【網走~旭川の乗車記】石北本線を特別快速きたみと特急大雪&オホーツクで旅する【車窓・車内販売の情報】

幹線

石北本線は宗谷本線の新旭川駅から網走駅に至る路線です。
もちろん列車は旭川駅まで運転されています。

路線全体の特徴としては

  • 旭川~上川は、車窓に畑が広がり本数も比較的多い
  • 上川~遠軽~北見は、山越えをする超過疎地域
  • 北見~網走は、再び列車本数が増え、網走湖や網走川も見える

といった具合です。

網走駅から旭川駅まで、特急と特別快速「きたみ」に乗って旅行しました。
途中北見駅で1泊しています。

(2023年追記)
当記事で乗車しているキハ183系は2023年3月に引退し、キハ283系に置きかえられています。

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網走~北見まで特急「オホーツク」に乗車

網走駅を出発

網走駅の入り口
網走駅の入り口

今回の旅の出発となる網走駅は、石北本線と釧網本線の境目となる駅です。
特急の終点となる駅でもあり、田舎の少し大きなターミナルといった感じのする旅情ある駅です。

網走駅では石北本線の駅で唯一駅弁が販売されています。
名物ということで「かにめし」を購入しました。
あっさりしてフレッシュなカニの風味が味わえます。

網走駅のかにめし
網走駅特産のかにめし

キハ183系のハイデッカーグリーン車

キハ183系「オホーツク」
キハ183系「オホーツク」

石北本線の特急列車にはキハ183系が使われています。
この車両は非常にバリエーションが多いのですが、大雑把に言って初期型と後期型に分かれます。
スラントノーズが特徴的な初期型はすでに引退して、現在運用されているのは後期型(の改良型)のみです。

さて、現在残っているキハ183系の座席は、どの車両もリニューアルされています。
指定席車両は他の列車と同じグレードアップ座席、自由席は何種類かありますが、他形式のオリジナル座席の転用です。


そして特徴的なのはハイデッカーグリーン車。
座席が高い位置にあり窓も大きく眺めが良いのですが、窓が曲面ガラスなので客室の雰囲気がだいぶ異なります。

キハ183系のハイデッカーグリーン車
ハイデッカーグリーン車
キハ183系のハイデッカーグリーン車の車内
グリーン車の車内

座席はキハ281系やキハ283系のグリーン車と同じです。
しかし、荷物棚や「指定席」の札、そしてトイレ利用中を示すランプなど、国鉄の香りは依然として残っています。

キハ183系のハイデッカーグリーン車の車内
リニューアルされているものの、至る所に国鉄らしさが漂う

車窓は比較的単調

網走駅を出るとまもなく右手に網走川が見えてきます。
そして呼人駅~女満別駅までは網走湖のほとりを走るようになります。

石北本線からの網走川の車窓
網走駅出発後、網走川に沿って走る
網走湖が見える石北本線女満別駅
女満別駅からは網走湖が望める

女満別周辺は防雪林が目立ちます。
この辺りは元は泥炭の湿原地帯で、土壌が軟弱なせいで路盤の保守は大変だったそうです。
防雪林は雪を防ぐだけでなく土壌の水分も吸収するので、石北本線の安定輸送に果たしている役割は計り知れないほどのものです。

石北本線沿線の防雪林
石北本線沿線は防雪林が多い

車窓は割と単調で、特に大きな山越えもありません。
「道北・道東の荒涼とした大地」といった感じではなく、畑や水田を穏やかに見ながら北見駅に着きます。
石北本線の末端区間ですが、列車本数はそれなりにあります。

北見駅の駅舎
石北本線を代表する北見駅。
駅周辺はホテルも多い。
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北見~上川は石北本線の醍醐味

常紋トンネルの人柱伝説は本当だった!

