブレットとは単線区間で列車の正面衝突を防ぐための通行票で、手渡しを容易にするため円盤状をした輪を持つ容器(タブレットキャリア)に入れられています。これを持った列車しか駅間を走行できません。
そしてタブレットを発行するために、隣の駅同士の駅員が電鈴や電話で連絡を取り合って一連の作業をするのですが、その仕組みは結構ややこしいです。
この真っ赤なタブレット閉塞器は、展示されている場所は他にもありますが、自分で操作できる「動態保存」のものは、ここくらいではないでしょうか。
当然各駅に人員を配置しなければならず人件費がかかるので、信号システムの近代化により、残っているのは一部のローカル私鉄のみだそうです。
まなびルームではグッズ販売もある
受付のすぐ隣にあるまなびルームにはお土産・グッズの売店があります。
休憩室としても利用できるほか、収蔵品の小さな展示スペースもあります。
見学時間は?
見学時間は途中休憩無しで、1時間程度が目安です。
施設のすぐ隣に線路や留置線があるので列車が結構頻繁に出入りし、私の場合はそれに目を奪われているうちに予想外に時間がかかってしまいました。結局滞在時間は約1時間半でした。
懐かしい鉄道を感じる場所
昔の鉄道の街である津山らしく、車両のみならず設備・インフラなども懐かしいものが見られるのが、津山まなびの鉄道館の最大の魅力です。
津山駅自体もとても趣のある駅ですが、ここと合わせて見学することで、窓の開くディーゼル急行列車に乗って中国地方を旅していた時代の情景が思い浮かんでくることでしょう。