北見駅を出るとすぐに北見トンネルに入ります。
これは山越えではなく、北見市街を雪の影響を受けない地下で立体交差するためです。

北見トンネル
北見市内を地下の北見トンネルで抜ける

西留辺蘂にしるべしべまでは緩やかな上り勾配で、その先の金華信号場(旧・金華駅)から25‰の急勾配になります。
ここからが常紋峠越えです。

坂を上りつめた後には常紋トンネルと常紋信号場跡があります。
常紋トンネルは「タコ部屋労働」によって建設されたことで知られ、数多くの秘話が残っています。
そのうちの一つに、罰を受けた労働者が人柱にされたという伝説がありますが、実際に1970年ごろトンネル改修工事の際に壁から人骨が発掘され、真実であることが分かりました。

常紋トンネル入り口
いよいよ常紋トンネルへ入る

また常紋信号場は蒸気機関車が重連で奮闘し、貨物列車の本数も多かった時代には列車交換などに活躍しましたが、1980年代にはその設備を持て余し、現在では廃止されています。

常紋信号場跡
常紋トンネルの西留辺蘂川の入り口近くにある常紋信号場跡

幽霊に列車を急停車させられることもなく、無事トンネルを通過すると下り勾配になります。
我々の安堵感に呼応するように、車窓も雄大な山を遠めに開放的な自然が広がります。
以降は足取りも軽く、列車は遠軽駅に到着します。

特急「大雪」で車内販売が!

北見駅から遠軽駅まで旭川行きの特急「大雪」に乗車した時のことです。
いつも通り、あの過保護でくどい3か国語の自動車内放送が終わった後、突然懐かしい「アルプスの牧場」のオルゴールが鳴ったので、何事かと思っていると、何と車内販売のご案内の放送が始まったのです。

特急大雪の車内販売メニュー
特急大雪の車内販売メニューが乗客に配られる

オホーツクの食材を使用した菓子やデザート、その他グッズが売られているようでした。
私が買ったのは「白花豆プリン」とお土産用の「熊のまくら」(ソフトかりんとう)。
プリンは甘さが控えめで素材の上質な味わいを楽しめ、熊のまくらもあげた人からとても好評でした。
物珍しさもあってか、私が乗車していた自由席での売れ行きはなかなか順調のようでした。

特急大雪の車内販売で買った白花豆プリン
白花豆プリン

車内販売されていたスタッフに聞いたところ、旭川行きの特急「大雪」のみ(札幌行き「オホーツク」ではない)、主に日曜日に行っているとのこと。
始めたのは3年くらい前(取材は2019年9月)で、本格的に取り組んだのは1年前からだそうです。

車内販売や石北本線そのものにとって暗い話題が多い中で、こうした試みには非常に励まされました。

特急大雪の車内販売スタッフ
車内販売スタッフ。
Save the Railwayと書かれたエプロンが胸を打つ。
(許可を得て撮影しています)

遠軽駅は雰囲気抜群の駅

遠軽駅の駅舎
歴史を感じる遠軽駅の駅舎

遠軽駅はかつては名寄本線の終点でもありました。
石北本線の新旭川~遠軽よりも先に名寄本線が開通したため、名寄本線亡き今もスイッチバック構造の駅になっています。

駅のホームや構内には、賑やかだった時代の名残がまだ感じられます。
途中下車するに大変おすすめですが、駅弁や駅そばはもう営業していません。

石北トンネルのある白滝~上川は駅間が37.3㎞もある

遠軽駅にしばし感動したら石北本線の旅を続けます。

遠軽駅で進行方向が変わり、今まで来た線路を左に分けながら進んでいきます。
丸瀬布駅のあたりから川沿いの谷を走るようになり、白滝駅を過ぎるとまた25‰の上り勾配が始まります。

遠軽駅の近くのスイッチバック式の配線
遠軽駅を出て右側の旭川方向の線路を走る。
左が今まで走って来た網走からの線路

白滝駅から次の上川駅までの駅間は37.8㎞と新幹線並みかそれ以上の長さで、在来線では日本最長です。
なお、この区間を通る定期普通列車は特別快速を含めても2往復だけです。
途中に石狩と北見の分水嶺を抜ける石北トンネルがあります。

石北本線白滝~上川の車窓
秘境区間を川に沿って走る

最初からここまで長い駅間だったわけではなく、昔は途中に5つほど駅があったのですが、沿線の過疎化とJR北海道の経営合理化のために信号場となるか廃止となりました。

石北本線の白滝~上川の廃駅
白滝~上川は廃駅が続く
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上川~旭川も特別快速「きたみ」で快走

列車本数が増え車窓も開けてくる

上川駅からは列車本数もまた回復し、駅間も短くなります。
とはいえ上川駅からしばらくは山間部といった趣の車窓です。

石北本線上川駅
上川駅に到着

だんだんと視界が開けてきて、9月中旬の黄金色の畑の絨毯を踏みながら、特別快速「きたみ」は旭川に向かって、駅を次々と通過しながら走っていきます。

石北本線の上川~旭川の車窓
畑が広がる

右側から宗谷本線の複線の線路が近づいてきたら新旭川駅。
都市部を高架線で進み、終点旭川駅に到着です。

複線の宗谷本線の旭川四条駅
新旭川駅から戸籍上は宗谷本線となり複線の線路を走る。
旭川四条駅を通過。

特別快速「きたみ」は特急料金不要の乗り得列車

旭川に到着した特別快速きたみ
旭川に到着した特別快速きたみ

特別快速「きたみ」は1日1往復、旭川~北見間で運転されている快速列車です。
特に上りの上川~旭川のダイヤは特急並みで、普通列車の本数が少なく、区間運転が多く不便な石北本線では、青春18きっぷ利用者にとってはとてもありがたい存在です。
特急を使わない場合は、この列車を軸にプランを立てることになるでしょう。

車両はキハ54形が使われているので、長距離利用でも苦になりません。

高架式でモダンな旭川駅

内装に木材が使われている旭川駅の乗り換え通路。
内装に木材が使われている旭川駅の乗り換え通路。
駅弁の販売もある。

北海道では札幌に次ぐ鉄道の要衝である高架式の旭川駅は、道内各地への列車が発着しています。

現在の駅舎は2011年に開業したもので、内装には木材が使用されていますがモダンな印象を受けます。
駅周辺は北口がロータリーとホテルなどが建っているのに対し、南口は庭のようになっていて全く雰囲気が異なるのも特徴的です。

旭川駅の北口
旭川駅の北口
旭川駅の南口
南口はうって変わって自然が多い

旭川駅には駅弁があります。
改札を出た所にあるキオスクでも売っていますが、乗り換え通路にも駅弁の販売所があります。

いくら盛り弁当」は鮭の親子丼で、その名の通りイクラが結構沢山載っています。
札幌の「石狩鮭めし」は親子の共演といった感じですが、こちらはあくまで子のイクラが主役です。
イクラが食傷気味になってきた頃に、それまで見守っていた鮭を上手くアシストさせるのが、この弁当を美味しく食べるコツだと思います。

旭川駅の駅弁、いくら盛り弁当
いくら盛り弁当はいくらたっぷり
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廃止の危機にある石北本線の魅力

旭川から網走まではとにかく険しい線路です。
根室本線や宗谷本線も、石北本線ほど超過疎地域を走ったり厳しい山越えをしませんし、最後の方には海が出迎えてくれます。

しかし、石北本線は常紋トンネルの存在もあってか、誰もいない山奥をただひたすら走っていく印象があります。
そして、この地味さ、ストイックさこそが最大の魅力です。

今、石北本線は存続問題に直面しています。
特急が走っているとはいえ、途中の駅の少なさが何よりもその窮状を表しています。
ですが、人々もそれを黙って見ているだけではありません。

駅には自治体による鉄道利用促進ポスターが目立ち、路線維持を切実に訴えています。
季節限定で運行されている貨物列車も、廃止が検討されたこともありましたが、鉄道会社の収入増加が一つの目的となっています。
そして特急「大雪」の車内販売も、列車の付加価値向上のみならず、地元産業の魅力発信の手段として、是非とも継続・発展させていただきたいものです。

カボチャ団体の奮闘を伝える、石北本線の鉄道利用促進ポスター。
遠軽駅の鉄道利用促進ポスター。
石北本線建設に奮闘した「カボチャ団体」と呼ばれた人々の思いを伝えている。

かつて、一人の女子高校生の通学のためだけに存在する、旧白滝駅が世界中で話題になったそうです。
道路も発達した過疎化が進む地域の線路を、誰のためにどんな組織が運営すべきかを再考する必要があるのではないかと、自然に帰りつつある石北本線の廃駅を通過する度に感じます。

石北本線の廃駅
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